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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/死闘編
Part35 死闘・正義のシルエット/姿なき介入者
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片やバケガエルのイプシロン、片やステルスヘリのパイロット香田――2人は身じろぎせずに向かい合っていた。
わずかでも動けば香田のアバターボディが襲い掛かってくる。それも遠距離も近距離も手段を選ばずに。イプシロンも反撃のために口を開けようとするが、開ければその時こそ終わる。この香田と言う男の技量なら、イプシロンのカエル型の機体の急所を即座に把握して正確に貫いてくるだろう。
だが逃げずに居ても、やがてくる結果は同じだった。外面から傷つけられてじわじわと余力を奪われる。まさに打つ手無しと言った状況だったのである。
そしてついに、そのアバターボディは声を発した。にらみ合いを終わらせるために。
「時間の無駄だ」
右手の高周波サーベルを一瞬後方へと引く。いわゆる弓引く動作というやつだ。それを突き出せば、この無駄な時間がようやく終わる。そして、機外へと異物を排除すれば完了である。
だが、無言で攻撃を仕掛けようと駆け出したその時である。
「――!」
無意識に駆け出そうとする両足が止まる。ある一発の発射音が香田のアバターボディの足を踏みとどまらせていた。撃ち放たれた弾丸はアバターボディの鼻先をかすめて通り過ぎたのである。
「なに?」
驚き、周囲を見回す。するとそこには一機の空戦ドローンがこちらめがけてその銃口を向けていた。それは明らかに香田のアバターボディを狙いすましていたのである。
銃身は6連でペッパーボックスピストル形式。それが3基で合計18発。ドローンの側面部に備わっている。それが強い威嚇としての力を放っている。
そしてそれは〝敵意〟である。
攻撃の意図を把握しないと迂闊にそれ以外の行動を取ることができない。苛立ちと焦りを感じながら、香田はそのドローンへと問い掛けた。
『なんの真似だ?』
その言葉が呼び水となる。ドローンがもう一体。機内へと侵入してくる。次に侵入してきたのはドローン本体の外周部に回転ノコ刃を装備した近接戦闘タイプだ。それが香田のアバターボディとイプシロンの間に割って入ってきたのである。その動きその物がドローンの行動の意図を端的に現していた。そのドローンは香田にとって敵対的存在だったのだ。
『貴様!』
そのドローンの向こう側に居るであろう操縦者に対して怒りが炸裂する。だがその怒りすらもドローンの所有者は意に介さない。香田の言葉の一切をガン無視して一方的に話し始めたのである。
〔先程は世話になりましたね。情報戦特化小隊の皆さん。あらためて生存報告とご挨拶にまいりましたよ〕
慇懃無礼なまでに丁寧な口調、そして理性的なその語り口には香田も聞き覚えがあった。
『そ、その声? ディ、ディアリオか?』
〔えぇ、私です。特攻装警第4号機ディアリオ。無事生存しています。あなた方の行動の一部を阻止にまいりました〕
驚きと戸惑いを隠せない香田に対して、ドローンの向こう側のディアリオの声はひどく冷静で淡々としていた。そこにはダメージを負った際の狼狽えや弱さは感じられず、余力があるが故のある種の残酷さが滲んだ冷静さだけが伝わってきたのである。
それは知性派・理性派の極北を極めていると言われるディアリオだからこその対応であったのだ。
『阻止だと? 貴様、あの300m以上はある高度から落下して無事だったというのか?』
そうだ、先程ディアリオは地上へのロープ降下に失敗して真っ逆さまに落ちていったはずだ。
〔えぇ、多少は傷つきました。メットのゴーグルが少し割れましたのでソレについては後ほど修理代を請求させていただきます。ですがそれ以外は全くの無傷です。すべての作戦行動にはなんの問題もありません〕
『馬鹿な! あり得ない!』
〔あなたがどう思おうが勝手です。ですがこれは事実です。私は生存して居ます。これでも私の身体は頑丈さで有名なアトラス譲りの外骨格ベースです。あの程度の空中落下でどうにかなるような華奢な体はしていません〕
冷静さを崩さない淡々とした語り口、それがかえって口調の奥に込められた怒りと敵対心――そして正義感を克明に浮かび上がらせていた。香田が驚きと焦りを感じている中、彼からの反論を待たずにディアリオは更に告げたのである。
〔あなたたちに落とされた街で面白い物を見つけました。この街のサイバーマフィアが使っていた戦闘用ドローンです。マフィア側の管理下を離れた個体を数十機掌握しました。すでにドローンの遠隔カメラを用いてあなた方の行動の一端を撮影しつつあります。無論、このヘリの行動も掌握済みです〕
『なに?!』
