12 / 17
第十二話 ロベルトの憂鬱
しおりを挟む
街で騒ぎを起こした翌日、ロベルトは未だ怒りが収まらない様子のメアリーを宥めるのに苦労していた。
あの場でルイーゼの弟のアレンが登場したのには驚かされた。彼は、何とも油断ならない雰囲気を醸し出していた。
ルイーゼといえば、最近は随分と親しみやすくなったと聞く。
ここ数日、学園内ではルイーゼの話題で盛り上がる生徒があちらこちらで見られた。驚くことに密かにファンクラブまでもが設立されているらしい。ルイーゼに親切にしてもらった、気にかけてもらった、微笑みかけてもらったと、着実にその会員数は増えているようだ。
更には、ロベルトにまで話の矛先は向き、“ルイーゼの本当の魅力に気付かずに婚約破棄をした愚かな男”というレッテルを貼られる始末だ。これまで散々ルイーゼの陰口を言っていたくせにと、ロベルトは何とも言えない気持ちになった。
ロベルトには優秀な兄がいる。
よくその兄と比較されて、落ちこぼれだとか物覚えが悪いだとか幼い頃から厳しい目を向けられてきた。この国の王と王妃である両親だけは、兄と比較せずにロベルト自身を尊重してくれたが、周囲はどうしても優秀な兄と比較をしたがった。
そんな兄は、幼い頃から隣国を転々として、今も歴史や政治についての見識を広めている。
一方のロベルトは国に残り、ヒューリヒ王立学園に入学をした。ロベルトなりに勉学に励んでいたのだが、学園での成績は中の中と振るわなかった。
その中で常にトップの成績を保っていたのがルイーゼであった。
周囲と関わり合いを持たず、妬みや僻みの視線を浴びつつも、気高く孤高の存在であったルイーゼに、ロベルトは密かに憧憬の念を抱いていた。
意を決して父である国王にルイーゼと婚約をしたいと申し入れ、ヴァンブルク家から承諾の回答が来た時には喜びの余り、宙に浮かぶ心地であった。
婚約者となって以降、ロベルトはルイーゼとの距離を縮めようと努めたつもりだったのだが、ルイーゼの心を開くことは叶わなかった。それどころか、人付き合いや自己表現が不得手なルイーゼは、学年を重ねるごとに孤立していき、ロベルトはそんなルイーゼを支えることができない自分に歯痒さを感じていた。
今思えば、ルイーゼは自分の評判を鑑みて、ロベルトに迷惑をかけないように距離を置いていたのかもしれない。とも思うのだが、如何せん当時のロベルトにそのような考えに至る心の余裕はなかった。ロベルトを頼ろうとしないルイーゼに対しても苛立ちを感じるようになり、次第に彼女に冷たく当たり、距離を取るようになった。そのことがよりルイーゼを追い詰めることになるとは露程も思わずに。
ルイーゼを切り捨ててまで選んだメアリーは、決して優秀だとは言えないロベルトにとって、砂漠の中のオアシスのような存在であった。
些細な話にも笑顔を見せ、コロコロ表情を変える彼女はとても眩かった。ロベルトはすごい、ロベルトは素敵だ、ロベルトが好きだと真っ直ぐに述べる彼女に、ロベルトも次第に入れ込んでいった。
そうだ、自分は決して落ちこぼれでもなければ出来損ないでもない。自分に関心を持たず、周囲への態度も貴族として相応しいと言えないルイーゼなんて、婚約者としては不適当である、と。次第にロベルトは自分に都合よく物事を解釈するようになっていった。
そして進級パーティの場で、晴れてルイーゼとの婚約を解消し、自分を支えてくれる将来の伴侶と公認の仲になった、と思っていた。
しかし、最近のメアリーは目に見えて苛立っており、ロベルトにまで当たり散らすようになっていた。表面上は優しく宥めているものの、目を吊り上げて罵声を浴びせる彼女の表情は醜く歪んで見えた。今までの可憐な彼女の姿は偽りであったのか、と思わずにはいられなかった。
ーーーーー本当に、自分の選択は正しかったのだろうか。
