日は沈まず

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解放に向けて

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駆逐艦 陽炎

我々の目標は敵輸送船団である。

本当は敵主力艦を沈めたかった。

実際、マーシャル沖海戦で我々は敵艦隊に対して夜襲を仕掛けようとしていたのだ
が、危険すぎる・十分な戦果が期待できないという理由で艦隊に中止を命じられた。

危険なのは総員承知のうえである。

しかも、我々はその戦いのために厳しい訓練を行い、十分な戦果は期待出来るだろ
う。

残念だが、上層部には逆らえない。

「・・・敵輸送船団で我慢しなければいけないか・・・」

「やはり、巨大な敵艦を沈めたかったです・・・」

「そうだよな・・・」

「まあ、命じられた命令はやらなければな。」

そして、敵輸送船団に魚雷を放つ命令を出す。

「魚雷発射!!」

8つの鋼鉄の魚が艦から飛び出す。

他の艦からも次々と鋼鉄の魚は飛び出し、魚群ができる。

その魚群は敵輸送船団に進む。

敵はその魚群を回避しようとしているが、もう既に後の祭りである。

次々と魚が敵輸送船に突撃する。

そして、水柱が上がり、大爆発を起こす。

流石、酸素魚雷といった感じである。

「流石の威力ですね!!」

「ああ。やはりこれを戦艦にぶつけたかった・・・」

艦隊決戦のための前哨戦として、重視され、完成した水雷戦重視の駆逐艦。

しかし、実際に始まってみると軍艦に対して使用されたのは初戦の戦闘とこの輸送船
団駆逐だけである。

逆に開戦前は期待している者が少なかった空母は大活躍を続けている。

「案外分からないものだな・・・戦術というものは。」

「急にどうしました?艦長。」

「艦隊決戦の前哨戦に使われるはずだったこの艦が実際にはほぼ活躍しなかったり、
 活躍を期待していなかった空母がもはや一番の主力戦力になっていることだ。」

「確かにそうですね。この艦はその空母を護衛していましたが、ほぼ対空砲火は意味
 がありませんでしたよね・・・役立たずとしてこの艦はこの艦に詰められた思想に
 よって消えてしまうのですかね?」

「おいおい。それは無いだろう・・・」

自分はそう返すのだった。

その予感が敵中することも知らずに・・・

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イギリス ロンドン

最近の対日戦線の最新情報は悪いニュースしか来ない。

最近の中で最も悪いニュースはセイロン島沖海戦である。

無敗の我がロイヤルネイビーが敗北したのだ。

・・・空母3隻などを始めとした大量の艦艇が沈められた。

初期の東洋艦隊と米海軍は油断によって沈められたと思っていた。

舐めずに襲い掛かれば全く問題なく敵艦を沈められると思っていた。

その為、日本軍を舐めないようにと呼びかけていたのだが、それだけの簡単な話では
なかった。

彼らには敵わない。

しかも、セイロン島にも日本軍が上陸し、陥落。

しかも、軍では、敵軍はそこをインド攻略と輸送船団攻撃の拠点にしてくるという噂
まである。

インドを攻略されたら我々は力を大きく失う。

その為、既に増援を送っているのだが、報告によれば無事にインドに到着した兵は少
ないとのことだった。

日本がアメリカに参戦したらアメリカが枢軸に宣戦する。

そこまでは合っていた。

しかし、そこからが問題であった。

米軍は確かに我々の援助をしてくれている。

だが、増えた対日戦線でそのプラス面以上に大損害を被っている。

我々の東洋艦隊は壊滅。

次々と我が植民地が占領されている。

我々の艦隊は奴らの馬鹿げた強さの艦隊には敵わない。

奴らの練度、兵器の性能ともに圧倒的に負けていた。

我々は攻撃することすら出来なかった。

我々はアフリカで優勢を保っている。

だが、現在アジアで勝利することは出来ない。

それどころか・・・あの艦隊がヨーロッパに来たら・・・

想像もしたくない。

本当にそんなことが起きたら我々の敗北はもはや決まったようなものである。

そんなことが無くても、敗北ばかりでは支持率が下がってしまう。

しかし、我々の海軍力全てをぶつけても勝利することは難しいだろう。

現在、東洋艦隊の司令部は移動することは出来ず占領されている。

早急に東洋艦隊の司令部を設置、再建しなければいけない。

その為、海軍では設置場所の検討がされているが、アフリカのどこかに設置されそう
である。

それを、東洋艦隊と呼べるのかは不明だが。

「早くシンガポールを返してもらわなければ・・・」

それが現状無理だと分かりながら、やはり早く戻したいと思うのだった。

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参謀本部

「速報!セイロン島陥落!」

『おお~』

一斉にその喜びが伝達した。

「次はインドだな。」

「そうだなぁ。」

そんな声が聞こえる。

しかし、自分は逆に危機感を覚える。

勿論喜ばしい出来事ではあるのだが。

あまりにも勝利が多すぎるのだ。

その為、今でも全体的に見て不利という意識が消えつつあるのだ。

自分もそれを忘れかけていることもあるのだが。

いつか、この油断で酷い目に合わないか心配である。

まあ、大丈夫だと思うが、やはり心配なのである。

昔からこの性格で、99パーセント成功するような作戦を心配したりして反感を買わ
れているのだが・・・

「なんだ・・・また心配か?」

「ああ。」

「・・・・・・少しは喜ぶことを知ったらどうなんだ?」

そんな皮肉を言って立ち去った。

「・・・少しは危機感を持てよ・・・」

そう言葉を零すのだった。
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