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我レ敵機動部隊ヲ攻撃ス
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零戦隊が前で僅かな敵機を薙ぎ払っている。
数でも質でも練度でも劣っているのだ・・・
それでも必死に我々には向かってくる。
だが、それは我々には直接関係ない。
攻撃に集中すればいいのだ。
英国海軍に止めを刺す。
我々の仕事はそれだけだ。
敵戦闘機の駆除は我々の仕事ではない。
そろそろ敵艦隊が見えてくる筈だが・・・
後ろの偵察手にも疲れが出始めている。
俺も同じだ。
早く敵艦隊が出てこなければ攻撃は疲労で失敗するかもしれない。
いくら血の滲む様な訓練、実戦を乗り越えてきたとはいえ、疲労にはどうしても勝て
ない。
早く敵艦隊を目視で見たいものだ。
この焦りも大敵なのに止めることは出来ない。
代わりに見えてくるのは無惨に墜とされていく敵機のみである。
しかし、電探の情報は正確だった。
「敵艦隊見ユ。」
暗号の電信で零戦隊から連絡される。
そして数分後自分の目にでもはっきりと敵艦を捉えるようになる。
「我レ敵機動部隊ヲ攻撃ス。」
母艦に連絡を送っておく。
まずは我ら宝龍隊から攻撃が開始される。
今までは攻撃順序が後の方だったので歯痒い思いをしていたが、今回はその配慮なの
か一番槍である。
操縦桿を握る手が強くなる。
・・・何緊張しているんだ。
何回もやっているじゃないか。
陸上からの対空砲火を受けながら、敵基地に爆撃をしに行っている。
今回は搭載武装が変わっただけだ。
しかし、考えている暇なんて敵は与えてくれないようだ。
思考を中断して俺の機体を信じて対空砲火を躱し続ける。
何回も衝撃が伝わってくる。
生きている心地がしない。
しかし、爆炎が近くに見えつつも敵艦に接近する。
そろそろだ。
「投下!」
奮龍が12機から一斉に放たれる。
これで狙いは奮龍にいく筈だ。
そう思っていたが、一向に敵艦の目標は我々から外れない。
「なぜだ?」
何機か敵艦の対空砲火の直撃を受けて墜落している。
その為奮龍も落下している。
「今までの敵艦とは違うということか・・・」
とはいっても残った奮龍は敵艦に向かう。
そして大きな爆裂音が響く。
どうやら命中したようだ。
「よくやった!」
響きわたる無事だった対空射撃による爆発音の中、伝声管にそう叫んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空母イラストリアス
「くそ!」
この艦はもう駄目だ。
攻撃で戦闘不可状態になるのは想定していて、それを防ごうとしたが、やはり駄目だ
った。
奴らは今までの大きな海戦のようにまずは誘導弾で外周の駆逐艦を潰しに来た。
必死に誘導弾を操作する母機を撃ち落としたが、数が多すぎた。
対空砲火だけで撃ち落とすのは困難であった。
誘導弾を食らった駆逐艦、特に2個以上食らった艦はもはや黒煙を吐くだけの洋上に
浮かぶ構造物になっている。
次に標的となったのは巡洋艦。
同じように母機を墜としていったが、駆逐艦が戦闘不能となり、数の少ない巡洋艦は
すぐに火を噴いた。
航行こそしているものの、武装をまともに動かすことは出来ない。
護衛空母も空母も対空火器は大して多く無い。
思うがままに攻撃を受けた。
最初はやはり誘導弾による攻撃。
しかし、流石は我が装甲甲板。
甲板は破壊されなかった。
しかし、対空火器はピクリとも動かなくなった。
そんなところに今度は魚雷を積んだ敵攻撃機。
抵抗が出来なくなった我々に無慈悲にも攻撃を仕掛けてきた。
まるで・・・「これが戦争だ。」と言わんばかりに。
しかし、これで終わりではない。
我々は役目を全うした。
敵艦隊のヘイトを我々に集中させた。
後は・・・託すしかない。
本隊の戦艦部隊に。
「これで終わりと思うなよ・・・」
傾く船の中、衝撃による痛みを堪えながらそう呟いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
戦艦 大和
敵部隊が我々に接近してきている。
艦に付いている電探でも既に探知出来るほど接近されている。
このまま接近されれば敵の主砲の射程範囲に入りかねない。
航空隊も今は全力で敵機動部隊を攻撃しにいった為、ほぼお留守で期待は出来ない。
・・・我々がやらなければならない。
既に攻撃する旨は各艦に伝えている。
我が艦と、金剛型3姉妹が敵戦艦に突撃する。
それに水雷戦隊も連れていく。
超甲巡の2隻も参加する。
しかし、敵戦艦は5隻。
しかも補助艦の数でも敵の方が勝っている。
激しい砲戦となるだろう。
この戦いで敗北すれば、後方の機動部隊、更に後方、同盟軍の輸送船団、補給部隊ま
で危険に晒される。
これがもしかしたら、最初で最後の大和の対水上戦闘となるかもしれない。
既に敵艦への攻撃手段は航空機が主流である。
こんなことは2度とありえないだろう。
艦は異様とも言える雰囲気に包まれている。
恐らくこの戦闘に参加する全艦にその雰囲気はあるだろう。
最悪1時間止めれば勝ちだ。
その時には味方の攻撃隊が援護に来る。
だが、出来れば自分の手で敵艦を沈めたい。
だから時間制限は1時間だ。
それまでにやらなければならない。
既に全員覚悟を決めている。
