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第2話 獣王国への行き方は
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「ん~~~っ!!ようやく地上へ行けるのね…!!最高の気分だわっ!」
マリンブルーの艶やかな髪を海流に靡かせ、珊瑚のような美しいピンクゴールドの瞳はこれから待ち受ける輝かしい未来への期待に満ち満ちている。
彼女の名前はマリアンヌ・セイレーン。魚人の国の第七皇女だ。
三人の兄に、六人の姉、そして双子の弟がいる大家族でたくさんの愛を注がれて育った。国王である父は優しく、母も慈愛に満ちており、とても幸せな幼少期を過ごした。
だが、マリアンヌにはどうしても叶えたい夢があった。それは、獣人と結婚して毎日その耳や尻尾のもふもふを堪能して生きること。
魚人と獣人の関係には距離があり、ほとんど交流を持たない種族であるのだが、そんなことマリアンヌには関係なかった。良き殿方を見つけて必ず夢を叶えるのだ!!とそれだけを考え、意気込んでいる。
魚人と獣人はそれぞれ海洋類と哺乳動物より加護を受ける種族である。例えば、マリアンヌの父であるトリスタンは、シロナガスクジラの加護を、母のオリビアはマナティの加護を受けている。加護を受けることで、その動物たちの能力を借り受けることができる。
もちろんマリアンヌもとある海洋生物の加護を受けており、お陰でその泳力は国随一のものであった。
「あぁ、もうすぐよ…!」
海面から差し込む太陽の光に目を細めながら、マリアンヌはとうとう海中の国から地上へと飛び出したのだ。
「すごい…すごいわ…!」
見渡す限り大海原で、海鳥たちが餌を求めて海面近くに群れをなしている。
「さて、とにかく陸に上がらないとね」
マリアンヌは幼少期から読書に親しんでいたし、皇女としての教育も受けていたため、一通りの教養は身についていた。もちろん地理もある程度把握しているため、記憶を頼りに南へと泳いでいく。確か、さほど遠くない位置にナマリと言う港町があるはずだ。
「港町からサバン獣王国へは少し遠いけど…まぁ、何とかなるでしょ!」
基本的に前向きなマリアンヌは、鼻歌を歌いながら泳ぎを進め、まもなく港町へと到達した。海岸にはたくさんの漁船が停泊している。
マリアンヌは人目を避けて入江に入り込む。
魚人も地上の国々との交流を持つようになり、地上で暮らす者もここ数年で急増している。そのため、人前で陸地に上がることに問題はないのだが、やはり初上陸なために、人目を気にしてしまう。
キョロキョロ辺りを見回し人が居ないことを確認すると、ゆっくりと海から出て地面を踏み締める。
おとぎ話の人魚姫の時代から、魚人は進化を遂げている。魚人特有の鰭は、地上に上がると人間の脚へとその姿を変容させる。そしてその鱗は服となり魚人の身体を包み込むのだ。
水から出たマリアンヌの美しい尾鰭は、瞬く間に二本の華奢な脚へと姿を変えた。鱗はマリンブルーのワンピースとなり、マリアンヌの身体を包み込んだ。ちなみに再び海に潜れば、ワンピースや脚は尾鰭と鱗に戻る。魚人特有の能力である。
「おっととと、よしよし。上々じゃない」
マリアンヌは数歩歩いて感覚を掴むと、ぴょんぴょんとその場でジャンプした。成人の日を迎えたら、マリアンヌのように地上へ繰り出す魚人も少なくはないため、幼い頃から何度か安全な王国所有の島を利用して、歩行訓練がなされている。マリアンヌはその訓練に人一倍気合を入れて臨んでいた。その甲斐もあり、歩行に関しては大きな問題は無さそうだ。
「さて、さっそく町へ行って、もふもふの国…じゃなくてサバン獣王国へのルートを確認しなくちゃね」
マリアンヌは貝の形を模したショルダーバッグを開き、中身を確認した。この日のために貯めたお小遣い、オリビアから貰ったハンカチに大好物のお菓子がチラホラ。必要なものは地上で買い足せばいいので持ち物は最小限だ。
マリアンヌはそっと胸元のペンダントに手を当てる。ふわりと温かな風に包まれて瞬く間に全身が乾いていく。
この魔力の込められたペンダントは幼い頃からのお守りであった。危険が身に迫ったら守ってくれるらしいのだが、大抵のことは自分でなんとかしてきたマリアンヌはその恩恵に預かったことはない。温かい風を生み出す効果の方がもっぱら有益であった。
