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龍星本山編
四話 龍星本山カチコミ日記 1日目 非日常編
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時刻は5時。普段の俺はこんな時間に外を出歩くことなんてしない模範的な学生だが、今日の俺は一味違う。現在、暴力団の組織にカチコミに行く真っ只中だ。何でこうなったかは一話前参照だ。
「まず、今回の襲撃計画の作戦説明といこうか。」
野畑がタブレットをいじりながら話し始める。
「作戦ってそんなに早く立てられるものなんですか?」
ノリで来てしまったが俺ピンチでは?
「いや、襲撃計画自体は前々からあったんだよ。君の研修で奪ってきたメモリーも内部情報を手に入れるための物だし。」
ということはスキンヘッドが沢山いるのだろうか。兄貴まだ生きてるかな。
「ただ、いつ決行するかを決めあぐねていたところにタイミングよく来てくれたもんだからさ。
さぁ作戦を伝えるとしよう。まず、チームを二つに分けさせてもらったよ。」
野畑の表情がいつになく真剣になる。
「チームαは潜入部隊。先に彼女達に索敵かつセキュリティーの解除を行なってもらう。メンバーはもう一つのバンに乗っているメンバーだ。そして僕たちがチームβ、これは交戦部隊だ。αから突撃許可が降り次第、正面突破する。」
潜入部隊にメンバーの半分が割かれているのは致命的だと思うのは俺だけだろうか。少なくともベルガモットはこっち側で問題ないはずだ。
「ここからが重要。卍原クン以外もよく聞いてくれ。」
突如ブォンッという近未来的な音と共に車のフロントガラスに地図が写し出される。
「これが内部構造。全4階で親玉は最上階の部屋だろう。所々にシャッターが設置されていて分断される恐れがあるからフェデーレと卍原クンは僕らから離れないように。前衛は僕と清嶺地チャン、後衛はフェデーレと卍原クン。
卍原クン、君はなるべく交戦しないように。分かったね?それと清嶺地チャンは彼についてもらいたい。二人とも良いかい?」
「了解しました。」「まぁ、OKっす。」
野畑の指示に対して清嶺地先輩と俺が返事をする。
「くつろいでるとこ悪いが、到着したぞ。」
全くくつろげていないが、どうやら到着したようだ。空はすでに青く霞みがかっている。
奴らの拠点はコンクリート剥き出しの市役所ぐらいの大きさの建物で正面は巨大なシャッターが守っていた。
「ったく。朝っぱらから何やってんだか。」
「文句を言っている暇があるなら準備体操でもしてなさい。」
一人ごとに突っ込まれると恥ずかしくなるんで止めてもらえませんかね、先輩。
清嶺地先輩は呑気にラジオ体操をしている。
「そういえば、先輩の制服ってあのメイド服じゃないんですか?」
車内は暗くて気づかなかったが野畑だけでなくフェデーレも先輩も執事服型戦闘服を着ている。
「はい。この制服は機種に違いはあれども見た目はメンバー全員統一されています。メイド服は趣味です。」
そうだったのか。いや待てそうすると、、、
「もしかして先輩のあの馬鹿力は素ですか?」
「はい、私の特出能力は、、、」
言いかけた先輩の声を遮るように野畑の声がスーツの襟元から聞こえる。
「突撃許可が降りた。今すぐ建物の正面シャッター前に集まってくれ。」
このスーツ、通信機の役割も果たせるようだ。あとで色々いじってみよう。
シャッター前に集まって待っているとシャッターがうるさい音を立てて開き始める。
「よし!チームαは成功してくれたようだね。さぁ、僕たちも行こうか!」
野畑に続いて先輩やフェデーレも中に入っていく。俺もいくかぁ、、、
中に入り廊下を進むと大広間の入り口で先程の3人が待ってくれていた。
「各員、臨戦態勢。陣形を崩さないように。」
野畑が声を上げる。
戦闘態勢をとる彼らの先には、昨日戦ったチンピラの2倍ほどの武装した敵団員が待ち受けていた。
待っていてくれたわけでなく物理的に進めなかったようだ。
「卍原さん。先程の続きを話しますね。」
清嶺地先輩がそういった瞬間。彼女は視界から消えた。
「私の特出能力。それは瞬発力です。」
声の元を辿るように上を見上げると、先輩は4mほど飛び上がり空中で身を翻しながら背中から彼女の背丈ほどある断頭台を取り出し、横に構えた
え。断頭台!?
