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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の洋上楼閣都市/グラウザー編
Part12 SOLVER―解き明かす者―/砕かれぬ闘志
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2次武装体のグラウザーと、右腕を失ったセンチュリー、二人は並び立ちながら次の攻撃の手段を準備しつつベルトコーネへと少しづつ歩み寄っていく。
グラウザーは両の拳をしっかりと固めていた。しかも単に拳を固めるのみならず、腕部全体に仕込まれている電磁波発振素子を励起状態にする。
【 左右両腕部全域 】
【 マルチパーパスレーダーブロック 】
【 電磁波励起発信開始 】
【 ・両肩外側部プロテクターシールド部 】
【 ・両腕部外側面部 】
【 ・両拳部ナックルプレート部 】
【 出力レベル: 】
【 アイドリングモードから 】
【 メインドライブモードへ出力上昇 】
【 さらに攻性兵器モード稼働開始 】
【 セイフティーリミッター解除 】
【 >電磁波斥力による防御動作開始 】
【 >ナックルプレート部打撃攻撃準備OK 】
――ブゥゥゥン――
鈍く響くようなかすかな音が響き渡る。グラウザーの両腕を攻撃兵器と化する電磁波が満ち満ちている事の証だ。更にそれに加えて、あのアトラスから受け継いだ聖剣がグラウザーの右腕には備わっているのだ。
【 アーマーギア内蔵装備起動 】
【 装備名:パルサーブレード 】
【 】
【 >コイル状金属系高分子⇒通電開始 】
【 >膨張率3200% 】
【 収納チャンバー内にて急速膨張 】
【 >刀剣構造形成完了 】
【 刀長:80センチ 刀幅10センチ 】
【 >コイル状金属系高分子 】
【 ⇒ 高周波振動スタート 】
グラウザーの右手拳、その甲の部分の先端が開いて内部から白銀に光る両刃のブレードソードが突出する。それは常に高周波振動を伴い、触れるもの全てを安々と切り裂く。特攻装警第1号機のアトラスがその両手に宿していた物と同一のものである。
パルサーブレードを作動させ、その切っ先をベルトコーネへと向ける。その傍らでセンチュリーが左手でデルタエリートの銃口をベルトコーネに突きつけていた。その2つの武器が表している〝意思〟は、この狂える拳魔を絶対に止めるという固い決意であった。
センチュリーが銃の照準を合わせながら告げる。
「観念しろ、ネタの割れた手品なんか見せられても詰まんねぇんだよ!」
グラウザーも告げる。夜空に飛び交う僅かな光を受けながら彼が構える剣先はベルトコーネへと向いていた。
「能力の正体が判れば、攻め様はいくらでもある。お前だけの優位はもうここまでだ!」
「そう言う事だ、おとなしく諦めてスクラップになってもらおうか!」
それは挑発だった。あえて敵の怒りの感情を誘い出し激高させるために仕掛けた〝罠〟である。心理的な揺さぶりをかけて正常な判断を失わせる。そして、闘争本能と敵意の感情が暴走する様に仕向ける。
そのための引き金となる〝あの人物〟の名をセンチュリーは口にしたのである。
「しかしなんだな――」
ベルトコーネの目をじっと見つめつつにやりと笑う。
「ディンキーのジジィの作る物って、もっとマシだと思ってたが、恐ろしくスカスカなんだな」
そしてグラウザーもあざ笑うように言葉を返した。
「しかたありませんよ、所詮は〝テロリスト〟――社会の害悪ですよ!」
それはベルトコーネの認識の中では最大級の侮辱だった。『社会の害悪』――ディンキーが志したはずの理想を根底から否定して踏みにじる冒涜であった。それは怒りを呼び、憤怒を引き起こし、ベルトコーネを〝キレ〟させるには必要十分なものであった。
「ぐうゥゥ!」
