6 / 7
戸惑い
しおりを挟む
「お久しぶりですわね」
眠るつもりなど無かったのだが、咄嗟に動揺を隠してこの森の主と対面する。
「そうだね。ここにいるということは思い出したんだね?」
精霊様が面白そうにニヤリと笑う
「ええ、思い出してしまいましたわ。でもそのおかげで私の大事な人を守ることができました。
ところで精霊様、急ぎなのですが、この方を完全に治してもらうことはできますか?」
私は光魔法が使えるはずだが、ハウンドさんを完治まで持っていくことはできなかった。
「たしかに、早く治療した方が良さそうだ。ちょっと見せてごらん。」
彼の傷口を見た精霊様は、何か納得したご様子で、あっという間にハウンドさんを回復させた。
「ぅ、うん、あれここは?」
ハウンドさんは意識が戻ったようだ。
「ハウンドさん!良かった! 光魔法がかかったはずなのだけど、一向に目を覚まさないから心配したわ」
ハウンドさんは大きく目を見開いて、何かを言おうとしたように見えたが、次に口を開いたのは精霊様だった。
「そのことだが、テレーサ。前に、魔力は魂に結び付けられるという話をしたね?
だから、君も風魔法と光魔法両方が使える。だけど、前の君は自身に光魔法の素質があることを知らなかった。つまり、演習をしていない魔法の、光魔法のレベルは地に等しい。それでその男の傷を完全に治療することは叶わなかったんだろう。どの道ここにきたのは正解だよ。」
「そうですか、確かに私光魔法なんて使ったことがなかったわ。それで威力が弱かったのね。あの、本当にありがとうございました、精霊様。」
精霊様には感謝してもしきれない。どうやってご恩を返そうか。そう考えているとハウンドさんがむくっと立ち上がった。
「あの、僕全く状況が掴めてないのですが……
テレーサちゃんが光の巫女ってこと?
あと、その人は?」
そうだった。私は急いで事の顛末を話すことにした。
「テレーサちゃんまずは僕を助けてくれてありがとう。
でもちょっと待って、あのテレーサちゃんがかのモンタニア国のお嬢様だったって事!?それで、2つの魔法も使えて、この方は精霊様だって?」
ハウンドさんは卒倒しそうな勢いだった。
まあそりゃそうよね… 私も今さっき記憶が戻ってまだ受け止めきれてないもの。
「そうなの…私もさっき記憶が戻ったばかりで……
正直混乱しているわ。
ハウンドさん、こんな私でもまた好きになってくれる?」
本音を言うとすごく不安だった。こんなに抱えているものが多い私のことを好きでいてくれるのかと。
「何を言ってるの! 僕はどんなテレーサちゃんでも大好きだよ! どんな未来でも君と一緒に歩みたい。」
真剣な瞳のハウンドさんに私はまた惚れ直した。
「ありがとう。私も大好きよ!」
感動して抱き合っていると、精霊様がおほんと咳をした。
「お熱いところ悪いんだけど、僕のことも忘れないでほしいな。
それと君は前世のことで何かすれ違いがあるようだから、その真実だけ教えてあげる。」
「あの、どういうことで」
瞬間私の頭の中に流れ込んできたのはかつてのお父様の姿だった。
眠るつもりなど無かったのだが、咄嗟に動揺を隠してこの森の主と対面する。
「そうだね。ここにいるということは思い出したんだね?」
精霊様が面白そうにニヤリと笑う
「ええ、思い出してしまいましたわ。でもそのおかげで私の大事な人を守ることができました。
ところで精霊様、急ぎなのですが、この方を完全に治してもらうことはできますか?」
私は光魔法が使えるはずだが、ハウンドさんを完治まで持っていくことはできなかった。
「たしかに、早く治療した方が良さそうだ。ちょっと見せてごらん。」
彼の傷口を見た精霊様は、何か納得したご様子で、あっという間にハウンドさんを回復させた。
「ぅ、うん、あれここは?」
ハウンドさんは意識が戻ったようだ。
「ハウンドさん!良かった! 光魔法がかかったはずなのだけど、一向に目を覚まさないから心配したわ」
ハウンドさんは大きく目を見開いて、何かを言おうとしたように見えたが、次に口を開いたのは精霊様だった。
「そのことだが、テレーサ。前に、魔力は魂に結び付けられるという話をしたね?
だから、君も風魔法と光魔法両方が使える。だけど、前の君は自身に光魔法の素質があることを知らなかった。つまり、演習をしていない魔法の、光魔法のレベルは地に等しい。それでその男の傷を完全に治療することは叶わなかったんだろう。どの道ここにきたのは正解だよ。」
「そうですか、確かに私光魔法なんて使ったことがなかったわ。それで威力が弱かったのね。あの、本当にありがとうございました、精霊様。」
精霊様には感謝してもしきれない。どうやってご恩を返そうか。そう考えているとハウンドさんがむくっと立ち上がった。
「あの、僕全く状況が掴めてないのですが……
テレーサちゃんが光の巫女ってこと?
あと、その人は?」
そうだった。私は急いで事の顛末を話すことにした。
「テレーサちゃんまずは僕を助けてくれてありがとう。
でもちょっと待って、あのテレーサちゃんがかのモンタニア国のお嬢様だったって事!?それで、2つの魔法も使えて、この方は精霊様だって?」
ハウンドさんは卒倒しそうな勢いだった。
まあそりゃそうよね… 私も今さっき記憶が戻ってまだ受け止めきれてないもの。
「そうなの…私もさっき記憶が戻ったばかりで……
正直混乱しているわ。
ハウンドさん、こんな私でもまた好きになってくれる?」
本音を言うとすごく不安だった。こんなに抱えているものが多い私のことを好きでいてくれるのかと。
「何を言ってるの! 僕はどんなテレーサちゃんでも大好きだよ! どんな未来でも君と一緒に歩みたい。」
真剣な瞳のハウンドさんに私はまた惚れ直した。
「ありがとう。私も大好きよ!」
感動して抱き合っていると、精霊様がおほんと咳をした。
「お熱いところ悪いんだけど、僕のことも忘れないでほしいな。
それと君は前世のことで何かすれ違いがあるようだから、その真実だけ教えてあげる。」
「あの、どういうことで」
瞬間私の頭の中に流れ込んできたのはかつてのお父様の姿だった。
10
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。
石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。
七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。
しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。
実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。
愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。


【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる