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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/死闘編

Part34 カエルノオウジサマ/3人の魔法つかい

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 爆炎は余りにも目立ちすぎていた。それ故にステルスだらけの戦場の中ですべての者たちの視線を集めるには十分過ぎる出来事だった。そしてその爆炎の残渣の中から一体のカエルが落ちて地面に横たわったとなれば、そこに何かを感じずにはいられないのは当然であった。
 
 最初に気づいたのはプロセスの中の一人――先程、トリーと語らい合っていたハンチング帽の狩猟ファッションの少女のダウであった。視覚力を始めとして彼女は〝見ること〟に対して誰よりも優れていた。
 爆炎――そこから落ちてくる〝カエル〟――そしてその真下にある廃屋ビル。その廃屋ビルの壊れた窓の隙間から、怯える子供らのシルエットを僅かに見た事で、彼女は全ての事情を察していた。
 
「まさか?」

 そして頭上の方向を仰げば、完全ではないが虚空の空に浮かぶ機械のようなシルエットを視認していた。ダウはそのシルエットの正体を類推する。
 
「おそらくアレは――、狙撃手を乗せたステルスヘリ! 子どもたちを狙ったのか!」

 その闇に隠れた者の正体に気づいた時、ダウは速やかに行動した。ウノがしたように体内に宿した通信手段により仲間たちのプロセスへと声を発した。

〔全プロセスに通達! 上空にステルスヘリが居る! 悪質な狙撃手が無意味な殺戮を試みようとしている! 対策頼む!〕

 ダウの必死の声に返って来た声は3つであった。
 
〔任せて。私とタンが行くわ〕
〔その声、グウィントとタンか?〕

 帰ってきた丁寧な語り口の声にダウが問いかければ、さらに返ってきたのは軍人のような強い語り口の少女の声だった。
 
〔私とグウィントであのカエル型の機体の支援を行う。そのための考えがすでに有る。任せてくれ〕
〔判ったよ、タン。武運を祈る〕
〔君も気をつけ給えよ〕
〔あぁ〕

 その言葉のやりとりの後で、さらに聞こえてきたのは豪快さを感じさせるような男のような語り口だった。女性であることは解るがその性格の力強さがにじみ出ていた。
 
〔ダウ! 聞こえるか?〕
〔あぁ、聞こえる。ダエアだな?〕
〔子供らの保護は俺に任せな〕
〔そうだな君なら適任だな。こちらでも状況を視認して何か起きたら連絡する〕
〔あいよ! それじゃまた後でな!〕

 ウノ、ダウ、そしてトリーに続く、他のプロセスたちも少しづつ姿を表しつつあった。悪意が満ちたこの場所で、独自の価値観を持って毅然と行動する者たちである。
 
〔ダウ〕
〔ウノか?〕
〔そちらでも動いているみたいね〕
〔あぁ、無国籍の孤児たちが逃げおくれてる。誰かはわからないが子供らを狙っている奴らが居る。タンとグウィント、それとダエアが救けに向かった〕
〔分かったわ。私はベルトコーネ回収の指揮を執るから、そちらの統括は貴方に任せるわね〕
〔了解〕
〔それじゃね〕

 速やかにシンプルにやり取りは終わる。そしてダウはすべての状況を冷静に観察把握しながら事の成り行きを見守り続けたのである。
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