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第2章エクスプレス サイドB①魔窟の洋上楼閣都市/潜入編
Part4 七つの扉/ペガソ―陽気な男―
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だがそれとは入れ替わりに、ジョン・ガントの左隣、天龍の向かい側の扉から姿を表した者が居る。エスパドリーユと呼ばれるキャンバス地のシューズを履き、青地のチノパンに、純白の襟シャツ。首元にはシルバーのネックレスを下げた長髪の南米系の風貌の若者である。身長は高く180を超えるだろうか。細身のシルエットながら程よく日焼けしており、開け放たれた襟元から鍛え上げられた肉体が垣間見えている。茶色の髪は長く堀の深い顔立ちの中で人懐っこい笑顔とは裏腹に、その視線は常に何かに怒りを覚えているかのように力強さに満ちていた。
「ブエノス ノーチェス!」
つい今しがた人身売買のやり取りがあったと言うのに、彼は陽気にバーに一杯引っ掛けに来たかのようなフランクさで飄々として現れた。その傍らには小麦色の肌の見事なプロポーションのブラウンヘアの美女が付き従っている。Fカップはあろうかというバストをわずかばかりの黒のレザーのチューブブラで覆い、腰には同色の極端に丈の短いホットパンツを履いている。足元は編み上げのグラディエーターサンダルで、見ようによってはほとんど何も着ていないのと同じと言えるものだった。
本来なら扉が開く前に案内がされるはずなのだが、先程の天龍と之神老師のやり取りのためにアナウンスが遅れたのだろう。すでに客人が入ってきてからの案内となっていた。
「ファミリア デラ サングレより、ペガソ グエヴァラ クエンタニーリャ様、ナイラ アブレウ アレリャーノ様、お着きになられましてございます」
女官の告げる声に之神老師が顔を向ける。他の者達も各々にペガソへと視線を向けたが、先に問いかけてきたのはペガソの方だ。
「俺が居ない間に、随分面白い事が起きたようだな。何やってるんだ?」
血気盛んで力強さと勢いのある声だった。天竜に問いかけながら所定の席へと向かう。その席を任されている女官が椅子を動かせば、ペガソはその席に腰を下ろしながら、女官の右手をおもむろに掴んだ。そして有無を言わさずに引き寄せると自らの足の上へと寝そべらせてしまった。
「女ってのはもっと丁寧に扱うもんだぜ? 何しろ壊れ物だからな」
笑みを浮かべながら問いれば、ペガソは女官を抱き起こし自らの膝の上に横座りにさせた。そしてまるで恋人にするかのようなしなやかで優しい仕草で、そのうら若い女官の腰や足を、まるでピアノでソナタ曲でも奏でるかのように弄び始めた。ペガソのその指が踊るたびに弾かれるように女官の体が微妙に動いていた。
あまりに早い手癖に呆れて冷やかしたのはジョン・ガントだ。
「よく言うぜ、丁寧に扱えば数はどれだけ多くてもかまわないのか? ペガソ」
そんな冷やかしも一切気にも止めないのがペガソと言う男だった。ジョン・ガントの言葉に声を潜めて笑いながらも答え返した。
「数をこなせるだけの〝力〟を持ってるからできるんだよ。俺たちにはソレがあるはずだ。なぁ? 〝モンスター〟 お前もこないだ六本木で女連れてたろ? 日本のテレビプログラムでもよく見かける顔だが、ありゃあ誰だ?」
一見、冷やかしているようにも聞こえるが、ジョン・ガントは自分に向けられた言葉の中に好意的なメッセージが含まれていることを聞き逃さなかった。ペガソもジョン・ガントと大差ない道のりを歩いてこの国にたどり着いたのは疑いようが無いからだ。二人は互いに似た者同士の気配を感じているに違いなかった。
