僕の彼女はヒーローなんです

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「愛川さん……どうしてここに?」
「あなた達が屋上へ向かうのが見えたから」
 クラスの人気者である彼女に声をかけられたのはさすがに僕にも予想外だった。
「俺達に何か用でも?」
 普段まともに女子と会話しない……というより出来ない僕と違い、翔太は相手がクラスの人気者でも気にせず会話が出来るから凄い。
「あなた達……というより相浦君に話があるの」
「ぼ、僕に!?」
「もし良ければ2人きりで話をしたいのだけれど……いいかしら」
 彼女の言葉に翔太は何かを察したらしく、悪戯な笑みを浮かべていた。そして一言僕の耳元で。
「がんばれよ」
 と囁いて屋上を後にした。
 女子と2人きりというこの状況、しかも相手はあの愛川さんだ。
「えっと、それで僕に話って……」
「その腕の怪我……もう大丈夫なの?」
 そう言って彼女は僕の腕を心配そうに見つめていた。
「え、ああ、もう痛くはないし傷跡も残らないだろうって」
「そう……」
 気まずい沈黙が続いた
「あの……話ってそれで終わり?それなら僕はそろそろ……」
 その場の空気に耐えられず立ち去ろうとする僕の服の裾を愛川さんがそっと掴んで引き止めた。
「あの時、どうしてあなたは悪人に立ち向かったりしたの? あんな……あんな危険なことをあなたがする必要はなかったのに」
「えっと、それってどういう」
「下手したら死ぬかもしれないのよ!」
 急に声を荒げた愛川の様子は怒っているというより、むしろ今にも泣きそうな感じだった。
「愛川さんもあの場所に居たの?」
「……」
 愛川さんは再び黙ってしまった。そんな彼女の様子を見ながら僕はあの時のことを思い出していた。
「あの時、翔太からのメッセージで警察が突入することを僕は知ってたんだ。だから何もしなければ確かに僕は無傷で済んだかもしれない」
「だったら大人しく待っていれば良かったのよ」
「それは出来ないよ」
「どうして!」
「だってフリーズガールは見ず知らずの僕達の為に命がけで戦ってくれたんだ。そんな彼女のピンチを黙って見過ごすことは僕には出来なかった」
「あ……」
 愛川さんは驚いていた。僕自身でさえあんな恐ろしい相手に僕が立ち向かえるとは思っていなかったから当然の反応だ。
「でもどうして愛川さんがそんなこと気にするの?」
「それは……私が、私のせいで……あなたが……」
 愛川さんは何かを必死に伝えようとしていた。けれど上手く言葉が出てこないようで。
「なんにせよ君のせいじゃないよ。僕が勝手にやったことだし」
 その言葉を聞いて愛川さんは再び泣きそうになっていた。
「だって……だって私がもっと強かったらあなたが傷つくことはなかった!」
 その言葉の意味を僕はすぐには理解出来なかった。
「愛川さん何を言って……」
「だってそうでしょう! 私があの悪人達に負けてさえいなければあなたが手を出す必要はなかった」
「ちょ、ちょっと待って。どういう意味なのか僕にはさっぱり」
「だから! 私がフリーズガールなの!」
 驚愕の真実だった。
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