32 / 43
第32話 シャーロット
しおりを挟む
「…何がおっしゃりたいのですか」
「いえ、別に?おほほほほ」
シャーロットの侮蔑の眼差しに臆することなくマリアンヌはずいと一歩足をを踏み出した。
――この視線には身に覚えがある。
初めての獣人の街で、獣人のならず者たちに絡まれた時。
獣王国立学園初等部でイーサンたちに水をかけられた時。
(この目は魚人を蔑み侮辱する目…その方もそうなのね)
シャーロットの見下すような目には嘲りの色が滲んでいる。何故だかめらりと対抗意識が芽生えたマリアンヌは負けじとシャーロットを睨み返す。睨み合う二人の鼻先はくっついてしまいそうなほど近い。
バチバチと二人の間に火花が散る。
「ごほん、二人とも、そこまでにしておくのじゃ」
張り詰めた空気に凛と響いたのは、王妃であるカミラの声だった。
「シャーロット、いつも言っておろう?お主はまだ婚約者ではないと。ラルフの気持ちがない婚約は、この国の王妃として、そして母親として認めるわけにはいかぬ。認めて欲しくばラルフの気持ちを傾けてみせよと申したであろう。そして、今回がその最後のチャンスであると」
「カミラ様…はぁ、分かりましたわ」
カミラに咎められ、シャーロットはため息をつきつつマリアンヌから離れた。だがその瞳には依然として獲物を狙うように細く眇められている。敵意丸出しである。
「ラルフ様に相応しいのはこの私を置いて他にはおりません。そのことをよーく分からせて差し上げますことよ!」
シャーロットは扇をビシリとマリアンヌに突きつけると、「ついていらっしゃい!」と肩で息をしながら扉付近で控えていたお付きの侍女達を引き連れて颯爽と食堂を出て行った。
その後ろ姿を見送ると、カミラは深くため息をつくと王宮のメイドに「いつもの部屋の手配を」と指示を出した。
指示を受けたメイドは、お辞儀をすると素早く食堂を後にした。
嵐が過ぎ去ったかのようにシンと静まり返る中、カミラが大きく溜息をついた。
「すまんな、マリアンヌと言ったか。お主も少し残って話を聞いていくとよい」
「はぁ…かしこまりましたわ」
カミラがちょいちょいと椅子を指差し、ラルフやシェリル、レナード王も顔を見合わせると、肺に溜まっていた空気を吐き出すように深く溜息をついて、一様にドカッと各自の席についた。マリアンヌも続いて席に着くと、いつの間にかレナード王の隣に用意されていた椅子にカミラも腰をかけた。
「母上、一体どういうことなのでしょう?」
「そうだぞ、カミラ。事情を説明してくれ」
すっかり疲れた顔をした男性陣がカミラに尋ねる。
「ふむ、今回の訪問先がの…シャーロットのおる隣国オアシェストで、妾は滞在中シャーロットの実家に世話になっておったのじゃ」
「王家所有の宿があっただろうに…はぁ、なるほど。あの家の者たちは中々に強引だからな」
カミラの話に、ことの次第を理解した様子のレナード王はぐったりと背もたれにもたれかかっている。
「その通りじゃ。どうしても妾の世話をすると言って聞かんかったのでな、こちらが折れたのじゃよ。はぁ…滞在中毎日毎日シャーロットにラルフとの婚約を嘆願されてなあ…断っても聞きもせん。仕方なしにラルフ本人に委ねようと連れ帰ったというわけじゃ」
「ぐぅ…なんと迷惑な奴なんだ」
今度はラルフが頭を抱えるようにテーブルに突っ伏してしまった。
カミラはパタンと扇子を閉じると、マリアンヌをまっすぐ見つめた。美しくも力強い眼に見据えられ、マリアンヌの背筋も自然とピンと伸びる。
「あの者は妾の遠縁の娘でな。昔から詳しく知ろうともせんくせに魚人差別が甚だしい。不快な気分にさせたであろう。すまなかった」
「いえ…獣人の中には私たちを快く思っていない方がいらっしゃることは重々承知しておりますので…」
マリアンヌの言葉に、カミラは一瞬辛そうに眉間に皺を寄せた。それを見逃さなかったマリアンヌは、気になっていたことを尋ねようとした。
「王妃殿下は…その」
『魚人のことをどう思っているのか』
マリアンヌの言葉を待たずに、言わんとすることを察したカミラは再び扇子を開いて口元を隠した。
「妾か?妾はむしろ…ごほん、いや、なんでもない。そうじゃな、獣人と魚人はもっと歩み寄るべきだと考えておるよ」
少し口籠ったものの、前向きな返答を受けてマリアンヌの表情はパァッと華やいだ。
「それで、どうするんですか?シャーロットのことは」
テーブルに突っ伏していたラルフが僅かに顔を上げてカミラに問いかける。
「妾がシャーロットに課したのはただ一つ。ラルフの気持ちを傾けてみせよ、ということじゃ。先ほども言うたが、妾もレナードもお前が望まぬ婚姻は結ぶつもりはない。ラルフが惹かれ、生涯共にしたいと思うた女子を未来の王妃に迎えたいのじゃよ」
「母上……」
「それに…ふふふ、全くその気がなくて心配しておったが、妾が留守にしている間に何やら気持ちの変化があったようじゃしのう?ラルフや」
「なっ、ななっ、なんのことでしょう」
楽しそうに目を細めるカミラは、笑みを深めながらラルフと、そして何故かマリアンヌを見比べている。
顔を真っ赤にして目を泳がせるラルフに対し、要領を得ないマリアンヌは目をぱちくり瞬いた。
「ラルフ、自分の気持ちには素直になることじゃ。失ってから後悔しても遅いのじゃぞ?それにどうやら随分と鈍感な様子じゃし、ここはラルフが積極的にアプローチを…」