「バラすなよ? この国の『元』国民的アイドルってやつだ。去年の暮に男性アイドルグループのメンバーと婚約までして年が明けたら男の浮気ですぐに破局したあの哀れな女さ」
「あぁ、居たなあ。そんなの大丈夫なのか? そんな〝表〟の有名人に手を出して」
「心配いらねぇよ。そいつ昔は派手だったがトウが立ってきたんで人気が下がり始まってるんだ。以前は金があったから薬でも男でも何でもやりたい放題だったが、今じゃお目こぼしとお恵みが欲しくて夜の街をうろついてるって話だ。それに以前から黒人好きだって話でよ。薬を都合してやりゃあなんでもやるぜ」
「なんでも――か。こんな事もか?」
ペガソはそう言いながら膝の上に抱えた女官の着衣の胸元からおもむろに右手を差し込んでいく。そして胸の膨らみの頂きのあたりで、その手を動かせば女官の口からは甘い吐息が漏れていた。そんなあからさまな行為に笑いながらジョン・ガントはペガソを冷やかした。
「おいおい、いいのか? 後ろでナイラの姉ちゃんが拗ねてるぜ?」
ママノーラも目の前で繰り広げられる滑稽な見世物に苦笑いしている。
「しらないよ? 後ろからいきなり刺されても。女はいつ裏切るかわからないよ?」
だが、その指摘を意に介する事無く、ペガソは明るく笑い飛ばしていた。膝の上の女官の娘へのいたずらは止まず、甘い吐息を抑えきれないでいる彼女は、自分本来の役目へと戻ることも出来ずにいた。
「それこそいらない心配だぜ。コイツは俺を裏切らない。いや――〝裏切れない〟なあ? ナイラ?」
ペガソが後ろに顔を向ければナイラは怯えた目で主人たるペガソを見つめ返していた。そんなナイラへとペガソが向ける視線には一切の優しさは無い。自らの所有物をドライに値踏みする冷酷さがかいま見えるだけである。
「エルセ ペガソ」
エルセとはエル セニョールの略称で英語で言うならミスターと言う言葉と同意義だ。ペガソに答えるナイラの声が震えていた。こう言う場で忠誠心を試すような問いかけをしてきたのだ。それを試すような行為をさせられるのは分かりきったことだからだ。
「なら、その〝証し〟を見せろ」
「シー、エルセ ペガソ」
一切の抵抗なく同意する。そして、ナイラは右手で自らの首元を操作する。すると、彼女の胸の合わせ目より首筋よりの辺り、内臓で言うなら甲状腺の真上あたりの体表に瞬間的に線が浮かんだ。そして、微かな電子音を響かせて、彼女の胸部の上半分辺りが観音開きに左右に開いたのだ。
ナイラは目を伏せていた。自らの体に仕掛けられた施しがどこまで自分を生身から変えてしまっているのか、衆目に晒されるのが何よりも耐え難い恥辱と屈辱だったからだ。
顔を赤く染め、目元に涙をにじませつつナイラは自らの所有者たるペガソの命に服していた。そして、開かれた箇所から垣間見えた彼女の体の真実――、それは無残なまでに丁寧で完璧なサイバネティックスボディである。
精密かつ微細な電子装置が詰め込まれた胸腔の中で彼女の肉体を駆動させる人工心臓と小型プラズマ炉心がリズミカルに脈を打っていた。そこに生身の体の気配は全く存在しては居ない。彼女の体の大半が同じような人工物に置き換えられているだろうと言う事は、誰の目にも明らかであった。ペガソの意図がことさら悪意に満ちているのは彼女の肉体の内実が手に取る分かるように、わざわざ開閉式のハッチを設けたことである。初めから改造された作り物の肉体を人目に晒させることを前提としているのだ。
この円卓の間に集まった誰もがナイラの体を眺めていた。しかしだ、そこには一切の嫌悪も非難も存在して居なかった。ただあるのはペガソが成した一つの成果に対する賞賛だけである。
「コイツのサイボーグボディには随分と金と時間がかかったが、この間、ついに胴体と手足の残りを造り替えることができた。今は頭部の一部を残すだけだ。全身に改造が施されているのにもかかわらず、外見はまるっきりの生身のメキシカンビューティにしか見えないんだ。俺の自信作さ」
