婚約破棄で絶望しましたが、私は愛し愛される人に出会えて幸せです

腹鳴ちゃん

文字の大きさ
上 下
3 / 7

新たな人生と出会い

しおりを挟む
私はここシュタウヘンベルクの平民、テレーサだ。
生活は貧しいが、優しい人々に囲まれて幸せな生活を送っている。

両親が幼い頃事故で亡くなってから、私は一人だが寂しいことなんてない。今働いている食堂での仕事がとても楽しいからだ。

「テレーサちゃん、注文おねがい!」

「はーい!」

今の方は女将さん。身寄りがなくなった私を引き取ってくれて、住み込みというありがたい条件で働かないかと誘ってくれた人だ。

私は注文を待つお客さんのところに向かう。

「テレーサさんこんにちは」

「こんにちは!ハウンドさん 注文はいかがいたしましょうか」
彼は1年前からここの常連のハウンドさん。いつもにこにこしていて、柔らかい雰囲気を持つ彼は私の癒しである。というかもはや好きである。

「うーんオムレツをください」
はぁ~どうしてこうハウンドさんは目をうるうるさせるのだろうか。はー可愛い~

「かしこまりました! 女将さーん、オムレツ一つ!」

「はいよ!」

出来たオムレツをハウンドさんのところへ持っていく。
厨房に戻ろうと立ち去ろうとしたとき、ハウンドさんに呼び止められた。

「テレーサさん、週末の昼とか空いてますか?」
うっっ、だから子犬みたいな顔しないでってば!

「空いてますが、どうしてですか?」
何とか平然を装い答える。

「お昼ご飯を一緒に食べたいなと思って…だめですか?」

(えええぇぇ!!? はい! 喜んで!)
「あ、はい、良いですよ」

顔の表情がゆるっゆるで戻った私に女将さんがにやにやしながら
「あの子やっとあんたを誘ったのねぇ、良かったねぇ。楽しんできなさいね」

と、いうわけで私は週末にハウンドさんとご飯を食べに行くことになった。あああ楽しみ~

ーーーー

そして迎えた当日

「ハウンドさんこんにちは!お待たせしてしまいましたか?」
待ち合わせよりも早く着いたのだが、ハウンドさんはすでに待っていた。

「いいえ、今来たところです。それでは行きましょうか。」
すでにハウンドさんの笑顔にやられそうになっている私。

その後は本当に幸せな時間だった。
昼食を食べた後は、町をぶらぶらして屋台をまわった。
ハウンドさんが転けたおばあさんを迷い無く助けに行ったときは惚れた。いや、優しい人だって知ってたけど!!好き!

帰り際にハウンドさんが
「また誘っても良いですか」

と言われたので
「もちろんです」
すぐに返事した


何回かハウンドさんとお出かけをして、ある日

「テレーサさん、一目見たときから好きです。何に対しても楽しそうにしていて、前向きなところを見てもっと大好きになりました。僕と付き合ってくれませんか」

と!告白を受けました!
「はい!私も好きです」
少し悔い気味に答えてしまった。
好きな人と結ばれるってなんて奇跡なんだろう。

ちなみにその日はぐっすり寝た。

ーーーー
ある時は一緒にピクニックに行った。


私は張り切りすぎてなんとお弁当まで作ってきてしまった。味見したから不味くはないはずだ。

見晴らしのいい原っぱに場所を取った。

「あの、今日はお弁当を作ってみたんだけど…」

「え、そうなの?! 君の手料理が食べられるなんてすごく嬉しいよ」
ハウンドさんは喜んで食べてくれた。

「どうかな?」
(ハウンドさんの口に合うかな)

「ん すごいおいしい テレーサちゃんありがとう」

良かったあぁ。安心したところで私も食べ始める。

すると、こちらをじっと見るハウンドさんに気がついた。

「私の顔になにかついてる?」

「ううん。美味しそうに食べるところが可愛いなあと思って」

ひぇー! 私の顔が赤くなるのが分かった。

「ふふ、すぐ顔が赤くなるところも好きだよ」

きゃぁー。果たして私の身は持つのだろうか…


ーーー
今日はハウンドさんと買い物に来ていた。

本屋さんで、ハウンドさんがある絵本を取って目を細めた。

「どうしたの?」

「この絵本は僕が子供の時に母に読んでもらっていたんだ。すごく懐かしいな。」

「そうなんだ、私は初めて見るなー」
絵本は親に読んでもらった記憶があるが、これは見たことがない。

「このあたりでは結構有名な話かもしれない。
100年前の実話なんだけどね、魔女に心を支配された王子が婚約者を牢屋に入れて、さらにその令嬢が父親からの愛情が無かったことに気付いて絶望して自ら命を絶ってしまうんだ。」


ん?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。

石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。 七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。 しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。 実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。 愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。

[完結]子供のままの婚約者

日向はび
恋愛
セレナは幼い頃ら婚約者のマルクが大好きだった。 16歳になった今でもその想いは変わらない。ずっとずっと好きなのだ。たとえ、彼が自分と同じ身長のまま時を止めてしまっていたとしても。 そんなセレナに、父は婚約破棄をするといいだした。

【R15】婚約破棄イベントを無事終えたのに「婚約破棄はなかったことにしてくれ」と言われました

あんころもちです
恋愛
やり直しした人生で無事破滅フラグを回避し婚約破棄を終えた元悪役令嬢 しかし婚約破棄後、元婚約者が部屋を尋ねに来た。

あなたのためなら

天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。 その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。 アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。 しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。 理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。 全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。

初恋の結末

夕鈴
恋愛
幼い頃から婚約していたアリストアとエドウィン。アリストアは最愛の婚約者と深い絆で結ばれ同じ道を歩くと信じていた。アリストアの描く未来が崩れ……。それぞれの初恋の結末を描く物語。

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑 side story

岡暁舟
恋愛
本編に登場する主人公マリアの婚約相手、王子スミスの物語。スミス視点で生い立ちから描いていきます。

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

処理中です...