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第二章 いざ、王都へ
第二十八話 (後半)sideフィーナ
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ミランダ様に案内されたパウダールームで着替えと化粧直しを済ませた私は、会場へ戻る道を急いでいた。
どうしても、フィーナに言われたことが気になって仕方がない。
クロヴィス様から離れるな。
パウダールームまでの道中でミランダ様にかけられた言葉の端々から刺々しいものを感じた。
もしかすると、ミランダ様は――
そう思うと胸の奥がざわついて仕方がない。
とにかく、急いで会場へ――
長く薄暗い廊下の角を曲がったタイミングで、黒く大きな影が目に入った。
誰かが揉めている……?
気配を殺して様子を伺うと、何やら物騒な話が聞こえてくる。
――第二王子を誘拐して、その犯人をミランダ様に仕立て上げようとしているの?
思わぬ事態を前に、ヒュッと息が詰まった。
どういうわけか、今日の城内は随分と照明が落とされている上に、警備が手薄だ。
だが、近くには王城の近衛兵や騎士たちがいるはず。
ここで騒ぎを起こせば、誰かが気づいて駆けつけてくれるかもしれない――
私は震える手をぎゅっと握りしめて、声を張り上げた。
「お待ちなさい! 彼女をどこへ連れて行くおつもりですか?」
「んんっ!?」
「ああ? ……チッ。モタモタしてっからだぞ」
「仕方ねえ、あの女も捕まえてずらかるぞ!」
暗くてよく見えないけれど、ミランダ様が捕まっていることは分かった。
とにかく、彼女を助けなくては――!
私は何か戦えるものはないかと周囲を見渡す。
通行止めのためのポールに鎖、あとは観葉植物が置かれている。
私は迷わず観葉植物に駆け寄り、目を閉じた。
「お願い、近くにいたら応えて……!」
男たちが音を立てないようにジリジリとこちらに迫ってきている。
お願い、早く――!
『わあっ! アネットだ。久しぶり~』
応えた!
状況に見合わないゆったりとした話し方でポンッと現れたのは、王都にいる時に仲良くなった木の精霊だった。
「久しぶりね。ゆっくりお話ししたいのは山々なんだけど……今とても困っているの」
『んん? なあに? どうしたの?』
キラキラと羽を煌めかせながら私の周りを飛ぶ精霊。
他の人には姿は見えていないようで、ブツブツ独り言を話す私を怪訝な目で見ている。
「単刀直入に言うわね。あの男たち、悪い人なの。捕まえる手伝いをしてくれる?」
『悪者ぉ? いいよお!』
精霊はキョトンと目を瞬いた後、男たちに視線を移してニッコリと微笑んだ。
そして観葉植物の周りを飛ぶと、メキメキッと植物が急速に成長していく。
『いっくよお、そーれ!』
精霊が男たちに向かって指を振り下ろすと、追随するように植物が枝を伸ばして男たちに絡みついた。
シュルシュルと手足を囚われ、廊下に倒れていく男たちは焦りの声をあげている。
「はぁっ!? なんだこれは! うわっ!?」
「チィッ!」
ナイフを手に応戦する者もいるけれど、植物の動きは縦横無尽だ。
『アハハッ! 無駄だよお。えいっ』
「うわああっ!」
精霊の力で、あっという間に主犯格の男以外は簀巻きのように廊下に転がった。
「なんなんだ、テメェは! くそっ、来るな! 一歩でも動けばこの女を殺すぞ!」
「なっ、汚いわよ!」
いよいよ最後の一人だと、一歩足を踏み出した時、男は素早く小型ナイフを取り出してミランダ様の首に当てた。
『何それ、脅しのつもり? そーれっ』
そんなことには構わずにミランダ様を捉える男に向かって精霊が腕を振り下ろそうとした。
「わっ、だめよ!」
