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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の養生楼閣都市/死闘編
Part29 死闘・創造頭脳/彼らに祝福を、彼らに勝利を
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「い、行っちゃった」
その唐突な行動を呆然として見ていたイオタだったが、さらにその背後から騒がしい声が聞こえてくる。ガチャガチャと西洋甲冑を鳴らしながら歩いてくる老騎士と、それに従うずんぐりむっくりとしたマント姿の従者。まさに凸凹コンビと言う言い方がしっくりと来る2人であった。
「パイチョス! 主殿から言い賜った集まりの約束の場所とはここかいな?」
「はいです! 旦那様! この汚れた塔のてっぺんにございますです!」
「そうかそうか! して今宵の仕事のお仲間はいずれの者であるか?」
「はいです! 旦那様! 今宵のお仕事は、イオタ姫にイプシロン殿にシグマ殿とお聞き及んでおりますです! おお! 旦那様! 噂をすればあそこにイオタ姫様が!」
「うむ! しかと見た! シグマ殿もおられるではないか! 姫様~~!」
どこかのイタリア映画の3流喜劇から切り抜いてきたような2人がビルの外側の非常階段から現れたのだ。しかし隠密行動が主のイオタやイプシロンとは異なり、ショー向けのコミカルな動きが身に染み付いているのだろう。賑やかしと騒がしさが何より目立っていた。
ドタドタと足音を鳴らしながら2人は近づいてくる。そして、イオタに向けて老騎士のシルエットが声をかける。
「イオタ姫様! 遍歴の騎士タウゼント、ただ今到着いたしました!」
「従者パイチョス、同じく!」
タウゼントが片膝ついて右手を差し出し、パイチョスも両膝を突いてうやうやしく頭をたれていた。時代錯誤という言葉をそのまま絵に描いたような2人である。だが彼らの行動に対するイオタからのリアクションは薄かった。
沈黙したままどこかを見つめているイオタ。そのイオタがボソリと呟く。
「行っちゃった」
「は?」
イオタのつぶやきにタウゼントが声を上げる。
「あの――、姫?」
タウゼントがさらに問いかけるがイオタは完全スルーで何処かへと声を発する。問いかける相手はあの人物である。
〔おーい! ちょっと緊急事態! おーい〕
イオタが呼びかければ返事の声はネット越しでなく肉声で彼らの頭上から聞こえてきていた。
「なんです? 騒々しい」
現れたシルエット――、それを人はピエロともいう、ジェスターともいう、アルルカンと呼ばれることもある。赤い衣、黄色いブーツ、紫の手袋に、金色の角付き帽子、角の数は2つで角の先には柔らかい房状の球体がついていた。襟元には派手なオレンジ色のリボン――、派手な笑い顔の仮面をつけた道化者。人は彼をこう呼ぶ――
「あ! クラウン様!」
イオタが笑顔を溢れさせながら声の方を振り向いている。視線を向けた先は屋上の中央ほどに設けられた小型の通信タワー、5m程の高さのそれの先端に、まるで物理法則を無視したかのような絶妙なバランスで派手なシルエットのクラウンは立っていたのだ。
その姿を目の当たりにしてタウゼントもパイチョスも顔を上げて言葉をかけた。
「おぉ! 我らが主様!」
「お出向き、ご苦労様でございますです!」
いずこからかかすみの彼方から湧いて出るかのようにクラウンは音もなく姿を現した。そしてイオタたちは何の疑問も抱かずにクラウンに対して各々に声をかけていた。それらに対してクラウンもねぎらいの声を発した。
「皆さんご苦労です。皆、命令通り集まったようで何よりですねぇ――、約一名を除いて」
その言葉尻は怒りというよりは呆れのニュアンスが濃かった。
「まーったく! 何を考えてるのか、あの馬鹿ガエル! 単独で行ってもどうにもならないでしょうに! んもうっ!!」
そして眼下に視線を下ろすと3人と5匹にややキツめの声で問いかけた。
「イオタ! タウ! パイ! あの馬鹿のことは気にしないでさっさとお行きなさい。ゼータの支援も付けます。時間がありません! さぁ早く!」
「は、はい!」
支配者であるクラウンからの強い言葉に驚きながらイオタはシグマを引き連れてそこから立ち去る。先程も行ったようにステッキを大きく円を描くように振り回して〝扉〟を開くと、慌ててその中へとシグマやタウたちと引き連れて飛び込んでいく。
「お待ちを! 愛しのイオタ姫! 我らもお供いたしますぞ! 征くぞパイチョス!」
「はいな、旦那様ーー!」