ロベルトの脳裏に浮かぶのは、冷たくも強い意志を秘めたアメジスト色の瞳。全てを見透かすようなその瞳に見据えられ、ロベルトの瞳は戸惑いがちに揺らいだ。
◇◇◇
その日の昼時、ロベルトは未だ機嫌の治らないメアリーと共に中庭に向かっていた。中庭に面した廊下を歩いていると、前方からマリアとラナに囲まれたルイーゼがやって来た。
友人達に囲まれて、ルイーゼの表情も柔らかい。思わずロベルトはルイーゼの姿に見惚れてしまった。
ロベルトの様子に気付いたメアリーもまた、ルイーゼの存在に視認したようだ。悔しそうに爪を噛みながらルイーゼを睨みつけると、何かを思いついたようにニヤリと口元を歪めた。
そして、ロベルトが呆けているうちにスタスタとルイーゼに向かって歩き出した。
ロベルトが我に返った時には、メアリーはルイーゼとすれ違うところでーーー
「いったぁぁい!!酷いわ!突き飛ばすことないじゃない!」
わざとルイーゼの肩にぶつかり、大袈裟に尻餅をついた。
メアリーの行動にロベルトの顔面は蒼白だ。誰がどう見てもメアリーの自作自演である。昔のルイーゼであれば、この手も通用したかもしれないが…
「…メアリーあなた一体何をしているの」
「今わざとルイーゼ様にぶつかったでしょう。私たち見ていたもの」
今はルイーゼの味方をする友人がいる。
メアリーの行動に表情を強張らせていたルイーゼだったが、マリアとラナが咄嗟に彼女を庇ったため、ほっと表情を和ませた。
「な、何よ…!あんたたち散々この女に嫌がらせをして来たくせに!今更更生したところで許されるとでも思ってるの!?」
尻餅をついたまま喚くメアリーの言葉にも二人は動じなかった。
「ええ、許されると思ってなんかいないわ。だけどね、こんな私たちでも、ルイーゼ様は友達だって言ってくれるの。だからこれから先、ルイーゼ様を悲しませるようなことはしないって誓ったのよ」
真っ直ぐにメアリーを見据えるマリア。その目には強い意志が秘められていた。
「くっ…ラナ…ラナ、ねぇ、あなたは私の親友でしょう?親友を見捨ててその女の肩を持つっていうの?」
メアリーは自分が不利だと悟り、今度はラナに訴えかけた。
「親友、ね。今更何をいっているの?自分に都合のいい時にだけ親友扱いして、私は何度もあなたに利用されてきた。ずっとあなたが昔みたいに心優しい子に戻ってくれるって信じてた。でも、もう無理みたいね。私たちは友達でも何でもないわ。お互いに思いやる気持ちがないと本当の友達とは言えない…今のメアリーにはそれがないもの」
メアリーの訴えに、ラナは悲しそうにゆっくりと首を振った。メアリーは絶句して目を見開いている。
「なんだなんだ?何の騒ぎだ?」
「あの尻餅ついてる子がルイーゼ様にわざとぶつかってたわ。私見たもの」
「あれ、あの子…昨日街のドレス店でも騒いでたわよね?」
「ああ、俺も見たよ!」
そうこうしてる間に、周りに生徒たちが集まって来ていた。
その中にメアリーの味方をするものはいなかった。
またか…と溜息をつきながらも、ロベルトは座り込むメアリーに手を貸し、半ば強引に立たせるとジッとルイーゼを見つめた。ルイーゼの瞳には少し戸惑いの色が滲んだが、ロベルトは力無く微笑むと、
「すまなかった」
そう言ってメアリーを連れてその場から離れた。
中庭を挟んだ対面の廊下から、アレンがこちらをじっと見ていることには気が付かなかった。
あの場でルイーゼの弟のアレンが登場したのには驚かされた。彼は、何とも油断ならない雰囲気を醸し出していた。
ルイーゼといえば、最近は随分と親しみやすくなったと聞く。
ここ数日、学園内ではルイーゼの話題で盛り上がる生徒があちらこちらで見られた。驚くことに密かにファンクラブまでもが設立されているらしい。ルイーゼに親切にしてもらった、気にかけてもらった、微笑みかけてもらったと、着実にその会員数は増えているようだ。