満足げなペガソに、ママノーラが問いかけてきた。
「へぇ、フル規格のサイボーグってやつだね、天馬の同志。全身を丸ごと全部作るんじゃなくて、部分部分の置き換えでやったのかい?」
「もちろんだ。少しずつ時間をかけながら人工の物に置き換えてやったんだ。少しづつ変わっていく自分を自覚させてやるのは、なかなかに面白い見世物だったぜ。胴体の改造で取り出された内蔵を見せてやったら丸一日泣き叫んでたぜ」
それはまるで家畜か小動物でも弄ぶような邪悪さだった。子供のように純真であり無邪気であるからこそ欲深く際限がない。もしこれまでの行為でナイラが絶望して自ら死を選んだとしても、それはたまたまそう言う状況になったと言うだけであり、彼が良心の呵責を抱くことは金輪際ありえないことなのだ。
「エゲツないねぇ。まぁ、あんたらしいと言っちゃぁあんたらしいけどさ。この嬢ちゃん、嫌がらなかったのかい?」
「言ったろ? その心配は無ぇって。コイツは俺に惚れきってるし殴られようが蹴れられようが心の中じゃ喜んでるのさ。何しろ、俺に逆らって逃げ出したりしたら生まれ故郷の親兄弟が血を見る様な悲惨な目に遭うことになる。この売女は俺の言うとおりに従うしかねぇのさ」
「血の盟約――ってやつだね?」
「そう云うこと。コイツは死ぬまで俺の玩具で居続けるしか無いんだよ。なぁ、ナイラ?」
誇らしげに自慢するペガソの傍らで屈辱に身を震わせつつ己の体を晒し続けるナイラの姿が在った。その彼女に対して同情の視線を向けている者は誰一人として居ない。技術への賞賛、残虐なまでの支配行為への共感。そして同じ闇社会に住む者としての欲望を充足させる事への悪しき感情がここに集まっているのだ。
ナイラは蒼白の表情の中にあっても、その視線の先にはペガソを常に捉えていた。ペガソの語る一方的な言葉に対しても、それを否定することなくすべてを受け入れている。そして、口元を微笑ませるとこう告げるのだ。
「シー、エルセ ペガソ」
ナイラを辱めたうえに服従する意思に迷いがないことをはっきりと示させた事で、ペガソはことさら上機嫌だった。この男は外見はフランクで陽気な紳士だが、内面は腐りきったエゴイストでありサディスティックなナルシストなのだ。
「ブエノス ノーチェス!」
つい今しがた人身売買のやり取りがあったと言うのに、彼は陽気にバーに一杯引っ掛けに来たかのようなフランクさで飄々として現れた。その傍らには小麦色の肌の見事なプロポーションのブラウンヘアの美女が付き従っている。Fカップはあろうかというバストをわずかばかりの黒のレザーのチューブブラで覆い、腰には同色の極端に丈の短いホットパンツを履いている。足元は編み上げのグラディエーターサンダルで、見ようによってはほとんど何も着ていないのと同じと言えるものだった。
本来なら扉が開く前に案内がされるはずなのだが、先程の天龍と之神老師のやり取りのためにアナウンスが遅れたのだろう。すでに客人が入ってきてからの案内となっていた。
「ファミリア デラ サングレより、ペガソ グエヴァラ クエンタニーリャ様、ナイラ アブレウ アレリャーノ様、お着きになられましてございます」
女官の告げる声に之神老師が顔を向ける。他の者達も各々にペガソへと視線を向けたが、先に問いかけてきたのはペガソの方だ。
「俺が居ない間に、随分面白い事が起きたようだな。何やってるんだ?」
血気盛んで力強さと勢いのある声だった。天竜に問いかけながら所定の席へと向かう。その席を任されている女官が椅子を動かせば、ペガソはその席に腰を下ろしながら、女官の右手をおもむろに掴んだ。そして有無を言わさずに引き寄せると自らの足の上へと寝そべらせてしまった。