イオタとシグマが音もなく流れるように姿を消すが、その後で可哀想なくらいにドタ付きながらタウゼントとパイチョスがイオタの後を追う。円形の扉フィールドの中へと先にタウゼントが飛び込めば、素直で実直な従者のようにパイチョスが、タウゼントの後を追いつつ、立ち止まり振り向いてクラウンへと軽く頭を下げて、しかる後に速やかに〝扉〟の中へと姿を消していったのである。
そんな彼らの滑稽なまでの光景を眺めながらクラウンは全ての光景を静かに見守っていた。そして先にビルの屋上から夜空へと飛び込んでいったイプシロンの向かった先へと視線を投げる。クラウンは抑揚を抑えた落ち着いた声で、そっとつぶやいた。
「イプシロン、アナタも気に病んでいたのですね」
そして、クラウンは頭上を仰ぐ。夜空には散りばめたような銀色の星々が輝いている。その星の一つに手を伸ばしながらクラウンはこう問い掛けたのだ。
「願わくば、彼らに祝福を、彼らに勝利を、この街に住まう全ての小さき命に安寧と安息がもたらされんことを――」
そして、細長い通信塔から花びらが舞い降りるように静かに降下していく。クラウンが屋上へと降り立ったその時である。
「失礼いたします。死の道化師――クラウン様でらっしゃいますね?」
それは少女の声だった。流暢な英国英語の発音でオペラ歌手のような流れるような発音が印象的だった。
「どなたです?」
声のする方へと踵をかえし振り向くと、そこには春向けのワンピースのスカートドレスを身にまとい、ブーケスタイルのヘッドドレスと、シルク製の純白のハーフマントコートを肩にかけた美少女が居た。
耳にはパールの大粒のイヤリング。首には白いレザー調のチョーカー。足には編み上げのロングブーツを履いていた。
歳の頃は少し年長で、16くらいだろうか?
そう――、
あのローラとほぼ同じ歳の頃である。
抜けるように白い肌。蒼い眼、光り輝くブロンドのロングヘア。
体躯は非常に細くしなやかで、強く抱きしめると折れてしまいそうな、まるでガラス細工のような人間離れした印象すらある。
その少女を前にして、クラウンは警戒していた。彼の字名である〝死の道化師〟の名を知っていたからである。
「正直、不愉快です。私の忌み名を問いかけるのはやめていただきたい」
立腹気味のクラウンの反応を前にしても、まるでファンタジー世界のエルフのようなシルエットの美少女は一向にひるまなかった。ただ丁寧な口調で詫びの言葉を述べるのだ。
「これは大変失礼いたしました。以後気をつけます。ダディにそうお呼びするようにと生前、聞かせられていたもので」
「ダディ? どなたです?」
クラウンの忌み名を問いかけられる者などそうそう居るものではない。敵対者が迂闊にその名を問いかければ命すら危ういのだ。クラウンからの強い疑問を前にして少女は答える。その少女が語る答えを前にして、クラウンは驚愕させられることとなる。
少女の唇が動いた。
「ディンキー・アンカーソン ――私達の父です」
あまりに唐突な言葉にクラウンは一瞬言葉を失う。そして慎重に言葉を選びながら再び問いかけた。
「初耳です。ガイズ3やシスター4以外に〝マリオネット〟が居たなどとは」
「いえ、違います。マリオネットではありません」
「は?」
ブロンドの少女はこともなげに否定した。そしていささか間の抜けた声を出したクラウンにこう告げたのだ。
「私たちは〝プロセス〟――私達の父であるディンキー・アンカーソンの願いを実現するために生み出された存在。マリオネット・ディンキーではない本来のディンキー・アンカーソンとしての理想と理念を叶えるために生み出された物です」
「私達?」
「はい」
驚きの事実を前に流石にクラウンと言えど驚かざるを得ない。
「初耳です。マリオネット以外にディンキー氏の手による存在が居られたなどとは」
「えぇ、当然の反応だと思います。私達も生みの親がディンキー・アンカーソンと言う人物だと言うことを知らされたのはここ1―2年のことですから」
「――――」
クラウンは沈黙した。そして、慎重に言葉を選んで問いかけたのだ。
「詳しくお話をお聞かせください。その前にお名前を拝聴させていただきたい」
クラウンは左手を腰の裏に。右手を胸の心臓の前にあててうやうやしく上体を前へと傾けて好意を示した。
「これは失礼いたしました――」
その丁寧な所作を前にしてブロンドの美少女は軽く微笑みながらスカートドレス前側の膝の辺りを両手でつまむと持ち上げながら軽く膝を曲げて会釈をする。古式ゆかしい〝カーテシー〟と呼ばれる礼儀作法だ。
そして顔をながら少女は答えたのだ。
「私は第1の〝プロセス〟ウノ・アンカーソン――、またの名を〝使役するウノ〟以後お見知りおきを」
少女は自らをウノと名乗った。マリオネットではなく、ディンキー・アンカーソンの〝娘〟として。そしてウノはこう語り始めたのである。