更には、ロベルトにまで話の矛先は向き、“ルイーゼの本当の魅力に気付かずに婚約破棄をした愚かな男”というレッテルを貼られる始末だ。これまで散々ルイーゼの陰口を言っていたくせにと、ロベルトは何とも言えない気持ちになった。
ロベルトには優秀な兄がいる。
よくその兄と比較されて、落ちこぼれだとか物覚えが悪いだとか幼い頃から厳しい目を向けられてきた。この国の王と王妃である両親だけは、兄と比較せずにロベルト自身を尊重してくれたが、周囲はどうしても優秀な兄と比較をしたがった。
そんな兄は、幼い頃から隣国を転々として、今も歴史や政治についての見識を広めている。
一方のロベルトは国に残り、ヒューリヒ王立学園に入学をした。ロベルトなりに勉学に励んでいたのだが、学園での成績は中の中と振るわなかった。
その中で常にトップの成績を保っていたのがルイーゼであった。
周囲と関わり合いを持たず、妬みや僻みの視線を浴びつつも、気高く孤高の存在であったルイーゼに、ロベルトは密かに憧憬の念を抱いていた。
意を決して父である国王にルイーゼと婚約をしたいと申し入れ、ヴァンブルク家から承諾の回答が来た時には喜びの余り、宙に浮かぶ心地であった。
婚約者となって以降、ロベルトはルイーゼとの距離を縮めようと努めたつもりだったのだが、ルイーゼの心を開くことは叶わなかった。それどころか、人付き合いや自己表現が不得手なルイーゼは、学年を重ねるごとに孤立していき、ロベルトはそんなルイーゼを支えることができない自分に歯痒さを感じていた。
今思えば、ルイーゼは自分の評判を鑑みて、ロベルトに迷惑をかけないように距離を置いていたのかもしれない。とも思うのだが、如何せん当時のロベルトにそのような考えに至る心の余裕はなかった。ロベルトを頼ろうとしないルイーゼに対しても苛立ちを感じるようになり、次第に彼女に冷たく当たり、距離を取るようになった。そのことがよりルイーゼを追い詰めることになるとは露程も思わずに。
ルイーゼを切り捨ててまで選んだメアリーは、決して優秀だとは言えないロベルトにとって、砂漠の中のオアシスのような存在であった。
些細な話にも笑顔を見せ、コロコロ表情を変える彼女はとても眩かった。ロベルトはすごい、ロベルトは素敵だ、ロベルトが好きだと真っ直ぐに述べる彼女に、ロベルトも次第に入れ込んでいった。
そうだ、自分は決して落ちこぼれでもなければ出来損ないでもない。自分に関心を持たず、周囲への態度も貴族として相応しいと言えないルイーゼなんて、婚約者としては不適当である、と。次第にロベルトは自分に都合よく物事を解釈するようになっていった。
そして進級パーティの場で、晴れてルイーゼとの婚約を解消し、自分を支えてくれる将来の伴侶と公認の仲になった、と思っていた。
しかし、最近のメアリーは目に見えて苛立っており、ロベルトにまで当たり散らすようになっていた。表面上は優しく宥めているものの、目を吊り上げて罵声を浴びせる彼女の表情は醜く歪んで見えた。今までの可憐な彼女の姿は偽りであったのか、と思わずにはいられなかった。
ーーーーー本当に、自分の選択は正しかったのだろうか。
ロベルトの脳裏に浮かぶのは、冷たくも強い意志を秘めたアメジスト色の瞳。全てを見透かすようなその瞳に見据えられ、ロベルトの瞳は戸惑いがちに揺らいだ。
◇◇◇
その日の昼時、ロベルトは未だ機嫌の治らないメアリーと共に中庭に向かっていた。中庭に面した廊下を歩いていると、前方からマリアとラナに囲まれたルイーゼがやって来た。
友人達に囲まれて、ルイーゼの表情も柔らかい。思わずロベルトはルイーゼの姿に見惚れてしまった。
ロベルトの様子に気付いたメアリーもまた、ルイーゼの存在に視認したようだ。悔しそうに爪を噛みながらルイーゼを睨みつけると、何かを思いついたようにニヤリと口元を歪めた。