唸るような叫び――、その後に聞こえてくるのは金属が圧力できしむような不気味な音。
――ミシリ――
それはベルトコーネが自らの拳を強く強く握りしめたために起きた軋み音だ。その握りしめた。右の拳を振り上げるとその場の足元の地面へと強く叩きつける。
――ズドォオン!――
巨大な鋼鉄のハンマーで打ち据えたかのようなクレーター状の凹みが地面に浮かんでいる。ベルトコーネはキレた状態のそのままで、つんざき叫んで怒りを露わにしていた。もはや一切の手加減も慈悲もなく、怒れるままに、触れるもの全てを叩き潰さねば収まらないだろう。しかもそれを彼自身が認識できているだけにことさら悪質であった。
「イイだろウ! 掛け値ナシ最大級の『力』デ、お前らを纏メテ鏖殺シテクレる!」
ベルトコーネが発する言葉がブレている。怒りのあまりに音声制御がままならず、古臭い電子ロボットのような合成音声が入り混じっているかのようだ。
そして、ベルトコーネは右腕を振りかぶると、グラウザーたちに喝破されたシステムのそのままにその右の拳へと、あらん限りの質量制御を開始する。最後通告として怒りの感情そのままにベルトコーネは言葉を解き放った。
「我ガ能力の正体と原理が分カッたとしテモ、防ぎきれなけレバ何の意味もない! 二人まとめて圧殺シテクれる!!」
そのモーションは右拳を斜め後ろ上方へと引き絞り、大口径砲の砲口の如くに拳打を解き放つための物だ。ベルトコーネの目が激怒の憤怒に光りを帯びている。その怒りを炸裂するかのごとくに最大質量を込めた拳を解き放つ――、
その時である。
――ミシィッ!――
訪れたのは不気味な圧壊音であった。
異音はベルトコーネの右拳から発せられていた。その音に気づいて驚きの表情でベルトコーネは自らの右拳に視線を向けた。そこに見えてきたのは、拳の内側に宿した膨大な質量に耐えきれずに【自己圧壊】をして亀裂を生じてしまった、彼自身の右手であった。
亀裂は幾重にも無数に走っており、小指に至っては明らかにありえない方向に向けて。ネジ曲がってしまっているのだ。もはやその拳を攻撃兵器として解き放つことは不可能であろう。
ベルトコーネが後ずさった、怯えと驚きの表情をしたままで、ただ身構えるばかりだ。狼狽えるそのままに彼は思わず言葉を漏らしていた。
「なっ、なにが――、何が起きた? 俺の、俺の拳! 俺の腕に何が起きた?」
理解不能、判断不能、認識不能、受容不能、解決不能――、もはやベルトコーネは己が何をなせばいいのか、判断することすら出来なくなっていた。彼はまさに混乱の極みにあったのである。
そして、散々に世界中を暴れまわり数多の犠牲者を生み出し続けてきた、史上最悪の狂える拳魔の無様な姿を、グラウザーもセンチュリーもしっかりと見届けていた。
センチュリーの顔に不敵な笑みが浮かぶ。グラウザーは警戒を解くこと無く、認識の片隅で次の攻撃手段を思索していた。
「〝賭け〟が当たりましたね。兄さん」
「あぁ、ビンゴだぜ。狙ったとおりだ。やっこさん有明以降マトモなメンテは受けてねえ。逃亡のために海の塩っけにもどっぷり浸かってるはずだ。それに誰がやったのかしらねえが、この辺りに残ってる嫌な匂い、テルミットやら酸素反応剤やら、ケロシンやらの匂いだ。ヤツを相当な高温で誰かが焼いてるんだ。そのせいでご自慢の頑強ボディも相当脆くなってるはずだ。 特に末端部分はガタガタのはずだ」
センチュリーは周囲に残された残臭や残骸物から、あのアラブ系の男たちが行った決死の抵抗の痕跡を感じ取っていた。彼らの闘いは、聖戦は、無駄では無かったのである。これをアッラーのお慈悲と言うにはうがち過ぎだろうか? そして、それを感じ取ったセンチュリーのセンスと勘は確かな経験に裏打ちされたものであった。
その言葉にグラウザーが告げる。