咄嗟に精霊を両手で掴んで宥めると、手の中の精霊が『えー、なんでえ』と唇を尖らせている。
精霊の力を借りれば、ミランダ様を解放できるかもしれない。
でも、無傷ではいられない可能性が高い。
精霊が見えない男は、突然意思があるかのように蠢いた植物に恐怖の念を抱いているはず。
人は恐怖に呑まれると、理性が保てなくなる。刺激しすぎるのは悪手だろう。
「へっ、どんなカラクリを使ったのかは知らねえが、とにかく俺は逃げるぜ」
「くっ……!」
どうにか、男の隙をついてミランダ様を逃すことができないか考えを巡らせるも、私も焦っていてどうも思考がまとまらない。
ジリジリと後退して濃い闇の中に消えて行こうとする男とミランダ様。
ミランダ様の目には恐怖の色が滲んでいて、早く助けなくてはと焦りばかりが加速する。
その時、ふわりと私の髪が風に揺れた。
そして間髪入れず、ゴウッと目も開けられないほど激しい突風が吹き荒れた。
「うわっ!? なんだ……!?」
「きゃっ!? こ、これは……?」
どこか懐かしいような、身に覚えがある風に、不安と焦りでいっぱいだった胸がスウッと落ち着いていく。
風が収束し、旋風の中心から姿を現したのは――
「お母様っ! ご無事ですか!?」
いつもの倍以上は大きな身体となったウォルからヒラリと舞い降りる愛しい我が子だった。
◇◇◇
「お母様は下がっていてください」
ウォルから飛び降りてお母様を背に仁王立ちをする私とクロエ。
ウォルのおかげでお母様の危機に駆けつけることができたわ!
遠目ではあったけれど、精霊の力を使って勇猛果敢に戦う姿はとても気高く美しかったわね。
「ぐふっ、戦うお母様最高だったわね、クロエ!!」
「ええ、とても勇敢なお姿に感激いたしました」
「さ、今度は私たちの番よ! 我らが推しを守るのよ!」
「お任せください」
背後から「お、推し……?」という戸惑う声が聞こえるけれど、まずはこの場を綺麗にお片付けしなくては。
「お、お前ら、どこから現れやがった!?」
激しい風と突然の私たちの登場に、ミランダを羽交締めにしている男は声を上擦らせている。
そっか。そもそもウォルの姿は見えないし、ウォルの力で姿を隠していた私たちの接近にも気づいていなかったってわけね。そりゃ警戒もするし恐ろしいわよね。
ミランダは目を見開いてウォルが佇む場所を凝視しているので、恐らく精霊が見えているのだろう。さすがはヒロインというところかしら。
「う、動くな! この女がどうなってもいいのか!?」
私とクロエを睨みつけながら、ナイフの切っ先をミランダの首に押し当てる男。
ミランダは私の推しカプを破滅させる憎き存在ではあるんだけど、命の危険に晒された彼女を助けない選択肢はない。
「クロエ、いける?」
「余裕です」
隣に立つクロエにだけ聞こえる声量で問いかけると、クロエはポキポキッと両手首と首を回し――視界から消えた。
「なっ、どこに……っ! ぶべらっ!」
地面スレスレまで低く身体を落としたクロエは、たったの数歩で男との距離を詰め、目にも止まらぬ速さで足を振り上げて男の持つナイフをピンポイントで弾き飛ばした。カラカランと廊下を転がっていくナイフはウォルが咥えて私の元に持ってきてくれた。
クロエは男が怯んだ隙にミランダを拘束する腕に手刀を落とし、腕が緩んだと同時にミランダを自分の腕に抱き込んだ。
そしてミランダを守るように片腕で抱きしめたまま、クロエは男の首目掛けて回し蹴りを決めた。
実にあっけない幕引きだった。
「終わりました」
空いた手でスカートの裾を叩きながら涼しい顔をして宣うクロエさん。
「……クロエ、あなたイケメンすぎるわ」
「いえ、侍女として当然の嗜みです」
大の男を素手で薙ぎ倒す侍女なんて、クロエの他にいるのかしら?
まあ、それは追々確かめるとして、ミランダは無事なの?
