婚約破棄で絶望しましたが、私は愛し愛される人に出会えて幸せです

腹鳴ちゃん

文字の大きさ
上 下
4 / 7

記憶

しおりを挟む
やっぱり聞いたことのない話だ。
でもこれ どこかで……

警鐘を鳴らすように頭がガンガンする

「子供に読み聞かせするには残酷なお話ね」

内容が内容だけに読み聞かせられる子どもたちを想像して心配になった。

「たしかに、でもこれは一種の教育として必要なことなんだ。」

教育とは?

「どういうこと?」

「つまりね、これは同じ悲劇を繰り返さないための教訓で、結婚する人や家族には愛情表現をたっぷりして悲しませないことを幼いころから教えられるんだ」 

というか、このお話はなんなの…? 私に関係あるの?
さっきから頭痛が収まらない。
私は頭に手をあてながら、話を聞く。

「ちょっテレーサちゃん、大丈夫?!」
ハウンドさんがあせったようにこちらをみる。

「大丈夫だから。お話聞かせて?
さっき実話だって言ったけれど、その国は今どうなっているの?」
魔女という非現実的な話が気になった。

「ほんと? 気分悪くなったらすぐ言ってね?
僕もよく分からないんだけど、その国は魔女の件で崩壊しそうになってたところをここシュタウヘンベルクが制圧したらしい。だから、今はもうないんじゃないかな」

なるほど、吸収されたのかー
そうか、ハウンドさんそれで私に可愛いや好きをたくさんくれるんだ。
にしても、そんなことが。信じていた人に裏切られることほどつらいものはないだろうな…

「辛かったわ。」

「え?」
ハウンドさんが目を丸くする。

ん? 私今自分のことみたいに話した?
なぜか分からないが胸の奥がズキンと痛んだ。

「いや、そのご令嬢の話よ。私だったら絶対嫌だなーと思って」

へへっとごまかすように笑う

「ふふ、そうだね。
そういえば、この国の皇太子様が光の巫女を捜しているらしいよ」

「光の巫女?」

なんでも、神託が下ったらしい。
年月が経つにつれて、魔法を使える人が昔と比べて激減しているのだが、その中でももっとも珍しい光属性の魔力を持った巫女が現れたと。
光属性の魔力を持つ者は千年に一人現れるか現れないかで、今回の神託で王家は躍起になって捜しているのだとか。

まあ、私には無縁な話だし、それよりも何でも丁寧に説明してくれるハウンドさんのことを愛しく感じた。

ーーーー


ドンッドンッ  ドンッ

乱暴に戸を叩く音が聞こえた。
私たちは今日お家デートをしている真っ最中だった。

「なんだろう…」
今にも蹴破られそうな様子に不安になる。

「僕が出てくるよ」

「分かった。気をつけてね。」

やはり心配だったので、こっそり玄関の様子を見る。


ガチャッ
「どなたで「ここに若い女性はいないか」」
入ってきたのは王家のシンボルマークの服を着た騎士だった。

びっくりして出てきた私と、その騎士とばっちり目が合った。

「お前か。皇太子の命令だ。一緒に来てもらう。」
いやいや、人の家にずかずか入っといて礼儀のかけらもないな。
皇太子がなんだ。あまりにも失礼な態度に腹が立ち、すぐに断ろうとした。

「テレーサちゃんに何をするおつもりですか。」
私を庇うようにして立つハウンドさん

「邪魔だ、平民無勢が。」

そして


躊躇なく騎士がハウンドさんに向かって


その念入りに手入れされているであろう剣を





ふりかざした










その瞬間全ての動作がスローモーションのように見えた

なに、するの


わたしの だいじなひとに


どさっと倒れたハウンドさんを慌てて抱きかかえる


噴き出す血で頭が真っ白になる


やめて やめて


ハウンドさんをたすけて





《思い出して》




《思い出して、あなたの本来の力を》



「はぁ、はぁっ はぁっ。テレーサちゃん」
ハウンドさんが苦しそうにこっちを見る

「僕はもうだめかもしれない…
最期に……愛してるよ」





だれかがきた。でもそんなことはどうでもいい。
「おい! なにをしているんだ!」

許さない

「この者が抵抗したので仕方なく…」

「だからと言って切る必要はないだろ!!」

「も、申し訳ありません!」



うるさい




「助けてハウンドさんを」


「ハウンドさんを助けたい」


そう願った瞬間、

からだが熱くなり、何かが私の周りを照らした。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。

石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。 七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。 しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。 実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。 愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。

[完結]子供のままの婚約者

日向はび
恋愛
セレナは幼い頃ら婚約者のマルクが大好きだった。 16歳になった今でもその想いは変わらない。ずっとずっと好きなのだ。たとえ、彼が自分と同じ身長のまま時を止めてしまっていたとしても。 そんなセレナに、父は婚約破棄をするといいだした。

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

あなたを忘れる魔法があれば

美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。 ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。 私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――? これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような?? R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。 ※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます

【R15】婚約破棄イベントを無事終えたのに「婚約破棄はなかったことにしてくれ」と言われました

あんころもちです
恋愛
やり直しした人生で無事破滅フラグを回避し婚約破棄を終えた元悪役令嬢 しかし婚約破棄後、元婚約者が部屋を尋ねに来た。

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

「きみ」を愛する王太子殿下、婚約者のわたくしは邪魔者として潔く退場しますわ

茉丗 薫
恋愛
わたくしの愛おしい婚約者には、一つだけ欠点があるのです。 どうやら彼、『きみ』が大好きすぎるそうですの。 わたくしとのデートでも、そのことばかり話すのですわ。 美辞麗句を並べ立てて。 もしや、卵の黄身のことでして? そう存じ上げておりましたけど……どうやら、違うようですわね。 わたくしの愛は、永遠に報われないのですわ。 それならば、いっそ――愛し合うお二人を結びつけて差し上げましょう。 そして、わたくしはどこかでひっそりと暮らそうかと存じますわ。

処理中です...