姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき

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 特別室にある魔導具は全て持ち出すことになった。もちろん、私の新しく住む場所にである。私はそのことを報告するためサマンサ学長に会いに行った。

「そう、遂に決まったのね。おめでとう、メリー」
「ありがとうございます、サマンサ学長。そして、途中でここを辞めてしまう事をお許しください」
「何を言ってるのよ。うちからアガステラ王国魔導研究所の所員が生まれたのよ! 自慢しまくりよ!」
「ふふふ、サマンサ学長のおかげだとしっかり謳っておきますよ」
「まあっ! メリーったら!」

 サマンサ学長は嬉しそうに微笑む。そんなサマンサ学長に私はお願いする。

「バルサ王国魔導学院を由緒ある学院に戻します。その為、お願いがあります」
「メリーのお願いならなんでも聞くわ。好きなだけやりなさい」
「ありがとうございます!」

 私は頭を下げた後にルーベントを見る。

「じゃあ、最後の仕上げに王宮に行きましょう」
「わかりました」

 ルーベントは頷き、私をエスコートし始める。それから馬車に乗ったのだが、しばらくするとルーベントが私に一枚の紙を渡してきた。

「すみません、これは私が書いた設計図なんですが、あなたに見てもらいたくて……」
「ええ、構いませんよ」

 私は早速設計図を受け取りを見たが驚いてしまう。設計図は宝石の形をかたどっていたから。

「この形にこの機能……あなたはもしかしてジュエル・プリンス?」

 するとルーベントは真っ赤な顔になり慌てだす。

「えっ! まさか、バルサ王国にその恥ずかしいあだ名が広がっているのですか⁉︎」
「ええ、ばっちり。顔が知られてない分、更に妄想も凄いですよ。まあ、想像以上のお顔でしたが……」
「なっ……」

 ルーベントは頬を赤くしながら手で顔を隠してしまう。私は美形好きではないがその光景は中々の絵になっていた。

 美丈夫の恥ずかしがる表情……眼福ね……

 私は目を逸らさずにじっと見ていると、ルーベントは私の視線に気づき、なんとか表情を作りながら設計図を指差す。

「メリーさん、私の顔じゃなく設計図を……」
「あっ……」

 今度は私が頬を赤くする番だった。私は俯きながら設計図を見る。

「……とても綺麗ですね。まるで本物の宝石みたい。ただ、ここにもう少し手を加えると嘘発見器の精度をあげられますよ」

 私は設計図のある場所を指差すと、対面に座っていたルーベントはすぐに私の横に座り覗きこんできた。
 そう、つまり、お顔が真横に来てるのだ。もちろん、私はそんなルーベントの顔など見れず慌てて俯く。
 そんな私に気づいていないルーベントはポケットから懐中時計型の嘘発見器を出し設計図と交互に見て何度も頷いていた。

「凄いですよ。やはり花の魔導姫はトップレベルの実力がありますね」
「……い、いえ、私などアガステラ王国魔導研究所で働く人達に比べれば大したことないですよ」

 私は謙遜じゃなく本気でそう思って言うと、突然、肩を掴まれ強制的に美しいお顔に向き合わされてしまった。

「な、何を言っているのですか! メリーさん!」
「ひゃい!」
「あなたは間違いなく研究所の所員達よりレベルが高いですよ。それに美しさでも……」
「えっ……」

 私はルーベントの言葉に恥ずかしさなど吹き飛ぶ。そしてルーベントの目を凝視した。

「ルーベントさん、目はしっかり見えてますでしょうか?」
「ええ、視力はちゃんとありますよ。それにあなたはあの姉とご自分を比較されているのでしょう?」
「ま、まあ……」
「あれは化粧でばっちり目を大きくしたり潤いあるように見せてるだけですよ」
「えっ、そうなのですか? そういえば姉さんは急に二重になったり小顔になったような気が……」
「おそらく長持ちする魔導具『二重さん』に、魔導具『圧縮小顔器』を使ったんでしょう。それに比べてメリーさんは化粧を一切してないのにその美しく整った顔ですよ。メリーさんはわかっていないようですがとても美しいんです」

 美しい人に美しいと言われてどう返答すれば良いのかわからずにいたが、とりあえず頷くことにした。

「あ、はい」

 その後、ルーベントはいかに私が美しいのかを懇々と説明してくれたのだが、窓に映る自分を見たが結局見慣れているパッとしない顔にしか見えなかった。



 王宮に着くと、アガステラ王国の特使として来ているルーベントの特命で王家とジョッシュの父であり宰相のアルタール公爵を呼び出した。
 既にルーベントはうちに来る前に王家とは話をしていたので王家の方々は緊張した様子だったが、宰相のアルタール公爵は初めて呼ばれたので何がこれから起こるか理解していない様子だった。
 そんな中、ルーベントは早速本題に入る。

「特命です。ここにいるメリー・ロルイド伯爵令嬢を本日を以てアガステラ王国の名誉国民とする。ちなみにジョッシュ・アルタール公爵令息との婚約は一週間後にそちらの不義で破棄となる」

 ルーベントが周りを見回すと、すぐにアルタール公爵が怒った表情になる。

「なぜ、こちらの不義で破棄なのですか⁉︎ 理由を説明して下さい!」
「理由ですか……」

 ルーベントが私を見てきたので頷きアルタール公爵に言った。

「ジョッシュはうちの姉と不貞関係にあります」
「な、なんだと! し、証拠は……」

 私はアルタール公爵が言い終わる前に、手のひらに乗せた四角い形をした魔導具に魔力を込める。裸で抱き合う、ジョッシュと姉の映像が空中に流れた。
 その瞬間、その場にいた面々は驚く。映像を初めて見たから。だが、しばらくしてアルタール公爵が慌てだす。

「こ、これが証拠になるとは言えないだろう! 作ったものかもしれないだろう!」

 はい、きました。絶対、言うと思ったわ。だから、ずっと我慢していたのよ。でもね……

 睨んでくるアルタール公爵に私は説明してあげた。

「この魔導具は、特許を取ってアガステラ王国で正式採用されたんです。つまり属国であるバルサ王国でもこの映像はしっかりした証拠になるんですよ」
「ま、まさかっ、嘘だろう、ジョッシュ……」
「おたくの馬鹿息子は……失礼、馬鹿は……いや、息子様は更に私に対して酷いことを言いましたよ。まあ、姉の所為でもありますけど。それでも、婚約者である私の言葉より姉の嘘を信じたんですから」

 そう言った後にルーベントが黙ってしまっているアルタール公爵に言った。

「とりあえず、息子さんには正式な通知が行くまでは黙っていて下さい。それから王家の皆様。あなた方は二年前の第三王子の件の結末を嘘偽りなく国民に教えてください。そして、不貞行為をした者にはアガステラ王国から罰則が近いうちに行くとお伝え下さい。なに、バルサ王国をより良くする為に働いてもらうだけですから安心して下さい」

 ルーベントは淡々と言うと王家の方々は真っ青になり俯いた。彼らがこうなるのは仕方ない。場合によっては不貞行為された被害者から狙われる可能性が出てしまうと理解してるから。
 しかも王宮内でだ。きっと、あの浮気された騎士みたいな人が沢山いるのだろう。
 私は自業自得だと思っているとルーベントは更にトドメをさしにきた。

「ああ、そうだ、バルサ王国魔導学院の校則ですが、守らなかった教師と生徒がいるそうなので処分をお願いしますね。この処分も一週間後とします」

 もう王家の方々はお腹いっぱいだろう。ルーベントの言葉が終わる頃には真っ青な顔が真っ白になっていた。
 そんな中、さっきとは打って変わり冷静さを取り戻したアルタール公爵が私の側に来ると頭を深く下げてくる。

「……すまなかった。メリー・ロルイド伯爵令嬢。私が至らないばかりに……」
「まあ、宰相様はほとんど王宮勤めですから責めるのもどうかと思ったのですが……」
「いや、家長としてこの責任は取りたい。なんでも言って欲しい」
「なら、お願いがあります」

 私は早速、アルタール公爵に色々とお願いをするのだった。
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