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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の洋上楼閣都市/洋上スラム編
Part7 ――罪――/妄執は止まらず
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時と運命の歯車は止まることは決して無い。それは人知を超えた力で数多の人々を突き動かし、ときには残酷な結末へと叩き込む事がある。
今宵も招かれざる者が一人、ハイヘイズの子らの住む廃ビルへと歩みを進めようとしていた。
東京アバディーンの土地には、北東部の港湾地区から産業廃棄物のゴミに紛れて上陸していた。その後、ダスト・フォレストの茂みの中に潜伏して時を待った。ここからさらに別な場所へと逃亡するか、あるいは何処かの組織に潜り込むか、いろいろな方法が考えられる。だがその判断材料となる〝噂〟が、このダスト・フォレストにまで流れてきていた。曰く――
――ローラと言う少女が孤児たちの母親役をやっている――
――ローラはサイボーグだ。生身ではない――
――どうもその子は人に言えない過去を持っているらしい――
噂は断片的で不正確でもあったが、それらをつなぎ合わせれば噂の俎上に乗っている人物が彼の知るローラであると断定して間違いはないと思われた。
「あいつ、こんな所に来ていたのか――」
生き残っていたのが自分だけだと思っただけに、ローラが存命であった事は素直に喜ばしかった。
「ならば迎えに行こう」
そう思案し〝彼〟は行動を開始した。
彼の名はベルトコーネ、マリオネット・ディンキーと呼ばれたテロリストが所有した最強の格闘アンドロイドだ。そして、ローラの兄弟機の一人でもある。彼は生粋のテロリズム・アンドロイドだった。人間の意志を汲み取ることなど金輪際ありえない。ただ創造主の意思に従い、破壊と殺戮を続けるのみである。
「二人であのお方の意思を引き継がねば」
それは彼だけが持つ暗い認識であった。そこに人間的な温かい情愛に基づく判断は一切存在しない。そして、ベルトコーネは暗くつぶやくのだ。
「主の意思を妨げるものは子供であろうと――」
この男に〝迷う〟と言う事は決して無かったのである。
分厚いボロ布を纏いホームレスの物乞いに身をやつす。そして、少しづつ着実に、ローラの元へと歩みを進めていく。彼自ら手がかりを得るために他人に問いかけるようなことはしない。なぜなら鋭敏な視聴覚が人間の範疇を大きく超えて様々な情報を彼にもたらすからだ。
周囲の雑踏の中の数多の会話の中から必要な情報を聞き分けていく。抜き出した言葉は――
ローラ、ハイヘイズ、孤児、母親、廃ビル
――などと言った言葉だ。雑踏の中の会話から得られた情報をつなぎ合わせると、ローラはこの島の外れの廃ビルで、混血の孤児たちの母親代わりとなりともに暮らしているらしかった。さらなる情報を得るべく視線をくまなく走らせる。すると見つけ出したのはかつての黒装束を脱ぎ捨て木綿の簡素なワンピースへと衣装を着替えて小さな子供らと穏やかに過ごすローラの姿だった。
まともな感性を持つ者なら微笑ましいと感じて、そっと見守ることを選ぶはずだ。だが、この男は違った。彼がその光景に抱いた感情は怒りであった。創造主が我らに下された使命を忘れたのか? ローラの行動はこの男には〝裏切り〟にしか映らなかったのだ。
「人間どもに迎合しおって」
一旦、東京アバディーンの雑踏から離れるとダスト・フォレストへと戻って時が来るのを待つことにした。思案に思案を重ねてある結論へと辿りつく。
「連れて行こう。我らの創造主の意思を引き継ぐことこそ、我らの存在意義だ」
彼はアンドロイドだ。生粋のテロアンドロイドだ。戦い、破壊し、殺戮する以外の価値を何一つ知らないのだ。そしてかつての仲間のローラがテロリズム・アンドロイドとしての生き方を放棄することなど到底理解する事はできなかったのだ。
彼は歩き始める。ローラの元へと――、そしてまた運命の歯車が軋みながら回り始めたのである。
@ @ @
運命が疾走る。
歯車が回り続ける。
きしんだ歯車は決してその歩みを緩めること無く、悲鳴のようなノイズを立てながら回り続けていた。その歯車が回っているのはハイヘイズの子供らが肩を寄せあって暮らすあの廃ビルの前の通りである。そこに最初に姿を表したのはラフマニを連れたローラである。
人影の途絶えたひび割れたアスファルトの夜道へと薄汚れた倉庫の屋根から飛び降りてきた。そして、息せき切って愛する子どもたちの待つ〝家〟へと急いで戻ろうとする。
ローラの先を駆けていたラフマニが告げる。
「無事だ! 何も起きていねぇ」
彼らの家である〝廃ビル〟は何の異変もなく窓からは灯りが漏れている。仲間たちが安心してくつろいでいる様子が伝わってくる。
「良かった――」