ディアリオの言葉に香田も驚かざるをえない。その言葉がハッタリでは無いのは、この眼前の二体のドローンの存在が証拠だった。否が応でも事実として突きつけてくるのだ。歯噛みする香田をよそにディアリオは更に告げたのである。
〔あなた方に逃げ場はありません。それにこれ以上、無意味な殺戮も許しません。あなたの行動をここで阻止します〕
わずかでも動けば香田のアバターボディが襲い掛かってくる。それも遠距離も近距離も手段を選ばずに。イプシロンも反撃のために口を開けようとするが、開ければその時こそ終わる。この香田と言う男の技量なら、イプシロンのカエル型の機体の急所を即座に把握して正確に貫いてくるだろう。
だが逃げずに居ても、やがてくる結果は同じだった。外面から傷つけられてじわじわと余力を奪われる。まさに打つ手無しと言った状況だったのである。
そしてついに、そのアバターボディは声を発した。にらみ合いを終わらせるために。
「時間の無駄だ」
右手の高周波サーベルを一瞬後方へと引く。いわゆる弓引く動作というやつだ。それを突き出せば、この無駄な時間がようやく終わる。そして、機外へと異物を排除すれば完了である。
だが、無言で攻撃を仕掛けようと駆け出したその時である。
「――!」
無意識に駆け出そうとする両足が止まる。ある一発の発射音が香田のアバターボディの足を踏みとどまらせていた。撃ち放たれた弾丸はアバターボディの鼻先をかすめて通り過ぎたのである。
「なに?」
驚き、周囲を見回す。するとそこには一機の空戦ドローンがこちらめがけてその銃口を向けていた。それは明らかに香田のアバターボディを狙いすましていたのである。
銃身は6連でペッパーボックスピストル形式。それが3基で合計18発。ドローンの側面部に備わっている。それが強い威嚇としての力を放っている。
そしてそれは〝敵意〟である。
攻撃の意図を把握しないと迂闊にそれ以外の行動を取ることができない。苛立ちと焦りを感じながら、香田はそのドローンへと問い掛けた。
『なんの真似だ?』
その言葉が呼び水となる。ドローンがもう一体。機内へと侵入してくる。次に侵入してきたのはドローン本体の外周部に回転ノコ刃を装備した近接戦闘タイプだ。それが香田のアバターボディとイプシロンの間に割って入ってきたのである。その動きその物がドローンの行動の意図を端的に現していた。そのドローンは香田にとって敵対的存在だったのだ。
『貴様!』
そのドローンの向こう側に居るであろう操縦者に対して怒りが炸裂する。だがその怒りすらもドローンの所有者は意に介さない。香田の言葉の一切をガン無視して一方的に話し始めたのである。
〔先程は世話になりましたね。情報戦特化小隊の皆さん。あらためて生存報告とご挨拶にまいりましたよ〕
慇懃無礼なまでに丁寧な口調、そして理性的なその語り口には香田も聞き覚えがあった。
『そ、その声? ディ、ディアリオか?』
〔えぇ、私です。特攻装警第4号機ディアリオ。無事生存しています。あなた方の行動の一部を阻止にまいりました〕
驚きと戸惑いを隠せない香田に対して、ドローンの向こう側のディアリオの声はひどく冷静で淡々としていた。そこにはダメージを負った際の狼狽えや弱さは感じられず、余力があるが故のある種の残酷さが滲んだ冷静さだけが伝わってきたのである。
それは知性派・理性派の極北を極めていると言われるディアリオだからこその対応であったのだ。
『阻止だと? 貴様、あの300m以上はある高度から落下して無事だったというのか?』
そうだ、先程ディアリオは地上へのロープ降下に失敗して真っ逆さまに落ちていったはずだ。
〔えぇ、多少は傷つきました。メットのゴーグルが少し割れましたのでソレについては後ほど修理代を請求させていただきます。ですがそれ以外は全くの無傷です。すべての作戦行動にはなんの問題もありません〕
『馬鹿な! あり得ない!』
〔あなたがどう思おうが勝手です。ですがこれは事実です。私は生存して居ます。これでも私の身体は頑丈さで有名なアトラス譲りの外骨格ベースです。あの程度の空中落下でどうにかなるような華奢な体はしていません〕
冷静さを崩さない淡々とした語り口、それがかえって口調の奥に込められた怒りと敵対心――そして正義感を克明に浮かび上がらせていた。香田が驚きと焦りを感じている中、彼からの反論を待たずにディアリオは更に告げたのである。
〔あなたたちに落とされた街で面白い物を見つけました。この街のサイバーマフィアが使っていた戦闘用ドローンです。マフィア側の管理下を離れた個体を数十機掌握しました。すでにドローンの遠隔カメラを用いてあなた方の行動の一端を撮影しつつあります。無論、このヘリの行動も掌握済みです〕
『なに?!』
ディアリオの言葉に香田も驚かざるをえない。その言葉がハッタリでは無いのは、この眼前の二体のドローンの存在が証拠だった。否が応でも事実として突きつけてくるのだ。歯噛みする香田をよそにディアリオは更に告げたのである。
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