「所詮は犯罪者が闇社会で入手した闇アンドロイド――作りも素材もクオリティも、僕達のような最高レベルのエンジニアによる正規の高等アンドロイドとは全く異なる。強度、耐久性、工作精度――、ディンキー自身が気づいていたかはわかりませんが、アイツに与えられた慣性質量制御能力に、奴のアンドロイドボディが耐えきれる物では無かったということです」
「当然だ。開発当初は俺たち以上の頑丈さ強靭さを発揮できたとしても、メンテナンスも定期的に受けられず、素材のクオリティも根本から異なる。ある程度の年月がすぎれば、痛みもすりゃ劣化もする。そんな状態でフルパワー出せば、与えられた能力に、もともとの構造が耐えきれるはずがねえ。当然――」
そしてセンチュリーとグラウザーはベルトコーネを追うように数歩進み出たのだ。
「――こういう結果になるってこった! もうその右の拳は使えねえぞ! ウスラデカ! なんなら残りの左もやってみるか?!」
「圧壊させずに使用できる自信があるのならばな!」
今、ベルトコーネに向けられているのはセンチュリーが握る拳銃・デルタエリートの銃口と、グラウザーがその右腕に備えた刀剣・パルサーブレードの切っ先であった。そして今こそ凶悪なるテロリスト・アンドロイドに対して断罪は行われるのだ。
それらの言葉に対してベルトコーネが歯噛みしている。当然にこの程度のことで退くようにはベルトコーネの認識と人格は作られてはいなかった。消えかけた憤怒を再び燃やすと、グラウザーたちに向けてベルトコーネは言い放ったのである。
「構わん! この身がどうなろうと今は亡き我が主人の遺志を完遂するのみ! 止められるものなら止めてみせろ! 特攻装警!!」
怒りと苛立ちと悔しさとが入り交じった叫びが残響を残して木霊していた。そしてついに戦いは次なる段階へと進み始めたのだ。
センチュリーがグラウザーに囁く
「徹底的にやってやれ、俺がそばでバックアップしてやる! 第2科警研の皆の思いが詰まったそのアーマーの真価を、あの馬鹿野郎に思い知らせてやれ!」
センチュリーのその言葉に、グラウザーははっきりと頷いていた。そして戦いの先鞭を着るかのようにグラウザーは駆け出したのだ。
「行くぞ! ベルトコーネ!」
そのアーマーのフェイス部に浮かぶ2つの光る怒り目には、汲めど尽きぬ正義の闘志がありありと浮かんでいたのである。
グラウザーは両の拳をしっかりと固めていた。しかも単に拳を固めるのみならず、腕部全体に仕込まれている電磁波発振素子を励起状態にする。
【 左右両腕部全域 】
【 マルチパーパスレーダーブロック 】
【 電磁波励起発信開始 】
【 ・両肩外側部プロテクターシールド部 】
【 ・両腕部外側面部 】
【 ・両拳部ナックルプレート部 】
【 出力レベル: 】
【 アイドリングモードから 】
【 メインドライブモードへ出力上昇 】
【 さらに攻性兵器モード稼働開始 】
【 セイフティーリミッター解除 】
【 >電磁波斥力による防御動作開始 】
【 >ナックルプレート部打撃攻撃準備OK 】
――ブゥゥゥン――
鈍く響くようなかすかな音が響き渡る。グラウザーの両腕を攻撃兵器と化する電磁波が満ち満ちている事の証だ。更にそれに加えて、あのアトラスから受け継いだ聖剣がグラウザーの右腕には備わっているのだ。
【 アーマーギア内蔵装備起動 】
【 装備名:パルサーブレード 】
【 】
【 >コイル状金属系高分子⇒通電開始 】
【 >膨張率3200% 】
【 収納チャンバー内にて急速膨張 】
【 >刀剣構造形成完了 】
【 刀長:80センチ 刀幅10センチ 】
【 >コイル状金属系高分子 】
【 ⇒ 高周波振動スタート 】
グラウザーの右手拳、その甲の部分の先端が開いて内部から白銀に光る両刃のブレードソードが突出する。それは常に高周波振動を伴い、触れるもの全てを安々と切り裂く。特攻装警第1号機のアトラスがその両手に宿していた物と同一のものである。
