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エリオットside.
学園でハンナと別れた後、エリオットはうちに戻り領地経営の勉強をしていると慌てた様子で使用人が部屋のドアを叩いてきた。
「エリオット様、ハンナ様が乗っていた馬車が事故に巻き込まれたみたいです!」
「なんだって⁉︎」
エリオットは驚きながらドアを開けると、使用人が真っ青な顔になっており、何故かその後ろにはフィナが立っていたのだ。
「フィナ嬢……なんでここに?」
「なんでってお姉様が事故にあった事を伝えに来たんですよぉ」
「そ、そうだ! ハンナは無事なのか⁉︎」
エリオットはフィナに詰め寄りながら聞く。するとフィナら悲しげな表情になり目を伏せた。
「……酷い怪我で意識不明なんですよぉ」
「嘘だろ? ハンナがいる場所を教えてくれ!」
「やめてあげてください!」
突然、大声を出したフィナにエリオットは驚いて数歩後ずさる。すると、フィナがエリオットの胸に飛び込み泣き出す。
おかげで、エリオットはフィナを離すことができずにいるとフィナが上目遣いに訴えてきた。
「エリオット様ぁ、どうか酷い顔になってしまったお姉様を見に行くのはやめて下さい。大切なお姉様を思う妹として……いいえ、同じ女として……」
そう言ってフィナは顔をエリオットの胸にうずめて再び泣きだす。そんなフィナを見てエリオットは呆然としてしまった。
事故で酷い顔になっただって……。そんな……
エリオットはいつも優しげに微笑みかけてくるハンナの顔を思いだす。そのハンナが今、怪我で苦しんでいるのだ。しかし、自分が行けばフィナの言う通りハンナの心を傷つけてしまう可能性がある。
だからエリオットは必死に考えた結果答えをだした。
「……わかった。ハンナの怪我が良くなるまで待つよ」
「懸命な判断ですよぉ、エリオット様ぁ」
フィナは悲しげに微笑み頷いてくる。だからエリオットは内心ホッとする。
そうだよ。ハンナの怪我が良くなったらすぐにお見舞いに行こう。
エリオットはそう思いながらフィナの頭を優しく撫でるのだった。
◇
あれから、一カ月経ったがフィナが言うには、相変わらずハンナは目覚める様子はないとの事だった。
エリオットは一度ハンナの様子を見たいと言ったのだが、フィナやキリオス伯爵夫人に止められてしまう。おかげでエリオットは一度もハンナに会えていないのだ。
そんなに人に見せられない怪我なのか……。ハンナ……
エリオットはハンナの事を考えながらボーッとしているとルーカスが心配そうに声をかけてきた。
「エリオット、大丈夫か?」
「ルーカス様……」
「……ハンナ嬢の事を考えているのか?」
「はい、ただ酷い怪我でまだ意識が戻らないらしくて……」
「それなら余計見に行くべきじゃないか? 君は彼女の婚約者なのだろう?」
「それが、フィナ嬢やキリオス伯爵夫人に止められてしまって……」
エリオットがそう答えると、ルーカスはしばらく考えるような仕草をした後に言った。
「エリオット、二人に止められても私は行くべきだと思うけどな」
「でも、ハンナは事故で酷い顔になったらしくて見たら可哀想だと……」
「それなら、いつ見に行くんだ?」
「それは……」
エリオットはルーカスにそう聞かれて答えられなかった。するとルーカスが冷めた口調で言ってきた。
「まさか、退院するまで会わないつもりなのか? 酷い傷なら一生残るかもしれない。それなら、今行くべきなんじゃないのか?」
「し、しかし、フィナ嬢やキリオス伯爵夫人が……」
「君は二人と結婚するんじゃなくて、ハンナ嬢と将来結婚するのだろう。まさか、酷い顔になってしまったハンナ嬢に会いたくないとかじゃないだろうな?」
ルーカスにそう聞かれたエリオットは思わずドキッとしてしまった。そしてハンナの美しい顔に大きく傷が付いた姿を想像してしまう。
その時、エリオットは思わず酷い顔になってしまったハンナを愛せるだろうかと悩んでしまったのだ。しかし、すぐに頭を軽く振ってその考えを追い出す。
「……そんな事はありません。でも、会おうにも彼女にどうやって会いに行けば良いのでしょう?」
「……ハンナ嬢はきっと領地じゃなく、腕の良い医者がいる王都の病院に入院しているはずだ。それならツテを使って私なら探す事ができるかもしれない。わかったら教えよう」
「ありがとうございます」
エリオットは頭を下げるが、ルーカスは不満気な表情だった。それはエリオットから迷いの様なものを感じたから。
しかし、そんなルーカスの表情にエリオットは最後まで気づく事はなかったのだった。
