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第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される
98. 魔石のペンダント③
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「くっ…!」
「っ!!」
呪詛の剣を回避できないと瞬時に判断したホムラは、エレインを庇うため自らの腕の中に閉じ込めるようにしてエレインを抱きしめた。
襲い来る剣の衝撃と痛みを覚悟したその時ーーー
チンッと小さな音が耳に届いた。
ホムラとエレインの魔石のペンダントが、抱き寄せた拍子にぶつかり合ったようだ。
その音が耳に届いたと同時に、カッと眩い光が2人を包み込んだ。
「なっ、なんだこの光は!?」
眩い光に呪詛の剣は弾き飛ばされ、勢いよく壁にぶつかって砕け散った。
「う…」
次第に光は収束し、ホムラとエレインが目を薄く開けると、2人の首に下げられていたペンダントは魔石の部分が粉々に崩れ落ちてしまっていた。
「あ…」
エレインは、初めてホムラに貰った大事なペンダント。悲しげに眉根を下げながら、見るも無惨な姿となったペンダントをそっと撫でる。
(もしかして、魔石の防御魔法が発動したの?)
どうやら2人の魔石が共鳴し、強力な防御魔法となりシンの凶刃を防いだらしい。ホムラも唖然としてペンダントを握りしめている。
(そっか…このペンダントが私たちを守ってくれたんだ)
エレインがギュッとペンダントのチェーンを握りしめていると、すぐ側で尻餅をついていたアグニがボロボロ涙を流しながら2人に飛びついた。
「うっ…よかった、よかったのです。2人とも無事で…!」
「アグニちゃん…」
エレインはアグニを抱きとめ、強く抱きしめた。そしてキッと呆然と立ち竦んでいるシンを睨みつけた。
「まさか…魔道具、か?防御魔法が込められていたのか。…ふん、命拾いしたな。この剣に込められた呪詛は命を枯らすまでその者の生命力を急速に吸い上げるもの。だが、頼りの魔石も砕け散ったようだな。次はない」
「っ!どうして、どうして平気でそんな恐ろしいことが…!許さない…!」
薄く笑って再び剣を構えるシンに対し、エレインは身体の奥底から燃えたぎる闘志を感じていた。怒り、恐怖、嫌悪、そして分かり合えないことへの虚しさがじわじわと心を悲しく染めていく。黒い感情が渦巻いて、心のバランスが取れなくて気持ちが悪い。地面が波打っているような、船酔いに近い感覚を覚える。キツく噛み締めた唇からはうっすらと血が滲んで鉄の味がした。
目の前が真っ赤に染まり、負の感情に心を飲まれそうになった時、ホムラがそっとエレインの頭を撫でた。
「怖い顔してんぞ。お前らしくもねェ。言っただろ?俺はお前が守る。だから、お前も俺を、俺たちを守ってくれ。そんでいつものように笑ってろ」
「ホムラさん…」
ホムラの規則正しい手の動きに、騒ついていた心が落ち着いていく。
ホムラの手の暖かさが、心にじんわりと染み込んでいく。
ホムラの力強い言葉が、折れかけた心を支えてくれる。
黒い霧が晴れたように、エレインの心は落ち着きを取り戻した。真っ赤に染まった視界が色彩を取り戻していく。
そして、ずっとエレインの奥底で静かに眠っていた力が染み出し、元来の力と歯車が噛み合うかのように溶け合っていくのを感じた。
(そうだった。大切なのは、守りたいと想う気持ち。大事な人たちの存在…昏い気持ちに負けてはダメ。私はこの大切な居場所を守る…!)
エレインの内に眠るハイエルフの力が顕現するのに必要なのはキッカケだった。
エレインはカチリと鍵が開かれる音を聞いた気がした。
血の滲む努力により、力の一端を引き出すには至っていたが、ようやくエレインの防衛本能とも言える閉ざされた扉が開かれた。
淡い金色の光が勢いよく溢れ、エレインを包み込む。そして身体に馴染むように薄く金色の光がエレインの体表を覆った。
高魔力により、耳は僅かに尖り、髪も背も少し伸びた。
エレインは身体の中でふたつの魔力が混ざり合い、身体中に浸透していくのを感じた。ようやくエレインの中で眠っていたハイエルフの力が馴染んだ瞬間であった。
エレインはホムラとアグニに手を翳し、呪文を唱えた。
「《聖なる面紗》!」
淡く美しい光がホムラとアグニの表面を覆う。これで万一シンの呪詛の剣で傷つけられたとしても、浄化の光がシンの呪詛を打ち払うだろう。
エレインは改めてホムラの隣に立ち、シンを見据えた。
シンがその身体を乗っ取っている剣士は、かなりの実力者であるようだ。その身体をシンの魂が占領していることが覚醒したエレインの目には見て取れた。シンをこの場から退けるためには、その魂を解放する必要がありそうだ。
エレインは隣に立つホムラを見上げる。ホムラもエレインを真っ直ぐに見つめていた。
「僕にも戦わせてください」
そしてアグニも立ち上がり、エレインの隣に立った。エレインは深く頷き、3人はシンに視線を移した。
シンは忌々しそうに表情を歪めている。
大切な人たちと積み上げてきた時間がエレインの背中を押してくれる。
奪い、他者を傷つけることを厭わないシンには決して負けないと強く拳を握った。
しばしの睨み合いの後、シンが力強く地面を踏み締め、エレイン達に襲い掛かった。
ーーーーー
本日中にあと1話か2話更新します!