パルサーブレードを作動させ、その切っ先をベルトコーネへと向ける。その傍らでセンチュリーが左手でデルタエリートの銃口をベルトコーネに突きつけていた。その2つの武器が表している〝意思〟は、この狂える拳魔を絶対に止めるという固い決意であった。
センチュリーが銃の照準を合わせながら告げる。
「観念しろ、ネタの割れた手品なんか見せられても詰まんねぇんだよ!」
グラウザーも告げる。夜空に飛び交う僅かな光を受けながら彼が構える剣先はベルトコーネへと向いていた。
「能力の正体が判れば、攻め様はいくらでもある。お前だけの優位はもうここまでだ!」
「そう言う事だ、おとなしく諦めてスクラップになってもらおうか!」
それは挑発だった。あえて敵の怒りの感情を誘い出し激高させるために仕掛けた〝罠〟である。心理的な揺さぶりをかけて正常な判断を失わせる。そして、闘争本能と敵意の感情が暴走する様に仕向ける。
そのための引き金となる〝あの人物〟の名をセンチュリーは口にしたのである。
「しかしなんだな――」
ベルトコーネの目をじっと見つめつつにやりと笑う。
「ディンキーのジジィの作る物って、もっとマシだと思ってたが、恐ろしくスカスカなんだな」
そしてグラウザーもあざ笑うように言葉を返した。
「しかたありませんよ、所詮は〝テロリスト〟――社会の害悪ですよ!」
それはベルトコーネの認識の中では最大級の侮辱だった。『社会の害悪』――ディンキーが志したはずの理想を根底から否定して踏みにじる冒涜であった。それは怒りを呼び、憤怒を引き起こし、ベルトコーネを〝キレ〟させるには必要十分なものであった。
「ぐうゥゥ!」
唸るような叫び――、その後に聞こえてくるのは金属が圧力できしむような不気味な音。
――ミシリ――
それはベルトコーネが自らの拳を強く強く握りしめたために起きた軋み音だ。その握りしめた。右の拳を振り上げるとその場の足元の地面へと強く叩きつける。
――ズドォオン!――
巨大な鋼鉄のハンマーで打ち据えたかのようなクレーター状の凹みが地面に浮かんでいる。ベルトコーネはキレた状態のそのままで、つんざき叫んで怒りを露わにしていた。もはや一切の手加減も慈悲もなく、怒れるままに、触れるもの全てを叩き潰さねば収まらないだろう。しかもそれを彼自身が認識できているだけにことさら悪質であった。
「イイだろウ! 掛け値ナシ最大級の『力』デ、お前らを纏メテ鏖殺シテクレる!」
ベルトコーネが発する言葉がブレている。怒りのあまりに音声制御がままならず、古臭い電子ロボットのような合成音声が入り混じっているかのようだ。
そして、ベルトコーネは右腕を振りかぶると、グラウザーたちに喝破されたシステムのそのままにその右の拳へと、あらん限りの質量制御を開始する。最後通告として怒りの感情そのままにベルトコーネは言葉を解き放った。
「我ガ能力の正体と原理が分カッたとしテモ、防ぎきれなけレバ何の意味もない! 二人まとめて圧殺シテクれる!!」
そのモーションは右拳を斜め後ろ上方へと引き絞り、大口径砲の砲口の如くに拳打を解き放つための物だ。ベルトコーネの目が激怒の憤怒に光りを帯びている。その怒りを炸裂するかのごとくに最大質量を込めた拳を解き放つ――、
その時である。
――ミシィッ!――
訪れたのは不気味な圧壊音であった。
異音はベルトコーネの右拳から発せられていた。その音に気づいて驚きの表情でベルトコーネは自らの右拳に視線を向けた。そこに見えてきたのは、拳の内側に宿した膨大な質量に耐えきれずに【自己圧壊】をして亀裂を生じてしまった、彼自身の右手であった。
亀裂は幾重にも無数に走っており、小指に至っては明らかにありえない方向に向けて。ネジ曲がってしまっているのだ。もはやその拳を攻撃兵器として解き放つことは不可能であろう。
ベルトコーネが後ずさった、怯えと驚きの表情をしたままで、ただ身構えるばかりだ。狼狽えるそのままに彼は思わず言葉を漏らしていた。
「なっ、なにが――、何が起きた? 俺の、俺の拳! 俺の腕に何が起きた?」