それからマリアンヌは、しっかりとした足取りで町の停船所へと向かった。港町だけあり、漁港には水揚げされたばかりの魚が所狭しと並んでいる。魚人としては少々心が痛む光景ではあるのだが、海の幸を提供する協定を結んでいるためマリアンヌが口出しできることではない。
客船の時刻表を確認すると、すぐにサバン獣王国行きの便を見つけた。
「あったわ!…んんん、ここからだと海路で三日もかかるのね」
他の国を経由しての船便しかないようで、最短でも三日の船旅になるようだ。
「そうだわ!陸路はどうかしら…ダメね、こっちは五日もかかるわ」
妙案だと思ったのだがすぐにボツである。陸路は馬車になるのだが、宿場町を転々として五日もかかる様子だ。
一分一秒でも早く獣王国に行きたいマリアンヌは、早速出鼻をくじかれてしまった。
確か、マリアンヌが読んだ本では客船は時速二十七キロ程で運航していたはずだ。サバン獣王国までの海路は千五百キロ程なはず。真っ直ぐ向かえば二日半ほどで到着すると思うのだが、途中でいくつか港に寄って燃料の補給や客の出入りがあるため日数がかかってしまうようだ。乗り物は便利なようで様々な制限があり不便だな、と思うマリアンヌである。
その時、ぴーんとマリアンヌの頭の中で豆電球が灯った。
「そうだわ!!船も馬車も遅いなら泳いでいけばいいのよ!」
最初からそうすればよかったのだ。マリアンヌは毎日海を遊泳してきた。マリアンヌが加護を受けている海獣の影響もあり、泳力には自信がある。その上、万一のために特訓を重ね、時速五十キロで一日は泳ぎ続けられるようになっていた。トップスピードはもう少し出せるが、持続させるとなると時速五十キロが限度だった。少し過酷だが、一日半もあれば泳ぎ切ることができそうだ。
「途中でお魚さんやイルカたちに抜け道を聞けばもっと距離を短縮できるかもしれないわね…」
船は大きいのでルートを選ぶ。だが、マリアンヌ1人だと小回りが効くので入り組んだ場所でもススイのスイだ。
そうと決まれば行動あるのみ。マリアンヌは入江に引き返すと、綺麗なフォームで頭から海へと飛び込んだ。瞬く間に脚とワンピースが尾鰭と鱗へと変わる。力強く尾鰭で海面を叩くと大きな水飛沫を立てて勢いよく潜水した。
「うふふふふ~待っててね私のまだ見ぬ王子様~!今会いに行きますわ~!!」
マリアンヌは鼻歌を歌いながらぐんぐんスピードを上げて、サバン獣王国を目指して泳ぎを進めた。
マリンブルーの艶やかな髪を海流に靡かせ、珊瑚のような美しいピンクゴールドの瞳はこれから待ち受ける輝かしい未来への期待に満ち満ちている。
彼女の名前はマリアンヌ・セイレーン。魚人の国の第七皇女だ。
三人の兄に、六人の姉、そして双子の弟がいる大家族でたくさんの愛を注がれて育った。国王である父は優しく、母も慈愛に満ちており、とても幸せな幼少期を過ごした。
だが、マリアンヌにはどうしても叶えたい夢があった。それは、獣人と結婚して毎日その耳や尻尾のもふもふを堪能して生きること。
魚人と獣人の関係には距離があり、ほとんど交流を持たない種族であるのだが、そんなことマリアンヌには関係なかった。良き殿方を見つけて必ず夢を叶えるのだ!!とそれだけを考え、意気込んでいる。
魚人と獣人はそれぞれ海洋類と哺乳動物より加護を受ける種族である。例えば、マリアンヌの父であるトリスタンは、シロナガスクジラの加護を、母のオリビアはマナティの加護を受けている。加護を受けることで、その動物たちの能力を借り受けることができる。
もちろんマリアンヌもとある海洋生物の加護を受けており、お陰でその泳力は国随一のものであった。
「あぁ、もうすぐよ…!」
海面から差し込む太陽の光に目を細めながら、マリアンヌはとうとう海中の国から地上へと飛び出したのだ。
「すごい…すごいわ…!」
見渡す限り大海原で、海鳥たちが餌を求めて海面近くに群れをなしている。
「さて、とにかく陸に上がらないとね」
マリアンヌは幼少期から読書に親しんでいたし、皇女としての教育も受けていたため、一通りの教養は身についていた。もちろん地理もある程度把握しているため、記憶を頼りに南へと泳いでいく。確か、さほど遠くない位置にナマリと言う港町があるはずだ。
「港町からサバン獣王国へは少し遠いけど…まぁ、何とかなるでしょ!」
基本的に前向きなマリアンヌは、鼻歌を歌いながら泳ぎを進め、まもなく港町へと到達した。海岸にはたくさんの漁船が停泊している。
マリアンヌは人目を避けて入江に入り込む。