クロエに駆け寄ってミランダの様子を確認すると、ミランダはトロンとした目でクロエを見つめていた。
暗くて分かりにくいけど、頬が桃色に染まっているような……んん?
「……………………素敵。推せる」
ボソリとそう呟いたミランダに、クロエは怪訝な顔をしている。
「クロエ……あなたも罪な女ね」
「はあ……」
ものすごく嫌そうな顔をしているけど、確かにさっきのクロエはカッコよかったわね。
うっかり落ちてしまうのも仕方がない。
「さて、お母様が捉えた男たちと、クロエがやっつけた男で全員かしら?」
私は周囲に目を凝らして確認する。
泡を吹いて倒れた男と、植物でグルグル巻きになった男たちが転がるばかりで、他に嫌な気配は感じない。
「あっ! リューク殿下!」
「え?」
一件落着かしらと肩の力を抜いたところで、我に返ったミランダが叫んだ。
「あの男たちが言っていたのよ! 第二王子を捕えるって……大変だわ。早く知らせなきゃ!」
サッと顔を青ざめさせるミランダ。どうやら冗談を言っているようではないようね。
この様子だと、一刻を争う状況ということかしら。
「――クロエ、ここは任せるわ」
「お嬢様!?」
「えっ、フィーナ!?」
ウォルは私の考えを察知したのか、すでにいつものサイズになって私が背中に乗るのを待っている。良い子ね。
ポカンと口を開けて成り行きを見守ってくれていたお母様も、私を心配する声をあげた。
「お母様、フィーは大丈夫です! みんなを頼みますね!」
素早くウォルに乗って、私たちは外に飛び出した。
さて、第二王子の部屋は何処かしら。外から探した方が早そうよね。
風と同化するウォルの背中に捕まりながら、城を見上げる。
すると、一部屋だけ窓からカーテンがヒラヒラと靡いている部屋を見つけた。
照明は落とされて真っ暗だが、人の気配を感じる。
「ウォル! 頼んだわよ!」
『アオーーーーーン!』
私の掛け声を合図に、ウォルは軽やかに跳躍した。
どうしても、フィーナに言われたことが気になって仕方がない。
クロヴィス様から離れるな。
パウダールームまでの道中でミランダ様にかけられた言葉の端々から刺々しいものを感じた。
もしかすると、ミランダ様は――
そう思うと胸の奥がざわついて仕方がない。
とにかく、急いで会場へ――
長く薄暗い廊下の角を曲がったタイミングで、黒く大きな影が目に入った。
誰かが揉めている……?
気配を殺して様子を伺うと、何やら物騒な話が聞こえてくる。
――第二王子を誘拐して、その犯人をミランダ様に仕立て上げようとしているの?
思わぬ事態を前に、ヒュッと息が詰まった。
どういうわけか、今日の城内は随分と照明が落とされている上に、警備が手薄だ。
だが、近くには王城の近衛兵や騎士たちがいるはず。
ここで騒ぎを起こせば、誰かが気づいて駆けつけてくれるかもしれない――
私は震える手をぎゅっと握りしめて、声を張り上げた。
「お待ちなさい! 彼女をどこへ連れて行くおつもりですか?」
「んんっ!?」
「ああ? ……チッ。モタモタしてっからだぞ」
「仕方ねえ、あの女も捕まえてずらかるぞ!」
暗くてよく見えないけれど、ミランダ様が捕まっていることは分かった。
とにかく、彼女を助けなくては――!
私は何か戦えるものはないかと周囲を見渡す。
通行止めのためのポールに鎖、あとは観葉植物が置かれている。
私は迷わず観葉植物に駆け寄り、目を閉じた。
「お願い、近くにいたら応えて……!」
男たちが音を立てないようにジリジリとこちらに迫ってきている。
お願い、早く――!
『わあっ! アネットだ。久しぶり~』
応えた!