「っ!!」
呪詛の剣を回避できないと瞬時に判断したホムラは、エレインを庇うため自らの腕の中に閉じ込めるようにしてエレインを抱きしめた。
襲い来る剣の衝撃と痛みを覚悟したその時ーーー
チンッと小さな音が耳に届いた。
ホムラとエレインの魔石のペンダントが、抱き寄せた拍子にぶつかり合ったようだ。
その音が耳に届いたと同時に、カッと眩い光が2人を包み込んだ。
「なっ、なんだこの光は!?」
眩い光に呪詛の剣は弾き飛ばされ、勢いよく壁にぶつかって砕け散った。
「う…」
次第に光は収束し、ホムラとエレインが目を薄く開けると、2人の首に下げられていたペンダントは魔石の部分が粉々に崩れ落ちてしまっていた。
「あ…」
エレインは、初めてホムラに貰った大事なペンダント。悲しげに眉根を下げながら、見るも無惨な姿となったペンダントをそっと撫でる。
(もしかして、魔石の防御魔法が発動したの?)
どうやら2人の魔石が共鳴し、強力な防御魔法となりシンの凶刃を防いだらしい。ホムラも唖然としてペンダントを握りしめている。
(そっか…このペンダントが私たちを守ってくれたんだ)
エレインがギュッとペンダントのチェーンを握りしめていると、すぐ側で尻餅をついていたアグニがボロボロ涙を流しながら2人に飛びついた。
「うっ…よかった、よかったのです。2人とも無事で…!」
「アグニちゃん…」
エレインはアグニを抱きとめ、強く抱きしめた。そしてキッと呆然と立ち竦んでいるシンを睨みつけた。
「まさか…魔道具、か?防御魔法が込められていたのか。…ふん、命拾いしたな。この剣に込められた呪詛は命を枯らすまでその者の生命力を急速に吸い上げるもの。だが、頼りの魔石も砕け散ったようだな。次はない」
「っ!どうして、どうして平気でそんな恐ろしいことが…!許さない…!」
薄く笑って再び剣を構えるシンに対し、エレインは身体の奥底から燃えたぎる闘志を感じていた。怒り、恐怖、嫌悪、そして分かり合えないことへの虚しさがじわじわと心を悲しく染めていく。黒い感情が渦巻いて、心のバランスが取れなくて気持ちが悪い。地面が波打っているような、船酔いに近い感覚を覚える。キツく噛み締めた唇からはうっすらと血が滲んで鉄の味がした。
目の前が真っ赤に染まり、負の感情に心を飲まれそうになった時、ホムラがそっとエレインの頭を撫でた。
「怖い顔してんぞ。お前らしくもねェ。言っただろ?俺はお前が守る。だから、お前も俺を、俺たちを守ってくれ。そんでいつものように笑ってろ」
「ホムラさん…」
ホムラの規則正しい手の動きに、騒ついていた心が落ち着いていく。
ホムラの手の暖かさが、心にじんわりと染み込んでいく。
ホムラの力強い言葉が、折れかけた心を支えてくれる。
黒い霧が晴れたように、エレインの心は落ち着きを取り戻した。真っ赤に染まった視界が色彩を取り戻していく。
そして、ずっとエレインの奥底で静かに眠っていた力が染み出し、元来の力と歯車が噛み合うかのように溶け合っていくのを感じた。
(そうだった。大切なのは、守りたいと想う気持ち。大事な人たちの存在…昏い気持ちに負けてはダメ。私はこの大切な居場所を守る…!)
エレインの内に眠るハイエルフの力が顕現するのに必要なのはキッカケだった。
エレインはカチリと鍵が開かれる音を聞いた気がした。
血の滲む努力により、力の一端を引き出すには至っていたが、ようやくエレインの防衛本能とも言える閉ざされた扉が開かれた。
淡い金色の光が勢いよく溢れ、エレインを包み込む。そして身体に馴染むように薄く金色の光がエレインの体表を覆った。
高魔力により、耳は僅かに尖り、髪も背も少し伸びた。
エレインは身体の中でふたつの魔力が混ざり合い、身体中に浸透していくのを感じた。ようやくエレインの中で眠っていたハイエルフの力が馴染んだ瞬間であった。
エレインはホムラとアグニに手を翳し、呪文を唱えた。
「《聖なる面紗》!」
淡く美しい光がホムラとアグニの表面を覆う。これで万一シンの呪詛の剣で傷つけられたとしても、浄化の光がシンの呪詛を打ち払うだろう。
エレインは改めてホムラの隣に立ち、シンを見据えた。
シンがその身体を乗っ取っている剣士は、かなりの実力者であるようだ。その身体をシンの魂が占領していることが覚醒したエレインの目には見て取れた。シンをこの場から退けるためには、その魂を解放する必要がありそうだ。
エレインは隣に立つホムラを見上げる。ホムラもエレインを真っ直ぐに見つめていた。
「僕にも戦わせてください」
そしてアグニも立ち上がり、エレインの隣に立った。エレインは深く頷き、3人はシンに視線を移した。
シンは忌々しそうに表情を歪めている。
大切な人たちと積み上げてきた時間がエレインの背中を押してくれる。
奪い、他者を傷つけることを厭わないシンには決して負けないと強く拳を握った。
しばしの睨み合いの後、シンが力強く地面を踏み締め、エレイン達に襲い掛かった。
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本日中にあと1話か2話更新します!
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たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
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