ブラザーフッド:インテリヤクザと三下ヤクザの洒落にならない話 【全話執筆完了!毎日更新中!】

美風慶伍

文字の大きさ
上 下
45 / 78
幕間4:脱出行

幕間4-2:脱出行/永慶とエイト

しおりを挟む
 そんな会話を交わしている俺達の隣では、柳澤ってやつとエイトのおっさんが言葉をかわしていた。
 湖のある方をむいて並んで立っている。その会話は落ち着いたもので、これからの手順について詰めているようだ。
 柳澤が言う。
 
「それで、榊原のやつには交渉が成立したから具体的な引き継ぎの話し合いに移りたい――と伝えれば良いんですね?」
「あぁ、場所の指定とかは早急に段取りする。その上で場所と日時を明確にして伝えるんだ。曖昧な話だとすぐに疑ってかかるからなアイツは」
「――簡単には飛びつかないって事ですか?」
「そう言うこった。強欲の榊原の肩書は伊達じゃねえよ」
「面倒ですね」
「全くだ」

 柳澤がため息をつけば、エイトもため息をついていた。
 
「だが――」

 エイトは左の手のひらを開いて、右の拳を握りしめて両手を打ち付け合う。甲高い小気味よい音が響いた。
 
「今度こそ、ぶっ潰す。そのためにはうちのトップも連れて行く。流石にそこまでやれば礼二の野郎も本物だと信じるだろうさ」
「では――」
 
 柳澤がメガネをフレームを右手の指先でそっと直しながら答えた。
 
「こちらもできるだけ格式高く対応します。前任者が同行すると言う事でうちの天龍のオヤジさんにも同席させる――と言う事で」
「上等だ。それで行こう」

 二人がそんなふうにやり取りをしているときだった。
 俺とエイトのおっさんの脳裏に飛び込んできた通信音声があった。
 
〔エイト、フォー――、聞こえるか?〕

 そのとても落ち着いたバリトンの声はオレたちのリーダーである〝マルチアイのワン〟の物だった。俺は肉声を抑えながらネットに向けて即座に答える。
 
〔どうした? ワン?〕
〔何があった?〕

 エイトのおっさんも答える。それに対してワンが明確に答えた。
 
〔――警察が接近している。すぐに脱出しろ〕
〔どこだ? 愛知県警か?〕

 俺の問にワンが答える。
 
〔愛知県警と警視庁の合同だ。厳密には――〕

 その言葉にエイトが自らの読みを重ねる。
 
〔――警視庁暴対4課、それと〝片目〟の野郎だな?〕
〔そのとおりだ、エイト〕

 ワンは俺たちに言い含めるようにしっかりと告げた。

〔アンドロイド警察官・特攻装警のアトラスが同行している。間違いなく――エイト、お前対策だ〕
〔だろうな、やっこさんならそれくらいの読みは効かせているはずだからな〕
〔すぐに脱出しろ、健闘を祈るぞ〕
〔あぁ〕

 ワンはオレたちとやり取りを終えると回線を切った。その段階から俺たちのさらなる死闘が始まることになるのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

組長と俺の話

性癖詰め込みおばけ
BL
その名の通り、組長と主人公の話 え、主人公のキャラ変が激しい?誤字がある? ( ᵒ̴̶̷᷄꒳ᵒ̴̶̷᷅ )それはホントにごめんなさい 1日1話かけたらいいな〜(他人事) 面白かったら、是非コメントをお願いします!

虚弱なヤクザの駆け込み寺

菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。 「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」 「脅してる場合ですか?」 ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。 ※なろう、カクヨムでも投稿

未冠の大器のやり直し

Jaja
青春
 中学2年の時に受けた死球のせいで、左手の繊細な感覚がなくなってしまった、主人公。  三振を奪った時のゾクゾクする様な征服感が好きで野球をやっていただけに、未練を残しつつも野球を辞めてダラダラと過ごし30代も後半になった頃に交通事故で死んでしまう。  そして死後の世界で出会ったのは…  これは将来を期待されながらも、怪我で選手生命を絶たれてしまった男のやり直し野球道。  ※この作品はカクヨム様にも更新しています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

処理中です...