そして、彼女は急降下をして真下にいた男の頭を刃と台の間に入れると、思いきり跳ね飛ばした。
ブシャァァァと流れだす血。
唖然。敵の動きが一瞬にして止まり、視線が彼女に集中する。
その一瞬が命取り。先輩は目にも止まらぬ速度で飛び回り、ギロチンで処刑を行なっていく。
「とんでもない娘だろ?」
フェデーレがライフルを撃ちながら半笑いで話しかけてくる。
野畑も既に戦い始めていたようで、あっけに取られている男どもを殴り飛ばし続けている。
「清嶺地の嬢ちゃんもナイフとかにすればもっと楽できるはずなんだが、頑なにギロチンを使うって言って聞かないんだ。」
本当にその通りだ。ギロチンは刃自身にかかる重力を利用するから骨までも一撃で切れるわけであり、アコーディオンのように自身の力で斬首している彼女にかかる負荷は相当なものだろう。そりゃ馬鹿力になるわけだ。
「クッソぉぉぉ!」
突如、血と死体の海からナイフを持った男が俺に向かって飛び出してきた。
ヤバい、避けきれない、これは刺さる。なら俺はどうするべきだ。これしかない。
「甘ぇんだよっ!!」
よし、クリーンヒットじゃないかこれ?男を蹴り上げる。これが正解だろ。
予想以上に高く飛び上がり2mほど宙を舞う男。もしかして俺、空手してたら全国狙えた?
まぁ戦闘服のおかげなんだろうけど、なるほど俺はキック力が高いのかな?
ん?まだ男には意識があるようだ、目が合った。
咄嗟に手榴弾を投げつける。
ボンッ
結構近くで爆発したが威力が低かったのが功をなして俺に被害はなかった。だが、直撃した男は黒焦げで落ちてきた。
「よしっ!」
ガッツポーズをとる。
「坊主もいい感じにイカれてるじゃねぇか。そのまま、こっちを手伝ってくれないか?」
フェデーレも上機嫌なようで冷静沈着としているように見えたが、鼻唄まじりにぶっ放している。
俺も負けていられないな。
すぐさま、フェデーレの横の立ち手榴弾を構え叫ぶ。
「えぇ!文字通りの血祭りといきましょうか!!」
決まった。今のどうよ?俺に惚れてもいいんだぜ?
10分ほど経ち、先輩がガシャンという音と共に最後の処刑を終了する。
辺り一面、血と銃弾と人の体の海となっていた。汚い物でもここまでくると綺麗に思える。これなら現代アートと言っても差し支えないだろう。ほら、アレって正直グチャグチャしてて理解不能じゃん?
「いやー先輩の怪力のわけが分かりましたよー。でもなんでギロチンなんですかー?」
処刑を終わらせ、乱れた髪を整えている先輩に話しかける。
「ギロチンである必要があるからです。」
「いやでも、そのスピードと馬鹿力があればギロチンの刃だけ持って戦ったほうが強いんじゃないですかー?
あ、もしかして個性出すため?みたいな可愛い理由だったりしますか?」
「…。 貴方に話す程のことじゃありません。」
図星だったのかな? いや、この感じは的外れなことを言われてイラついているってところか。地雷は踏み抜くのが俺のモットー。
「図星なんですねー。いやぁ先輩やっぱり可愛いっすねー。」
「…。」タンッ
無視されたわ。でも卓郎あきらめない!