電探からして間もなく敵艦隊と接敵する。
「始まる・・・」
脳内が戦闘という言葉に染まっていく。
数でも質でも練度でも劣っているのだ・・・
それでも必死に我々には向かってくる。
だが、それは我々には直接関係ない。
攻撃に集中すればいいのだ。
英国海軍に止めを刺す。
我々の仕事はそれだけだ。
敵戦闘機の駆除は我々の仕事ではない。
そろそろ敵艦隊が見えてくる筈だが・・・
後ろの偵察手にも疲れが出始めている。
俺も同じだ。
早く敵艦隊が出てこなければ攻撃は疲労で失敗するかもしれない。
いくら血の滲む様な訓練、実戦を乗り越えてきたとはいえ、疲労にはどうしても勝て
ない。
早く敵艦隊を目視で見たいものだ。
この焦りも大敵なのに止めることは出来ない。
代わりに見えてくるのは無惨に墜とされていく敵機のみである。
しかし、電探の情報は正確だった。
「敵艦隊見ユ。」
暗号の電信で零戦隊から連絡される。
そして数分後自分の目にでもはっきりと敵艦を捉えるようになる。
「我レ敵機動部隊ヲ攻撃ス。」
母艦に連絡を送っておく。
まずは我ら宝龍隊から攻撃が開始される。
今までは攻撃順序が後の方だったので歯痒い思いをしていたが、今回はその配慮なの
か一番槍である。
操縦桿を握る手が強くなる。
・・・何緊張しているんだ。
何回もやっているじゃないか。
陸上からの対空砲火を受けながら、敵基地に爆撃をしに行っている。
今回は搭載武装が変わっただけだ。
しかし、考えている暇なんて敵は与えてくれないようだ。
思考を中断して俺の機体を信じて対空砲火を躱し続ける。
何回も衝撃が伝わってくる。
生きている心地がしない。
しかし、爆炎が近くに見えつつも敵艦に接近する。
そろそろだ。
「投下!」
奮龍が12機から一斉に放たれる。
これで狙いは奮龍にいく筈だ。
そう思っていたが、一向に敵艦の目標は我々から外れない。
「なぜだ?」
何機か敵艦の対空砲火の直撃を受けて墜落している。
その為奮龍も落下している。
「今までの敵艦とは違うということか・・・」
とはいっても残った奮龍は敵艦に向かう。
そして大きな爆裂音が響く。
どうやら命中したようだ。
「よくやった!」
響きわたる無事だった対空射撃による爆発音の中、伝声管にそう叫んだ。
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空母イラストリアス
「くそ!」
この艦はもう駄目だ。
攻撃で戦闘不可状態になるのは想定していて、それを防ごうとしたが、やはり駄目だ
った。
奴らは今までの大きな海戦のようにまずは誘導弾で外周の駆逐艦を潰しに来た。
必死に誘導弾を操作する母機を撃ち落としたが、数が多すぎた。
対空砲火だけで撃ち落とすのは困難であった。
誘導弾を食らった駆逐艦、特に2個以上食らった艦はもはや黒煙を吐くだけの洋上に
浮かぶ構造物になっている。
次に標的となったのは巡洋艦。
同じように母機を墜としていったが、駆逐艦が戦闘不能となり、数の少ない巡洋艦は
すぐに火を噴いた。
航行こそしているものの、武装をまともに動かすことは出来ない。
護衛空母も空母も対空火器は大して多く無い。
思うがままに攻撃を受けた。
最初はやはり誘導弾による攻撃。
しかし、流石は我が装甲甲板。
甲板は破壊されなかった。
しかし、対空火器はピクリとも動かなくなった。
そんなところに今度は魚雷を積んだ敵攻撃機。
抵抗が出来なくなった我々に無慈悲にも攻撃を仕掛けてきた。
まるで・・・「これが戦争だ。」と言わんばかりに。
しかし、これで終わりではない。
我々は役目を全うした。
敵艦隊のヘイトを我々に集中させた。
後は・・・託すしかない。
本隊の戦艦部隊に。
「これで終わりと思うなよ・・・」
傾く船の中、衝撃による痛みを堪えながらそう呟いた。
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戦艦 大和
敵部隊が我々に接近してきている。
艦に付いている電探でも既に探知出来るほど接近されている。
このまま接近されれば敵の主砲の射程範囲に入りかねない。
航空隊も今は全力で敵機動部隊を攻撃しにいった為、ほぼお留守で期待は出来ない。
・・・我々がやらなければならない。
既に攻撃する旨は各艦に伝えている。
我が艦と、金剛型3姉妹が敵戦艦に突撃する。
それに水雷戦隊も連れていく。
超甲巡の2隻も参加する。
しかし、敵戦艦は5隻。
しかも補助艦の数でも敵の方が勝っている。
激しい砲戦となるだろう。
この戦いで敗北すれば、後方の機動部隊、更に後方、同盟軍の輸送船団、補給部隊ま
で危険に晒される。
これがもしかしたら、最初で最後の大和の対水上戦闘となるかもしれない。
既に敵艦への攻撃手段は航空機が主流である。
こんなことは2度とありえないだろう。
艦は異様とも言える雰囲気に包まれている。
恐らくこの戦闘に参加する全艦にその雰囲気はあるだろう。
最悪1時間止めれば勝ちだ。
その時には味方の攻撃隊が援護に来る。
だが、出来れば自分の手で敵艦を沈めたい。
だから時間制限は1時間だ。
それまでにやらなければならない。
既に全員覚悟を決めている。
電探からして間もなく敵艦隊と接敵する。
「始まる・・・」
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