「はっ、母上っ、その話はまた別の機会に…」
「なんじゃあ?照れておるのか?可愛いやつめ」
「ぐぅぅ…」
すっかりカミラに振り回されているラルフであるが、母子の関係が目に見えて、ちょっぴり嬉しいマリアンヌである。
(ラルフ様ったら、お母様の前ではこんな感じなのですね。うふふふふ、獣人親子、素敵だわぁ……ぐふ、ぐふふ)
思わず、にへらっと口元が緩んでしまう。
「うん?どうしマリアンヌ、おかしな顔をして」
「ああ…いつものことだから気にしないでください」
カミラが首を傾げ、ラルフが呆れ顔で説明をするがあまりにぞんざいな説明ではなかろうか。
マリアンヌはこほんと咳払いをしてキリッと表情を引き締める。
「ふむ?ともかくラルフにその気がないならば、シャーロットを諦めさせることじゃ。あやつは中々にしぶとい。これを機にしっかり向き合ってみるのじゃな」
「………はぁ、分かりました」
諦めたようにがくりと肩を落としたラルフの背中は、どこか哀愁が漂っていた。
これからますます騒がしい日々になりそうだと、マリアンヌも気が引き締まる思いであった。
「いえ、別に?おほほほほ」
シャーロットの侮蔑の眼差しに臆することなくマリアンヌはずいと一歩足をを踏み出した。
――この視線には身に覚えがある。
初めての獣人の街で、獣人のならず者たちに絡まれた時。
獣王国立学園初等部でイーサンたちに水をかけられた時。
(この目は魚人を蔑み侮辱する目…その方もそうなのね)
シャーロットの見下すような目には嘲りの色が滲んでいる。何故だかめらりと対抗意識が芽生えたマリアンヌは負けじとシャーロットを睨み返す。睨み合う二人の鼻先はくっついてしまいそうなほど近い。
バチバチと二人の間に火花が散る。
「ごほん、二人とも、そこまでにしておくのじゃ」
張り詰めた空気に凛と響いたのは、王妃であるカミラの声だった。
「シャーロット、いつも言っておろう?お主はまだ婚約者ではないと。ラルフの気持ちがない婚約は、この国の王妃として、そして母親として認めるわけにはいかぬ。認めて欲しくばラルフの気持ちを傾けてみせよと申したであろう。そして、今回がその最後のチャンスであると」
「カミラ様…はぁ、分かりましたわ」
カミラに咎められ、シャーロットはため息をつきつつマリアンヌから離れた。だがその瞳には依然として獲物を狙うように細く眇められている。敵意丸出しである。
「ラルフ様に相応しいのはこの私を置いて他にはおりません。そのことをよーく分からせて差し上げますことよ!」
シャーロットは扇をビシリとマリアンヌに突きつけると、「ついていらっしゃい!」と肩で息をしながら扉付近で控えていたお付きの侍女達を引き連れて颯爽と食堂を出て行った。
その後ろ姿を見送ると、カミラは深くため息をつくと王宮のメイドに「いつもの部屋の手配を」と指示を出した。
指示を受けたメイドは、お辞儀をすると素早く食堂を後にした。
嵐が過ぎ去ったかのようにシンと静まり返る中、カミラが大きく溜息をついた。
「すまんな、マリアンヌと言ったか。お主も少し残って話を聞いていくとよい」
「はぁ…かしこまりましたわ」
カミラがちょいちょいと椅子を指差し、ラルフやシェリル、レナード王も顔を見合わせると、肺に溜まっていた空気を吐き出すように深く溜息をついて、一様にドカッと各自の席についた。マリアンヌも続いて席に着くと、いつの間にかレナード王の隣に用意されていた椅子にカミラも腰をかけた。
「母上、一体どういうことなのでしょう?」
「そうだぞ、カミラ。事情を説明してくれ」
すっかり疲れた顔をした男性陣がカミラに尋ねる。
「ふむ、今回の訪問先がの…シャーロットのおる隣国オアシェストで、妾は滞在中シャーロットの実家に世話になっておったのじゃ」
「王家所有の宿があっただろうに…はぁ、なるほど。あの家の者たちは中々に強引だからな」
カミラの話に、ことの次第を理解した様子のレナード王はぐったりと背もたれにもたれかかっている。
「その通りじゃ。どうしても妾の世話をすると言って聞かんかったのでな、こちらが折れたのじゃよ。はぁ…滞在中毎日毎日シャーロットにラルフとの婚約を嘆願されてなあ…断っても聞きもせん。仕方なしにラルフ本人に委ねようと連れ帰ったというわけじゃ」
「ぐぅ…なんと迷惑な奴なんだ」
今度はラルフが頭を抱えるようにテーブルに突っ伏してしまった。
カミラはパタンと扇子を閉じると、マリアンヌをまっすぐ見つめた。美しくも力強い眼に見据えられ、マリアンヌの背筋も自然とピンと伸びる。
「あの者は妾の遠縁の娘でな。昔から詳しく知ろうともせんくせに魚人差別が甚だしい。不快な気分にさせたであろう。すまなかった」
「いえ…獣人の中には私たちを快く思っていない方がいらっしゃることは重々承知しておりますので…」
マリアンヌの言葉に、カミラは一瞬辛そうに眉間に皺を寄せた。それを見逃さなかったマリアンヌは、気になっていたことを尋ねようとした。
「王妃殿下は…その」
『魚人のことをどう思っているのか』
マリアンヌの言葉を待たずに、言わんとすることを察したカミラは再び扇子を開いて口元を隠した。
「妾か?妾はむしろ…ごほん、いや、なんでもない。そうじゃな、獣人と魚人はもっと歩み寄るべきだと考えておるよ」
少し口籠ったものの、前向きな返答を受けてマリアンヌの表情はパァッと華やいだ。
「それで、どうするんですか?シャーロットのことは」
テーブルに突っ伏していたラルフが僅かに顔を上げてカミラに問いかける。
「妾がシャーロットに課したのはただ一つ。ラルフの気持ちを傾けてみせよ、ということじゃ。先ほども言うたが、妾もレナードもお前が望まぬ婚姻は結ぶつもりはない。ラルフが惹かれ、生涯共にしたいと思うた女子を未来の王妃に迎えたいのじゃよ」
「母上……」
「それに…ふふふ、全くその気がなくて心配しておったが、妾が留守にしている間に何やら気持ちの変化があったようじゃしのう?ラルフや」
「なっ、ななっ、なんのことでしょう」
楽しそうに目を細めるカミラは、笑みを深めながらラルフと、そして何故かマリアンヌを見比べている。
顔を真っ赤にして目を泳がせるラルフに対し、要領を得ないマリアンヌは目をぱちくり瞬いた。
「ラルフ、自分の気持ちには素直になることじゃ。失ってから後悔しても遅いのじゃぞ?それにどうやら随分と鈍感な様子じゃし、ここはラルフが積極的にアプローチを…」
「はっ、母上っ、その話はまた別の機会に…」
「なんじゃあ?照れておるのか?可愛いやつめ」
「ぐぅぅ…」
すっかりカミラに振り回されているラルフであるが、母子の関係が目に見えて、ちょっぴり嬉しいマリアンヌである。
(ラルフ様ったら、お母様の前ではこんな感じなのですね。うふふふふ、獣人親子、素敵だわぁ……ぐふ、ぐふふ)
思わず、にへらっと口元が緩んでしまう。
「うん?どうしマリアンヌ、おかしな顔をして」
「ああ…いつものことだから気にしないでください」
カミラが首を傾げ、ラルフが呆れ顔で説明をするがあまりにぞんざいな説明ではなかろうか。
マリアンヌはこほんと咳払いをしてキリッと表情を引き締める。
「ふむ?ともかくラルフにその気がないならば、シャーロットを諦めさせることじゃ。あやつは中々にしぶとい。これを機にしっかり向き合ってみるのじゃな」
「………はぁ、分かりました」
諦めたようにがくりと肩を落としたラルフの背中は、どこか哀愁が漂っていた。
これからますます騒がしい日々になりそうだと、マリアンヌも気が引き締まる思いであった。
10
お気に入りに追加
119
あなたにおすすめの小説

一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活
ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。
「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」
そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢!
そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。
「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」
しかも相手は名門貴族の旦那様。
「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。
◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用!
◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化!
◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!?
「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」
そんな中、旦那様から突然の告白――
「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」
えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!?
「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、
「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。
お互いの本当の気持ちに気づいたとき、
気づけば 最強夫婦 になっていました――!
のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!
音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。
愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。
「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。
ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。
「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」
従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる