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閑話 深夜の緊急会議⑤
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「なんですってえ⁉︎」
アリエッタを送り届けた後、ウェインは他の側近たちを招集した。
ミーシャは「寝るところだったのに」とぶちぶち不満を垂れつつも、ちゃっかりウェインの隣の席をキープしていた。
そんな中ウェインが語ったのは、先ほどフェリックスが発熱し、アリエッタが治癒した顛末である。そして疲労が見られる彼女に明日一日休みを与えたことも伝えた。
「それで、明日はあなたがルイス様のお世話を? 一日? 羨ましいっ!」
果たしてどちらが羨ましいのやら。
この中で唯一、ミーシャの秘めた想いを知っているマルディラムが内心ほくそ笑む。表情に出してはミーシャに睨まれるが、マルディラムには顔がない。こういう時は顔がなくてよかったと思うマルディラムである。
「何を言いますか。アリエッタ殿が来るまでは私がルイス様の世話係だったでしょうに。それよりも、本日話したいことはこちらについてです」
呆れ顔のウェインは、黒い壁にカッカッと議題を記していく。
『アリエッタの休日』
「彼女が魔界に来て、早くも半年以上が経過しています。ルイス様の第一次成長期も終え、彼女のおかげで我らが主人は明るく健やかに成長されております。内気で消極的な一面があったことが嘘のようです。そんな功労者であるアリエッタ殿にしっかりと休息を取っていただきたいと思っているのは、私だけではないかと思うのですが?」
「そ、そおねえ」
「うむ、異論はない」
「そうじゃのお、強いて言えばじゃがの!」
ウェインにニッコリ微笑みかけられ、三人は照れ隠しに強気な言い方をする。そのことがおかしくて、ウェインは密かに笑みを深めた。
「そういうことならあ……私、アリエッタちゃんの服をもっと作りたいと思っていたのよね。いい機会だから明日色々リサーチしてみようかしら」
「某はアリエッタの好きな菓子をたくさん作ってアフタヌーンティーセットでもこしらえてやろうぞ」
「ふむう、小娘の部屋は殺風景じゃからの。今は使っていない城の装飾品で気にいるものがあるのなら一つぐらい譲ってやらんでもない」
三人はソワソワ気恥ずかしそうにしながらも、それぞれ出来うることを挙げていく。
「素晴らしいです。きっとどれも喜ばれるでしょう。明日はルイス様のお世話のことは一旦忘れていただいて、是非とも羽を伸ばしていただけるよう尽力いたしましょう」
ウェインの言葉に、一同はどこか嬉しそうに頷いた。アリエッタは大事な仲間であり、家族であるとみんながそう思っている。
そんなアリエッタを労わることもまた、一同にとって嬉しく誇らしいことなのだ。
「というわけで、明日はどうぞよろしくお願いしますね」
「まっかせといてえ」
「ガッテン承知」
「仕方がないのう」
三人は明日の準備のためにそれぞれの目的地へと散り散りに去っていった。
一人残ったウェインは、再びルイスの部屋へと足を運んだ。
すっかり熱も引いて静かに眠るフェリックスの頭を撫でると、僅かに喉を鳴らして気持ちよさそうに頭を擦り付けてくる。ルイスも安心し切った顔でフェリックスの前足を優しく握ったままスヤスヤと寝息を立てている。
フッと頬を緩ませながら、今日のアリエッタの治療を思い返す。
フェリックスの症状は、魔物の子供でも稀に起こす症状であった。大抵は魔法の行使により魔力を発散させて均衡を保つのだが、アリエッタは直接フェリックスの魔力に干渉して過剰な分を吸い出してしまった。
その場では表情を崩さなかったウェインであるが、内心大いに驚いていた。
何せ、そのような治療法は初めて見たのだから。
流石に疲労の色が見えたが、他者の魔力に干渉するなど誰にでもできることではない。
そもそもアリエッタは全属性魔法を全て同じ高水準で使用できる上、光魔法までも使える稀有な存在なのだ。人間界にいた頃は、些細な怪我の患者がひっきりなしに訪ねてきては治癒の力を求めたという。
力を搾取されていたとこぼしていたが、ウェインはそれだけではないと感じていた。きっと、アリエッタの真価を感じ取った国王が、アリエッタを閉じ込めておくために神殿に押し込んだのだ。
ウェインはアリエッタと同じ力を持つ人間をただ一人だけ知っていた。
世界が未だ分たれていなかった時代、彼女は当時の『聖女』と呼ばれていた。争いの時代の最中、魔王を討ち滅ぼすべく軍隊の先頭に立ち、その手腕を振るっていた。
魔王と聖女。
相対する二人が戦場で出会えば戦闘は不可避であり、大衆の目前で何度も火花を散らしていた。
が、それは表向きの姿。
実際のところ、初代魔王と聖女は良き友人であった。
「本当に、あの子はよく似ていますね」
第一次成長期を終え、成人へとまた一歩近づいたルイス。成人の儀を終えた時、これまでの魔王としての力と記憶を取り戻す。
「さて、私は見守ることしかできませんが、あなたの選択ならどのようなものであれ従いますよ」
