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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/死闘編
Part35 死闘・正義のシルエット/行為者イプシロン
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そしてディアリオが操るドローンの声は、もう一つの存在であるイプシロンへも向けられた。
〔あなたがどのような存在で、どの組織に所属しているかは存じません。ですが貴方が地上の子どもたちを守ろうとしていたのは理解しました。私は警察です。このヘリの地上攻撃を阻止するために協力を要請します〕
ディアリオからもたらされたのは意外な言葉だった。警察を名乗る者の言葉にイプシロンは思わず問い返した。
「俺、イプシロン。オマエは?」
〔ディアリオ〕
シンプルに交わされるお互いの名前。それだけで二人が契約として言葉をかわすには十分である。ディアリオから役割分担が指示される。
〔私がドローンであのアバターボディを牽制します。あなたは隙をついてアバターボディの破壊をお願いします〕
「ゲロッ、判った」
イプシロンがディアリオの申し出を了承した瞬間、新たに5機ほどの空戦ドローンが姿を現した。それはこの街の上空でフィールたちと一戦を交えたあの機体と同型であり、ファイブが姿を消したことで管理に隙きが生じた機体であった。その一瞬をついてディアリオが再ハッキングしたのである。すると香田が問い掛けてくる。
『馬鹿な! 貴様そいつが何者なのか分かっているのか! ディアリオ!』
香田の言葉はもっともである。だがそれに対する言葉も至極当然の物であった。
〔彼は命を守ろうとしている。この街に殺戮をもたらそうとしているあなた方よりは数段マシですよ〕
その言葉に反論する言葉を香田は持ち合わせていない。
〔行動開始〕
ディアリオが発した言葉は簡素だったが合図として、警告として、必要十分である。
それもまた正義の一つの形であった。
『団結』
――同じ目的の為に出自も理念も異なる者同士が力を合わせ、最大公約数的な皆の幸せと成功の為に行動する。現在のディアリオとイプシロンの行動はまさにそれであった。
今まさに反撃の時は訪れたのである。
@ @ @
クラウンは物見であった。
その姿は完璧に近い形で隠されていた。
インビジブルな状態で荒れ地の上に立ち頭上を仰いでいる。その視線の先に居るのは、彼の腹心の部下であるイプシロン――そして彼が突入していったステルスヘリがある。
クラウンは腰に手を当てながら静かにこう告げたのである
「なかなか、しっかりとやってますね。単なる復讐者ではなく確固たるポリシーを持つ〝行為者〟として。それでこそ私の部下です」
クラウンはそう語りながら満足気に頷く。
「自らの意志で、何のために、どんな結果をもたらす為に行動するか――〝人〟にはそれが必要なのです。ただ無目的に流され、無意識の内に集団的悪意に加担するような輩には、この世界に存在する意義はありません。そしてそれがどれだけこの世界を破壊し、汚し続けている事か! そのような輩は死してしかるべきなのです!」
その視線は、この荒れ地の上で繰り広げられている数多の闘いの一つ一つをじっと見つめていた。
「道化としてトリックスターとして、世の人々にその事を問い続け、世界をかき回し続ける。それこれが〝我ら〟――プレヤデスクラスターズ――」
そこに浮かぶクラウンの表情は満面の笑顔であった。
「イプシロン――合格です。貴方は正しい」
そうごちると再びクラウンはうなうづいていた。そして自らの部下の行く末をじっと見守っていたのである。
これもまた正義である。その正義の名をこう呼ぶ――
『追求者』
――彼は問い掛けずにはいられないのだから。
〔あなたがどのような存在で、どの組織に所属しているかは存じません。ですが貴方が地上の子どもたちを守ろうとしていたのは理解しました。私は警察です。このヘリの地上攻撃を阻止するために協力を要請します〕
ディアリオからもたらされたのは意外な言葉だった。警察を名乗る者の言葉にイプシロンは思わず問い返した。
「俺、イプシロン。オマエは?」
〔ディアリオ〕
シンプルに交わされるお互いの名前。それだけで二人が契約として言葉をかわすには十分である。ディアリオから役割分担が指示される。
〔私がドローンであのアバターボディを牽制します。あなたは隙をついてアバターボディの破壊をお願いします〕
「ゲロッ、判った」
イプシロンがディアリオの申し出を了承した瞬間、新たに5機ほどの空戦ドローンが姿を現した。それはこの街の上空でフィールたちと一戦を交えたあの機体と同型であり、ファイブが姿を消したことで管理に隙きが生じた機体であった。その一瞬をついてディアリオが再ハッキングしたのである。すると香田が問い掛けてくる。
『馬鹿な! 貴様そいつが何者なのか分かっているのか! ディアリオ!』
香田の言葉はもっともである。だがそれに対する言葉も至極当然の物であった。
〔彼は命を守ろうとしている。この街に殺戮をもたらそうとしているあなた方よりは数段マシですよ〕
その言葉に反論する言葉を香田は持ち合わせていない。
〔行動開始〕
ディアリオが発した言葉は簡素だったが合図として、警告として、必要十分である。
それもまた正義の一つの形であった。
『団結』
――同じ目的の為に出自も理念も異なる者同士が力を合わせ、最大公約数的な皆の幸せと成功の為に行動する。現在のディアリオとイプシロンの行動はまさにそれであった。
今まさに反撃の時は訪れたのである。
@ @ @
クラウンは物見であった。
その姿は完璧に近い形で隠されていた。
インビジブルな状態で荒れ地の上に立ち頭上を仰いでいる。その視線の先に居るのは、彼の腹心の部下であるイプシロン――そして彼が突入していったステルスヘリがある。
クラウンは腰に手を当てながら静かにこう告げたのである
「なかなか、しっかりとやってますね。単なる復讐者ではなく確固たるポリシーを持つ〝行為者〟として。それでこそ私の部下です」
クラウンはそう語りながら満足気に頷く。
「自らの意志で、何のために、どんな結果をもたらす為に行動するか――〝人〟にはそれが必要なのです。ただ無目的に流され、無意識の内に集団的悪意に加担するような輩には、この世界に存在する意義はありません。そしてそれがどれだけこの世界を破壊し、汚し続けている事か! そのような輩は死してしかるべきなのです!」
その視線は、この荒れ地の上で繰り広げられている数多の闘いの一つ一つをじっと見つめていた。
「道化としてトリックスターとして、世の人々にその事を問い続け、世界をかき回し続ける。それこれが〝我ら〟――プレヤデスクラスターズ――」
そこに浮かぶクラウンの表情は満面の笑顔であった。
「イプシロン――合格です。貴方は正しい」
そうごちると再びクラウンはうなうづいていた。そして自らの部下の行く末をじっと見守っていたのである。
これもまた正義である。その正義の名をこう呼ぶ――
『追求者』
――彼は問い掛けずにはいられないのだから。
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