怒った先輩は一人で上へ向かおうとしていた。しかし、
「待つんだ。鉄の処女(アイアン メイデン)。」
謎のフレーズを野畑が発する。
「何故ですか?この階層は鎮圧済。止められる理由が分かりません。ポルクス、説明を求めます。」
「第一にαから2階層への突撃許可が降りていない。二つ目はアイアンメイデン。今回の君の任務は新人の護衛だ。」
先輩は不満ながらも納得したようでギロチンの刄の手入れを始めた。
「さっきからアイアンメイデンやらポルクスやらヨーロピアンな単語が飛び交っていますが、なんすかこれ?」
近くで二人の様子を見守っていたフェデーレに尋ねる。
「坊主はまだ聞いていなかったか。それはコードネームってやつだ。俺らにも表での生活はあるからな、個人情報の流出は出来るだけ避けたいってことだ。嬢ちゃんは鉄の処女。金髪はポルクス。俺はロビンフットだ。覚えておけ。」
「アンタがロビンフットって誰が付けたんすか?まさか自分で付けたとか言いませんよね?」
どう考えても森に潜めないでしょこの人。
「似合わないだろ?かつての先輩に付けられたんだ。お前のコードネームもそのうち付くから期待してろ。」
コードネームかカッコいいのが良いな。ボマーとかリトルフラワーしちゃいそうな安直な名前だけは避けてもらいたい。
「了解した。あぁ分かってるよ、そっちも気をつけてね。」
野畑ことポルクスは通信機からの連絡を受けていた。
「今、αの天照(アマテラス)から連絡がきた。彼女らは現在、敵の用心棒や幹部と交戦中の模様。今がチャンスだ。このまま最上階まで駆け上がるよ。」
天照もコードネームだろうか?歴史や神話関係のものが多いようだ。マジで楽しみになってきたぞ、ソシャゲのプレイヤー名とかコードネームにしちゃお。
階段を駆け上がり最上階へと辿りつく。
「この廊下の突き当たりが親玉の部屋だそうだ。αのおかげで敵も少なかったし余裕だったね。」
階段を登る途中もちょくちょく襲われたが、襲いづらい環境に加えて質も量も足りていない暴力団員など進歩し過ぎた科学の前ではイチコロなのだ。
それにしても妙に薄暗い廊下だ。天井も普通と比べて高い気がする。
ボトン
突然何かが落ちる音がした。
前を歩いていた先輩の右手と左足が地面に落ちる。
バランスを保てなくなった先輩の体は地面に倒れ込む。
「先輩!?」
「かけよっては駄目だよ新人クン。」
近づこうとしたが野畑に止められる。
「どうやら、お相手さんには隠し玉があったようだな。」
「ちょっと面倒なことになっちゃったね。」
二人のように天井をみてみると、そこには道着を着た何者かがへばりついていた。
そいつは何をすることなくジッとこちらを見つめている。
「あれは勝てないね。しかし、僕達にまだ手をだしてないってことは場所に馴染めていないということ。ここに来てから日が浅いようだね。」
「ああ。となるとやることは一つだな。」
野畑とフィデーレがそう言うということは相当ヤバいやつなのだろう。ん?
ダダダダダダ
二人は倒れた先輩のことなど気にも留めずに全速力で走りだす。敵前逃亡もいいところだ。
「ちょっと!何考えてるんですか! 俺を置いていくなんて!」
二人が勝てない相手に立ち向かっても意味はない。先輩には悪いがその脱ぐと凄いと思われる体で時間稼ぎをしてもらおう。切られたのが腕と足だけで良かった。
あれ、そういや出口ってこっちだっけ?脳死で着いてきてしまったが考えてみれば階段は反対である。つまり向かう先は親玉の部屋?
「すみません。姉が死んだらしいので先に帰ります。」
「それは大変だ。帰り道には気をつけたまえよ。」
「あぁ。凶悪切り裂き魔が後ろから迫っているかもしれないからな。」
走りながら、二人に永遠の別れを告げる。何を考えているか知らんがロクでもなさそうだ。
そしてUターンした瞬間、先程の何かが廊下を縦横無尽に飛び回りながら凄い速さで追いかけてきていることを視認した。
慌ててUターンしなおし、二人に追いつく。
「来てる来てるヤバいの来てる。どうする予定なんすかこっから?!」
「いいかい新人クン。こういう時は抜けあるものなんだよ。」
野畑が息を荒げながら喋る。
「ああいう一級の殺し屋は専属でもなければ、大抵その日限りの契約だ。そして、ここは外観からして噂に聞くほど立派な組織じゃないようだ。つまり雇っている敵のボスを殺してしまえばアレは勝手に帰ってくれるよ。」
「なるほど。ボスって手榴弾で一撃でヤれますかね?」
「人によるかな。とりあえず、部屋に入ったら最大火力で親玉を叩くんだ。いいかい二人とも?」
無言で頷く。
ガシャッンッ
ドアを突き破る。
そこには体をパーツごとにバラバラされて机の上に転がっている強面の男の頭があった。
「えーと、Mr.ポルクス?ボスと思わしき人物が既に殺されている場合どうするんですか?」
「良い質問だね。そういう時は相手の罠に嵌められた時だから、神に祈ろう。」
何故かグッドをして笑いかけてくる野畑。絶対にコイツよりかは1秒でも多く生きてやる。
「お前ら馬鹿だねぇぇぇ。まんまとハマるなんて。」
ドアの方向を向くとそこには奴がいた。
続く
「まず、今回の襲撃計画の作戦説明といこうか。」
野畑がタブレットをいじりながら話し始める。
「作戦ってそんなに早く立てられるものなんですか?」
ノリで来てしまったが俺ピンチでは?
