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龍星本山編
白マフィア運動会 part6
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「ったくよぉ。それにしてもどんだけ広いんだこりゃ?」
先程から壁に沿って歩いているが一向に他の参加者のゲートは見えない。
ゲートが閉まった後、どうにか開かないか確認してみたが開かなかった。
どうやら杯を持っていないと開かない、もしくは他参加者のゲートからしか出られないなどの制約があるのかもしれない。
ガサッ
物音がする。
後ろの草むらだろうか?だが敢えて後ろは向かない。
何故かって?
そりゃ、アニメや漫画の強キャラってそうするじゃん。そっちの方がカッコイイ。
後ろで誰かが地面を蹴った音が聞こえる。
「フッ」
意味も無く微笑み、勢い良く後ろ回し蹴りを繰り出す。
しかし蹴りはスカる。
「ハアッ?」
腹に衝撃を感じる。
咄嗟に後ろに下がり距離を取るために全力ダッシュをする。
(驚いた。)
(いや別に腹の痛みは大したことはなかったんだ。
だが、その攻撃の主がその、何というか、人間じゃないとは。)
そこにいたのは、全長140cmくらいの全身シワシワの緑色の二足歩行の生物。
(エイリアンだ!!)
そのエイリアンはトコトコと走りながらこちらに迫ってくる。
もしかしたら勝てるかもしれないという考えが卓郎の頭をよぎる。
(確か俺の特出能力は脚力向上だったはず、身長と動きの軽さから見て一発入れればぶっ飛ばせるか?)
以前、流星本山の事務所に殴り込みに行った際のことが思い返される。
あの時、卓郎は成人男性を天井に叩きつけられるほどの勢いで蹴り上げたのだ。
(さっきは避けられちまったけど。流石に次は避けさせねぇよい。)
「ぶっ飛べぇ!」
渾身の回し蹴りを繰り出すも足はエイリアンはビクともしない。
「痛ってぇ!?」
それどころかソイツの外皮の硬さに足が悲鳴を上げた。
となると、、、。
「いやぁ、天気がいいですね。どう?最近元気?」
ニマニマと笑うエイリアン。
「来るんじゃねぇええええー!!!」
全力疾走。恥も憤慨もない全力疾走である。
神は卓郎の味方をしてはくれなかったようだ。前の茂みが揺れる。
(まさか。)
「ケケケ」
ニョキッと複数のエイリアンが生えてくる。
(沢山いたぁあああああ!)
そいつらも当然のように俺の方に向かってくる。
けれども動きがあまり早くないため走れば逃げれそうな気がする。
(一体でも無理なのに複数体も相手してられるかっつーの!)
走って逃げる卓郎。
しかし次の瞬間、気配を感じて後ろを振り向くと一斉に襲いかかってくる奴らの姿があった。
(いつのまに!?)
だが、飛びかかってくる奴らの動きは目で追えるほどにゆっくりで簡単に避けることができる。
(何かおかしい。とても体に違和感を感じる。何というか体が重いというか鈍いというか。クッソったっくどうなってやがる!?)
その後も奴らの攻撃が行われるが統率が取れていないというのもあってか、ことくごとく卓郎に躱されてしまう。
(そうだ!)
飛びかかってくる内の1体の腕を掴み羽交い締めにする。
幸い力はあまりないようだ。
「おい!お前らよく聞け!お前らの仲間の命がどうなってもいいのか!?」
そう言いながらポケットから手榴弾を取り出し見せつける。
その行為に動きを止めるエイリアン。
(流石に仲間の命は大事だよなぁ?よかったぜぇ、人の心を持っててくれてよぉ。)
安堵したのも束の間、奴らは即座にまた卓郎に飛びかかる。
「えぇ!?ちょっ!人の心はどうした!?」
どうやら、ソイツらは知能が低いのだろう。ただ仲間が捕まったということを認識するのに時間がかかっただけのようだ。
そして、そんな生物に勿論、友愛や絆などの感情はない。
再び卓郎に襲いかかってきたというわけだ。
(今考えてみれば個人競技なのに同じような奴らが5人ってのはおかしいよな。つまりこれは誰かの武器。体の硬さから考えてもロボットとかそこらだ。
いや待てよ?そんな大量のロボットをどうやって申請に通したんだ?もしかしてあのガガガガガってずっと聞こえていた音の正体か?事前に設置しておいた機材を地下を通して運び込んだとかそういうことなのか?
それに統率力の無さとあからさまな知能な低さから見て自立移動型と考えられる。
てことはコイツらの近くに操作主がいない?
ただ、見かけた参加者を襲わせているだけか?大体、こいつらの主の目的はなんだ?)
攻撃を躱しながら頭をフル稼働させる卓郎。
脳が生命の危機と判断したのか普段の言動からは到底考えられないような推測が始まる。
(このルール下であれば杯をさっさと奪って逃走するのが最も合理的なはずだ。となると自分の守りをある程度固めてなるべく多くの数を中心地に向かわせるのが定石だ。しかしそうしない。何故ならこれらの主は他にも目的があるから。その目的ってなんだ、、。
いや違う!探させないのではなく探せないんだ!知能が低いからおそらく仕掛けられているであろうトラップにも気付けない。となるとこの主の目的は他参加者の排除。
他の参加者を中心に向かわせないように妨害、消耗させ、指揮官ありの本隊が合流するまでの時間を稼ぐ。
おそらくこれだ!)
(だが、どうやってそれを回避する?攻撃性能は高くはないが防御力は木材よりかは絶対硬い。少なくとも俺の蹴りではダメージが通らない。本隊に合流する前に偵察隊であるこれらを倒す?それは不可能だ。それに倒しても他の偵察隊に見つかってしまえばフリダシだ。
コイツを大量生産しているとしたら一体一体にカメラを付けているとは思えない。何よりそうだとしても主は全体分確認できない。
となるとここで行うべき最善の行為は、、、。)
エイリアンの攻撃が卓郎の頭に直撃する。
頭から血を流して倒れる卓郎。
そしてそのまま動かなくなる。
「ケケッケケケ!」
ソイツらは卓郎の体を弄り始め、ポケットに入っていた手榴弾を見つけるとそれを取ってどこかに向かって走り去って行った。
「なるほどな。あらかじめ本部に登録しておいた武器を奪って渡させることで生存しているか否かの判別をつけるわけか。」
何事もなかったかのようにムクっと起き上がる卓郎。
「あーあー、血が出ちゃってるよぉ、もう。」
頭をハンカチで拭きながら再び歩きだす。
(出血はしちゃったけど、これで大丈夫だろ。少なくとも本隊がこっちに向かってくることはないだろ。だけどこれからどうしよ、、。
とりあえず、喉が渇いた、、、。どっかに水飲み場とかないのか、、。てか出口どこ?広すぎなんだけど、、。)
つまり、卓郎は相手に自分が戦闘不能だと思わせることで大部隊との衝突を防いだわけである。
とぼとぼと外壁に沿って歩き続けること30分。前方に見覚えのある巨大な門がある。
「来たぁぁああああ!!!」
全く先程の反省を活かさずというか先程の反省点に気づかずに大声を出して馬鹿みたいに走り出す。というか馬鹿である。
しかし、その門の目の前に腕を組み仁王立ちをする女性の姿があった。
女はスーツを着た男が汗水垂らしながら走ってくることに少し恐怖を覚えるものの獲物が来てくれたことの嬉しさから口を滑らしてしまう。
「良かった!誰も来てくれないと思ってた!、、、じゃなくて!止まりなさい!そして平伏すことを許すわ!」
指を差しここぞとばかりにドヤ顔を決める女。
相手が悪かった、卓郎はまるで聞こえていないかのようにその横を素通りし門へ走る。
「ちょっと!?そこの男!?目の前の美少女の言うことを聞きなさい!」
すると聞こえたのか、後ろを振り返り辺りをキョロキョロしてするも不可思議な顔をして再び門へ向かう。
「開けてくれー!俺はリタイアしたいんだあぁぁああ!!!」
門を叩きながら助けを懇願し始める卓郎。その姿には女も戸惑いを隠せないようだ。
「まぁ、いいわ流石に名前くらいは名乗った方が良かったわよね。その腐った耳穴かっぽじって聞きなさい!フレアの名前は雲母星フレア!全宇宙に轟く銀河アイドルを目指す川崎の殺戮系天使よ!!」
(こいつ、、、。頭おかしいんじゃねぇの? というか、、)
卓郎は門を叩く手を止め雲母星なる女に顔を向ける。
「やっとこっち向いたわね。感謝なさい!アンタはこのフレアの記念すべきファン第一号にしてあげる!」
「おおぉ~」
