【完結】討伐対象の魔王が可愛い幼子だったので魔界に残ってお世話します!〜力を搾取され続けた聖女は幼子魔王を溺愛し、やがて溺愛される〜

水都 ミナト

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閑話 深夜の緊急会議⑦

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「そうかそうか。声変わりをなされたか」
「声変わり後に初めて話しかけていただいた時はたまげたのう。少し恥ずかしそうにされているお姿を見て、全身の骨が弾け飛んだわい」
「うふふ、声変わり前は可愛らしい少年の声だったけど、すっかり男の声になったわよねえ。ちょっと低くて重厚感があって……あの声で囁かれたらアリエッタちゃんもイチコロじゃないかしらあ」

 第二次成長期に入ってから、深夜に不定期に行われていた緊急会議は進捗報告会となり、定期的に開催されるようになった。ルイスの些細な変化まで家臣一同が共通認識を持っておくことで、有事の際に迅速にフォローできるようにしておくのだ。

「ええ。アリエッタ殿との些細なすれ違いもすぐに解消され、二人の仲はより一層深まったのではないでしょうか」
「いやーん!」
「ミーシャ、うるさいぞ」
「いいじゃないのよう。マルディラムだって応援しているくせに」
「それとこれとは話は別だ」

 ――そしてもう一つ。ルイスとアリエッタの関係を温かく見守る会としての場も兼ねている。

「そういえば、ルイス様が贈られた指輪は毎日つけておるのか?」

 ルイスがアリエッタに贈った指輪。
 ルイスの魔力が込められた小さな魔石が嵌め込まれ、アリエッタの危機にその身を守る効果を有している。

「ええ、つけているようですよ」
「そうか。準備をお手伝いした甲斐があったというものじゃの」

 カロンが満足げに頷いているが、実はルイスが用意した指輪は、カロンが管理する品々の中から選りすぐったものである。魔石の色や魔力の注入をサポートし、ピカピカに指輪を磨き上げた。

「指輪が欲しいとおっしゃられたときは驚きましたが、素敵な一品に仕上がって本当に良かったです」

 ウェインも一生懸命アリエッタのために指輪の準備をするルイスの様子を思い出し、優しく目を細めている。

「それにしても、指輪を贈るなんて、ルイス様もやるわよねえ」
「アリエッタに見せてもらったが、魔石は金色に輝いていた」
「やだあ! ルイス様の瞳の色じゃない! きゃー!」
「ミーシャ、うるさいぞ」

 いちいち過剰に反応するミーシャを毎度マルディラムが嗜めている。すっかり慣れ親しんだ光景に、他の面々も反応しなくなっている。

「さて、声変わりも迎えられ、これからはより一層繊細な時期となります。ルイス様はアリエッタ殿への純粋な好意をお認めになられています。ですが、これからは異性としてより一層アリエッタ殿をお求めになるようになるでしょう。ご自身でも持て余すほどの感情に戸惑われることもあるかもしれません。我らが主君が何か思い悩まれているなと感じた際は、お話を聞いて差し上げましょう」
「ううむ……じゃが、アリエッタと違って我らはルイス様の忠実なる僕。家臣が主人の悩み事に踏み入っても良いものじゃろうか」

 前向きに二人を支える気持ちは強いが、忠誠心の強いカロンは、どうしてもルイスとの関係に一線を引いてしまうのだ。

「ルイス様はきっと、気さくな関係をお望みですよ」
「むうう。ぜ、善処しよう」

 歴代の魔王に代々使える側近の面々は、これまで魔王に対しては必要以上に踏み込まず、一定の距離感を保って仕えてきた。それが当たり前だったし、疑問に思うこともなかったからだ。

 そんな魔王と側近の関係を変えたのも、アリエッタの存在である。
 アリエッタに心を砕く様子を近くで見ていると、どうしてもルイスと気安い仲になりたいという欲が芽生えてしまう。今までずっと、陰ながら支えることができればいいと思っていたのに、無邪気な笑みを向けられると、親にも似た感情を抱いてしまう。

「私は今の家族みたいな関係が気に入っているわよ」
「某もだ」
「そ、そりゃ、もちろんワシもじゃが……」

 伝統や慣習も大切ではあるが、変化を柔軟に受け止めることも必要ではなかろうか。ルイスを支える家臣にも良き変化が見られることに、ウェインは密かに笑みを深めた。


 こうして、和やかな空気のまま夜は更けていった。
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