「女ってのはもっと丁寧に扱うもんだぜ? 何しろ壊れ物だからな」
笑みを浮かべながら問いれば、ペガソは女官を抱き起こし自らの膝の上に横座りにさせた。そしてまるで恋人にするかのようなしなやかで優しい仕草で、そのうら若い女官の腰や足を、まるでピアノでソナタ曲でも奏でるかのように弄び始めた。ペガソのその指が踊るたびに弾かれるように女官の体が微妙に動いていた。
あまりに早い手癖に呆れて冷やかしたのはジョン・ガントだ。
「よく言うぜ、丁寧に扱えば数はどれだけ多くてもかまわないのか? ペガソ」
そんな冷やかしも一切気にも止めないのがペガソと言う男だった。ジョン・ガントの言葉に声を潜めて笑いながらも答え返した。
「数をこなせるだけの〝力〟を持ってるからできるんだよ。俺たちにはソレがあるはずだ。なぁ? 〝モンスター〟 お前もこないだ六本木で女連れてたろ? 日本のテレビプログラムでもよく見かける顔だが、ありゃあ誰だ?」
一見、冷やかしているようにも聞こえるが、ジョン・ガントは自分に向けられた言葉の中に好意的なメッセージが含まれていることを聞き逃さなかった。ペガソもジョン・ガントと大差ない道のりを歩いてこの国にたどり着いたのは疑いようが無いからだ。二人は互いに似た者同士の気配を感じているに違いなかった。
「バラすなよ? この国の『元』国民的アイドルってやつだ。去年の暮に男性アイドルグループのメンバーと婚約までして年が明けたら男の浮気ですぐに破局したあの哀れな女さ」
「あぁ、居たなあ。そんなの大丈夫なのか? そんな〝表〟の有名人に手を出して」
「心配いらねぇよ。そいつ昔は派手だったがトウが立ってきたんで人気が下がり始まってるんだ。以前は金があったから薬でも男でも何でもやりたい放題だったが、今じゃお目こぼしとお恵みが欲しくて夜の街をうろついてるって話だ。それに以前から黒人好きだって話でよ。薬を都合してやりゃあなんでもやるぜ」
「なんでも――か。こんな事もか?」
ペガソはそう言いながら膝の上に抱えた女官の着衣の胸元からおもむろに右手を差し込んでいく。そして胸の膨らみの頂きのあたりで、その手を動かせば女官の口からは甘い吐息が漏れていた。そんなあからさまな行為に笑いながらジョン・ガントはペガソを冷やかした。
「おいおい、いいのか? 後ろでナイラの姉ちゃんが拗ねてるぜ?」
ママノーラも目の前で繰り広げられる滑稽な見世物に苦笑いしている。
「しらないよ? 後ろからいきなり刺されても。女はいつ裏切るかわからないよ?」
だが、その指摘を意に介する事無く、ペガソは明るく笑い飛ばしていた。膝の上の女官の娘へのいたずらは止まず、甘い吐息を抑えきれないでいる彼女は、自分本来の役目へと戻ることも出来ずにいた。
「それこそいらない心配だぜ。コイツは俺を裏切らない。いや――〝裏切れない〟なあ? ナイラ?」
ペガソが後ろに顔を向ければナイラは怯えた目で主人たるペガソを見つめ返していた。そんなナイラへとペガソが向ける視線には一切の優しさは無い。自らの所有物をドライに値踏みする冷酷さがかいま見えるだけである。
「エルセ ペガソ」
エルセとはエル セニョールの略称で英語で言うならミスターと言う言葉と同意義だ。ペガソに答えるナイラの声が震えていた。こう言う場で忠誠心を試すような問いかけをしてきたのだ。それを試すような行為をさせられるのは分かりきったことだからだ。
「なら、その〝証し〟を見せろ」
「シー、エルセ ペガソ」
一切の抵抗なく同意する。そして、ナイラは右手で自らの首元を操作する。すると、彼女の胸の合わせ目より首筋よりの辺り、内臓で言うなら甲状腺の真上あたりの体表に瞬間的に線が浮かんだ。そして、微かな電子音を響かせて、彼女の胸部の上半分辺りが観音開きに左右に開いたのだ。