「いや、襲撃計画自体は前々からあったんだよ。君の研修で奪ってきたメモリーも内部情報を手に入れるための物だし。」
ということはスキンヘッドが沢山いるのだろうか。兄貴まだ生きてるかな。
「ただ、いつ決行するかを決めあぐねていたところにタイミングよく来てくれたもんだからさ。
さぁ作戦を伝えるとしよう。まず、チームを二つに分けさせてもらったよ。」
野畑の表情がいつになく真剣になる。
「チームαは潜入部隊。先に彼女達に索敵かつセキュリティーの解除を行なってもらう。メンバーはもう一つのバンに乗っているメンバーだ。そして僕たちがチームβ、これは交戦部隊だ。αから突撃許可が降り次第、正面突破する。」
潜入部隊にメンバーの半分が割かれているのは致命的だと思うのは俺だけだろうか。少なくともベルガモットはこっち側で問題ないはずだ。
「ここからが重要。卍原クン以外もよく聞いてくれ。」
突如ブォンッという近未来的な音と共に車のフロントガラスに地図が写し出される。
「これが内部構造。全4階で親玉は最上階の部屋だろう。所々にシャッターが設置されていて分断される恐れがあるからフェデーレと卍原クンは僕らから離れないように。前衛は僕と清嶺地チャン、後衛はフェデーレと卍原クン。
卍原クン、君はなるべく交戦しないように。分かったね?それと清嶺地チャンは彼についてもらいたい。二人とも良いかい?」
「了解しました。」「まぁ、OKっす。」
野畑の指示に対して清嶺地先輩と俺が返事をする。
「くつろいでるとこ悪いが、到着したぞ。」
全くくつろげていないが、どうやら到着したようだ。空はすでに青く霞みがかっている。
奴らの拠点はコンクリート剥き出しの市役所ぐらいの大きさの建物で正面は巨大なシャッターが守っていた。
「ったく。朝っぱらから何やってんだか。」
「文句を言っている暇があるなら準備体操でもしてなさい。」
一人ごとに突っ込まれると恥ずかしくなるんで止めてもらえませんかね、先輩。
清嶺地先輩は呑気にラジオ体操をしている。
「そういえば、先輩の制服ってあのメイド服じゃないんですか?」
車内は暗くて気づかなかったが野畑だけでなくフェデーレも先輩も執事服型戦闘服を着ている。
「はい。この制服は機種に違いはあれども見た目はメンバー全員統一されています。メイド服は趣味です。」
そうだったのか。いや待てそうすると、、、
「もしかして先輩のあの馬鹿力は素ですか?」
「はい、私の特出能力は、、、」
言いかけた先輩の声を遮るように野畑の声がスーツの襟元から聞こえる。
「突撃許可が降りた。今すぐ建物の正面シャッター前に集まってくれ。」
このスーツ、通信機の役割も果たせるようだ。あとで色々いじってみよう。
シャッター前に集まって待っているとシャッターがうるさい音を立てて開き始める。
「よし!チームαは成功してくれたようだね。さぁ、僕たちも行こうか!」
野畑に続いて先輩やフェデーレも中に入っていく。俺もいくかぁ、、、
中に入り廊下を進むと大広間の入り口で先程の3人が待ってくれていた。
「各員、臨戦態勢。陣形を崩さないように。」
野畑が声を上げる。
戦闘態勢をとる彼らの先には、昨日戦ったチンピラの2倍ほどの武装した敵団員が待ち受けていた。
待っていてくれたわけでなく物理的に進めなかったようだ。
「卍原さん。先程の続きを話しますね。」
清嶺地先輩がそういった瞬間。彼女は視界から消えた。
「私の特出能力。それは瞬発力です。」
声の元を辿るように上を見上げると、先輩は4mほど飛び上がり空中で身を翻しながら背中から彼女の背丈ほどある断頭台を取り出し、横に構えた
え。断頭台!?
そして、彼女は急降下をして真下にいた男の頭を刃と台の間に入れると、思いきり跳ね飛ばした。
ブシャァァァと流れだす血。
唖然。敵の動きが一瞬にして止まり、視線が彼女に集中する。
その一瞬が命取り。先輩は目にも止まらぬ速度で飛び回り、ギロチンで処刑を行なっていく。
「とんでもない娘だろ?」
フェデーレがライフルを撃ちながら半笑いで話しかけてくる。
野畑も既に戦い始めていたようで、あっけに取られている男どもを殴り飛ばし続けている。
「清嶺地の嬢ちゃんもナイフとかにすればもっと楽できるはずなんだが、頑なにギロチンを使うって言って聞かないんだ。」
本当にその通りだ。ギロチンは刃自身にかかる重力を利用するから骨までも一撃で切れるわけであり、アコーディオンのように自身の力で斬首している彼女にかかる負荷は相当なものだろう。そりゃ馬鹿力になるわけだ。
「クッソぉぉぉ!」
突如、血と死体の海からナイフを持った男が俺に向かって飛び出してきた。
ヤバい、避けきれない、これは刺さる。なら俺はどうするべきだ。これしかない。
「甘ぇんだよっ!!」
よし、クリーンヒットじゃないかこれ?男を蹴り上げる。これが正解だろ。
予想以上に高く飛び上がり2mほど宙を舞う男。もしかして俺、空手してたら全国狙えた?
まぁ戦闘服のおかげなんだろうけど、なるほど俺はキック力が高いのかな?
ん?まだ男には意識があるようだ、目が合った。
咄嗟に手榴弾を投げつける。
ボンッ
結構近くで爆発したが威力が低かったのが功をなして俺に被害はなかった。だが、直撃した男は黒焦げで落ちてきた。
「よしっ!」
ガッツポーズをとる。
「坊主もいい感じにイカれてるじゃねぇか。そのまま、こっちを手伝ってくれないか?」
フェデーレも上機嫌なようで冷静沈着としているように見えたが、鼻唄まじりにぶっ放している。
俺も負けていられないな。
すぐさま、フェデーレの横の立ち手榴弾を構え叫ぶ。
「えぇ!文字通りの血祭りといきましょうか!!」
決まった。今のどうよ?俺に惚れてもいいんだぜ?
10分ほど経ち、先輩がガシャンという音と共に最後の処刑を終了する。
辺り一面、血と銃弾と人の体の海となっていた。汚い物でもここまでくると綺麗に思える。これなら現代アートと言っても差し支えないだろう。ほら、アレって正直グチャグチャしてて理解不能じゃん?
「いやー先輩の怪力のわけが分かりましたよー。でもなんでギロチンなんですかー?」
処刑を終わらせ、乱れた髪を整えている先輩に話しかける。
「ギロチンである必要があるからです。」
「いやでも、そのスピードと馬鹿力があればギロチンの刃だけ持って戦ったほうが強いんじゃないですかー?
あ、もしかして個性出すため?みたいな可愛い理由だったりしますか?」
「…。 貴方に話す程のことじゃありません。」
図星だったのかな? いや、この感じは的外れなことを言われてイラついているってところか。地雷は踏み抜くのが俺のモットー。
「図星なんですねー。いやぁ先輩やっぱり可愛いっすねー。」
「…。」タンッ
無視されたわ。でも卓郎あきらめない!
怒った先輩は一人で上へ向かおうとしていた。しかし、
「待つんだ。鉄の処女(アイアン メイデン)。」
謎のフレーズを野畑が発する。
「何故ですか?この階層は鎮圧済。止められる理由が分かりません。ポルクス、説明を求めます。」
「第一にαから2階層への突撃許可が降りていない。二つ目はアイアンメイデン。今回の君の任務は新人の護衛だ。」
先輩は不満ながらも納得したようでギロチンの刄の手入れを始めた。
「さっきからアイアンメイデンやらポルクスやらヨーロピアンな単語が飛び交っていますが、なんすかこれ?」
近くで二人の様子を見守っていたフェデーレに尋ねる。
「坊主はまだ聞いていなかったか。それはコードネームってやつだ。俺らにも表での生活はあるからな、個人情報の流出は出来るだけ避けたいってことだ。嬢ちゃんは鉄の処女。金髪はポルクス。俺はロビンフットだ。覚えておけ。」
「アンタがロビンフットって誰が付けたんすか?まさか自分で付けたとか言いませんよね?」
どう考えても森に潜めないでしょこの人。
「似合わないだろ?かつての先輩に付けられたんだ。お前のコードネームもそのうち付くから期待してろ。」
コードネームかカッコいいのが良いな。ボマーとかリトルフラワーしちゃいそうな安直な名前だけは避けてもらいたい。
「了解した。あぁ分かってるよ、そっちも気をつけてね。」
野畑ことポルクスは通信機からの連絡を受けていた。
「今、αの天照(アマテラス)から連絡がきた。彼女らは現在、敵の用心棒や幹部と交戦中の模様。今がチャンスだ。このまま最上階まで駆け上がるよ。」
天照もコードネームだろうか?歴史や神話関係のものが多いようだ。マジで楽しみになってきたぞ、ソシャゲのプレイヤー名とかコードネームにしちゃお。
階段を駆け上がり最上階へと辿りつく。
「この廊下の突き当たりが親玉の部屋だそうだ。αのおかげで敵も少なかったし余裕だったね。」
階段を登る途中もちょくちょく襲われたが、襲いづらい環境に加えて質も量も足りていない暴力団員など進歩し過ぎた科学の前ではイチコロなのだ。
それにしても妙に薄暗い廊下だ。天井も普通と比べて高い気がする。
ボトン
突然何かが落ちる音がした。
前を歩いていた先輩の右手と左足が地面に落ちる。
バランスを保てなくなった先輩の体は地面に倒れ込む。
「先輩!?」
「かけよっては駄目だよ新人クン。」
近づこうとしたが野畑に止められる。
「どうやら、お相手さんには隠し玉があったようだな。」
「ちょっと面倒なことになっちゃったね。」
二人のように天井をみてみると、そこには道着を着た何者かがへばりついていた。
そいつは何をすることなくジッとこちらを見つめている。
「あれは勝てないね。しかし、僕達にまだ手をだしてないってことは場所に馴染めていないということ。ここに来てから日が浅いようだね。」
「ああ。となるとやることは一つだな。」
野畑とフィデーレがそう言うということは相当ヤバいやつなのだろう。ん?
ダダダダダダ
二人は倒れた先輩のことなど気にも留めずに全速力で走りだす。敵前逃亡もいいところだ。
「ちょっと!何考えてるんですか! 俺を置いていくなんて!」
二人が勝てない相手に立ち向かっても意味はない。先輩には悪いがその脱ぐと凄いと思われる体で時間稼ぎをしてもらおう。切られたのが腕と足だけで良かった。
あれ、そういや出口ってこっちだっけ?脳死で着いてきてしまったが考えてみれば階段は反対である。つまり向かう先は親玉の部屋?
「すみません。姉が死んだらしいので先に帰ります。」
「それは大変だ。帰り道には気をつけたまえよ。」
「あぁ。凶悪切り裂き魔が後ろから迫っているかもしれないからな。」
走りながら、二人に永遠の別れを告げる。何を考えているか知らんがロクでもなさそうだ。
そしてUターンした瞬間、先程の何かが廊下を縦横無尽に飛び回りながら凄い速さで追いかけてきていることを視認した。
慌ててUターンしなおし、二人に追いつく。
「来てる来てるヤバいの来てる。どうする予定なんすかこっから?!」
「いいかい新人クン。こういう時は抜けあるものなんだよ。」
野畑が息を荒げながら喋る。
「ああいう一級の殺し屋は専属でもなければ、大抵その日限りの契約だ。そして、ここは外観からして噂に聞くほど立派な組織じゃないようだ。つまり雇っている敵のボスを殺してしまえばアレは勝手に帰ってくれるよ。」
「なるほど。ボスって手榴弾で一撃でヤれますかね?」
「人によるかな。とりあえず、部屋に入ったら最大火力で親玉を叩くんだ。いいかい二人とも?」
無言で頷く。
ガシャッンッ
ドアを突き破る。
そこには体をパーツごとにバラバラされて机の上に転がっている強面の男の頭があった。
「えーと、Mr.ポルクス?ボスと思わしき人物が既に殺されている場合どうするんですか?」
「良い質問だね。そういう時は相手の罠に嵌められた時だから、神に祈ろう。」
何故かグッドをして笑いかけてくる野畑。絶対にコイツよりかは1秒でも多く生きてやる。
「お前ら馬鹿だねぇぇぇ。まんまとハマるなんて。」
ドアの方向を向くとそこには奴がいた。
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