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弐:名古屋
弐の参:名古屋/名古屋駅前ロータリー
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愛車は一路、新東名高速道路をひた走る。途中、1度の休憩をはさみながら豊田ジャンクションを通過する。名古屋南ジャンクションから名古屋高速3号へ入り、途中から名古屋中央環状線に移動、錦橋ランプから一般道に降りれば、名古屋駅前まで後少しである。
取締りやパトカーにも鉢合わせる事なく、渋滞にも捕まらずに順調にここまでたどり着いた。
〔マスター、ここから先は一般道です。順調に進みましたので7時20分には到着するものと思われます〕
「オッケー、アレン。それじゃ合流予定のやつの姿を探してくれ」
〔かしこまりました。見つけ次第ご連絡いたします〕
俺はアレンに、合流予定の田沼って男を探すように命じた。まるっきりの初対面で素性不明、変に勘に頼るより、画像照合を使ったほうがいい。
錦通りを西へ進み、ナナちゃん人形前の交差点を右へと曲がる。そしてそのまま進めば高島屋のエンブレムが見下ろすJR名古屋駅である。
俺は駅前ロータリーを静かに流す。目標の人物だけでなく警察関係者が居合わせることを警戒した。
一般ビジネスマンを装っているとは言えこれでもステルスヤクザだ。面倒は避けたい。目的の人物を回収したら速やかに移動したいところなのだ。
俺自身も写真の人物を探す。正面からの写真しかないのは少々心もとないが、やむを得ない。30秒ほどが経過し、別な手段を考えようとしたその時だった。
〔マスター、見つけました。ヘッドアップディスプレイにて誘導いたします〕
アレンが告げて、その人物の居る方へと誘導を開始する。すでに通り過ぎた場所であり、ロータリーをもう一周する。相手は地下からの上り口の階段脇で佇んでいた。報告の写真と大差ないスカジャンにジーンズ姿、足元には傷んだスニーカー履き。服装から言ってどう見ても格上の人間には見えない。
「妙だな――」
どう言う人物なのか想定がつかない。いや俺が普段出会っている人物たちの範疇には当てはまらないタイプだ。かと言って一般人とは思えないし、当然ながら――
「ヤクザ者とは思えねぇな。あれでヤクザだったら三下だ」
――そう考えるしか無い。アレンが問いかける。
〔いかがなさいますか?〕
「車を寄せる。一番近づいたところで一回だけクラクションを鳴らせ」
〔了解いたしました〕
ロータリーを右へとカーブして再侵入、そしてすぐに路肩に寄せるとアレンがクラクションを鳴らした。
「気づいたか」
相手のスカジャン男は顔を上げた。俺と視線が合いすぐに走り出してくる。こっちの意図と素性に気づいたらしい。
「頭は悪くなさそうだな」
〔そのようです〕
何しろ、これから向かう大仕事に同行させるのだ。バカでは困る。俺は窓ガラスを開けると件の男へと声をかけた。
「乗れ」
顎をシャクって右の助手席へと促す。男は無言でうなずくとすばやく助手席へと回り、ドアを開けると潜り込んできた。
「すぐに出る。ベルトをしろ」
シートへと座るやいなや、シートベルトを手早くつける。その動作にもたついたところはなく機敏そのものだった。
「お願いします」
準備が済んだことを俺に伝えてくる。気負ったところも、焦り屋ビビリ屋なところもない、落ち着いていた言い回しだ。
「行くぞ。話は走りながらだ」
アレンがヘッドアップディスプレイで警察車両接近を知らせてきた。頃合いだ、これ以上は長いはしないほうがいい。
「行くぞ」
「はい」
俺は新たな同行者を隣に目的地へと向けて走り出したのだった。
取締りやパトカーにも鉢合わせる事なく、渋滞にも捕まらずに順調にここまでたどり着いた。
〔マスター、ここから先は一般道です。順調に進みましたので7時20分には到着するものと思われます〕
「オッケー、アレン。それじゃ合流予定のやつの姿を探してくれ」
〔かしこまりました。見つけ次第ご連絡いたします〕
俺はアレンに、合流予定の田沼って男を探すように命じた。まるっきりの初対面で素性不明、変に勘に頼るより、画像照合を使ったほうがいい。
錦通りを西へ進み、ナナちゃん人形前の交差点を右へと曲がる。そしてそのまま進めば高島屋のエンブレムが見下ろすJR名古屋駅である。
俺は駅前ロータリーを静かに流す。目標の人物だけでなく警察関係者が居合わせることを警戒した。
一般ビジネスマンを装っているとは言えこれでもステルスヤクザだ。面倒は避けたい。目的の人物を回収したら速やかに移動したいところなのだ。
俺自身も写真の人物を探す。正面からの写真しかないのは少々心もとないが、やむを得ない。30秒ほどが経過し、別な手段を考えようとしたその時だった。
〔マスター、見つけました。ヘッドアップディスプレイにて誘導いたします〕
アレンが告げて、その人物の居る方へと誘導を開始する。すでに通り過ぎた場所であり、ロータリーをもう一周する。相手は地下からの上り口の階段脇で佇んでいた。報告の写真と大差ないスカジャンにジーンズ姿、足元には傷んだスニーカー履き。服装から言ってどう見ても格上の人間には見えない。
「妙だな――」
どう言う人物なのか想定がつかない。いや俺が普段出会っている人物たちの範疇には当てはまらないタイプだ。かと言って一般人とは思えないし、当然ながら――
「ヤクザ者とは思えねぇな。あれでヤクザだったら三下だ」
――そう考えるしか無い。アレンが問いかける。
〔いかがなさいますか?〕
「車を寄せる。一番近づいたところで一回だけクラクションを鳴らせ」
〔了解いたしました〕
ロータリーを右へとカーブして再侵入、そしてすぐに路肩に寄せるとアレンがクラクションを鳴らした。
「気づいたか」
相手のスカジャン男は顔を上げた。俺と視線が合いすぐに走り出してくる。こっちの意図と素性に気づいたらしい。
「頭は悪くなさそうだな」
〔そのようです〕
何しろ、これから向かう大仕事に同行させるのだ。バカでは困る。俺は窓ガラスを開けると件の男へと声をかけた。
「乗れ」
顎をシャクって右の助手席へと促す。男は無言でうなずくとすばやく助手席へと回り、ドアを開けると潜り込んできた。
「すぐに出る。ベルトをしろ」
シートへと座るやいなや、シートベルトを手早くつける。その動作にもたついたところはなく機敏そのものだった。
「お願いします」
準備が済んだことを俺に伝えてくる。気負ったところも、焦り屋ビビリ屋なところもない、落ち着いていた言い回しだ。
「行くぞ。話は走りながらだ」
アレンがヘッドアップディスプレイで警察車両接近を知らせてきた。頃合いだ、これ以上は長いはしないほうがいい。
「行くぞ」
「はい」
俺は新たな同行者を隣に目的地へと向けて走り出したのだった。
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