上 下
17 / 21
狐の花嫁

認めて堕ちる

しおりを挟む
「婚姻年齢には達してるから、ゆかりちゃんが捕まることはありません」
「そういう問題じゃねえ!」
「じゃ、どういう問題?」
「……う」

 じっと見つめられて困惑する。

「ねえ、なにが問題?」
「や、だから……付き合ってねえし……いきなりとか」
「ダメ? オレはゆかりちゃんが好きだよ。だから、抱きたい。いい機会だと思ったんだ。神事だけじゃなくて、ほんとに結婚したい」
「おれは……」
「ゆかりちゃんも、オレのこと好きでしょ?」
「決めつけるな!」
「違うの?」

 ああ、もう、捨てられた子犬みたいな目で、おれを見るな!
 だから、お前が『花婿』だって聞いたときに、これはヤバいって思ったんだよ!
 既婚者だったころからかわいいと思ってました!
 でもお互いに男だし!
 おれは既婚者だからって、自分で自分にストップかけてました!

「……違わない」
「じゃあ、問題ないよね」

 恐ろしく嬉しそうで、びっくりするほどにきれいな笑顔を見せられた。
 ああ、はい。
 悪あがきしてすいませんでした。
 認めます。
 ホントは、おれも、この年下の男に懐かれて、ほだされていました。

 着物エッチって、実はめっちゃエロいんじゃね? なんてことをのんきに考えていられたのは、キスまで。

「すごいね、この着物……誘ってる?」
「誘ってねえわ……女物だからだろ……ンん……あ、ちょ、まて……あァ、あ……」
「ゆかりちゃん……かわい……」

 おれはホントは自分の名前が好きじゃない。
 よく女の子と間違えられるし、読み間違いも多いし。
 チビのころ、ここで会った誰かに『ゆかりとはえにしよ。お前によく似合う』そう言われてからは少しだけ好きになったけど、基本的にはあんまり人に下の名前では呼ばせない。
 家族と、チビのころから知っている人たちは『ゆかち』と呼ぶ。
 あとは元嫁含めて『縁くん』だった。
 『ゆかりちゃん』だなんて、かわいく呼ぶのは……呼ぶことを許したのは、こいつだけ。
 身長はそう変わらないのに、年齢の割にしっかりとした体つきの慎也は、おれを抱え上げて部屋を移る。 
 本殿の奥にある、それ用に整えられた部屋。
 大きな白い布団が引かれている。
 本殿で重たい着物やら被り物を脱ぎ去って、一番下の白い着物になって連れていかれた。
 布団に下ろされるとき、慎也の向こうにふさふさと影が走った。

「ゆかりちゃん?」
「初夜はいいけど、風呂ぐらい入らせろ……こんだけ準備されてるんだ、あるんだろ?」
「後じゃダメ?」
「エッチするにはそれなりのマナーってもんがあるだろうよ、童貞小僧」

 苦し紛れにそう言ってやったら、慎也の目つきが変わった。

「童貞だけど、イメトレはばっちりだからね」

 はい、すいませんでした。
 

++++++++++

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

匂いがいい俺の日常

とうふ
BL
高校1年になった俺の悩みは 匂いがいいこと。 今日も兄弟、同級生、先生etcに匂いを嗅がれて引っ付かれてしまう。やめろ。嗅ぐな。離れろ。

君を独占したい。

檮木 蓮
BL
性奴隷として売られたユト 売られる前は、平凡な日を送っていたが 父の倒産をきっかけに人生が 変わった。 そんな、ユトを買ったのは…。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...