日は沈まず

ミリタリー好きの人

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遠路

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空母 赤城

我々は長崎を出港し、各所を経由しながらスエズに到着した。

ここから先は地中海である。

太平洋からインド洋を経由、地中海を制圧し、大西洋に行く途中である。

もう既に2つの大洋を渡ってきている。

ゆくゆくは3つ目の大洋に向かうのだ。

下では手を振っている。

残念ながら言葉は分からないが歓迎してもらっているのだろう。

「何と言っているんだ?」

勿論通訳を連れてきているので通訳に聞いてみることにした。

「ほとんど我々を歓迎してくれているようです。」

「やはりそうか。」

”ほとんど”というのが気になったが、それは敢えて聞かないことにする。

「降りる準備が出来ました。」

「じゃあ、降りてみるか。」

その後我々は戦争中ながら大きな歓迎を受けて、数日補給した後地中海に向かった。

ここからは本格的な戦闘区域と言っていいだろう。

厳重警戒で進まなければならない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

空母 赤城

歓迎ムードのスエズ運河を通過し、現在はイタリアの港に向かっている途中である。

しかし、そこに到着する・・・いやここからは戦闘が終了するまで警戒しなければい
けない。

気を抜いている隙に潜水艦に襲われるなど冗談ではない。

そういった可能性がジブラルタルが陥落したとはいえ否定できないのだ。

そして、各員が警戒を続けながら今日も日の入りを迎える。

明かりが無くなった今、潜水艦がこの海域にいるとしたら狙ってくるのは今だろう。

・・・そんなの理解していない者はいない。

今日も粛々と前進を続ける。

「秋月より旗艦赤城へ、探信儀に感有り!敵潜水艦と思われる!」

無線で緒方艦長から連絡が入る。

「何?」

遂に出てきたか。

「対潜戦闘!魚雷回避運動始め!」

更に空気が重くなる。

敵潜水艦は何隻だろうか。

回避運動の揺れに耐えながら考える。

魚雷が近くを泳いでいるのか、それとも遠くを泳いでいるのか分からない。

潜水艦がいると思われる方向に駆逐艦から爆雷が投下されている。

暫くすれば撃沈出来るだろう。

それまで魚雷を回避し続ける。

照明弾で多少明るくなったとはいえ暗いがそれでも魚雷の航跡を必死に見つけ、それ
を回避する。

「面舵一杯!」

「面舵一杯!」

復唱が返ってくる。

何としても被雷は避けたい。

その一心である。

「秋月より旗艦赤城へ、敵潜水艦探知不可能。」

終わったのか?

逃げられたのか、それとも撃沈したのかは分からない。

だが戦闘は終了したということでいいだろう。

これがいつまで続くのだろうか。

これのせいで最近眠れていない。

「鬱陶しい・・・ゆっくりと休みたい。」

そう言っている者も眼が赤い。

本来な戦闘中に休むなどふざけるなと叱り飛ばすところだがそんな気力もない。

幸い今夜は被雷した艦は無しだった。

ジブラルタルは陥落したというのに、潜水艦は来る。

強硬突破しているのだろうか。

もう少し海峡をしっかり守ってもらいたいのだが。

まあ、侵入出来たのは少数だろう。

そして日が昇る。

皆疲れている。

だが、最近は生きている証明なのではないかと思えてきた。

これも疲れからだろうか・・・

その後は敵潜水艦からの襲撃は無く、敵潜水艦がいるかもしれないという考えから搭
乗員の神経をすり減らすだけで終わった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ほう、イタリアはいいなぁ~」

現在軍港から移動して、周りを見ている。

「・・・観光で来たんじゃないぞ・・・茂・・・」

「そりゃそうだがよ・・・」

「せっかく補給の間でもらった僅かな休息なんだから楽しまねぇと!」

「今のうちに休んだ方がいいんじゃないか?」

「それに今しか来れない場所かもしれないじゃないか。」

「そりゃそうなんだが・・・って待て!」

狼狽える博をおいて住民に近づいてみる。

何か言っているが何を言っているのか分からない。

「・・・何?」

「お前イタリアの言葉わかるか?」

「そんな都合良く知っている訳無いだろ・・・」

「はぁ・・・役立たず。」

「てめぇも知らないんだろ・・・」

まあ・・・そう言われると反論出来ないのだが。

「通訳がいねぇと何もわからねぇな・・・」

結局俺らは海の外では何も出来ないということしか得たことは無かった。

まあ、綺麗な景色を見れただけで良いだろう。

冥途の土産となるかもしれないが・・・

そんなことを思いながら艦に戻るのだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

参謀本部

海軍はヨーロッパで戦闘しているが、我々は同じユーラシアでもアジアで戦闘してい
る。

遂に大陸打通作戦が完了し、今は内陸への侵攻作戦が実行されようとしている。

重慶に向けて多方面から侵攻する。

援蒋ルートを断っている為これ以上の連合国からの援助は来ないだろう。

この作戦の為に、大量の平土機を動員して補給線を整備してきた。

重慶は天然の要害の為、苦しい戦いになるかもしれない。

だがこの戦いで勝利することが出来れば、国民政府は降伏するだろう。

アジアでの戦いが終わるのだ。

この戦いではほぼ全兵力を投入している。

負ける訳にはいかない。
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