拍手をして雲母星を眺める。
「なかなか素直じゃないの。まぁいいわ!驚きすぎてショック死するんじゃないわよ!」
そう言うと雲母星は手に持っていたマイクを空に高くあげる。
(うん、やっぱり、、やけに動きがノロノロした奴だなぁ。)
「ゲートオープン!現れろ!共鳴せし恋の暴走戦車」
地面が音を立てて割れ始める。
「おぉっ!なんだこれ!?」
地面の下には分厚い鉄板が敷かれており、それが開いて中からとても大きな何かが上がってくる。
「ふんっ!、、、あれ?なかなか上がって来るのが遅いわね。」
そうして下を覗きこむ雲母星の後ろに近づく影が、、、。
「バイバーイ。」
「は?」
卓郎が背中をドンッと押し、雲母星を割れた地面に突き落とす。
「よしっ。」
そしてまたもや卓郎は門を叩き外に救助を求めるのであった。
それから30分が経過した。
「出してくれ~。俺は一般人なんだー。ただ、コンビニ帰りにちょっと手頃な森があるな~って入ったら閉じ込められたんだ~。」
未だに懇願し続けていた。
というか、この舞台となった廃工場自体が川崎の抗争地帯にあるため一般人がいることなどありえないはずなのだが、、。
残念なことにそれに気づいていないようだ。
すると突然、後方から轟音が鳴り響く。
「!?」
ガガガガガという音とともに巨大なステージが上がってくる。その中心にはマイクを持った少女が一人。
「よくもまぁ突き落としてくれたわね。アンタは魔法少女物で変身中に攻撃するのがご法度って知らないわけ?」
「いや~最近読んだラノベでクッサイ主人公がカッコつけながら変身中の魔法少女を殺すっていうのでさぁ。カッコ良かったから真似してみた。」
「ラノベ?アンタ舐めてんの?そんなに死にたいなら死になさいな。ってことでぇー!ミュージックスタートォォ!!!」
ポージングをしっかり決めた直後、ステージからアイドルソングというよりかはロックに近い音楽が流れ出す。
「お前のチ××を大切断~!!!!」
スピーカーから音が出た途端同時に爆風が放出されて近くの木々の葉を全て吹き飛ばす。
(おぉコイツはすげぇや、いきなり放送コードに引っかかる言葉が出てきたぞ。)
「テメェの頭に××××落とすぞ~ 人を殺した時だけー生きてるって感じられる~♪」
解き放たれる暴言の数々、そして丸裸になっていく木々。しかしスピーカーの向きが自身の発する爆風によって無茶苦茶な向きに移動するため広範囲に尋常な被害をもたらしてはいるがターゲットである卓郎に当たる気配がない。
(てかよ、これが攻撃方法なんだろうが、真ん中通れば当たらんくね?)
雲母星に当たらないようにするための配慮なのかスピーカーの可動域が制限されているのだろう。そのせいで舞台上への安全ルートが生まれてしまっているのだ。
こそこそとステージへと進む卓郎。雲母星は歌うのに夢中すぎて気づいていない。
「よいしょっと。」
そしてステージに這い上がると、、、。
「×××と×××を~掛け合わウグゥ!?」
「オラぁっ落ちろ!落ちろ!堕ちろ!!!」
卓郎は後ろから雲母星の首を腕で思いっきり絞める。
雲母星は必死に抵抗するが段々と暴れる力が弱くなっていきガクンと膝から崩れ落ちる。
「いっちょあがり~。さぁてどうしたもんかな~。ん?」
ふと周囲の異変に気づく。
何か見覚えのあるシルエットがこちらに接近している。おまけに数は先程よりも明らかに多い。
「まーじか。おい起きろ!起きろ!」
だが、雲母星はぐったりとしたまま動く様子がない。
そんなことをやっている間にもエイリアン達は数を増やし、たちまちにステージをとり囲んでしまう。
「ちょっと待てこれマジやばくねーか!?」
続く
先程から壁に沿って歩いているが一向に他の参加者のゲートは見えない。
ゲートが閉まった後、どうにか開かないか確認してみたが開かなかった。
どうやら杯を持っていないと開かない、もしくは他参加者のゲートからしか出られないなどの制約があるのかもしれない。
ガサッ
物音がする。
後ろの草むらだろうか?だが敢えて後ろは向かない。
何故かって?
