6 / 8
06
しおりを挟む
『説明、説明しなきゃ……』
混乱した頭の中に同じフレーズがリフレインする。しかし僕の足は止まらない。
僕は頭を抱え地面に蹲ってしまった。
「駄目だ!」
僕は思い直した。諦めてはいけない。足に力を入れ思い切り踏みしめる。
立ち上がるんだ!
足を一歩前に出し、立ち上がりつつ振り返ろうとして体勢を崩す。
あるべきところに地面がない!
しまった、と思い足を引こうと思ったがもう遅い。
僕はつんのめり思い切り額を打ちつけた……かと思ったのだがそうもならなかった。
『え、なんだこれ』
頭が幾重にもかさなった笹を抜けると、眼前には吸い込まれそうな闇が浮かび上がる。
助けてくれ!
僕はぽっかりと空いた青空に向かって手を伸ばした。まだ足元には何も触れない。
僕は落下しているのだ。
穴の壁面を触ろうと思った。必死に手をバタつかせるが何にも触れない。
僕は気づいたら、咽頭を大きく開き体内の中空を震わせながら絶叫していた。
怖い。
死の恐怖ではない。
もっと正体不明の宇宙的とも云うべき恐怖だった。
再び手を伸ばすが笹の根っこも掴めない。
落下しながら考えた。いくらなんでもこの穴は深すぎる。
『もしかするとこれはもしかしてもすかすて』
これは異界に通ずる穴では?!
それなら儲けものだ。俺はそもそもそのために来たんだ。
落下の果ての死のことなど考えもせず俺は心のトキメキに身をまかせた。
これからどんなところに行くのだろう?
もう警察やら青年団のことやら考えなくてもいいんだ。もうそんなことの関係ない世界に行くのだ。
俺は幸運だ。
ああ、ああ……
俺は目を瞑った。感極まって内臓が下に引っ張られる。意識が遠のく……。
混乱した頭の中に同じフレーズがリフレインする。しかし僕の足は止まらない。
僕は頭を抱え地面に蹲ってしまった。
「駄目だ!」
僕は思い直した。諦めてはいけない。足に力を入れ思い切り踏みしめる。
立ち上がるんだ!
足を一歩前に出し、立ち上がりつつ振り返ろうとして体勢を崩す。
あるべきところに地面がない!
しまった、と思い足を引こうと思ったがもう遅い。
僕はつんのめり思い切り額を打ちつけた……かと思ったのだがそうもならなかった。
『え、なんだこれ』
頭が幾重にもかさなった笹を抜けると、眼前には吸い込まれそうな闇が浮かび上がる。
助けてくれ!
僕はぽっかりと空いた青空に向かって手を伸ばした。まだ足元には何も触れない。
僕は落下しているのだ。
穴の壁面を触ろうと思った。必死に手をバタつかせるが何にも触れない。
僕は気づいたら、咽頭を大きく開き体内の中空を震わせながら絶叫していた。
怖い。
死の恐怖ではない。
もっと正体不明の宇宙的とも云うべき恐怖だった。
再び手を伸ばすが笹の根っこも掴めない。
落下しながら考えた。いくらなんでもこの穴は深すぎる。
『もしかするとこれはもしかしてもすかすて』
これは異界に通ずる穴では?!
それなら儲けものだ。俺はそもそもそのために来たんだ。
落下の果ての死のことなど考えもせず俺は心のトキメキに身をまかせた。
これからどんなところに行くのだろう?
もう警察やら青年団のことやら考えなくてもいいんだ。もうそんなことの関係ない世界に行くのだ。
俺は幸運だ。
ああ、ああ……
俺は目を瞑った。感極まって内臓が下に引っ張られる。意識が遠のく……。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
#彼女を探して・・・
杉 孝子
ホラー
佳苗はある日、SNSで不気味なハッシュタグ『#彼女を探して』という投稿を偶然見かける。それは、特定の人物を探していると思われたが、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。日が経つにつれて、そのタグの投稿が急増しSNS上では都市伝説の話も出始めていた。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
矛盾のAI話
月歌(ツキウタ)
ホラー
500文字以内のAIが作った矛盾話です。AIが作ったので、矛盾の意図は分かりませんw
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
ゾンビばばぁとその息子
歌あそべ
ホラー
呼吸困難で倒れ今日明日の命と言われたのに、恐るべき生命力で回復したばあさんと同居することになった息子夫婦。
生まれてこのかたこの母親の世話になった記憶がない息子と鬼母の物語。
鬼母はゾンビだったのか?
感染した世界で~Second of Life's~
霧雨羽加賀
ホラー
世界は半ば終わりをつげ、希望という言葉がこの世からなくなりつつある世界で、いまだ希望を持ち続け戦っている人間たちがいた。
物資は底をつき、感染者のはびこる世の中、しかし抵抗はやめない。
それの彼、彼女らによる、感染した世界で~終わりの始まり~から一年がたった物語......
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる