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第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される
番外編④アグニの憂鬱
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「なぁ、アグニ…」
「なんですか?」
「あいつ…最近可愛くなったと思わねえか?」
エレインが留守で久々にホムラ様と2人でまったりお茶を楽しんでいた時、不意に投げかけられた問いに僕は思わず飲んでいた紅茶を吹き出しそうになりました。
冗談かと思いましたが、ホムラ様のお顔は真剣そのもので、何やら哀愁に満ちており、心からの言葉なのだと分かりました。
…勘弁してください。僕はそろそろ胸焼けしそうです。
◇◇◇
僕の名前はアグニ。
70階層の主であるホムラ様唯一無二の『優秀な』従者です。ふふん。
一連の騒動が落ち着いて、ようやくいつもの日々が戻って来たのは喜ばしいことです。
ですが、日に日にホムラ様とエレインの間に流れる雰囲気の甘ったるさが増している気がするのです。
僕も一応、2人が想い合っていることぐらい理解していますし応援しています。ですから気を利かせて1人でダンジョンに食材調達に行ったり、さりげなく台所に籠ったりして2人きりの時間を作ってあげているのです。感謝して欲しいですよ、ほんと。
うっかり2人がイチャイチャしているところに遭遇した日には…もう目も当てられません。
やれやれ、本当勘弁して欲しいですよ。
◇◇◇
「…ということがありましてですね」
「まぁ、アグニちゃんも毎日大変ですね」
僕はたまに遊びに来てくれるリリスにちょっぴり愚痴を漏らしました。リリスはいつの間にかエレインみたいに僕のことを『アグニちゃん』と呼ぶようになりました。
「それで、その…お2人はどうなんですか?どこまでいったかご存知ですか?」
「どこまで?うーん、たまにダンジョン内の景観がいい階層に出かけてはいるようですが…」
目を輝かせたリリスの問いに答えると、リリスは「そうじゃなくて~!」ともどかしそうにしています。どういうことですか?
「えーっと…その、同じベッドで寝たり…お、お風呂に入ったり…?きゃー!破廉恥です!」
自分で言っておいて真っ赤な顔を手で覆って悶えています。リリスも大概変な人ですよね。
「うーん、そういうことはないですね。それぞれ別で寝てますし、エレインは僕とお風呂に入りますから」
「そうですか…」
僕の答えに明らかに消沈するリリス。何を期待していたのでしょうか?
◇◇◇
「ぴゃぁぁぁぁあ!?!?ごごごごごめんなさい!!」
また別の日、今日も気を利かせてホムラ様とエレインを2人きりにしてあげた優しい僕。ボスの間で軽く鍛錬をしていたら、居住空間からエレインが叫びながら飛び出してきました。
「うるさ…どうしたんですか?エレイン?」
「わわわ私ちょっとウォンのところに遊びに行ってくる!!!晩ご飯までには戻るから!」
何なんですか?顔から湯気でも出そうなぐらい真っ赤でしたが熱でもあるんでしょうか。まぁ、ウォンは薬草にも明るいですし任せておけば問題ないでしょう。
恐らくエレインよりも気を配る必要があるのはーーー
「……やっちまった」
「何がですか」
「手、出しちまった」
「はあ」
思った通り、裏に戻るとホムラ様が目に見えて落ち込んでいました。やれやれ、少し話を聞いてあげますかね。
「いや、俺だってな、いつもいつもいつも我慢してんだぞ!?口付けだけで!ずっと!それをあんな可愛い顔で縋られてもみろ…理性なんて簡単に吹き飛ぶだろうが…」
「何ですか胸でも触ったんですか」
「…」
「え、冗談のつもりでしたがまさか図星…?」
エレインも大袈裟ですね。胸の一つや二つ…ああ、そういえば。
「胸といえば…エレイン、覚醒してからちょっと胸大きくなりましたよね」
「………お前マジで今それを言うな」
おや、どうしてでしょうか?ホムラ様は頭を抱えて何かと戦っているように苦悶の表情を浮かべています。
「まあ、仲直りするなら早めにしてくださいね」
「…分かってらぁ」
「はぁー…」とため息をつきながらソファに横になるホムラ様。エレインのこととなると階層主の威厳は消え去ってしまうご様子。でも僕はそんな人間味あるホムラ様も好きですよ。
◇◇◇
「エレイン」
「あっ、アグニちゃん…」
夕飯時になっても中々帰ってこないので、仕方なく75階層まで迎えに来た優しい僕。
大樹の前で膝を抱えるエレインと、大樹にもたれて呆れ顔のウォン。
ウォンの気持ちがよーく分かります。今度2人のことについてウォンと語り合うのもいいかもしれません。
「ほら、帰りますよ」
「うう…どんな顔してホムラさんに会えばいいのか」
やれやれ、本当に手がかかりますね。
「エレインはホムラ様に触れられるのが嫌なんですか?」
「嫌なわけないっ!…うう、ただ…はっ、恥ずかしくて…ホムラさんを前にするともっと触れたい、近づきたいって思うし…でも好き過ぎて心臓が爆発しそうになるんだもん…」
「…それをホムラ様に伝えてあげてください」
座り込むエレインに手を差し出すと、エレインは涙に塗れた顔を上げておずおずと手を握ってくれました。全く、涙でぐしゃぐしゃですっかり不細工ですよ。
「お邪魔しました。また遊びに来ますね」
「ああ、いつでも来るといい」
僕はウォンに礼を言って、エレインを連れて70階層へと戻りました。本当手がかかりますよ。
◇◇◇
「ただいま戻りました…」
腰がひけているエレインをぐいぐい押してホムラ様の前に差し出します。ほら、ちゃんと自分の口で言うのですよ!