そりゃ、アニメや漫画の強キャラってそうするじゃん。そっちの方がカッコイイ。
後ろで誰かが地面を蹴った音が聞こえる。
「フッ」
意味も無く微笑み、勢い良く後ろ回し蹴りを繰り出す。
しかし蹴りはスカる。
「ハアッ?」
腹に衝撃を感じる。
咄嗟に後ろに下がり距離を取るために全力ダッシュをする。
(驚いた。)
(いや別に腹の痛みは大したことはなかったんだ。
だが、その攻撃の主がその、何というか、人間じゃないとは。)
そこにいたのは、全長140cmくらいの全身シワシワの緑色の二足歩行の生物。
(エイリアンだ!!)
そのエイリアンはトコトコと走りながらこちらに迫ってくる。
もしかしたら勝てるかもしれないという考えが卓郎の頭をよぎる。
(確か俺の特出能力は脚力向上だったはず、身長と動きの軽さから見て一発入れればぶっ飛ばせるか?)
以前、流星本山の事務所に殴り込みに行った際のことが思い返される。
あの時、卓郎は成人男性を天井に叩きつけられるほどの勢いで蹴り上げたのだ。
(さっきは避けられちまったけど。流石に次は避けさせねぇよい。)
「ぶっ飛べぇ!」
渾身の回し蹴りを繰り出すも足はエイリアンはビクともしない。
「痛ってぇ!?」
それどころかソイツの外皮の硬さに足が悲鳴を上げた。
となると、、、。
「いやぁ、天気がいいですね。どう?最近元気?」
ニマニマと笑うエイリアン。
「来るんじゃねぇええええー!!!」
全力疾走。恥も憤慨もない全力疾走である。
神は卓郎の味方をしてはくれなかったようだ。前の茂みが揺れる。
(まさか。)
「ケケケ」
ニョキッと複数のエイリアンが生えてくる。
(沢山いたぁあああああ!)
そいつらも当然のように俺の方に向かってくる。
けれども動きがあまり早くないため走れば逃げれそうな気がする。
(一体でも無理なのに複数体も相手してられるかっつーの!)
走って逃げる卓郎。
しかし次の瞬間、気配を感じて後ろを振り向くと一斉に襲いかかってくる奴らの姿があった。
(いつのまに!?)
だが、飛びかかってくる奴らの動きは目で追えるほどにゆっくりで簡単に避けることができる。
(何かおかしい。とても体に違和感を感じる。何というか体が重いというか鈍いというか。クッソったっくどうなってやがる!?)
その後も奴らの攻撃が行われるが統率が取れていないというのもあってか、ことくごとく卓郎に躱されてしまう。
(そうだ!)
飛びかかってくる内の1体の腕を掴み羽交い締めにする。
幸い力はあまりないようだ。
「おい!お前らよく聞け!お前らの仲間の命がどうなってもいいのか!?」
そう言いながらポケットから手榴弾を取り出し見せつける。
その行為に動きを止めるエイリアン。
(流石に仲間の命は大事だよなぁ?よかったぜぇ、人の心を持っててくれてよぉ。)
安堵したのも束の間、奴らは即座にまた卓郎に飛びかかる。
「えぇ!?ちょっ!人の心はどうした!?」
どうやら、ソイツらは知能が低いのだろう。ただ仲間が捕まったということを認識するのに時間がかかっただけのようだ。
そして、そんな生物に勿論、友愛や絆などの感情はない。
再び卓郎に襲いかかってきたというわけだ。
(今考えてみれば個人競技なのに同じような奴らが5人ってのはおかしいよな。つまりこれは誰かの武器。体の硬さから考えてもロボットとかそこらだ。
いや待てよ?そんな大量のロボットをどうやって申請に通したんだ?もしかしてあのガガガガガってずっと聞こえていた音の正体か?事前に設置しておいた機材を地下を通して運び込んだとかそういうことなのか?