状況に見合わないゆったりとした話し方でポンッと現れたのは、王都にいる時に仲良くなった木の精霊だった。
「久しぶりね。ゆっくりお話ししたいのは山々なんだけど……今とても困っているの」
『んん? なあに? どうしたの?』
キラキラと羽を煌めかせながら私の周りを飛ぶ精霊。
他の人には姿は見えていないようで、ブツブツ独り言を話す私を怪訝な目で見ている。
「単刀直入に言うわね。あの男たち、悪い人なの。捕まえる手伝いをしてくれる?」
『悪者ぉ? いいよお!』
精霊はキョトンと目を瞬いた後、男たちに視線を移してニッコリと微笑んだ。
そして観葉植物の周りを飛ぶと、メキメキッと植物が急速に成長していく。
『いっくよお、そーれ!』
精霊が男たちに向かって指を振り下ろすと、追随するように植物が枝を伸ばして男たちに絡みついた。
シュルシュルと手足を囚われ、廊下に倒れていく男たちは焦りの声をあげている。
「はぁっ!? なんだこれは! うわっ!?」
「チィッ!」
ナイフを手に応戦する者もいるけれど、植物の動きは縦横無尽だ。
『アハハッ! 無駄だよお。えいっ』
「うわああっ!」
精霊の力で、あっという間に主犯格の男以外は簀巻きのように廊下に転がった。
「なんなんだ、テメェは! くそっ、来るな! 一歩でも動けばこの女を殺すぞ!」
「なっ、汚いわよ!」
いよいよ最後の一人だと、一歩足を踏み出した時、男は素早く小型ナイフを取り出してミランダ様の首に当てた。
『何それ、脅しのつもり? そーれっ』
そんなことには構わずにミランダ様を捉える男に向かって精霊が腕を振り下ろそうとした。
「わっ、だめよ!」
咄嗟に精霊を両手で掴んで宥めると、手の中の精霊が『えー、なんでえ』と唇を尖らせている。
精霊の力を借りれば、ミランダ様を解放できるかもしれない。
でも、無傷ではいられない可能性が高い。
精霊が見えない男は、突然意思があるかのように蠢いた植物に恐怖の念を抱いているはず。
人は恐怖に呑まれると、理性が保てなくなる。刺激しすぎるのは悪手だろう。
「へっ、どんなカラクリを使ったのかは知らねえが、とにかく俺は逃げるぜ」
「くっ……!」
どうにか、男の隙をついてミランダ様を逃すことができないか考えを巡らせるも、私も焦っていてどうも思考がまとまらない。
ジリジリと後退して濃い闇の中に消えて行こうとする男とミランダ様。
ミランダ様の目には恐怖の色が滲んでいて、早く助けなくてはと焦りばかりが加速する。
その時、ふわりと私の髪が風に揺れた。
そして間髪入れず、ゴウッと目も開けられないほど激しい突風が吹き荒れた。
「うわっ!? なんだ……!?」
「きゃっ!? こ、これは……?」
どこか懐かしいような、身に覚えがある風に、不安と焦りでいっぱいだった胸がスウッと落ち着いていく。
風が収束し、旋風の中心から姿を現したのは――
「お母様っ! ご無事ですか!?」
いつもの倍以上は大きな身体となったウォルからヒラリと舞い降りる愛しい我が子だった。
◇◇◇
「お母様は下がっていてください」
ウォルから飛び降りてお母様を背に仁王立ちをする私とクロエ。
ウォルのおかげでお母様の危機に駆けつけることができたわ!