学園でハンナと別れた後、エリオットはうちに戻り領地経営の勉強をしていると慌てた様子で使用人が部屋のドアを叩いてきた。
「エリオット様、ハンナ様が乗っていた馬車が事故に巻き込まれたみたいです!」
「なんだって⁉︎」
エリオットは驚きながらドアを開けると、使用人が真っ青な顔になっており、何故かその後ろにはフィナが立っていたのだ。
「フィナ嬢……なんでここに?」
「なんでってお姉様が事故にあった事を伝えに来たんですよぉ」
「そ、そうだ! ハンナは無事なのか⁉︎」
エリオットはフィナに詰め寄りながら聞く。するとフィナら悲しげな表情になり目を伏せた。
「……酷い怪我で意識不明なんですよぉ」
「嘘だろ? ハンナがいる場所を教えてくれ!」
「やめてあげてください!」
突然、大声を出したフィナにエリオットは驚いて数歩後ずさる。すると、フィナがエリオットの胸に飛び込み泣き出す。
おかげで、エリオットはフィナを離すことができずにいるとフィナが上目遣いに訴えてきた。
「エリオット様ぁ、どうか酷い顔になってしまったお姉様を見に行くのはやめて下さい。大切なお姉様を思う妹として……いいえ、同じ女として……」
そう言ってフィナは顔をエリオットの胸にうずめて再び泣きだす。そんなフィナを見てエリオットは呆然としてしまった。
事故で酷い顔になっただって……。そんな……
エリオットはいつも優しげに微笑みかけてくるハンナの顔を思いだす。そのハンナが今、怪我で苦しんでいるのだ。しかし、自分が行けばフィナの言う通りハンナの心を傷つけてしまう可能性がある。
だからエリオットは必死に考えた結果答えをだした。
「……わかった。ハンナの怪我が良くなるまで待つよ」
「懸命な判断ですよぉ、エリオット様ぁ」
フィナは悲しげに微笑み頷いてくる。だからエリオットは内心ホッとする。
そうだよ。ハンナの怪我が良くなったらすぐにお見舞いに行こう。
エリオットはそう思いながらフィナの頭を優しく撫でるのだった。
◇
あれから、一カ月経ったがフィナが言うには、相変わらずハンナは目覚める様子はないとの事だった。
エリオットは一度ハンナの様子を見たいと言ったのだが、フィナやキリオス伯爵夫人に止められてしまう。おかげでエリオットは一度もハンナに会えていないのだ。
そんなに人に見せられない怪我なのか……。ハンナ……
エリオットはハンナの事を考えながらボーッとしているとルーカスが心配そうに声をかけてきた。
「エリオット、大丈夫か?」
「ルーカス様……」
「……ハンナ嬢の事を考えているのか?」
「はい、ただ酷い怪我でまだ意識が戻らないらしくて……」
「それなら余計見に行くべきじゃないか? 君は彼女の婚約者なのだろう?」
「それが、フィナ嬢やキリオス伯爵夫人に止められてしまって……」
エリオットがそう答えると、ルーカスはしばらく考えるような仕草をした後に言った。
「エリオット、二人に止められても私は行くべきだと思うけどな」
「でも、ハンナは事故で酷い顔になったらしくて見たら可哀想だと……」
「それなら、いつ見に行くんだ?」
「それは……」
エリオットはルーカスにそう聞かれて答えられなかった。するとルーカスが冷めた口調で言ってきた。
「まさか、退院するまで会わないつもりなのか? 酷い傷なら一生残るかもしれない。それなら、今行くべきなんじゃないのか?」
「し、しかし、フィナ嬢やキリオス伯爵夫人が……」
「君は二人と結婚するんじゃなくて、ハンナ嬢と将来結婚するのだろう。まさか、酷い顔になってしまったハンナ嬢に会いたくないとかじゃないだろうな?」
ルーカスにそう聞かれたエリオットは思わずドキッとしてしまった。そしてハンナの美しい顔に大きく傷が付いた姿を想像してしまう。
その時、エリオットは思わず酷い顔になってしまったハンナを愛せるだろうかと悩んでしまったのだ。しかし、すぐに頭を軽く振ってその考えを追い出す。
「……そんな事はありません。でも、会おうにも彼女にどうやって会いに行けば良いのでしょう?」
「……ハンナ嬢はきっと領地じゃなく、腕の良い医者がいる王都の病院に入院しているはずだ。それならツテを使って私なら探す事ができるかもしれない。わかったら教えよう」
「ありがとうございます」
エリオットは頭を下げるが、ルーカスは不満気な表情だった。それはエリオットから迷いの様なものを感じたから。
しかし、そんなルーカスの表情にエリオットは最後まで気づく事はなかったのだった。
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