ナイラは目を伏せていた。自らの体に仕掛けられた施しがどこまで自分を生身から変えてしまっているのか、衆目に晒されるのが何よりも耐え難い恥辱と屈辱だったからだ。
顔を赤く染め、目元に涙をにじませつつナイラは自らの所有者たるペガソの命に服していた。そして、開かれた箇所から垣間見えた彼女の体の真実――、それは無残なまでに丁寧で完璧なサイバネティックスボディである。
精密かつ微細な電子装置が詰め込まれた胸腔の中で彼女の肉体を駆動させる人工心臓と小型プラズマ炉心がリズミカルに脈を打っていた。そこに生身の体の気配は全く存在しては居ない。彼女の体の大半が同じような人工物に置き換えられているだろうと言う事は、誰の目にも明らかであった。ペガソの意図がことさら悪意に満ちているのは彼女の肉体の内実が手に取る分かるように、わざわざ開閉式のハッチを設けたことである。初めから改造された作り物の肉体を人目に晒させることを前提としているのだ。
この円卓の間に集まった誰もがナイラの体を眺めていた。しかしだ、そこには一切の嫌悪も非難も存在して居なかった。ただあるのはペガソが成した一つの成果に対する賞賛だけである。
「コイツのサイボーグボディには随分と金と時間がかかったが、この間、ついに胴体と手足の残りを造り替えることができた。今は頭部の一部を残すだけだ。全身に改造が施されているのにもかかわらず、外見はまるっきりの生身のメキシカンビューティにしか見えないんだ。俺の自信作さ」
満足げなペガソに、ママノーラが問いかけてきた。
「へぇ、フル規格のサイボーグってやつだね、天馬の同志。全身を丸ごと全部作るんじゃなくて、部分部分の置き換えでやったのかい?」
「もちろんだ。少しずつ時間をかけながら人工の物に置き換えてやったんだ。少しづつ変わっていく自分を自覚させてやるのは、なかなかに面白い見世物だったぜ。胴体の改造で取り出された内蔵を見せてやったら丸一日泣き叫んでたぜ」
それはまるで家畜か小動物でも弄ぶような邪悪さだった。子供のように純真であり無邪気であるからこそ欲深く際限がない。もしこれまでの行為でナイラが絶望して自ら死を選んだとしても、それはたまたまそう言う状況になったと言うだけであり、彼が良心の呵責を抱くことは金輪際ありえないことなのだ。
「エゲツないねぇ。まぁ、あんたらしいと言っちゃぁあんたらしいけどさ。この嬢ちゃん、嫌がらなかったのかい?」
「言ったろ? その心配は無ぇって。コイツは俺に惚れきってるし殴られようが蹴れられようが心の中じゃ喜んでるのさ。何しろ、俺に逆らって逃げ出したりしたら生まれ故郷の親兄弟が血を見る様な悲惨な目に遭うことになる。この売女は俺の言うとおりに従うしかねぇのさ」
「血の盟約――ってやつだね?」
「そう云うこと。コイツは死ぬまで俺の玩具で居続けるしか無いんだよ。なぁ、ナイラ?」
誇らしげに自慢するペガソの傍らで屈辱に身を震わせつつ己の体を晒し続けるナイラの姿が在った。その彼女に対して同情の視線を向けている者は誰一人として居ない。技術への賞賛、残虐なまでの支配行為への共感。そして同じ闇社会に住む者としての欲望を充足させる事への悪しき感情がここに集まっているのだ。
ナイラは蒼白の表情の中にあっても、その視線の先にはペガソを常に捉えていた。ペガソの語る一方的な言葉に対しても、それを否定することなくすべてを受け入れている。そして、口元を微笑ませるとこう告げるのだ。
「シー、エルセ ペガソ」
ナイラを辱めたうえに服従する意思に迷いがないことをはっきりと示させた事で、ペガソはことさら上機嫌だった。この男は外見はフランクで陽気な紳士だが、内面は腐りきったエゴイストでありサディスティックなナルシストなのだ。
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