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親交
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『朝カツ』の欠番は何となく済んだ。
もとの綾川の人柄もあったのだろう、「すみませんでした。」と真摯に応えれば、視聴者は変に邪推などしなかった。
綾川は再び素敵な笑顔を振りまく仕事の軌道に乗った。
ある日の収録後、スマホに通知が届いた。
「綾川さん。今度、食事に行きませんか?」
それはかつての恩人、真衣からのものだった。
好意を持っていた相手だったため、綾川は周りを少し気にしてから返信した。
「いいよ。土日なら空いているよ。」
そんな返信をした直後、マネージャーが楽屋に入ってきた。
少し動揺しつつもそれを隠してマネージャーとその日の予定を打ち合わせ、次の現場へ向かった。
予定が終わり、家のそばまで来たときにスマホを見ると返信が来ていた。
「じゃあ、土曜日に瀬山通りのTravio Ledってレストランどうですか?」
そのメッセージと共にレストランのリンクが貼ってあった。
なかなか高級そうな、格式の高そうなレストラン。それでも是非、真衣と行きたいと綾川は思った。
「いいですね。では、20時でどうですか?予約しておきます。」
綾川は少し笑顔になりながら自宅のマンションに入っていった。
当日、綾川は白いTシャツにジャケットといった少しラフな格好でレストランの前にいた。
「お待たせしました!」
そう言って現れた真衣は初めて会ったときのような少しフォーマルに見える格好をしていた。
「いえ、そんなに。では、入りましょうか。」
そう言ってレストランの扉を開けて誘導した。軽く会釈をして真衣はレストランに入る。
レストランは内装も綺麗な場所だった。いかにもデートといった感じだ。
ウェイターから席に案内され、少し奥まった席につく。
「こういうところ、よく来るんですか?」
「いえ、そんなに…相手がいませんから…」
「そうなんですか?すっごくモテそうなのに。」
そんな話をしながらメニューを見て食べるものを決める。
まだ互いのことなんかほとんど何も知らないな、などと思いながら適当にメニューを決めて注文した。
「お酒、好きですか?」
「まあ、嗜む程度には。」
「へえー、私は結構好きですよ。」
ざっくばらんに話しながらも真衣は互いのことを引き出すように会話する。綾川には積極的な人だと映った。
食事をしながら趣味や休日の過ごし方など、他愛もない話をした。綾川は改めて口に出すと自分がつまらない男だと感じて少し反省した。
「あんまり外に出たりとか、しないんですね。意外でした。」
「まあ…これといった趣味もないですからね。」
「じゃあ、私が誘ったら来てくれますか?」
無邪気な笑顔を向ける真衣に少しドキッとした。
「え、ええ。僕なんかでよければ…」
やった!と声に出して喜ぶ真衣の姿は子供のようだった。
そんな話をして、食事を楽しみ、最後は綾川がさっと会計をして外に出た。
外は暗くなり、人通りも減ってきていた。
「笹谷さんはどちらまで?送りますよ。」
綾川は率先して声をかけた。
「いえ、ここからタクシーで帰りますよ。だって誰かに見られたら、大変でしょう?」
そういって綾川の立場を案じながら、綾川が言葉を返す前にタクシーを拾った。
「じゃ、また今度。」
真衣は笑顔で手を振りながらタクシーに乗り込んだ。
「ええ、また。」
そう言って綾川は小さくお辞儀した。
真衣の乗ったタクシーを見送ると、綾川は一人、駅を目指して歩き始めた。
もとの綾川の人柄もあったのだろう、「すみませんでした。」と真摯に応えれば、視聴者は変に邪推などしなかった。
綾川は再び素敵な笑顔を振りまく仕事の軌道に乗った。
ある日の収録後、スマホに通知が届いた。
「綾川さん。今度、食事に行きませんか?」
それはかつての恩人、真衣からのものだった。
好意を持っていた相手だったため、綾川は周りを少し気にしてから返信した。
「いいよ。土日なら空いているよ。」
そんな返信をした直後、マネージャーが楽屋に入ってきた。
少し動揺しつつもそれを隠してマネージャーとその日の予定を打ち合わせ、次の現場へ向かった。
予定が終わり、家のそばまで来たときにスマホを見ると返信が来ていた。
「じゃあ、土曜日に瀬山通りのTravio Ledってレストランどうですか?」
そのメッセージと共にレストランのリンクが貼ってあった。
なかなか高級そうな、格式の高そうなレストラン。それでも是非、真衣と行きたいと綾川は思った。
「いいですね。では、20時でどうですか?予約しておきます。」
綾川は少し笑顔になりながら自宅のマンションに入っていった。
当日、綾川は白いTシャツにジャケットといった少しラフな格好でレストランの前にいた。
「お待たせしました!」
そう言って現れた真衣は初めて会ったときのような少しフォーマルに見える格好をしていた。
「いえ、そんなに。では、入りましょうか。」
そう言ってレストランの扉を開けて誘導した。軽く会釈をして真衣はレストランに入る。
レストランは内装も綺麗な場所だった。いかにもデートといった感じだ。
ウェイターから席に案内され、少し奥まった席につく。
「こういうところ、よく来るんですか?」
「いえ、そんなに…相手がいませんから…」
「そうなんですか?すっごくモテそうなのに。」
そんな話をしながらメニューを見て食べるものを決める。
まだ互いのことなんかほとんど何も知らないな、などと思いながら適当にメニューを決めて注文した。
「お酒、好きですか?」
「まあ、嗜む程度には。」
「へえー、私は結構好きですよ。」
ざっくばらんに話しながらも真衣は互いのことを引き出すように会話する。綾川には積極的な人だと映った。
食事をしながら趣味や休日の過ごし方など、他愛もない話をした。綾川は改めて口に出すと自分がつまらない男だと感じて少し反省した。
「あんまり外に出たりとか、しないんですね。意外でした。」
「まあ…これといった趣味もないですからね。」
「じゃあ、私が誘ったら来てくれますか?」
無邪気な笑顔を向ける真衣に少しドキッとした。
「え、ええ。僕なんかでよければ…」
やった!と声に出して喜ぶ真衣の姿は子供のようだった。
そんな話をして、食事を楽しみ、最後は綾川がさっと会計をして外に出た。
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「笹谷さんはどちらまで?送りますよ。」
綾川は率先して声をかけた。
「いえ、ここからタクシーで帰りますよ。だって誰かに見られたら、大変でしょう?」
そういって綾川の立場を案じながら、綾川が言葉を返す前にタクシーを拾った。
「じゃ、また今度。」
真衣は笑顔で手を振りながらタクシーに乗り込んだ。
「ええ、また。」
そう言って綾川は小さくお辞儀した。
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