そして、ロベルトが呆けているうちにスタスタとルイーゼに向かって歩き出した。
ロベルトが我に返った時には、メアリーはルイーゼとすれ違うところでーーー
「いったぁぁい!!酷いわ!突き飛ばすことないじゃない!」
わざとルイーゼの肩にぶつかり、大袈裟に尻餅をついた。
メアリーの行動にロベルトの顔面は蒼白だ。誰がどう見てもメアリーの自作自演である。昔のルイーゼであれば、この手も通用したかもしれないが…
「…メアリーあなた一体何をしているの」
「今わざとルイーゼ様にぶつかったでしょう。私たち見ていたもの」
今はルイーゼの味方をする友人がいる。
メアリーの行動に表情を強張らせていたルイーゼだったが、マリアとラナが咄嗟に彼女を庇ったため、ほっと表情を和ませた。
「な、何よ…!あんたたち散々この女に嫌がらせをして来たくせに!今更更生したところで許されるとでも思ってるの!?」
尻餅をついたまま喚くメアリーの言葉にも二人は動じなかった。
「ええ、許されると思ってなんかいないわ。だけどね、こんな私たちでも、ルイーゼ様は友達だって言ってくれるの。だからこれから先、ルイーゼ様を悲しませるようなことはしないって誓ったのよ」
真っ直ぐにメアリーを見据えるマリア。その目には強い意志が秘められていた。
「くっ…ラナ…ラナ、ねぇ、あなたは私の親友でしょう?親友を見捨ててその女の肩を持つっていうの?」
メアリーは自分が不利だと悟り、今度はラナに訴えかけた。
「親友、ね。今更何をいっているの?自分に都合のいい時にだけ親友扱いして、私は何度もあなたに利用されてきた。ずっとあなたが昔みたいに心優しい子に戻ってくれるって信じてた。でも、もう無理みたいね。私たちは友達でも何でもないわ。お互いに思いやる気持ちがないと本当の友達とは言えない…今のメアリーにはそれがないもの」
メアリーの訴えに、ラナは悲しそうにゆっくりと首を振った。メアリーは絶句して目を見開いている。
「なんだなんだ?何の騒ぎだ?」
「あの尻餅ついてる子がルイーゼ様にわざとぶつかってたわ。私見たもの」
「あれ、あの子…昨日街のドレス店でも騒いでたわよね?」
「ああ、俺も見たよ!」
そうこうしてる間に、周りに生徒たちが集まって来ていた。
その中にメアリーの味方をするものはいなかった。
またか…と溜息をつきながらも、ロベルトは座り込むメアリーに手を貸し、半ば強引に立たせるとジッとルイーゼを見つめた。ルイーゼの瞳には少し戸惑いの色が滲んだが、ロベルトは力無く微笑むと、
「すまなかった」
そう言ってメアリーを連れてその場から離れた。
中庭を挟んだ対面の廊下から、アレンがこちらをじっと見ていることには気が付かなかった。
34
あなたにおすすめの小説
白い結婚のはずでしたが、いつの間にか選ぶ側になっていました
ふわふわ
恋愛
王太子アレクシオンとの婚約を、
「完璧すぎて可愛げがない」という理不尽な理由で破棄された
侯爵令嬢リオネッタ・ラーヴェンシュタイン。
涙を流しながらも、彼女の内心は静かだった。
――これで、ようやく“選ばれる人生”から解放される。
新たに提示されたのは、冷徹無比と名高い公爵アレスト・グラーフとの
白い結婚という契約。
干渉せず、縛られず、期待もしない――
それは、リオネッタにとって理想的な条件だった。
しかし、穏やかな日々の中で、
彼女は少しずつ気づいていく。
誰かに価値を決められる人生ではなく、
自分で選び、立ち、並ぶという生き方に。
一方、彼女を切り捨てた王太子と王城は、
静かに、しかし確実に崩れていく。
これは、派手な復讐ではない。
何も奪わず、すべてを手に入れた令嬢の物語。
残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……
【完結】悪役令嬢はご病弱!溺愛されても断罪後は引き篭もりますわよ?