「あー…その、悪かったな」
「わ、私こそあんな酷い態度取って…すみませんでした」
うーん、なんとも気まずい空気。それにエレインはまだ本心を伝えていません。僕はエレインを小突きます。
僕の言わんとすることが伝わったのか、エレインはもじもじと手をこまねきながら口を開きました。
「あ、あのっ!わ、私…ホムラさんに触れられるのが嫌なんじゃないんです。ただ、は、恥ずかしくて…ホムラさんと触れ合っているとドキドキし過ぎて自分が自分じゃなくなりそうで…本当はもっと触ってほしいし、いっぱいギューってしたりちゅーってしたいし、ホムラさんが大好きだから、もっとホムラさんのことが知りたいし、私だってホムラさんに触りたいし、えっとえっと…」
「~~っ、分かった!もう十分分かったからちょっと黙れ…」
あーあー、ホムラ様ったら真っ赤になっちゃってます。片手で顔を隠していますが隠しきれてませんよ。それに…ちょっと嬉しそうですね。
「はい、では仲直りしたところで夕飯にしますよ!」
僕はパチンと手を叩くと夕飯の準備を始めました。エレインも手伝ってくれます。
僕の活躍のおかげでこの日も平和な食事の時間を過ごすことができました。
◇◇◇
「…ということがありましてですね」
「あらあら~うふふふ」
僕は紅茶を啜りながら、先日のことをリリスに語って聞かせます。リリスはニヤニヤと頬を緩めながら楽しそうにしています。やっぱりリリスは変な人です。
「これは一線を越える日も近いのかしら…うふふふふ、またエレインに根掘り葉掘り聞かなければなりませんね」
リリスの目が怖いです。流石にエレインに同情します。
「それにしても本当に世話の焼ける2人ですねえ」
「本当ですよ」
まあ、そんな2人に振り回されるのも存外嫌いではないのですが…それは何だか悔しいので内緒にしておきます。
結局僕はホムラ様のこともエレインのことも大好きなんです。
「なんですか?」
「あいつ…最近可愛くなったと思わねえか?」
エレインが留守で久々にホムラ様と2人でまったりお茶を楽しんでいた時、不意に投げかけられた問いに僕は思わず飲んでいた紅茶を吹き出しそうになりました。
冗談かと思いましたが、ホムラ様のお顔は真剣そのもので、何やら哀愁に満ちており、心からの言葉なのだと分かりました。
…勘弁してください。僕はそろそろ胸焼けしそうです。
◇◇◇
僕の名前はアグニ。
70階層の主であるホムラ様唯一無二の『優秀な』従者です。ふふん。
一連の騒動が落ち着いて、ようやくいつもの日々が戻って来たのは喜ばしいことです。
ですが、日に日にホムラ様とエレインの間に流れる雰囲気の甘ったるさが増している気がするのです。
僕も一応、2人が想い合っていることぐらい理解していますし応援しています。ですから気を利かせて1人でダンジョンに食材調達に行ったり、さりげなく台所に籠ったりして2人きりの時間を作ってあげているのです。感謝して欲しいですよ、ほんと。
うっかり2人がイチャイチャしているところに遭遇した日には…もう目も当てられません。
やれやれ、本当勘弁して欲しいですよ。
◇◇◇
「…ということがありましてですね」
「まぁ、アグニちゃんも毎日大変ですね」
僕はたまに遊びに来てくれるリリスにちょっぴり愚痴を漏らしました。リリスはいつの間にかエレインみたいに僕のことを『アグニちゃん』と呼ぶようになりました。
「それで、その…お2人はどうなんですか?どこまでいったかご存知ですか?」
「どこまで?うーん、たまにダンジョン内の景観がいい階層に出かけてはいるようですが…」
目を輝かせたリリスの問いに答えると、リリスは「そうじゃなくて~!」ともどかしそうにしています。どういうことですか?
「えーっと…その、同じベッドで寝たり…お、お風呂に入ったり…?きゃー!破廉恥です!」
自分で言っておいて真っ赤な顔を手で覆って悶えています。リリスも大概変な人ですよね。
「うーん、そういうことはないですね。それぞれ別で寝てますし、エレインは僕とお風呂に入りますから」
「そうですか…」
僕の答えに明らかに消沈するリリス。何を期待していたのでしょうか?