サラリとルイスの漆黒の艶髪をひと撫でし、ウェインは静かにルイスの部屋を後にした。
アリエッタを送り届けた後、ウェインは他の側近たちを招集した。
ミーシャは「寝るところだったのに」とぶちぶち不満を垂れつつも、ちゃっかりウェインの隣の席をキープしていた。
そんな中ウェインが語ったのは、先ほどフェリックスが発熱し、アリエッタが治癒した顛末である。そして疲労が見られる彼女に明日一日休みを与えたことも伝えた。
「それで、明日はあなたがルイス様のお世話を? 一日? 羨ましいっ!」
果たしてどちらが羨ましいのやら。
この中で唯一、ミーシャの秘めた想いを知っているマルディラムが内心ほくそ笑む。表情に出してはミーシャに睨まれるが、マルディラムには顔がない。こういう時は顔がなくてよかったと思うマルディラムである。
「何を言いますか。アリエッタ殿が来るまでは私がルイス様の世話係だったでしょうに。それよりも、本日話したいことはこちらについてです」
呆れ顔のウェインは、黒い壁にカッカッと議題を記していく。
『アリエッタの休日』
「彼女が魔界に来て、早くも半年以上が経過しています。ルイス様の第一次成長期も終え、彼女のおかげで我らが主人は明るく健やかに成長されております。内気で消極的な一面があったことが嘘のようです。そんな功労者であるアリエッタ殿にしっかりと休息を取っていただきたいと思っているのは、私だけではないかと思うのですが?」
「そ、そおねえ」
「うむ、異論はない」
「そうじゃのお、強いて言えばじゃがの!」
ウェインにニッコリ微笑みかけられ、三人は照れ隠しに強気な言い方をする。そのことがおかしくて、ウェインは密かに笑みを深めた。
「そういうことならあ……私、アリエッタちゃんの服をもっと作りたいと思っていたのよね。いい機会だから明日色々リサーチしてみようかしら」
「某はアリエッタの好きな菓子をたくさん作ってアフタヌーンティーセットでもこしらえてやろうぞ」
「ふむう、小娘の部屋は殺風景じゃからの。今は使っていない城の装飾品で気にいるものがあるのなら一つぐらい譲ってやらんでもない」
三人はソワソワ気恥ずかしそうにしながらも、それぞれ出来うることを挙げていく。
「素晴らしいです。きっとどれも喜ばれるでしょう。明日はルイス様のお世話のことは一旦忘れていただいて、是非とも羽を伸ばしていただけるよう尽力いたしましょう」
ウェインの言葉に、一同はどこか嬉しそうに頷いた。アリエッタは大事な仲間であり、家族であるとみんながそう思っている。
そんなアリエッタを労わることもまた、一同にとって嬉しく誇らしいことなのだ。
「というわけで、明日はどうぞよろしくお願いしますね」
「まっかせといてえ」
「ガッテン承知」
「仕方がないのう」
三人は明日の準備のためにそれぞれの目的地へと散り散りに去っていった。
一人残ったウェインは、再びルイスの部屋へと足を運んだ。
すっかり熱も引いて静かに眠るフェリックスの頭を撫でると、僅かに喉を鳴らして気持ちよさそうに頭を擦り付けてくる。ルイスも安心し切った顔でフェリックスの前足を優しく握ったままスヤスヤと寝息を立てている。
フッと頬を緩ませながら、今日のアリエッタの治療を思い返す。
フェリックスの症状は、魔物の子供でも稀に起こす症状であった。大抵は魔法の行使により魔力を発散させて均衡を保つのだが、アリエッタは直接フェリックスの魔力に干渉して過剰な分を吸い出してしまった。
その場では表情を崩さなかったウェインであるが、内心大いに驚いていた。
何せ、そのような治療法は初めて見たのだから。
流石に疲労の色が見えたが、他者の魔力に干渉するなど誰にでもできることではない。
そもそもアリエッタは全属性魔法を全て同じ高水準で使用できる上、光魔法までも使える稀有な存在なのだ。人間界にいた頃は、些細な怪我の患者がひっきりなしに訪ねてきては治癒の力を求めたという。
力を搾取されていたとこぼしていたが、ウェインはそれだけではないと感じていた。きっと、アリエッタの真価を感じ取った国王が、アリエッタを閉じ込めておくために神殿に押し込んだのだ。
ウェインはアリエッタと同じ力を持つ人間をただ一人だけ知っていた。
世界が未だ分たれていなかった時代、彼女は当時の『聖女』と呼ばれていた。争いの時代の最中、魔王を討ち滅ぼすべく軍隊の先頭に立ち、その手腕を振るっていた。
魔王と聖女。
相対する二人が戦場で出会えば戦闘は不可避であり、大衆の目前で何度も火花を散らしていた。
が、それは表向きの姿。
実際のところ、初代魔王と聖女は良き友人であった。
「本当に、あの子はよく似ていますね」
第一次成長期を終え、成人へとまた一歩近づいたルイス。成人の儀を終えた時、これまでの魔王としての力と記憶を取り戻す。
「さて、私は見守ることしかできませんが、あなたの選択ならどのようなものであれ従いますよ」
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