鏑木 うりこ
恋愛
アリシアは6歳でどハマりした乙女ゲームの悪役令嬢になったことに気がついた。
楽しみながらゆるっと断罪、ゆるっと領地で引き篭もりを目標に邁進するも一家揃って病弱設定だった。
皆、寝込んでるから入学式も来れなかったんだー納得!
ゲームの裏設定に一々納得しながら進んで行くも攻略対象者が仲間になりたそうにこちらを見ている……。
聖女はあちらでしてよ!皆様!
辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。
コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。
だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。
それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。
ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。
これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。
【完結】冷遇され続けた私、悪魔公爵と結婚して社交界の花形になりました~妹と継母の陰謀は全てお見通しです~
深山きらら
恋愛
名門貴族フォンティーヌ家の長女エリアナは、継母と美しい義妹リリアーナに虐げられ、自分の価値を見失っていた。ある日、「悪魔公爵」と恐れられるアレクシス・ヴァルモントとの縁談が持ち込まれる。厄介者を押し付けたい家族の思惑により、エリアナは北の城へ嫁ぐことに。
灰色だった薔薇が、愛によって真紅に咲く物語。
白い結婚のはずでしたが、理屈で抗った結果すべて自分で詰ませました
鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがない」
そう言われて王太子から婚約破棄された公爵令嬢ノエリア・ヴァンローゼ。
――ですが本人は、わざとらしい嘘泣きで
「よ、よ、よ、よ……遊びでしたのね!」
と大騒ぎしつつ、内心は完全に平常運転。
むしろ彼女の目的はただ一つ。
面倒な恋愛も政治的干渉も避け、平穏に生きること。
そのために選んだのは、冷徹で有能な公爵ヴァルデリオとの
「白い結婚」という、完璧に合理的な契約でした。
――のはずが。
純潔アピール(本人は無自覚)、
排他的な“管理”(本人は合理的判断)、
堂々とした立ち振る舞い(本人は通常運転)。
すべてが「戦略」に見えてしまい、
気づけば周囲は完全包囲。
逃げ道は一つずつ消滅していきます。
本人だけが最後まで言い張ります。
「これは恋ではありませんわ。事故ですの!」
理屈で抗い、理屈で自滅し、
最終的に理屈ごと恋に敗北する――
無自覚戦略無双ヒロインの、
白い結婚(予定)ラブコメディ。
婚約破棄ざまぁ × コメディ強め × 溺愛必至。
最後に負けるのは、世界ではなく――ヒロイン自身です。
-
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
【完結】仕事のための結婚だと聞きましたが?~貧乏令嬢は次期宰相候補に求められる
仙桜可律
恋愛
「もったいないわね……」それがフローラ・ホトレイク伯爵令嬢の口癖だった。社交界では皆が華やかさを競うなかで、彼女の考え方は異端だった。嘲笑されることも多い。
清貧、質素、堅実なんていうのはまだ良いほうで、陰では貧乏くさい、地味だと言われていることもある。
でも、違う見方をすれば合理的で革新的。
彼女の経済観念に興味を示したのは次期宰相候補として名高いラルフ・バリーヤ侯爵令息。王太子の側近でもある。
「まるで雷に打たれたような」と彼は後に語る。
「フローラ嬢と話すとグラッ(価値観)ときてビーン!ときて(閃き)ゾクゾク湧くんです(政策が)」
「当代随一の頭脳を誇るラルフ様、どうなさったのですか(語彙力どうされたのかしら)もったいない……」
仕事のことしか頭にない冷徹眼鏡と無駄使いをすると体調が悪くなる病気(メイド談)にかかった令嬢の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる