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7 野をひらく鍵
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「まあ、ひつきは女や、いう話やから『氣吹戸主』以外の、『瀬織津比売』『速開津比売』『速佐須良比売』のどれかやないかなあ」
「冨田さん、そんなのじゃ説明になってませんよぉ。前のお二人だって全然わかってません。だいたい何する神様なのか? とか、そおいう基本的なところからお願いします」
「お、おおそうか。すまんすまん……。大祓はな、元々罪穢れを祓う時に唱うるもんや。そやから、これらの神さんは人々の犯した罪や穢れを祓う神さんということになる」
冨田は、もったいぶった仕草で腕組みした。
「まあ、『禊』や『祓』というのは、直観神理の重要なテーマや。昔から合宿もそのためにやっとる。祓戸の大神は、お祀りするのにちょうどええと思うたのと違うかな」
「いやでも、それだとひつきは別に、良い神様ってことになるじゃありませんか? その……」
守は多少迷った末、言ってしまうことにする。
「ひつきのおかげで、死んだ人もいるみたいなんですよ。怒らせるか何かすると、ヤバいんじゃないんですか?」
小人達も確か、〝ヤバい〝と言っていたことを、守は思い出していた。
「『良い神様』て、神さんにええも悪いもないで。君はそこを勘違いしとる」
「でも、祟ったりだとか何だとかあるんでしょう?」
「そら、記紀やらよその国の神話やら読んどっても、神さんが怒らはったり嬉しがったりする時はある。機嫌がええ時も悪い時もあるけど、それは別に善悪とは関係がない」
納得がいかない様子の守を見て、
「まあ、ひつきに関して言えばな、あんまり感情いうもんがないらしいんやな、記録によると。なんちゅうか、性格はちいちゃい子供みたいなもんらしい。人形遊びが好きやった、とかも書いてある。祟った、とは書かれてへん」
と、冨田が付け足す。
記録があるんですか? とすかさず、須軽が興味深げに訊ねた。
「ああ、ああー」
冨田は素直な性格らしく、露骨に弱った、という顔をする。どうにも憎めない老人であった。
「いやまあ、そのな。あるいうたらあるんやが。あんまり外部の人にはお見せできん。そういう決まりになっとるさかいな。それに、全部がきれーいに残っとるというわけでもないんや。ウン。断片的にしかないから、見てもそんなにおもろいもんでも……」
「いえ、別に見せていただかなくても結構なんです」
しどろもどろになっている冨田に対し、須軽がにこやかに話しかける。彼にとってみれば、小人達に動いてもらえれば、見たいと思えば簡単に見ることが出来るのだ。
「ただ、冨田さんはもちろん、その記録を読んだことがおありなんでしょうから、さしさわりのない部分だけでも教えてもらえたら、と思って」
「そうはいうてもなあ、ひつきとウチの関連というか、そのへんの話というのは全部がさしさわりみたいな部分もあってなあ……。まあええわ。昔のことやしな。時効や。時効」
冨田はしばらくぐずついていたが、開き直ったように話し始めた。
「冨田さん、口軽すぎて、ちょっと見ててヒヤヒヤしますねえ」
未夜の、のんきそうな声が後ろから聞こえる。振り返ってみるとヘラヘラ笑っていた。
「ええんやええんや。これから先、ここもどうなるかわからん」
冨田はヤケクソのように言って、話を進める。
「冨田さん、そんなのじゃ説明になってませんよぉ。前のお二人だって全然わかってません。だいたい何する神様なのか? とか、そおいう基本的なところからお願いします」
「お、おおそうか。すまんすまん……。大祓はな、元々罪穢れを祓う時に唱うるもんや。そやから、これらの神さんは人々の犯した罪や穢れを祓う神さんということになる」
冨田は、もったいぶった仕草で腕組みした。
「まあ、『禊』や『祓』というのは、直観神理の重要なテーマや。昔から合宿もそのためにやっとる。祓戸の大神は、お祀りするのにちょうどええと思うたのと違うかな」
「いやでも、それだとひつきは別に、良い神様ってことになるじゃありませんか? その……」
守は多少迷った末、言ってしまうことにする。
「ひつきのおかげで、死んだ人もいるみたいなんですよ。怒らせるか何かすると、ヤバいんじゃないんですか?」
小人達も確か、〝ヤバい〝と言っていたことを、守は思い出していた。
「『良い神様』て、神さんにええも悪いもないで。君はそこを勘違いしとる」
「でも、祟ったりだとか何だとかあるんでしょう?」
「そら、記紀やらよその国の神話やら読んどっても、神さんが怒らはったり嬉しがったりする時はある。機嫌がええ時も悪い時もあるけど、それは別に善悪とは関係がない」
納得がいかない様子の守を見て、
「まあ、ひつきに関して言えばな、あんまり感情いうもんがないらしいんやな、記録によると。なんちゅうか、性格はちいちゃい子供みたいなもんらしい。人形遊びが好きやった、とかも書いてある。祟った、とは書かれてへん」
と、冨田が付け足す。
記録があるんですか? とすかさず、須軽が興味深げに訊ねた。
「ああ、ああー」
冨田は素直な性格らしく、露骨に弱った、という顔をする。どうにも憎めない老人であった。
「いやまあ、そのな。あるいうたらあるんやが。あんまり外部の人にはお見せできん。そういう決まりになっとるさかいな。それに、全部がきれーいに残っとるというわけでもないんや。ウン。断片的にしかないから、見てもそんなにおもろいもんでも……」
「いえ、別に見せていただかなくても結構なんです」
しどろもどろになっている冨田に対し、須軽がにこやかに話しかける。彼にとってみれば、小人達に動いてもらえれば、見たいと思えば簡単に見ることが出来るのだ。
「ただ、冨田さんはもちろん、その記録を読んだことがおありなんでしょうから、さしさわりのない部分だけでも教えてもらえたら、と思って」
「そうはいうてもなあ、ひつきとウチの関連というか、そのへんの話というのは全部がさしさわりみたいな部分もあってなあ……。まあええわ。昔のことやしな。時効や。時効」
冨田はしばらくぐずついていたが、開き直ったように話し始めた。
「冨田さん、口軽すぎて、ちょっと見ててヒヤヒヤしますねえ」
未夜の、のんきそうな声が後ろから聞こえる。振り返ってみるとヘラヘラ笑っていた。
「ええんやええんや。これから先、ここもどうなるかわからん」
冨田はヤケクソのように言って、話を進める。
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