「時間がないのは承知しています。手短にお話いたします」
それはさらなる混沌と混乱への始まりだったのである。
その唐突な行動を呆然として見ていたイオタだったが、さらにその背後から騒がしい声が聞こえてくる。ガチャガチャと西洋甲冑を鳴らしながら歩いてくる老騎士と、それに従うずんぐりむっくりとしたマント姿の従者。まさに凸凹コンビと言う言い方がしっくりと来る2人であった。
「パイチョス! 主殿から言い賜った集まりの約束の場所とはここかいな?」
「はいです! 旦那様! この汚れた塔のてっぺんにございますです!」
「そうかそうか! して今宵の仕事のお仲間はいずれの者であるか?」
「はいです! 旦那様! 今宵のお仕事は、イオタ姫にイプシロン殿にシグマ殿とお聞き及んでおりますです! おお! 旦那様! 噂をすればあそこにイオタ姫様が!」
「うむ! しかと見た! シグマ殿もおられるではないか! 姫様~~!」
どこかのイタリア映画の3流喜劇から切り抜いてきたような2人がビルの外側の非常階段から現れたのだ。しかし隠密行動が主のイオタやイプシロンとは異なり、ショー向けのコミカルな動きが身に染み付いているのだろう。賑やかしと騒がしさが何より目立っていた。
ドタドタと足音を鳴らしながら2人は近づいてくる。そして、イオタに向けて老騎士のシルエットが声をかける。
「イオタ姫様! 遍歴の騎士タウゼント、ただ今到着いたしました!」
「従者パイチョス、同じく!」
タウゼントが片膝ついて右手を差し出し、パイチョスも両膝を突いてうやうやしく頭をたれていた。時代錯誤という言葉をそのまま絵に描いたような2人である。だが彼らの行動に対するイオタからのリアクションは薄かった。
沈黙したままどこかを見つめているイオタ。そのイオタがボソリと呟く。
「行っちゃった」
「は?」
イオタのつぶやきにタウゼントが声を上げる。
「あの――、姫?」
タウゼントがさらに問いかけるがイオタは完全スルーで何処かへと声を発する。問いかける相手はあの人物である。
〔おーい! ちょっと緊急事態! おーい〕
イオタが呼びかければ返事の声はネット越しでなく肉声で彼らの頭上から聞こえてきていた。
「なんです? 騒々しい」
現れたシルエット――、それを人はピエロともいう、ジェスターともいう、アルルカンと呼ばれることもある。赤い衣、黄色いブーツ、紫の手袋に、金色の角付き帽子、角の数は2つで角の先には柔らかい房状の球体がついていた。襟元には派手なオレンジ色のリボン――、派手な笑い顔の仮面をつけた道化者。人は彼をこう呼ぶ――
「あ! クラウン様!」
イオタが笑顔を溢れさせながら声の方を振り向いている。視線を向けた先は屋上の中央ほどに設けられた小型の通信タワー、5m程の高さのそれの先端に、まるで物理法則を無視したかのような絶妙なバランスで派手なシルエットのクラウンは立っていたのだ。
その姿を目の当たりにしてタウゼントもパイチョスも顔を上げて言葉をかけた。
「おぉ! 我らが主様!」
「お出向き、ご苦労様でございますです!」
いずこからかかすみの彼方から湧いて出るかのようにクラウンは音もなく姿を現した。そしてイオタたちは何の疑問も抱かずにクラウンに対して各々に声をかけていた。それらに対してクラウンもねぎらいの声を発した。
「皆さんご苦労です。皆、命令通り集まったようで何よりですねぇ――、約一名を除いて」
その言葉尻は怒りというよりは呆れのニュアンスが濃かった。
「まーったく! 何を考えてるのか、あの馬鹿ガエル! 単独で行ってもどうにもならないでしょうに! んもうっ!!」
そして眼下に視線を下ろすと3人と5匹にややキツめの声で問いかけた。
「イオタ! タウ! パイ! あの馬鹿のことは気にしないでさっさとお行きなさい。ゼータの支援も付けます。時間がありません! さぁ早く!」
「は、はい!」
支配者であるクラウンからの強い言葉に驚きながらイオタはシグマを引き連れてそこから立ち去る。先程も行ったようにステッキを大きく円を描くように振り回して〝扉〟を開くと、慌ててその中へとシグマやタウたちと引き連れて飛び込んでいく。
「お待ちを! 愛しのイオタ姫! 我らもお供いたしますぞ! 征くぞパイチョス!」
「はいな、旦那様ーー!」
イオタとシグマが音もなく流れるように姿を消すが、その後で可哀想なくらいにドタ付きながらタウゼントとパイチョスがイオタの後を追う。円形の扉フィールドの中へと先にタウゼントが飛び込めば、素直で実直な従者のようにパイチョスが、タウゼントの後を追いつつ、立ち止まり振り向いてクラウンへと軽く頭を下げて、しかる後に速やかに〝扉〟の中へと姿を消していったのである。
そんな彼らの滑稽なまでの光景を眺めながらクラウンは全ての光景を静かに見守っていた。そして先にビルの屋上から夜空へと飛び込んでいったイプシロンの向かった先へと視線を投げる。クラウンは抑揚を抑えた落ち着いた声で、そっとつぶやいた。
「イプシロン、アナタも気に病んでいたのですね」
そして、クラウンは頭上を仰ぐ。夜空には散りばめたような銀色の星々が輝いている。その星の一つに手を伸ばしながらクラウンはこう問い掛けたのだ。
「願わくば、彼らに祝福を、彼らに勝利を、この街に住まう全ての小さき命に安寧と安息がもたらされんことを――」
そして、細長い通信塔から花びらが舞い降りるように静かに降下していく。クラウンが屋上へと降り立ったその時である。
「失礼いたします。死の道化師――クラウン様でらっしゃいますね?」
それは少女の声だった。流暢な英国英語の発音でオペラ歌手のような流れるような発音が印象的だった。
「どなたです?」
声のする方へと踵をかえし振り向くと、そこには春向けのワンピースのスカートドレスを身にまとい、ブーケスタイルのヘッドドレスと、シルク製の純白のハーフマントコートを肩にかけた美少女が居た。
耳にはパールの大粒のイヤリング。首には白いレザー調のチョーカー。足には編み上げのロングブーツを履いていた。
歳の頃は少し年長で、16くらいだろうか?
そう――、
あのローラとほぼ同じ歳の頃である。
抜けるように白い肌。蒼い眼、光り輝くブロンドのロングヘア。
体躯は非常に細くしなやかで、強く抱きしめると折れてしまいそうな、まるでガラス細工のような人間離れした印象すらある。
その少女を前にして、クラウンは警戒していた。彼の字名である〝死の道化師〟の名を知っていたからである。
「正直、不愉快です。私の忌み名を問いかけるのはやめていただきたい」
立腹気味のクラウンの反応を前にしても、まるでファンタジー世界のエルフのようなシルエットの美少女は一向にひるまなかった。ただ丁寧な口調で詫びの言葉を述べるのだ。
「これは大変失礼いたしました。以後気をつけます。ダディにそうお呼びするようにと生前、聞かせられていたもので」
「ダディ? どなたです?」
クラウンの忌み名を問いかけられる者などそうそう居るものではない。敵対者が迂闊にその名を問いかければ命すら危ういのだ。クラウンからの強い疑問を前にして少女は答える。その少女が語る答えを前にして、クラウンは驚愕させられることとなる。
少女の唇が動いた。
「ディンキー・アンカーソン ――私達の父です」
あまりに唐突な言葉にクラウンは一瞬言葉を失う。そして慎重に言葉を選びながら再び問いかけた。
「初耳です。ガイズ3やシスター4以外に〝マリオネット〟が居たなどとは」
「いえ、違います。マリオネットではありません」
「は?」
ブロンドの少女はこともなげに否定した。そしていささか間の抜けた声を出したクラウンにこう告げたのだ。
「私たちは〝プロセス〟――私達の父であるディンキー・アンカーソンの願いを実現するために生み出された存在。マリオネット・ディンキーではない本来のディンキー・アンカーソンとしての理想と理念を叶えるために生み出された物です」
「私達?」
「はい」
驚きの事実を前に流石にクラウンと言えど驚かざるを得ない。
「初耳です。マリオネット以外にディンキー氏の手による存在が居られたなどとは」
「えぇ、当然の反応だと思います。私達も生みの親がディンキー・アンカーソンと言う人物だと言うことを知らされたのはここ1―2年のことですから」
「――――」
クラウンは沈黙した。そして、慎重に言葉を選んで問いかけたのだ。
「詳しくお話をお聞かせください。その前にお名前を拝聴させていただきたい」
クラウンは左手を腰の裏に。右手を胸の心臓の前にあててうやうやしく上体を前へと傾けて好意を示した。
「これは失礼いたしました――」
その丁寧な所作を前にしてブロンドの美少女は軽く微笑みながらスカートドレス前側の膝の辺りを両手でつまむと持ち上げながら軽く膝を曲げて会釈をする。古式ゆかしい〝カーテシー〟と呼ばれる礼儀作法だ。
そして顔をながら少女は答えたのだ。
「私は第1の〝プロセス〟ウノ・アンカーソン――、またの名を〝使役するウノ〟以後お見知りおきを」
少女は自らをウノと名乗った。マリオネットではなく、ディンキー・アンカーソンの〝娘〟として。そしてウノはこう語り始めたのである。
「時間がないのは承知しています。手短にお話いたします」
それはさらなる混沌と混乱への始まりだったのである。
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