王太子殿下の横っ面を叩いたら結婚することになりました〜《外れ》スキル『ビンタ』の気弱な聖女、実は桁違いの浄化の力を持っていた〜

水都 ミナト

文字の大きさ
上 下
3 / 5

第三話 奇跡が起きただけ

しおりを挟む
「下ろせって言ってるだろ」
「下ろさないよ」
 せめて子どもだけでも無事に宿場に届けないと罪悪感で胸が張り裂けそうだ。
「ほら、暴れないで掴まってろ」
 そう言う最中から、ふいに妹のことを思い出してしまった。
 もし、妹が襲われていたとしてそれを見捨てた者がいたら自分は許せるだろうか。
 許せない――。
 だが、どうしようもなかったのも事実だ。乱暴に及ぶような相手だ、下手にかかわったら殺されていたかもしれない。
 結局その後、栄助は元の宿場までもどって子どもを保護してもらい自分の宿をとった。

   三

 女子を見見捨てた翌日、栄助は街道を外れて道なき道を進んだ。
 猟師として生きてきたお陰で足取りは決して重くない。
 そうして、宿場町についた。宿でここいらの賭場がどこなのかを聞き込み足を向けた。
 すると、やはりいた。助左衛門たちの姿が賭場にあった。
 栄助の表情から何か察したのか助左衛門が立ち上がってこちらに近寄ってきた。
 戸口の脇で栄助は彼に声をかける。
「仲間に戻りたい」
「そりゃまた、どうしてだ? 仔細があるんだろう?」
 助左衛門の問いかけに昨日の体験を語った。このために街道から外れて手籠めの下手人たちを避けてやって来たのだ。
「なるほどな、何もできないのはもう嫌、か」
 助左衛門が皮肉な笑みを浮かべた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢

美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」  かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。  誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。  そこで彼女はある1人の人物と出会う。  彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。  ーー蜂蜜みたい。  これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

大魔法使いの娘ですが、王子からの婚約破棄は気にせず、この力をもって幸せに生きていきます。

四季
恋愛
一見栗色の髪を生まれ持った十八歳の平凡な娘でしかない私――ガーベラには、実は秘密がある。

聖女の私は婚約破棄されましたが、王様が王子を廃位しました。私には新しい皇太子が。

十条沙良
恋愛
王様がお怒りになり実の息子を追い出しました。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

お約束の異世界転生。計画通りに婚約破棄されたので去ります──って、なぜ付いてくる!?

リオール
恋愛
ご都合主義設定。細かい事を気にしない方向けのお話です。 5話完結。 念押ししときますが、細かい事は気にしないで下さい。

【完結】え、お嬢様が婚約破棄されたって本当ですか?

瑞紀
恋愛
「フェリシア・ボールドウィン。お前は王太子である俺の妃には相応しくない。よって婚約破棄する!」 婚約を公表する手はずの夜会で、突然婚約破棄された公爵令嬢、フェリシア。父公爵に勘当まで受け、絶体絶命の大ピンチ……のはずが、彼女はなぜか平然としている。 部屋まで押しかけてくる王太子(元婚約者)とその恋人。なぜか始まる和気あいあいとした会話。さらに、親子の縁を切ったはずの公爵夫妻まで現れて……。 フェリシアの執事(的存在)、デイヴィットの視点でお送りする、ラブコメディー。 ざまぁなしのハッピーエンド! ※8/6 16:10で完結しました。 ※HOTランキング(女性向け)52位,お気に入り登録 220↑,24hポイント4万↑ ありがとうございます。 ※お気に入り登録、感想も本当に嬉しいです。ありがとうございます。

【完結】己の行動を振り返った悪役令嬢、猛省したのでやり直します!

みなと
恋愛
「思い出した…」 稀代の悪女と呼ばれた公爵家令嬢。 だが、彼女は思い出してしまった。前世の己の行いの数々を。 そして、殺されてしまったことも。 「そうはなりたくないわね。まずは王太子殿下との婚約解消からいたしましょうか」 冷静に前世を思い返して、己の悪行に頭を抱えてしまうナディスであったが、とりあえず出来ることから一つずつ前世と行動を変えようと決意。 その結果はいかに?! ※小説家になろうでも公開中

処理中です...