空想宵闇あやかし奇譚 ♢道化の王♢

八花月

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5-016 神様の死体

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「僕の父も、それに一枚噛んでたってことですか?」

未夜は、そおです、と返事をしてこっくり頷いた。そんなしょうもないものに関わって親父は死んだのか、と内心忸怩たるものがあったが、守の中でどこか安心した部分もある。

あの父が、よりによって宗教なんかにハマっていた、いうことをどうしても信じたくなかったのだ。

しかし断定はまだできないが、良い儲け話になりそうだ、と思って飛び付いたのなら、まだ気持ちはわからないではない。

「しかし、LCCの会員さんの中で、なんで特に僕の家が調査の対象にならなきゃいけなかったんです?」

「宗州さんは、メッチャクチャ関係深いんですよ。守お兄さんの家で地下室が見つかったってさっき仰ってたでしょ?  棺桶みたいのがあった、とか……。それが原因ですよ。ついでに言うと、お姉ちゃんのお仕事の中には、それを探すことも入ってました。公調の人達は詳しくは知りませんでしたが、古谷の家に何か佐一の欲しがるものがあるらしい、ってことまではおぼろげながらわかってましたからね」

と、未夜は言った。

「……いや、しかしそれでは話がおかしくなりませんか?」

須軽が、注意深く口を入れる。

「状況から考えて、三浦さんと古谷宗州さんは、おそらく〝それ〟をあの家から持ち出そうとして亡くなったのだと思われます。すると三浦さんは古谷宗州さんから、それの話を聞いていた、ってことになる。あなたと志摩さんは、三浦さんからその報告を受けてなかったんですか?」

受けてませんねえ、と眉を上げ、未夜はお手上げのポーズを取った。

「ミカドのおじさんは、元々スタンドプレーになりがちな人ではありましたが、今回ばかりは佐一のやろうとしていることに、入れ込み過ぎたってことでしょう。『今回』が最後になってしまいましたが」

「ねえ、〝それ〟って何なんです?」

守はとうとう堪え切れなくなる。須軽や小人達から、どうやらそれは〝神様的なもの〟であるらしいという説明は受けていたが、到底これだけで納得のいくものではない。

「僕の家にあった物のことを、あなたに聞くのは筋違いだとは思うんですが、本当に知らないんです。もし何か知ってるなら教えてもらえませんか?」

あまりに率直に訊ねる守に少し驚いたようで、未夜の瞳が丸みを帯びた。

「あたしにも確信はありませんがね」
と間を置いて未夜がゆっくり話し始める。

「多少認識に誤りがあるかもしれませんが、あれは、神様の死体のようなものだという話です」
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