魚人も地上の国々との交流を持つようになり、地上で暮らす者もここ数年で急増している。そのため、人前で陸地に上がることに問題はないのだが、やはり初上陸なために、人目を気にしてしまう。
キョロキョロ辺りを見回し人が居ないことを確認すると、ゆっくりと海から出て地面を踏み締める。
おとぎ話の人魚姫の時代から、魚人は進化を遂げている。魚人特有の鰭は、地上に上がると人間の脚へとその姿を変容させる。そしてその鱗は服となり魚人の身体を包み込むのだ。
水から出たマリアンヌの美しい尾鰭は、瞬く間に二本の華奢な脚へと姿を変えた。鱗はマリンブルーのワンピースとなり、マリアンヌの身体を包み込んだ。ちなみに再び海に潜れば、ワンピースや脚は尾鰭と鱗に戻る。魚人特有の能力である。
「おっととと、よしよし。上々じゃない」
マリアンヌは数歩歩いて感覚を掴むと、ぴょんぴょんとその場でジャンプした。成人の日を迎えたら、マリアンヌのように地上へ繰り出す魚人も少なくはないため、幼い頃から何度か安全な王国所有の島を利用して、歩行訓練がなされている。マリアンヌはその訓練に人一倍気合を入れて臨んでいた。その甲斐もあり、歩行に関しては大きな問題は無さそうだ。
「さて、さっそく町へ行って、もふもふの国…じゃなくてサバン獣王国へのルートを確認しなくちゃね」
マリアンヌは貝の形を模したショルダーバッグを開き、中身を確認した。この日のために貯めたお小遣い、オリビアから貰ったハンカチに大好物のお菓子がチラホラ。必要なものは地上で買い足せばいいので持ち物は最小限だ。
マリアンヌはそっと胸元のペンダントに手を当てる。ふわりと温かな風に包まれて瞬く間に全身が乾いていく。
この魔力の込められたペンダントは幼い頃からのお守りであった。危険が身に迫ったら守ってくれるらしいのだが、大抵のことは自分でなんとかしてきたマリアンヌはその恩恵に預かったことはない。温かい風を生み出す効果の方がもっぱら有益であった。
それからマリアンヌは、しっかりとした足取りで町の停船所へと向かった。港町だけあり、漁港には水揚げされたばかりの魚が所狭しと並んでいる。魚人としては少々心が痛む光景ではあるのだが、海の幸を提供する協定を結んでいるためマリアンヌが口出しできることではない。
客船の時刻表を確認すると、すぐにサバン獣王国行きの便を見つけた。
「あったわ!…んんん、ここからだと海路で三日もかかるのね」
他の国を経由しての船便しかないようで、最短でも三日の船旅になるようだ。
「そうだわ!陸路はどうかしら…ダメね、こっちは五日もかかるわ」
妙案だと思ったのだがすぐにボツである。陸路は馬車になるのだが、宿場町を転々として五日もかかる様子だ。
一分一秒でも早く獣王国に行きたいマリアンヌは、早速出鼻をくじかれてしまった。
確か、マリアンヌが読んだ本では客船は時速二十七キロ程で運航していたはずだ。サバン獣王国までの海路は千五百キロ程なはず。真っ直ぐ向かえば二日半ほどで到着すると思うのだが、途中でいくつか港に寄って燃料の補給や客の出入りがあるため日数がかかってしまうようだ。乗り物は便利なようで様々な制限があり不便だな、と思うマリアンヌである。
その時、ぴーんとマリアンヌの頭の中で豆電球が灯った。
「そうだわ!!船も馬車も遅いなら泳いでいけばいいのよ!」
最初からそうすればよかったのだ。マリアンヌは毎日海を遊泳してきた。マリアンヌが加護を受けている海獣の影響もあり、泳力には自信がある。その上、万一のために特訓を重ね、時速五十キロで一日は泳ぎ続けられるようになっていた。トップスピードはもう少し出せるが、持続させるとなると時速五十キロが限度だった。少し過酷だが、一日半もあれば泳ぎ切ることができそうだ。
「途中でお魚さんやイルカたちに抜け道を聞けばもっと距離を短縮できるかもしれないわね…」
船は大きいのでルートを選ぶ。だが、マリアンヌ1人だと小回りが効くので入り組んだ場所でもススイのスイだ。
そうと決まれば行動あるのみ。マリアンヌは入江に引き返すと、綺麗なフォームで頭から海へと飛び込んだ。瞬く間に脚とワンピースが尾鰭と鱗へと変わる。力強く尾鰭で海面を叩くと大きな水飛沫を立てて勢いよく潜水した。
「うふふふふ~待っててね私のまだ見ぬ王子様~!今会いに行きますわ~!!」
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