34 / 124
4 たがいのなかに
4-008
しおりを挟む
「……そんな慌てないで。何もしないから。ね? コワクナイヨー」
先頭の小人が手を振っている。彼は紫微という名前であるらしい。守は結局、須軽になだめすかされ部屋に戻っていた。
「何の原因もなく、私達の方から人間に危害を加えたことはありません。安心してください」
すぐ後ろの、老いた小人も安心させるように両手を広げて言う。彼は、輔星。もう一人の小人は輿鬼という名だと説明された。
「まあ、本当に基本的には害はない奴らですから、安心してください」
約十分後、部屋に戻ってきた守は須軽その他に説明を受けていた。話を聞いて、小人達については一応納得していたのだが、すんなりと全てを受け入れることは出来ない。
「で、これは今回の事になんの関係があるんですか?」
守は、ついさっきも言ったような台詞をもう一度繰り返した。
「直接は関係ないんですが、知っておいてもらったほうが話が通りやすくなるんです。その……こういう存在のことを」
須軽は、言葉のみで目の前の小人達を示す。
「すると……今回の事件は、こういう……存在が関わってるんですか?」
本人達を前にして、“妖怪”とか“お化け”というのは憚られる。守は迷った末、須軽と同じ言い方を選んだ。
「わしらとはかなり違いますぞ」
「うん。そうそう。俺らと違って、この家に居たのは、もっとヤバい感じのヤツ」
老小人と紫微が揃って口を挟む。
「ヤバい?」
「うんそう。あんたらの言い方でいうと神様的なの」
紫微が屈託なく返事をした。
「その、それってまだこの家に?」
「いえ……それは大丈夫っぽいんですが、許可をいただければ確かめてみます」
少し考えながら、須軽が返事をする。そんなわけのわからないものが、この家に居たのか。
守は、我知らず身震いしてしまう。是非お願いします、と守が言うと、じゃあ、と軽く応えて須軽は立ちあがり、そのまま階段に向かった。
「どこに行くんです? 下ですか?」
ええ。一緒に来ますか? と問う須軽に、守はブンブンと首を縦に振って肯定する。何が起こっているのか知りたい気もするし、何より部屋に一人で残るのが嫌だ。
小人達は、自分達のみでさっさと目的地に行ってしまったらしく、もう姿が見えなかった。恐ろしいほどのスピードである。
まぶたに塗った薬のおかげで、今は守も見ることが出来るが、素早く動かれたらはっきり視認するのは難しい。
やがて二人は一階まで降りた。
「ええーっと、車庫と直結してる部屋があるんですよね?」
いきなり振り返って、須軽が訊ねる。守が場所を教えると、礼を言って須軽はさっさと歩き始めた。いかにも、勝手知ったる、という感じである。
軽い違和感を覚えながら守がついていくと、須軽は教えられた部屋の戸をパッと開けて中へ入った。
どうやって入ったのか、中には既に小人達が待機している。
先頭の小人が手を振っている。彼は紫微という名前であるらしい。守は結局、須軽になだめすかされ部屋に戻っていた。
「何の原因もなく、私達の方から人間に危害を加えたことはありません。安心してください」
すぐ後ろの、老いた小人も安心させるように両手を広げて言う。彼は、輔星。もう一人の小人は輿鬼という名だと説明された。
「まあ、本当に基本的には害はない奴らですから、安心してください」
約十分後、部屋に戻ってきた守は須軽その他に説明を受けていた。話を聞いて、小人達については一応納得していたのだが、すんなりと全てを受け入れることは出来ない。
「で、これは今回の事になんの関係があるんですか?」
守は、ついさっきも言ったような台詞をもう一度繰り返した。
「直接は関係ないんですが、知っておいてもらったほうが話が通りやすくなるんです。その……こういう存在のことを」
須軽は、言葉のみで目の前の小人達を示す。
「すると……今回の事件は、こういう……存在が関わってるんですか?」
本人達を前にして、“妖怪”とか“お化け”というのは憚られる。守は迷った末、須軽と同じ言い方を選んだ。
「わしらとはかなり違いますぞ」
「うん。そうそう。俺らと違って、この家に居たのは、もっとヤバい感じのヤツ」
老小人と紫微が揃って口を挟む。
「ヤバい?」
「うんそう。あんたらの言い方でいうと神様的なの」
紫微が屈託なく返事をした。
「その、それってまだこの家に?」
「いえ……それは大丈夫っぽいんですが、許可をいただければ確かめてみます」
少し考えながら、須軽が返事をする。そんなわけのわからないものが、この家に居たのか。
守は、我知らず身震いしてしまう。是非お願いします、と守が言うと、じゃあ、と軽く応えて須軽は立ちあがり、そのまま階段に向かった。
「どこに行くんです? 下ですか?」
ええ。一緒に来ますか? と問う須軽に、守はブンブンと首を縦に振って肯定する。何が起こっているのか知りたい気もするし、何より部屋に一人で残るのが嫌だ。
小人達は、自分達のみでさっさと目的地に行ってしまったらしく、もう姿が見えなかった。恐ろしいほどのスピードである。
まぶたに塗った薬のおかげで、今は守も見ることが出来るが、素早く動かれたらはっきり視認するのは難しい。
やがて二人は一階まで降りた。
「ええーっと、車庫と直結してる部屋があるんですよね?」
いきなり振り返って、須軽が訊ねる。守が場所を教えると、礼を言って須軽はさっさと歩き始めた。いかにも、勝手知ったる、という感じである。
軽い違和感を覚えながら守がついていくと、須軽は教えられた部屋の戸をパッと開けて中へ入った。
どうやって入ったのか、中には既に小人達が待機している。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
182年の人生
山碕田鶴
ホラー
1913年。軍の諜報活動を支援する貿易商シキは暗殺されたはずだった。他人の肉体を乗っ取り魂を存続させる能力に目覚めたシキは、死神に追われながら永遠を生き始める。
人間としてこの世に生まれ来る死神カイと、アンドロイド・イオンを「魂の器」とすべく開発するシキ。
二人の幾度もの人生が交差する、シキ182年の記録。
(表紙絵/山碕田鶴)
※2024年11月〜 加筆修正の改稿工事中です。本日「60」まで済。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
蛇に祈りを捧げたら。
碧野葉菜
キャラ文芸
願いを一つ叶える代わりに人間の寿命をいただきながら生きている神と呼ばれる存在たち。その一人の蛇神、蛇珀(じゃはく)は大の人間嫌いで毎度必要以上に寿命を取り立てていた。今日も標的を決め人間界に降り立つ蛇珀だったが、今回の相手はいつもと少し違っていて…?
神と人との理に抗いながら求め合う二人の行く末は?
人間嫌いであった蛇神が一人の少女に恋をし、上流神(じょうりゅうしん)となるまでの物語。
十二支vs十二星座
ビッグバン
キャラ文芸
東洋と西洋、場所や司る物は違えど同じ12の物を司る獣や物の神達。普通なら会うはずの彼等だが年に一度、お互いの代表する地域の繁栄を決める為、年に一度12月31日の大晦日に戦い会うのだ。勝負に勝ち、繁栄するのは東洋か、それとも西洋か
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
逢魔ヶ刻の迷い子3
naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。
夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。
「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」
陽介の何気ないメッセージから始まった異変。
深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして——
「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。
彼は、次元の違う同じ場所にいる。
現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。
六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。
七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。
恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。
「境界が開かれた時、もう戻れない——。」
祇園あやかし茶屋〜九尾の狐が相談のります〜
菰野るり
キャラ文芸
京都の最強縁切り〝安井金比羅宮〟には今日も悩める人々が訪れる。
切るも縁、繋ぐも縁。
祇園甲部歌舞練場と神社の間の小さな通りにある茶屋〝烏滸〟では、女子高生のバイト塔子(本当はオーナー)と九尾の狐(引き篭もりニート)の吹雪が、縁切りを躊躇い〝安井金比羅神社〟に辿り着けない悩める人間たちの相談にのってます。
※前日譚は〜京都あやかし花嫁語り〜になりますが、テイストがかなり異なります。純粋にこちらを楽しみたい場合、前日譚を読む必要はありません‼︎
こちらだけ読んでも楽しんでいただけるように書いていくつもりです。吹雪と塔子と悩める人々、それから多彩なあやかしが織りなす現代ファンタジーをお楽しみいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる