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第34話 真夜中の来訪者
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その日の夜、マリアンヌは何だか寝付きが悪く、窓際で月明かりをぼんやり見上げていた。
海にいた頃、水面に揺蕩う月の影を見るのが好きだったが、地上で直接見上げる月も美しい。
流石にベッドに入るかと、遮光カーテンを閉めようとした時、コンコンと控えめに窓を叩く音がした。
マリアンヌは少し警戒しつつも、僅かに窓を開けて音の主を探り――目を見開いた。
「ら、ラルフ様…!?」
「しっ、静かに」
窓の外には、壁を背にしゃがみ込むラルフの姿があった。ちなみにマリアンヌが借りている部屋は一階である。
一体こんな夜更けにどうしたのかと疑問を抱くが、ともかく温暖な獣王国といえど夜風は冷える。マリアンヌは窓を大きく開けてラルフを部屋に招き入れた。
ラルフは僅かに躊躇ったものの、意を決したように窓枠を軽やかに越えて室内に滑り込んだ。
「どうしたのですか?こんな時間に…」
肩にショールを羽織り、ラルフをソファへと誘導するマリアンヌ。ラルフはソワソワしつつも導かれるがままにソフィに腰掛けた。マリアンヌも対面に座り、ラルフの言葉を待つ。
「…………あー、元気だったか?」
「?はい、それなりに過ごしております」
マリアンヌの返答に、ラルフは安心したようにほっと息を吐いた。
「そうか、その、シャーロットに何か嫌なことをされてはいないか?」
「ええ、大丈夫ですわ。お話をしてくださらないのが残念ですが、不必要なトラブルを控えるために、なるべく街や学園に出て王宮から離れて過ごしております」
「……不自由な思いをさせてすまない」
ラルフは膝の上に肘をつき、組んだ手で額を押さえるように俯いてしまった。ふわふわな耳まで垂らして、いつもの強気なラルフはどこに行ってしまったのかとマリアンヌは驚いた。
「どうしてラルフ様が謝るのですか?一番大変なのはラルフ様でしょう。疲れた顔をしておりますが、しっかり休めておりますか?」
すっかり参った様子のラルフに、マリアンヌは思わず身を乗り出してその頬に触れた。
一瞬びくりと肩を跳ねさせたラルフであるが、ゆっくりと顔を上げてマリアンヌを見つめる。金色の瞳にマリアンヌの心配そうな顔が写っている。
その瞳には疲労と共に慈悲の色も宿っていて、マリアンヌはちょっぴり自惚れた質問をしてみた。
「もしかして…私を心配して様子を見に来てくださったのですか?」
「……ああ。昼間はあいつの目が光っているからな。寝静まったことを確認して、抜け出して来た」
ことのほか素直に認めたラルフに驚きつつも、マリアンヌの胸はじんわりと暖かくなっていく。
「ふふ、お疲れなのにわざわざ来てくださったのですね。やっぱりラルフ様はお優しいですわ。ですがもっとご自身を労わってくださいね?いつも艶々と美しい毛並みが僅かに軋んでおりますわよ?」
「ははっ、お前は相変わらずだな。大丈夫だ、お前の顔を見たら少し元気が出た」
「あら、私の顔で良ければたっぷりご覧になってくださいな。ぐふふ、代わりにその愛らしいお耳を…」
「触らせんぞ」
「まあっ」
いつものやり取りをして、マリアンヌとラルフは同時に吹き出した。
ラルフは肩を震わせながら笑ったあと、フッと視線を落とした。
「まったく、シャーロットはどうすれば諦めて帰ってくれるんだ。毎日行く先々に現れて息が詰まりそうだ」
「そうですわね…ラルフ様が結婚相手を見つけたら彼女も納得されると思いますわよ?あら、ちょうど目の前にいいお相手がいるのではなくて?」
久々にラルフに会えて少し気持ちが浮ついていたマリアンヌは、うふふと頬に手を当てながら、これまた数度目となる冗談を口にした。いつもなら、すぐに否定の言葉が返ってくるのだが、その代わりに聞こえたのは盛大なため息だった。
「マリアンヌ」
「はい」
急に真面目な顔をして名前を呼ばれ、マリアンヌは慌てて居住まいを正した。お説教かしら?と少し胸がドキドキする。
「お前は獣人と結婚するのが夢なんだよな?」
「ええ!幼い頃からの夢であり、野望ですわっ!」
「お前は、『獣人』であれば誰でもいいのだろう?」
「そ、それは……」
――そうだろうか?
確かに、シーウッド海王国に居た頃は、とにかく獣人と結婚することだけを夢見てきた。結婚してくれるなら誰でもいいとさえ思っていたかもしれない。
だけれど、今は?
たくさんの獣人と知り合い、交友を重ね、関係を築いている今、果たしてマリアンヌは以前と同様に誰でもいいと考えているのだろうか――
思わず考え込んでしまったマリアンヌの頭をラルフがポンっと撫でた。
「そう考えている間は頷くことはできないな」
「え?」
どういうことかと首を傾げるも、ラルフは柔らかく目元を細めてマリアンヌを見つめるばかりである。
「さて、と。流石に夜も更けて来たし、部屋に戻る」
うーん、と伸びをしながら立ち上がったラルフが窓枠に腰掛け、マリアンヌも見送りのために窓辺に寄る。月光を浴びて、神秘的な光を纏うラルフはどこか大人びて見えた。
「こんな時間に押しかけてすまなかった」
「いえ!ちょうどラルフ様にお会いしたいと考えておりましたので、嬉しかったです」
ラルフの詫びの言葉に、マリアンヌはふるふると首を振って微笑んだ。マリアンヌの言葉と笑みに、ラルフはぐっと息を呑むと幾度目かの深いため息をついた。
「俺が言うのもなんだが…夜に男と二人きりになることは避けたほうがいいぞ。ましてや部屋に招き入れるなんて言語道断だ」
「まあ、確かにそうですわね。海底では幼馴染のアンドレとよく遊んでおりましたので…その感覚で、つい」
気まずげなラルフの指摘に、マリアンヌはハッと口元を押さえた。ラルフがそわそわしていたのはそういうことか。全く警戒していなかったマリアンヌであるが、流石に体裁が悪かったかと反省した。
「……アンドレ?」
その時呟かれた男の名前に、ラルフの耳がぴくりと反応した。
「幼馴染の魚人ですわ。子供の頃から姉弟のように過ごしておりましたので、よく二人で遊びに出かけたものです。……元気にしてるかしら」
ちょっぴり頼りない弟のようなアンドレを思い浮かべて、ふふふとマリアンヌは笑みを溢した。ラルフは面白くなさそうに舌打ちをすると、窓枠に腰掛けたまま器用にマリアンヌの腰を抱き寄せた。
「ひゃっ」
「……お前は本当に警戒心が足りないらしい。もっと男に気をつけることだ。もちろん、お前の目の前にいる俺だって立派な男なんだからな。覚えておけよ」
「へっ、あ、はい……っ」
鼻が触れそうな距離で、鋭い目に捉えられ、マリアンヌはぞくりと身を震わせた。ラルフはマリアンヌを解放すると、その手で波のように美しいマリンブルーの髪を一房掬い上げた。
そして毛束の先に唇を落とすと、「おやすみ」と言い残して軽やかに窓の外へと消えていった。
マリアンヌは何が起きたか理解が追いつかず、しばらくポカンと呆けていたが、ハッと我に返って慌てて窓から身を乗り出した。
既にラルフの姿はなく、熱くなった頬を心地よい夜風が優しく撫でていった。
海にいた頃、水面に揺蕩う月の影を見るのが好きだったが、地上で直接見上げる月も美しい。
流石にベッドに入るかと、遮光カーテンを閉めようとした時、コンコンと控えめに窓を叩く音がした。
マリアンヌは少し警戒しつつも、僅かに窓を開けて音の主を探り――目を見開いた。
「ら、ラルフ様…!?」
「しっ、静かに」
窓の外には、壁を背にしゃがみ込むラルフの姿があった。ちなみにマリアンヌが借りている部屋は一階である。
一体こんな夜更けにどうしたのかと疑問を抱くが、ともかく温暖な獣王国といえど夜風は冷える。マリアンヌは窓を大きく開けてラルフを部屋に招き入れた。
ラルフは僅かに躊躇ったものの、意を決したように窓枠を軽やかに越えて室内に滑り込んだ。
「どうしたのですか?こんな時間に…」
肩にショールを羽織り、ラルフをソファへと誘導するマリアンヌ。ラルフはソワソワしつつも導かれるがままにソフィに腰掛けた。マリアンヌも対面に座り、ラルフの言葉を待つ。
「…………あー、元気だったか?」
「?はい、それなりに過ごしております」
マリアンヌの返答に、ラルフは安心したようにほっと息を吐いた。
「そうか、その、シャーロットに何か嫌なことをされてはいないか?」
「ええ、大丈夫ですわ。お話をしてくださらないのが残念ですが、不必要なトラブルを控えるために、なるべく街や学園に出て王宮から離れて過ごしております」
「……不自由な思いをさせてすまない」
ラルフは膝の上に肘をつき、組んだ手で額を押さえるように俯いてしまった。ふわふわな耳まで垂らして、いつもの強気なラルフはどこに行ってしまったのかとマリアンヌは驚いた。
「どうしてラルフ様が謝るのですか?一番大変なのはラルフ様でしょう。疲れた顔をしておりますが、しっかり休めておりますか?」
すっかり参った様子のラルフに、マリアンヌは思わず身を乗り出してその頬に触れた。
一瞬びくりと肩を跳ねさせたラルフであるが、ゆっくりと顔を上げてマリアンヌを見つめる。金色の瞳にマリアンヌの心配そうな顔が写っている。
その瞳には疲労と共に慈悲の色も宿っていて、マリアンヌはちょっぴり自惚れた質問をしてみた。
「もしかして…私を心配して様子を見に来てくださったのですか?」
「……ああ。昼間はあいつの目が光っているからな。寝静まったことを確認して、抜け出して来た」
ことのほか素直に認めたラルフに驚きつつも、マリアンヌの胸はじんわりと暖かくなっていく。
「ふふ、お疲れなのにわざわざ来てくださったのですね。やっぱりラルフ様はお優しいですわ。ですがもっとご自身を労わってくださいね?いつも艶々と美しい毛並みが僅かに軋んでおりますわよ?」
「ははっ、お前は相変わらずだな。大丈夫だ、お前の顔を見たら少し元気が出た」
「あら、私の顔で良ければたっぷりご覧になってくださいな。ぐふふ、代わりにその愛らしいお耳を…」
「触らせんぞ」
「まあっ」
いつものやり取りをして、マリアンヌとラルフは同時に吹き出した。
ラルフは肩を震わせながら笑ったあと、フッと視線を落とした。
「まったく、シャーロットはどうすれば諦めて帰ってくれるんだ。毎日行く先々に現れて息が詰まりそうだ」
「そうですわね…ラルフ様が結婚相手を見つけたら彼女も納得されると思いますわよ?あら、ちょうど目の前にいいお相手がいるのではなくて?」
久々にラルフに会えて少し気持ちが浮ついていたマリアンヌは、うふふと頬に手を当てながら、これまた数度目となる冗談を口にした。いつもなら、すぐに否定の言葉が返ってくるのだが、その代わりに聞こえたのは盛大なため息だった。
「マリアンヌ」
「はい」
急に真面目な顔をして名前を呼ばれ、マリアンヌは慌てて居住まいを正した。お説教かしら?と少し胸がドキドキする。
「お前は獣人と結婚するのが夢なんだよな?」
「ええ!幼い頃からの夢であり、野望ですわっ!」
「お前は、『獣人』であれば誰でもいいのだろう?」
「そ、それは……」
――そうだろうか?
確かに、シーウッド海王国に居た頃は、とにかく獣人と結婚することだけを夢見てきた。結婚してくれるなら誰でもいいとさえ思っていたかもしれない。
だけれど、今は?
たくさんの獣人と知り合い、交友を重ね、関係を築いている今、果たしてマリアンヌは以前と同様に誰でもいいと考えているのだろうか――
思わず考え込んでしまったマリアンヌの頭をラルフがポンっと撫でた。
「そう考えている間は頷くことはできないな」
「え?」
どういうことかと首を傾げるも、ラルフは柔らかく目元を細めてマリアンヌを見つめるばかりである。
「さて、と。流石に夜も更けて来たし、部屋に戻る」
うーん、と伸びをしながら立ち上がったラルフが窓枠に腰掛け、マリアンヌも見送りのために窓辺に寄る。月光を浴びて、神秘的な光を纏うラルフはどこか大人びて見えた。
「こんな時間に押しかけてすまなかった」
「いえ!ちょうどラルフ様にお会いしたいと考えておりましたので、嬉しかったです」
ラルフの詫びの言葉に、マリアンヌはふるふると首を振って微笑んだ。マリアンヌの言葉と笑みに、ラルフはぐっと息を呑むと幾度目かの深いため息をついた。
「俺が言うのもなんだが…夜に男と二人きりになることは避けたほうがいいぞ。ましてや部屋に招き入れるなんて言語道断だ」
「まあ、確かにそうですわね。海底では幼馴染のアンドレとよく遊んでおりましたので…その感覚で、つい」
気まずげなラルフの指摘に、マリアンヌはハッと口元を押さえた。ラルフがそわそわしていたのはそういうことか。全く警戒していなかったマリアンヌであるが、流石に体裁が悪かったかと反省した。
「……アンドレ?」
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ちょっぴり頼りない弟のようなアンドレを思い浮かべて、ふふふとマリアンヌは笑みを溢した。ラルフは面白くなさそうに舌打ちをすると、窓枠に腰掛けたまま器用にマリアンヌの腰を抱き寄せた。
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「へっ、あ、はい……っ」
鼻が触れそうな距離で、鋭い目に捉えられ、マリアンヌはぞくりと身を震わせた。ラルフはマリアンヌを解放すると、その手で波のように美しいマリンブルーの髪を一房掬い上げた。
そして毛束の先に唇を落とすと、「おやすみ」と言い残して軽やかに窓の外へと消えていった。
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