理解不能、判断不能、認識不能、受容不能、解決不能――、もはやベルトコーネは己が何をなせばいいのか、判断することすら出来なくなっていた。彼はまさに混乱の極みにあったのである。
そして、散々に世界中を暴れまわり数多の犠牲者を生み出し続けてきた、史上最悪の狂える拳魔の無様な姿を、グラウザーもセンチュリーもしっかりと見届けていた。
センチュリーの顔に不敵な笑みが浮かぶ。グラウザーは警戒を解くこと無く、認識の片隅で次の攻撃手段を思索していた。
「〝賭け〟が当たりましたね。兄さん」
「あぁ、ビンゴだぜ。狙ったとおりだ。やっこさん有明以降マトモなメンテは受けてねえ。逃亡のために海の塩っけにもどっぷり浸かってるはずだ。それに誰がやったのかしらねえが、この辺りに残ってる嫌な匂い、テルミットやら酸素反応剤やら、ケロシンやらの匂いだ。ヤツを相当な高温で誰かが焼いてるんだ。そのせいでご自慢の頑強ボディも相当脆くなってるはずだ。 特に末端部分はガタガタのはずだ」
センチュリーは周囲に残された残臭や残骸物から、あのアラブ系の男たちが行った決死の抵抗の痕跡を感じ取っていた。彼らの闘いは、聖戦は、無駄では無かったのである。これをアッラーのお慈悲と言うにはうがち過ぎだろうか? そして、それを感じ取ったセンチュリーのセンスと勘は確かな経験に裏打ちされたものであった。
その言葉にグラウザーが告げる。
「所詮は犯罪者が闇社会で入手した闇アンドロイド――作りも素材もクオリティも、僕達のような最高レベルのエンジニアによる正規の高等アンドロイドとは全く異なる。強度、耐久性、工作精度――、ディンキー自身が気づいていたかはわかりませんが、アイツに与えられた慣性質量制御能力に、奴のアンドロイドボディが耐えきれる物では無かったということです」
「当然だ。開発当初は俺たち以上の頑丈さ強靭さを発揮できたとしても、メンテナンスも定期的に受けられず、素材のクオリティも根本から異なる。ある程度の年月がすぎれば、痛みもすりゃ劣化もする。そんな状態でフルパワー出せば、与えられた能力に、もともとの構造が耐えきれるはずがねえ。当然――」
そしてセンチュリーとグラウザーはベルトコーネを追うように数歩進み出たのだ。
「――こういう結果になるってこった! もうその右の拳は使えねえぞ! ウスラデカ! なんなら残りの左もやってみるか?!」
「圧壊させずに使用できる自信があるのならばな!」
今、ベルトコーネに向けられているのはセンチュリーが握る拳銃・デルタエリートの銃口と、グラウザーがその右腕に備えた刀剣・パルサーブレードの切っ先であった。そして今こそ凶悪なるテロリスト・アンドロイドに対して断罪は行われるのだ。
それらの言葉に対してベルトコーネが歯噛みしている。当然にこの程度のことで退くようにはベルトコーネの認識と人格は作られてはいなかった。消えかけた憤怒を再び燃やすと、グラウザーたちに向けてベルトコーネは言い放ったのである。
「構わん! この身がどうなろうと今は亡き我が主人の遺志を完遂するのみ! 止められるものなら止めてみせろ! 特攻装警!!」
怒りと苛立ちと悔しさとが入り交じった叫びが残響を残して木霊していた。そしてついに戦いは次なる段階へと進み始めたのだ。
センチュリーがグラウザーに囁く
「徹底的にやってやれ、俺がそばでバックアップしてやる! 第2科警研の皆の思いが詰まったそのアーマーの真価を、あの馬鹿野郎に思い知らせてやれ!」
センチュリーのその言葉に、グラウザーははっきりと頷いていた。そして戦いの先鞭を着るかのようにグラウザーは駆け出したのだ。
「行くぞ! ベルトコーネ!」
そのアーマーのフェイス部に浮かぶ2つの光る怒り目には、汲めど尽きぬ正義の闘志がありありと浮かんでいたのである。
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