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第四話 もう一つの提案
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おずおずと答えると、お父様は顔を真っ青にし、兄様はやっぱりかとため息をつき、エドワード殿下は…変わらずに爽やかな笑みを浮かべていた。
「うん、君ならそう言うんじゃないかと思っていたよ。返事はすぐにとは言わない。実は、今日はもう一つ大事な話があって来たんだ」
依然として楽しそうに目を細めるエドワード殿下は、一枚の紙を取り出した。目で内容を確かめるように促され、恐る恐るその紙を手に取る。
「…これは!」
サッと内容に目を通した私の目は、エドワード殿下の言葉を借りるならば、獲物を狩る獣のように煌めいたことだろう。
私はお父様に素早く紙を手渡し、中身に目を通したお父様も驚き目を見開いている。だが、その目の奥には商売人のギラギラした鋭い光が宿っていた。
「…へぇ、エドワードの誕生パーティの装飾から食事の手配まで、モントワール商会…いや、マリリンに一任するという依頼書か」
お父様の手からひょいと紙を奪い取って目を通した兄様がニヤリと口の端を上げた。お父様も兄様も、殿下がいらっしゃるというのになんて悪いお顔を…私も人のことは言えないのでしょうが。
「ああ、二ヶ月後に王城で僕の二十歳の誕生日を祝うパーティが開かれるんだ。是非ともその全ての手配を君に任せたい。頼めるかい?」
「もちろんですわ!やらせてください!」
私は頭で考える前に殿下のお話に飛びついてしまった。でも仕方がないと思う。だってこんなに大きなお仕事に関われるなんて!モントワール商会の力を総動員して素敵なパーティにしてみせるわ!
「あはは、君ならそう言ってくれると思ったよ。本当はそのパーティで僕のパートナーも務めてくれると嬉しいんだけど…これから二ヶ月間、準備で色々と顔を合わせるだろうし、その中で少しずつ僕のことを知ってほしい」
「っ、で、殿下…」
曇りのない真っ直ぐな瞳に見据えられ、頬が染まらない女の子なんてきっといない。だから私が今赤い顔をしているのも他意はないし仕方がないこと。
「ああ、今まで誕生パーティは煩わしいばかりだったけど、今回ばかりは本当に楽しみだ。よろしくね、マリリン嬢」
「…よ、よろしくお願いいたします」
台風のようにやってきたエドワード殿下は、書類にしたためた私のサインを確かめると、満足げに外で控える従者を引き連れて帰って行った。
こうして誕生パーティに向けた準備の日々が始まったのだ。
「うん、君ならそう言うんじゃないかと思っていたよ。返事はすぐにとは言わない。実は、今日はもう一つ大事な話があって来たんだ」
依然として楽しそうに目を細めるエドワード殿下は、一枚の紙を取り出した。目で内容を確かめるように促され、恐る恐るその紙を手に取る。
「…これは!」
サッと内容に目を通した私の目は、エドワード殿下の言葉を借りるならば、獲物を狩る獣のように煌めいたことだろう。
私はお父様に素早く紙を手渡し、中身に目を通したお父様も驚き目を見開いている。だが、その目の奥には商売人のギラギラした鋭い光が宿っていた。
「…へぇ、エドワードの誕生パーティの装飾から食事の手配まで、モントワール商会…いや、マリリンに一任するという依頼書か」
お父様の手からひょいと紙を奪い取って目を通した兄様がニヤリと口の端を上げた。お父様も兄様も、殿下がいらっしゃるというのになんて悪いお顔を…私も人のことは言えないのでしょうが。
「ああ、二ヶ月後に王城で僕の二十歳の誕生日を祝うパーティが開かれるんだ。是非ともその全ての手配を君に任せたい。頼めるかい?」
「もちろんですわ!やらせてください!」
私は頭で考える前に殿下のお話に飛びついてしまった。でも仕方がないと思う。だってこんなに大きなお仕事に関われるなんて!モントワール商会の力を総動員して素敵なパーティにしてみせるわ!
「あはは、君ならそう言ってくれると思ったよ。本当はそのパーティで僕のパートナーも務めてくれると嬉しいんだけど…これから二ヶ月間、準備で色々と顔を合わせるだろうし、その中で少しずつ僕のことを知ってほしい」
「っ、で、殿下…」
曇りのない真っ直ぐな瞳に見据えられ、頬が染まらない女の子なんてきっといない。だから私が今赤い顔をしているのも他意はないし仕方がないこと。
「ああ、今まで誕生パーティは煩わしいばかりだったけど、今回ばかりは本当に楽しみだ。よろしくね、マリリン嬢」
「…よ、よろしくお願いいたします」
台風のようにやってきたエドワード殿下は、書類にしたためた私のサインを確かめると、満足げに外で控える従者を引き連れて帰って行った。
こうして誕生パーティに向けた準備の日々が始まったのだ。
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