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噂の怖いアニメ
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数日後、今度は苗山の方から紗枝を誘い、オカルトバーへ向かった。
「いらっしゃいませ。ああ、あなた達…」
重田は少し笑みを浮かべた。
「先日はどうもすみません。」
「いいえ、お気になさらず。」
苗山は先日勢いで少し喧嘩腰になってしまったことを謝った。
そして、飲み物を頼むと早々に先日の話題を始めた。
「で、この間の映像だけど…」
「え、わかったの?」
紗枝は意外そうに聞き返す。おそらく怪しんでいるようだ。
「ああ、なんとなくは…」
「で、どうなの?本物だった?」
「いや、あれは多分作り物だよ。」
ちょうど酒を運んできた重田も話に参加する。
「先日のですか。私も聞きたいです。」
「ああ、いえ。本当に素人なりの判断ですけど…」
そう言って苗山が調べた音楽のリストをタブレットに映し出して見せる。
「これ、何?ベートーヴェンとか、ビートルズとか…」
「あの動画に使われている音楽の一覧。」
紗枝は頭の上にハテナが浮かんでいるようだ。重田も同様にまだよくわからないといったような目をしている。
「一見して、ひどい不協和音のように聞こえたあれは、複数の曲を混ぜているだけだったんだ。」
そう言って苗山はスマホであの動画を流し始めた。速度はかなり低速にしてある。
「…すごく微かにだが、ここにあるこの曲が聞こえるな。」
重田はリストの中の一曲を指差した。
「あ、言われてみれば。んー、でも仮にそうだとして、だから偽物ってどういうこと?」
紗枝はまだ疑った目を向けていた。
そこで苗山は再びリストに目を戻す。
「このリストの中で一番新しく発売された曲はこれ。既に2000年代に入ってからの曲だ。しかし映像はかなり古びていて、アニメのタッチも動きも2000年代のものとは思えない。」
「確かに。実はこの動画、1960年代の秘蔵映像とか言われて出回っているんですよ。」
重田は情報を付随させる。苗山は先に言えと言いたげだったが、続ける。
「つまり、このアニメ自体が作られたのは2000年代以降。実際にワンダーワールド社が作っていたとしても、かなり古めかしくわざと作っているものだってことだ。
それに、この使われている音楽。クラシックからテクノ、ジャズ、ロックと種類が多い。これらの音楽には版権があると考えたらワンダーワールド社が作ったとは考えにくいだろう。」
なるほど、と感心しながら重田と紗枝は頷く。論理的に並べられた根拠に対して何も言えない中、重田が口を開いた。
「すごいですね。ここまできちんと考えてくるとは…私も納得しました。」
「いえ、ただ音楽だけ差し替えられているのなら、まだわからないですが…」
「いいんです、この動画として都市伝説に広まっているので、これだけわかっただけでも。」
重田は満足げな顔をしていた。紗枝はすこし苗山のことを誇らしげに思いながらも、あっさり謎を解き明かされて少し悔しそうだった。
「隆も、やるときはやるじゃん…」
「なんだよ、それ。」
3人はその後もしばらく談笑しながら過ごしたが、店を出るとなったときに重田がこんな話を持ちかけた。
「苗山さん。今日はありがとうございました。実は、少しお願いがあって。」
「何でしょうか?」
「私、先日も話した通り、ブログをやってまして。せっかくだから苗山さんの力もお借りして都市伝説の真相まで暴いて記事にしようかと思いまして。」
「ええ、それは面白そうですね…」
「よろしければ、今後も“謎解き”お願いできませんか?」
「ああ…って、え?」
ここで言われたことに気がついたように苗山は驚く。
「いいじゃん!やっちゃいなよ!調査員!」
紗枝は楽しそうに苗山の背中を押した。
「え…す、少しだけですよ!自分ができる範囲であれば…」