それに統率力の無さとあからさまな知能な低さから見て自立移動型と考えられる。
てことはコイツらの近くに操作主がいない?
ただ、見かけた参加者を襲わせているだけか?大体、こいつらの主の目的はなんだ?)
攻撃を躱しながら頭をフル稼働させる卓郎。
脳が生命の危機と判断したのか普段の言動からは到底考えられないような推測が始まる。
(このルール下であれば杯をさっさと奪って逃走するのが最も合理的なはずだ。となると自分の守りをある程度固めてなるべく多くの数を中心地に向かわせるのが定石だ。しかしそうしない。何故ならこれらの主は他にも目的があるから。その目的ってなんだ、、。
いや違う!探させないのではなく探せないんだ!知能が低いからおそらく仕掛けられているであろうトラップにも気付けない。となるとこの主の目的は他参加者の排除。
他の参加者を中心に向かわせないように妨害、消耗させ、指揮官ありの本隊が合流するまでの時間を稼ぐ。
おそらくこれだ!)
(だが、どうやってそれを回避する?攻撃性能は高くはないが防御力は木材よりかは絶対硬い。少なくとも俺の蹴りではダメージが通らない。本隊に合流する前に偵察隊であるこれらを倒す?それは不可能だ。それに倒しても他の偵察隊に見つかってしまえばフリダシだ。
コイツを大量生産しているとしたら一体一体にカメラを付けているとは思えない。何よりそうだとしても主は全体分確認できない。
となるとここで行うべき最善の行為は、、、。)
エイリアンの攻撃が卓郎の頭に直撃する。
頭から血を流して倒れる卓郎。
そしてそのまま動かなくなる。
「ケケッケケケ!」
ソイツらは卓郎の体を弄り始め、ポケットに入っていた手榴弾を見つけるとそれを取ってどこかに向かって走り去って行った。
「なるほどな。あらかじめ本部に登録しておいた武器を奪って渡させることで生存しているか否かの判別をつけるわけか。」
何事もなかったかのようにムクっと起き上がる卓郎。
「あーあー、血が出ちゃってるよぉ、もう。」
頭をハンカチで拭きながら再び歩きだす。
(出血はしちゃったけど、これで大丈夫だろ。少なくとも本隊がこっちに向かってくることはないだろ。だけどこれからどうしよ、、。
とりあえず、喉が渇いた、、、。どっかに水飲み場とかないのか、、。てか出口どこ?広すぎなんだけど、、。)
つまり、卓郎は相手に自分が戦闘不能だと思わせることで大部隊との衝突を防いだわけである。
とぼとぼと外壁に沿って歩き続けること30分。前方に見覚えのある巨大な門がある。
「来たぁぁああああ!!!」
全く先程の反省を活かさずというか先程の反省点に気づかずに大声を出して馬鹿みたいに走り出す。というか馬鹿である。
しかし、その門の目の前に腕を組み仁王立ちをする女性の姿があった。
女はスーツを着た男が汗水垂らしながら走ってくることに少し恐怖を覚えるものの獲物が来てくれたことの嬉しさから口を滑らしてしまう。
「良かった!誰も来てくれないと思ってた!、、、じゃなくて!止まりなさい!そして平伏すことを許すわ!」
指を差しここぞとばかりにドヤ顔を決める女。
相手が悪かった、卓郎はまるで聞こえていないかのようにその横を素通りし門へ走る。
「ちょっと!?そこの男!?目の前の美少女の言うことを聞きなさい!」
すると聞こえたのか、後ろを振り返り辺りをキョロキョロしてするも不可思議な顔をして再び門へ向かう。
「開けてくれー!俺はリタイアしたいんだあぁぁああ!!!」
門を叩きながら助けを懇願し始める卓郎。その姿には女も戸惑いを隠せないようだ。
「まぁ、いいわ流石に名前くらいは名乗った方が良かったわよね。その腐った耳穴かっぽじって聞きなさい!フレアの名前は雲母星フレア!全宇宙に轟く銀河アイドルを目指す川崎の殺戮系天使よ!!」
(こいつ、、、。頭おかしいんじゃねぇの? というか、、)
卓郎は門を叩く手を止め雲母星なる女に顔を向ける。
