日は沈まず

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マーシャル沖の虐殺

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零戦隊 志賀隊長機 

ついに、我々から敵空母の艦載機が見えた。

「敵機発見!蹴散らせ!」

「上昇せよ。」

端的に言う。

あれは・・・F4FとSBDか。

彼らの主力はこれだろう。

高度有利は取れるだろう。

運動性能で劣る機に高度で負けてしまったらもはや撃墜されるだけである。

下方に必死に昇ろうとしている敵戦闘機、艦爆隊が見える。

さあ、攻撃を開始する。

「攻撃開始、油断するな。」

一斉に2倍程度の敵機に向かって降下を開始する。

体に慣れている逆Gがかかる。

敵機が近づく。

「アメ公どもの敵戦闘機を蹴散らしてやる!」

自分に言い聞かせる。

12.7ミリも同時発射もできるのだが、弾の節約のためにまずは20ミリだけで敵
機を破壊する。

まずは、敵艦爆を目標にする。

やはり敵機はSBDのようだ。

SBDの後ろに旋回で回り込む。

今度は猛烈なGがかかる。

何とか意識を保ちながら旋回を終え、20ミリの発射レバーを引く。

目の前のSBDに次々と火がつく。

そして、下には艦はいないのに急降下していく。

そして、自分は速度の上がりすぎた零戦の速度を抑えるために、再び上昇する。

そして、いつの間にか敵戦闘機に後ろにつかれていた。

12.7ミリ機銃を喰らう。

しかし、防弾装備が12.7ミリ機銃を通さなかった。

「油断するなと言いながら自分も油断していたのか・・・」

そして、一転して上昇する力がなくなったそのF4Fを追いかける。

待て、逃げるな。

距離がある程度ある為、今度は弾道が落ちにくい12.7ミリを放つ。

20ミリ程の破壊力はないが、それでも中央部。つまり、搭乗員が乗っている部分を
撃たれたら、あの硬い戦闘機も、堪らないようだ。

中央部が僅かに紅くなって見える。

危なかった。

防弾装備が無ければ立場は逆だった可能性も十分に考えられる。

しかし、それをゆっくりと考えさせてくれる時間はないようだ。

敵機は既にかなりの数が落ちているが全て落とさなければいけない。

「敵機を落とさなければ。」

まだまだ、倒し足りない。

「かかって来いよアメ公。」

そんな言葉に引き寄せられたのかはわからないが次の敵機が来る。

来たか。

同じように落としてやるよ。

さっさと味方のところに行くんだな。

そんなことを考えながら次の敵機と接敵する。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空母赤城 艦橋

「現在確認できた被撃墜機は6機とのことです。」

「そうか。」

「そして、被弾機は37機とのことです。」

未確認の機を含めればもう少し多いだろうが、犠牲はかなり少ない。

犠牲が少ないに越したことはない。

「しかも、ほとんどの敵機を撃墜。残った敵機も撃退出来ました。」

「それは良かった。」

上手くいき過ぎているような気がする。

勿論これは十分な戦果である。

しかし、上手くいき過ぎて逆に不吉である。

しかし、そのことをゆっくり考える時間は残念ながらない。

しょうがない。

戦闘中なのだから。

まあ、これは制空隊が活躍したということでいいだろう。

そして、攻撃隊を発艦準備をさせていたその時。

「敵編隊を発見!」

「なに?制空隊は?」

「この編隊は迂回してきたようで、制空隊を素通りしている模様です。」

「翔鶴と瑞鶴の待機させている迎撃隊を早急に発艦させる。」

「翔鶴、瑞鶴に告ぐ。待機させている迎撃隊を発艦させろ。」

艦隊放送で発艦命令を出す。

「攻撃隊は定刻通り発艦させる。」

絶対に敵攻撃隊を迎撃しなければいけない。

攻撃隊を迎撃出来なかったら艦隊に危険が迫る。

空母に一発の爆弾が命中しただけでも空母はただの武装を持たない大きな艦になって
しまう。

そのため必ず迎撃は成功させなければいけない。

迎撃隊が発艦するのが見える。

「一機も逃さず迎撃してくれよ。」

「小沢長官。攻撃隊発艦ですが、恐らく到着ごろでは日が沈んでおり、有効な攻撃が
 出来ないと思われます。発艦を明日に延期するべきではありませんか?」

「う~む。」

「攻撃隊は明日発艦にするか・・・」

「攻撃隊に告ぐ発艦中止。」

発艦準備を進めていて発艦の命令が来ると思っていた搭乗員、整備士は唖然とする。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空母ヨークタウン

我々は多大な犠牲を出してしまった。

「残存機から報告です。ほぼすべての味方機が撃墜され、生き残った味方機も飛行す
 るのがやっととのことです。」

報告を聞いて驚いた。

我々の作戦では、中央では、攻撃隊を敵戦闘機から我々の護衛の戦闘機で守り、さら
に一部の攻撃隊は左右から回り込み、同時に敵連合艦隊を攻撃する予定だった。

しかし、中央では敵戦闘機から守るどころか、護衛共々撃墜されてしまったようだ。

損失機は200機を超える。

頭がとても痛い。

しかも、奴らを撃墜することはほぼ出来なかった。

報告によれば10機も撃墜できなかったようだ。

キルレシオは1:20以下である。

もはや一方的な虐殺である。

しかし、もうそれを取り返すことは出来ない。

幸い、敵はまだ左右の編隊に気付いていないと推測される。

この編隊に攻撃開始を通達しなければ。

例え200機を失ったとしても、敵空母を撃沈出来ればそれでいい。

そんなことを考える。

実際敵空母を沈めることが出来れば我々の勝利だろう。

「味方の仇をとれ。」

その言葉とともに攻撃隊に敵連合艦隊への攻撃を命じるのだった。
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