オカルト調査員 苗山隆

戸山紫煙

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噂の怖いアニメ

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夏が過ぎてから朝もだいぶ冷えるようになった。夜も長くなって憂鬱な気分が深まる季節だと思う。
毎朝ほぼ同じ時間の電車にすし詰めにされて都会のど真ん中まで向かう。いつもと変わらず、段々と建物が高く、無機質になっていくのを電車の窓から眺めながら自分の立ち位置を維持する。
都会の駅に着くと中に詰められたサラリーマンがどばっとホームに流れ出す。せっかく朝ピシッと決めてきたスーツも心なしかよれてしまったように思う。これだけで今日の大仕事が一つ終わった気分だ。
人の波に乗りながら、色んな会社が入った高いビルへ入り、いつもと変わらず13階のオフィスへ向かう。代わり映えのしないパソコンの前につき、軽くため息をつく。
「そんな冴えない顔するなよー」
隣の席のヤツが声をかける。少しおちゃらけた同期の岡山、いい奴だとは思うが朝の通勤を乗り越えて少しイライラした時間にはややうざったい。
「通勤だけでも疲れるよな、嫌になるわ。」
岡山の方を見るでもなく、鞄から書類を取り出して仕事の準備をする。すると岡山はぐっと体を乗り出して俺の顔を覗き込む。
「なーに、いいじゃん。苗山は彼女いてさ、毎晩癒されてるんでしょ?」
岡山は人を苛立たせる才能がある。始業の10分前ではあるが、会話をするのも嫌になったので岡山の肩を退けてパソコンに向かう。岡山は少しぶーぶー言ってはいたが、すぐに自分の席に戻った。
俺はそこそこの企業に勤めるエンジニアだ。毎日会社に行ってはパソコンに向かってプログラミング。仕事に不満はないが、やりがいを感じるかと言われるとわからない。でもまあ、お金をもらってそれなりの仕事をして生活できているから不満はないのかもしれない。
いつも通り午前中に計画していた分の仕事を終えて、昼休みに入る。周りの社員はわらわらと外へ出て買い出しや外食へ向かう中、自分はさてどうしようかと椅子に座りながら空を眺める。
「どーしたよ苗山!今日は交差点の定食屋の日替わりが肉じゃがだぞ~。」
岡山はわくわくしたように俺を見て話す。
「あーそう。」
「あーそう、じゃなくて。食べ行こうぜ!」
交差点の定食屋なんてさして珍しいものでもないのにやたらと盛り上がる岡山は人生楽しいんだろうな、と冷めた目で見ながら引っ張る腕に引き摺られるように定食屋に向かう。
交差点の定食屋、「あさがお」という古風な名前で長らく続いているんだろうといった佇まいだ。日替わりで肉から魚までさまざまなメニューを出してくれる、独り身の男には嬉しい健康的なお店…というぐらいの認識しかなかった。
店に入り、日替わりの肉じゃが定食を頼んで岡山と一緒の席で待っていた。やたらに混むでもなく、かといってガラガラというわけでもない。たまに来ると落ち着く雰囲気であることは確かだ。
と言っている間に定食が二人分運ばれてきた。すぐに料理が出てくるのもここのいいところだと思う。いつものおばちゃんが愛想よく接客してくれるところも。
「いただきまーす!マジでここの肉じゃが、うまいんだよねー。じゃがいももほろほろだしー。」
岡山は美味しそうに肉じゃがとご飯を頬張りながら笑顔をこぼしている。そんな岡山を尻目に俺も小さくいただきます、と呟いて食べ始めた。
岡山の言うことは尤もだと思う。よく煮込まれた具材に素朴な味が染みてて美味しい。少なくとも、コンビニで買ったり、下手に自分で作るよりは断然美味しい。たまの和食はいいかな、としみじみ考えながら昼飯を味わった。
「美味かったー。苗山も俺に連れてこられてよかったでしょー?」
「え、ああ、そうだな…」
食べ終えて水を飲みながら少しだけ岡山と話す。仕事の愚痴だの、些細なことばかりだが、会社ではするのがはばかられるようなことではある。
そんな話をしていると胸元に入れたスマホが鳴った。確認すると紗枝、彼女からのメッセージが来ていた。
「今夜、飲みに行こうよ
どこで、何時ならいけそう?」
「今日は割と順調だから20時とかかな。
場所は任せるよ。遠くなければ。」
岡山はニヤニヤしながらこちらを見ている。
「ヒュー。うまくやってんじゃん。たまには俺にも構ってよー。」
「いつも構ってるだろ。さて、そろそろ戻るか。」
席を立ち、ごちそうさまと店主に声をかけて定食屋を出る。
定食屋からの帰り道に紗枝から返信が来ていた。
「じゃあ20時に四谷!行ってみたいところがあるんだ~」
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