遠目ではあったけれど、精霊の力を使って勇猛果敢に戦う姿はとても気高く美しかったわね。
「ぐふっ、戦うお母様最高だったわね、クロエ!!」
「ええ、とても勇敢なお姿に感激いたしました」
「さ、今度は私たちの番よ! 我らが推しを守るのよ!」
「お任せください」
背後から「お、推し……?」という戸惑う声が聞こえるけれど、まずはこの場を綺麗にお片付けしなくては。
「お、お前ら、どこから現れやがった!?」
激しい風と突然の私たちの登場に、ミランダを羽交締めにしている男は声を上擦らせている。
そっか。そもそもウォルの姿は見えないし、ウォルの力で姿を隠していた私たちの接近にも気づいていなかったってわけね。そりゃ警戒もするし恐ろしいわよね。
ミランダは目を見開いてウォルが佇む場所を凝視しているので、恐らく精霊が見えているのだろう。さすがはヒロインというところかしら。
「う、動くな! この女がどうなってもいいのか!?」
私とクロエを睨みつけながら、ナイフの切っ先をミランダの首に押し当てる男。
ミランダは私の推しカプを破滅させる憎き存在ではあるんだけど、命の危険に晒された彼女を助けない選択肢はない。
「クロエ、いける?」
「余裕です」
隣に立つクロエにだけ聞こえる声量で問いかけると、クロエはポキポキッと両手首と首を回し――視界から消えた。
「なっ、どこに……っ! ぶべらっ!」
地面スレスレまで低く身体を落としたクロエは、たったの数歩で男との距離を詰め、目にも止まらぬ速さで足を振り上げて男の持つナイフをピンポイントで弾き飛ばした。カラカランと廊下を転がっていくナイフはウォルが咥えて私の元に持ってきてくれた。
クロエは男が怯んだ隙にミランダを拘束する腕に手刀を落とし、腕が緩んだと同時にミランダを自分の腕に抱き込んだ。
そしてミランダを守るように片腕で抱きしめたまま、クロエは男の首目掛けて回し蹴りを決めた。
実にあっけない幕引きだった。
「終わりました」
空いた手でスカートの裾を叩きながら涼しい顔をして宣うクロエさん。
「……クロエ、あなたイケメンすぎるわ」
「いえ、侍女として当然の嗜みです」
大の男を素手で薙ぎ倒す侍女なんて、クロエの他にいるのかしら?
まあ、それは追々確かめるとして、ミランダは無事なの?
クロエに駆け寄ってミランダの様子を確認すると、ミランダはトロンとした目でクロエを見つめていた。
暗くて分かりにくいけど、頬が桃色に染まっているような……んん?
「……………………素敵。推せる」
ボソリとそう呟いたミランダに、クロエは怪訝な顔をしている。
「クロエ……あなたも罪な女ね」
「はあ……」
ものすごく嫌そうな顔をしているけど、確かにさっきのクロエはカッコよかったわね。
うっかり落ちてしまうのも仕方がない。
「さて、お母様が捉えた男たちと、クロエがやっつけた男で全員かしら?」
私は周囲に目を凝らして確認する。
泡を吹いて倒れた男と、植物でグルグル巻きになった男たちが転がるばかりで、他に嫌な気配は感じない。
「あっ! リューク殿下!」
「え?」
一件落着かしらと肩の力を抜いたところで、我に返ったミランダが叫んだ。
「あの男たちが言っていたのよ! 第二王子を捕えるって……大変だわ。早く知らせなきゃ!」
サッと顔を青ざめさせるミランダ。どうやら冗談を言っているようではないようね。
この様子だと、一刻を争う状況ということかしら。
「――クロエ、ここは任せるわ」
「お嬢様!?」
「えっ、フィーナ!?」
ウォルは私の考えを察知したのか、すでにいつものサイズになって私が背中に乗るのを待っている。良い子ね。
ポカンと口を開けて成り行きを見守ってくれていたお母様も、私を心配する声をあげた。
「お母様、フィーは大丈夫です! みんなを頼みますね!」
素早くウォルに乗って、私たちは外に飛び出した。
さて、第二王子の部屋は何処かしら。外から探した方が早そうよね。
風と同化するウォルの背中に捕まりながら、城を見上げる。
すると、一部屋だけ窓からカーテンがヒラヒラと靡いている部屋を見つけた。
照明は落とされて真っ暗だが、人の気配を感じる。
「ウォル! 頼んだわよ!」
『アオーーーーーン!』
私の掛け声を合図に、ウォルは軽やかに跳躍した。
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