◇◇◇
「ぴゃぁぁぁぁあ!?!?ごごごごごめんなさい!!」
また別の日、今日も気を利かせてホムラ様とエレインを2人きりにしてあげた優しい僕。ボスの間で軽く鍛錬をしていたら、居住空間からエレインが叫びながら飛び出してきました。
「うるさ…どうしたんですか?エレイン?」
「わわわ私ちょっとウォンのところに遊びに行ってくる!!!晩ご飯までには戻るから!」
何なんですか?顔から湯気でも出そうなぐらい真っ赤でしたが熱でもあるんでしょうか。まぁ、ウォンは薬草にも明るいですし任せておけば問題ないでしょう。
恐らくエレインよりも気を配る必要があるのはーーー
「……やっちまった」
「何がですか」
「手、出しちまった」
「はあ」
思った通り、裏に戻るとホムラ様が目に見えて落ち込んでいました。やれやれ、少し話を聞いてあげますかね。
「いや、俺だってな、いつもいつもいつも我慢してんだぞ!?口付けだけで!ずっと!それをあんな可愛い顔で縋られてもみろ…理性なんて簡単に吹き飛ぶだろうが…」
「何ですか胸でも触ったんですか」
「…」
「え、冗談のつもりでしたがまさか図星…?」
エレインも大袈裟ですね。胸の一つや二つ…ああ、そういえば。
「胸といえば…エレイン、覚醒してからちょっと胸大きくなりましたよね」
「………お前マジで今それを言うな」
おや、どうしてでしょうか?ホムラ様は頭を抱えて何かと戦っているように苦悶の表情を浮かべています。
「まあ、仲直りするなら早めにしてくださいね」
「…分かってらぁ」
「はぁー…」とため息をつきながらソファに横になるホムラ様。エレインのこととなると階層主の威厳は消え去ってしまうご様子。でも僕はそんな人間味あるホムラ様も好きですよ。
◇◇◇
「エレイン」
「あっ、アグニちゃん…」
夕飯時になっても中々帰ってこないので、仕方なく75階層まで迎えに来た優しい僕。
大樹の前で膝を抱えるエレインと、大樹にもたれて呆れ顔のウォン。
ウォンの気持ちがよーく分かります。今度2人のことについてウォンと語り合うのもいいかもしれません。
「ほら、帰りますよ」
「うう…どんな顔してホムラさんに会えばいいのか」
やれやれ、本当に手がかかりますね。
「エレインはホムラ様に触れられるのが嫌なんですか?」
「嫌なわけないっ!…うう、ただ…はっ、恥ずかしくて…ホムラさんを前にするともっと触れたい、近づきたいって思うし…でも好き過ぎて心臓が爆発しそうになるんだもん…」
「…それをホムラ様に伝えてあげてください」
座り込むエレインに手を差し出すと、エレインは涙に塗れた顔を上げておずおずと手を握ってくれました。全く、涙でぐしゃぐしゃですっかり不細工ですよ。
「お邪魔しました。また遊びに来ますね」
「ああ、いつでも来るといい」
僕はウォンに礼を言って、エレインを連れて70階層へと戻りました。本当手がかかりますよ。
◇◇◇
「ただいま戻りました…」
腰がひけているエレインをぐいぐい押してホムラ様の前に差し出します。ほら、ちゃんと自分の口で言うのですよ!
「あー…その、悪かったな」
「わ、私こそあんな酷い態度取って…すみませんでした」
うーん、なんとも気まずい空気。それにエレインはまだ本心を伝えていません。僕はエレインを小突きます。
僕の言わんとすることが伝わったのか、エレインはもじもじと手をこまねきながら口を開きました。
「あ、あのっ!わ、私…ホムラさんに触れられるのが嫌なんじゃないんです。ただ、は、恥ずかしくて…ホムラさんと触れ合っているとドキドキし過ぎて自分が自分じゃなくなりそうで…本当はもっと触ってほしいし、いっぱいギューってしたりちゅーってしたいし、ホムラさんが大好きだから、もっとホムラさんのことが知りたいし、私だってホムラさんに触りたいし、えっとえっと…」
「~~っ、分かった!もう十分分かったからちょっと黙れ…」
あーあー、ホムラ様ったら真っ赤になっちゃってます。片手で顔を隠していますが隠しきれてませんよ。それに…ちょっと嬉しそうですね。
「はい、では仲直りしたところで夕飯にしますよ!」
僕はパチンと手を叩くと夕飯の準備を始めました。エレインも手伝ってくれます。
僕の活躍のおかげでこの日も平和な食事の時間を過ごすことができました。
◇◇◇
「…ということがありましてですね」
「あらあら~うふふふ」
僕は紅茶を啜りながら、先日のことをリリスに語って聞かせます。リリスはニヤニヤと頬を緩めながら楽しそうにしています。やっぱりリリスは変な人です。
「これは一線を越える日も近いのかしら…うふふふふ、またエレインに根掘り葉掘り聞かなければなりませんね」
リリスの目が怖いです。流石にエレインに同情します。
「それにしても本当に世話の焼ける2人ですねえ」
「本当ですよ」
まあ、そんな2人に振り回されるのも存外嫌いではないのですが…それは何だか悔しいので内緒にしておきます。
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