「やっとこっち向いたわね。感謝なさい!アンタはこのフレアの記念すべきファン第一号にしてあげる!」
「おおぉ~」
拍手をして雲母星を眺める。
「なかなか素直じゃないの。まぁいいわ!驚きすぎてショック死するんじゃないわよ!」
そう言うと雲母星は手に持っていたマイクを空に高くあげる。
(うん、やっぱり、、やけに動きがノロノロした奴だなぁ。)
「ゲートオープン!現れろ!共鳴せし恋の暴走戦車」
地面が音を立てて割れ始める。
「おぉっ!なんだこれ!?」
地面の下には分厚い鉄板が敷かれており、それが開いて中からとても大きな何かが上がってくる。
「ふんっ!、、、あれ?なかなか上がって来るのが遅いわね。」
そうして下を覗きこむ雲母星の後ろに近づく影が、、、。
「バイバーイ。」
「は?」
卓郎が背中をドンッと押し、雲母星を割れた地面に突き落とす。
「よしっ。」
そしてまたもや卓郎は門を叩き外に救助を求めるのであった。
それから30分が経過した。
「出してくれ~。俺は一般人なんだー。ただ、コンビニ帰りにちょっと手頃な森があるな~って入ったら閉じ込められたんだ~。」
未だに懇願し続けていた。
というか、この舞台となった廃工場自体が川崎の抗争地帯にあるため一般人がいることなどありえないはずなのだが、、。
残念なことにそれに気づいていないようだ。
すると突然、後方から轟音が鳴り響く。
「!?」
ガガガガガという音とともに巨大なステージが上がってくる。その中心にはマイクを持った少女が一人。
「よくもまぁ突き落としてくれたわね。アンタは魔法少女物で変身中に攻撃するのがご法度って知らないわけ?」
「いや~最近読んだラノベでクッサイ主人公がカッコつけながら変身中の魔法少女を殺すっていうのでさぁ。カッコ良かったから真似してみた。」
「ラノベ?アンタ舐めてんの?そんなに死にたいなら死になさいな。ってことでぇー!ミュージックスタートォォ!!!」
ポージングをしっかり決めた直後、ステージからアイドルソングというよりかはロックに近い音楽が流れ出す。
「お前のチ××を大切断~!!!!」
スピーカーから音が出た途端同時に爆風が放出されて近くの木々の葉を全て吹き飛ばす。
(おぉコイツはすげぇや、いきなり放送コードに引っかかる言葉が出てきたぞ。)
「テメェの頭に××××落とすぞ~ 人を殺した時だけー生きてるって感じられる~♪」
解き放たれる暴言の数々、そして丸裸になっていく木々。しかしスピーカーの向きが自身の発する爆風によって無茶苦茶な向きに移動するため広範囲に尋常な被害をもたらしてはいるがターゲットである卓郎に当たる気配がない。
(てかよ、これが攻撃方法なんだろうが、真ん中通れば当たらんくね?)
雲母星に当たらないようにするための配慮なのかスピーカーの可動域が制限されているのだろう。そのせいで舞台上への安全ルートが生まれてしまっているのだ。
こそこそとステージへと進む卓郎。雲母星は歌うのに夢中すぎて気づいていない。
「よいしょっと。」
そしてステージに這い上がると、、、。
「×××と×××を~掛け合わウグゥ!?」
「オラぁっ落ちろ!落ちろ!堕ちろ!!!」
卓郎は後ろから雲母星の首を腕で思いっきり絞める。
雲母星は必死に抵抗するが段々と暴れる力が弱くなっていきガクンと膝から崩れ落ちる。
「いっちょあがり~。さぁてどうしたもんかな~。ん?」
ふと周囲の異変に気づく。
何か見覚えのあるシルエットがこちらに接近している。おまけに数は先程よりも明らかに多い。
「まーじか。おい起きろ!起きろ!」
だが、雲母星はぐったりとしたまま動く様子がない。
そんなことをやっている間にもエイリアン達は数を増やし、たちまちにステージをとり囲んでしまう。
「ちょっと待てこれマジやばくねーか!?」
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