少し不服そうな、照れ臭そうな感じで苗山はその話を引き受けた。そして、これが重田と苗山の共作、「新・怪史の不思議探索」の幕開けとなるのだった。
「いらっしゃいませ。ああ、あなた達…」
重田は少し笑みを浮かべた。
「先日はどうもすみません。」
「いいえ、お気になさらず。」
苗山は先日勢いで少し喧嘩腰になってしまったことを謝った。
そして、飲み物を頼むと早々に先日の話題を始めた。
「で、この間の映像だけど…」
「え、わかったの?」
紗枝は意外そうに聞き返す。おそらく怪しんでいるようだ。
「ああ、なんとなくは…」
「で、どうなの?本物だった?」
「いや、あれは多分作り物だよ。」
ちょうど酒を運んできた重田も話に参加する。
「先日のですか。私も聞きたいです。」
「ああ、いえ。本当に素人なりの判断ですけど…」
そう言って苗山が調べた音楽のリストをタブレットに映し出して見せる。
「これ、何?ベートーヴェンとか、ビートルズとか…」
「あの動画に使われている音楽の一覧。」
紗枝は頭の上にハテナが浮かんでいるようだ。重田も同様にまだよくわからないといったような目をしている。
「一見して、ひどい不協和音のように聞こえたあれは、複数の曲を混ぜているだけだったんだ。」
そう言って苗山はスマホであの動画を流し始めた。速度はかなり低速にしてある。
「…すごく微かにだが、ここにあるこの曲が聞こえるな。」
重田はリストの中の一曲を指差した。
「あ、言われてみれば。んー、でも仮にそうだとして、だから偽物ってどういうこと?」
紗枝はまだ疑った目を向けていた。
そこで苗山は再びリストに目を戻す。
「このリストの中で一番新しく発売された曲はこれ。既に2000年代に入ってからの曲だ。しかし映像はかなり古びていて、アニメのタッチも動きも2000年代のものとは思えない。」
「確かに。実はこの動画、1960年代の秘蔵映像とか言われて出回っているんですよ。」
重田は情報を付随させる。苗山は先に言えと言いたげだったが、続ける。
「つまり、このアニメ自体が作られたのは2000年代以降。実際にワンダーワールド社が作っていたとしても、かなり古めかしくわざと作っているものだってことだ。
それに、この使われている音楽。クラシックからテクノ、ジャズ、ロックと種類が多い。これらの音楽には版権があると考えたらワンダーワールド社が作ったとは考えにくいだろう。」
なるほど、と感心しながら重田と紗枝は頷く。論理的に並べられた根拠に対して何も言えない中、重田が口を開いた。
「すごいですね。ここまできちんと考えてくるとは…私も納得しました。」
「いえ、ただ音楽だけ差し替えられているのなら、まだわからないですが…」
「いいんです、この動画として都市伝説に広まっているので、これだけわかっただけでも。」
重田は満足げな顔をしていた。紗枝はすこし苗山のことを誇らしげに思いながらも、あっさり謎を解き明かされて少し悔しそうだった。
「隆も、やるときはやるじゃん…」
「なんだよ、それ。」
3人はその後もしばらく談笑しながら過ごしたが、店を出るとなったときに重田がこんな話を持ちかけた。
「苗山さん。今日はありがとうございました。実は、少しお願いがあって。」
「何でしょうか?」
「私、先日も話した通り、ブログをやってまして。せっかくだから苗山さんの力もお借りして都市伝説の真相まで暴いて記事にしようかと思いまして。」
「ええ、それは面白そうですね…」
「よろしければ、今後も“謎解き”お願いできませんか?」
「ああ…って、え?」
ここで言われたことに気がついたように苗山は驚く。
「いいじゃん!やっちゃいなよ!調査員!」
紗枝は楽しそうに苗山の背中を押した。
「え…す、少しだけですよ!自分ができる範囲であれば…」
少し不服そうな、照れ臭そうな感じで苗山はその話を引き受けた。そして、これが重田と苗山の共作、「新・怪史の不思議探索」の幕開けとなるのだった。
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