ローラも思わず安堵の吐息を漏らす。シェン・レイからのメッセージから始まった一連の不安。それは杞憂だったのだと思いたかった。ローラとラフマニ、家へと駆け戻りながらお互いの顔を見つめて頷きあう。
「お、入り口でジーナとカチュア待ってるぜ?」
「えー? なんだカチュア起きちゃったんだ」
「しょうがないさ。アイツ、お前に一番懐いてるからな」
「えぇ、そうね」
ローラはラフマニの言葉を肯定した。苦笑して頷いてみせる。
「小さい子って時々驚くほど勘が鋭いんだよね。ごまかしが効かなくてどうして良いかわからない時があるのよ」
「あぁ、あるある。でもどうしてもゴネるときって絶対何かそいつなりの理由があるから、それをすくい取ってやらないといけねえんだよ。ごまかして逃げて見落としたままでいると傷つけたままになっちまう」
「それだけは避けてあげないとね」
「あぁ――」
そう言葉をかわしながらラフマニが片手を振った。それにカチュアも気付いたのだろう。手を振り返してくる。カチュアはお気に入りのクリーム色のパジャマを着ている。ローラママと同じ色だと喜んで見つけたものだ。その上にジーナが着せたのだろう大人用のショールがかけられている。そのショールを纏ったままマントのようにたなびかせながらカチュアは玄関から出てきてしまった。嬉しさを抑えきれなかったのだろうローラたちの所へと足早に歩き出そうとしていた。
「あっ!」
ラフマニが思わず声を上げ、ローラもカチュアを窘めた。
「だめよ! 表に出てきたら、風邪引くわよ!」
カチュアの小さな体を案じる言葉が口を突いて出てくる。たまらずローラもカチュアの元へと駆け寄ろうとする。ローラの口からカチュアの身を案じる言葉が出てきたことで、それを聞いたカチュアははやる気持ちを抑えきれなくなり、サンダル履きのまま元気よく走り出す。夜風にあたってこんなことをすれば明日の朝は絶対に鼻風邪をひくに決まっている。楊夫人の近くで漢方医の闇医者をしている李大夫の所に行かないといけないだろう。一人が風邪をひけばリレーゲームで次々に風邪をひく。一通り順番が終わるまでは気が抜けない日々になる。先のことを考えると手間がかかりそうで少々気が重い。
「もう――、嬉しくなると言うことを聞かないんだから」
苦笑しつつため息を吐くとカチュアを受け入れるべくローラは片膝をついて目線をおろした。ローラの視界の中、かけてくるカチュアの姿が見えていた。それはローラがこの最果ての街で見つけたささやかな幸せである。
しかし――、運命の歯車は多くの人々を巻き込みながら無音のまま粛々と回り続ける。そして、今この瞬間、ローラたちが佇む場所で動き続ける歯車の名を人々はこう呼ぶ――
そう――『悲劇』――と。
今宵も招かれざる者が一人、ハイヘイズの子らの住む廃ビルへと歩みを進めようとしていた。
東京アバディーンの土地には、北東部の港湾地区から産業廃棄物のゴミに紛れて上陸していた。その後、ダスト・フォレストの茂みの中に潜伏して時を待った。ここからさらに別な場所へと逃亡するか、あるいは何処かの組織に潜り込むか、いろいろな方法が考えられる。だがその判断材料となる〝噂〟が、このダスト・フォレストにまで流れてきていた。曰く――
――ローラと言う少女が孤児たちの母親役をやっている――
――ローラはサイボーグだ。生身ではない――
――どうもその子は人に言えない過去を持っているらしい――
噂は断片的で不正確でもあったが、それらをつなぎ合わせれば噂の俎上に乗っている人物が彼の知るローラであると断定して間違いはないと思われた。
「あいつ、こんな所に来ていたのか――」
生き残っていたのが自分だけだと思っただけに、ローラが存命であった事は素直に喜ばしかった。
「ならば迎えに行こう」
そう思案し〝彼〟は行動を開始した。
彼の名はベルトコーネ、マリオネット・ディンキーと呼ばれたテロリストが所有した最強の格闘アンドロイドだ。そして、ローラの兄弟機の一人でもある。彼は生粋のテロリズム・アンドロイドだった。人間の意志を汲み取ることなど金輪際ありえない。ただ創造主の意思に従い、破壊と殺戮を続けるのみである。
「二人であのお方の意思を引き継がねば」
それは彼だけが持つ暗い認識であった。そこに人間的な温かい情愛に基づく判断は一切存在しない。そして、ベルトコーネは暗くつぶやくのだ。
「主の意思を妨げるものは子供であろうと――」
この男に〝迷う〟と言う事は決して無かったのである。
分厚いボロ布を纏いホームレスの物乞いに身をやつす。そして、少しづつ着実に、ローラの元へと歩みを進めていく。彼自ら手がかりを得るために他人に問いかけるようなことはしない。なぜなら鋭敏な視聴覚が人間の範疇を大きく超えて様々な情報を彼にもたらすからだ。
周囲の雑踏の中の数多の会話の中から必要な情報を聞き分けていく。抜き出した言葉は――
ローラ、ハイヘイズ、孤児、母親、廃ビル
――などと言った言葉だ。雑踏の中の会話から得られた情報をつなぎ合わせると、ローラはこの島の外れの廃ビルで、混血の孤児たちの母親代わりとなりともに暮らしているらしかった。さらなる情報を得るべく視線をくまなく走らせる。すると見つけ出したのはかつての黒装束を脱ぎ捨て木綿の簡素なワンピースへと衣装を着替えて小さな子供らと穏やかに過ごすローラの姿だった。
まともな感性を持つ者なら微笑ましいと感じて、そっと見守ることを選ぶはずだ。だが、この男は違った。彼がその光景に抱いた感情は怒りであった。創造主が我らに下された使命を忘れたのか? ローラの行動はこの男には〝裏切り〟にしか映らなかったのだ。
「人間どもに迎合しおって」
一旦、東京アバディーンの雑踏から離れるとダスト・フォレストへと戻って時が来るのを待つことにした。思案に思案を重ねてある結論へと辿りつく。
「連れて行こう。我らの創造主の意思を引き継ぐことこそ、我らの存在意義だ」
彼はアンドロイドだ。生粋のテロアンドロイドだ。戦い、破壊し、殺戮する以外の価値を何一つ知らないのだ。そしてかつての仲間のローラがテロリズム・アンドロイドとしての生き方を放棄することなど到底理解する事はできなかったのだ。
彼は歩き始める。ローラの元へと――、そしてまた運命の歯車が軋みながら回り始めたのである。
@ @ @
運命が疾走る。
歯車が回り続ける。
きしんだ歯車は決してその歩みを緩めること無く、悲鳴のようなノイズを立てながら回り続けていた。その歯車が回っているのはハイヘイズの子供らが肩を寄せあって暮らすあの廃ビルの前の通りである。そこに最初に姿を表したのはラフマニを連れたローラである。
人影の途絶えたひび割れたアスファルトの夜道へと薄汚れた倉庫の屋根から飛び降りてきた。そして、息せき切って愛する子どもたちの待つ〝家〟へと急いで戻ろうとする。
ローラの先を駆けていたラフマニが告げる。
「無事だ! 何も起きていねぇ」
彼らの家である〝廃ビル〟は何の異変もなく窓からは灯りが漏れている。仲間たちが安心してくつろいでいる様子が伝わってくる。
「良かった――」
ローラも思わず安堵の吐息を漏らす。シェン・レイからのメッセージから始まった一連の不安。それは杞憂だったのだと思いたかった。ローラとラフマニ、家へと駆け戻りながらお互いの顔を見つめて頷きあう。
「お、入り口でジーナとカチュア待ってるぜ?」
「えー? なんだカチュア起きちゃったんだ」
「しょうがないさ。アイツ、お前に一番懐いてるからな」
「えぇ、そうね」
ローラはラフマニの言葉を肯定した。苦笑して頷いてみせる。
「小さい子って時々驚くほど勘が鋭いんだよね。ごまかしが効かなくてどうして良いかわからない時があるのよ」
「あぁ、あるある。でもどうしてもゴネるときって絶対何かそいつなりの理由があるから、それをすくい取ってやらないといけねえんだよ。ごまかして逃げて見落としたままでいると傷つけたままになっちまう」
「それだけは避けてあげないとね」
「あぁ――」
そう言葉をかわしながらラフマニが片手を振った。それにカチュアも気付いたのだろう。手を振り返してくる。カチュアはお気に入りのクリーム色のパジャマを着ている。ローラママと同じ色だと喜んで見つけたものだ。その上にジーナが着せたのだろう大人用のショールがかけられている。そのショールを纏ったままマントのようにたなびかせながらカチュアは玄関から出てきてしまった。嬉しさを抑えきれなかったのだろうローラたちの所へと足早に歩き出そうとしていた。
「あっ!」
ラフマニが思わず声を上げ、ローラもカチュアを窘めた。
「だめよ! 表に出てきたら、風邪引くわよ!」
カチュアの小さな体を案じる言葉が口を突いて出てくる。たまらずローラもカチュアの元へと駆け寄ろうとする。ローラの口からカチュアの身を案じる言葉が出てきたことで、それを聞いたカチュアははやる気持ちを抑えきれなくなり、サンダル履きのまま元気よく走り出す。夜風にあたってこんなことをすれば明日の朝は絶対に鼻風邪をひくに決まっている。楊夫人の近くで漢方医の闇医者をしている李大夫の所に行かないといけないだろう。一人が風邪をひけばリレーゲームで次々に風邪をひく。一通り順番が終わるまでは気が抜けない日々になる。先のことを考えると手間がかかりそうで少々気が重い。
「もう――、嬉しくなると言うことを聞かないんだから」
苦笑しつつため息を吐くとカチュアを受け入れるべくローラは片膝をついて目線をおろした。ローラの視界の中、かけてくるカチュアの姿が見えていた。それはローラがこの最果ての街で見つけたささやかな幸せである。
しかし――、運命の歯車は多くの人々を巻き込みながら無音のまま粛々と回り続ける。そして、今この瞬間、ローラたちが佇む場所で動き続ける歯車の名を人々はこう呼ぶ――
そう――『悲劇』――と。
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