79 / 96
19.胡乱な客
010
しおりを挟む
「いやー、よかったよかった。これでワシらも肩の荷が降りましたにゃー」
上古はもう、何もかも終わったような顔をして、ほっこりしている。
「言っとくけどあたしはあくまで話し合いに行く気だからね? ケンカとかする気ないから」
「あんまり……そういう穏やかな会見にはならんと思いますがにゃ」
「ま、そん時はあんたら希望通りになるかもね」
上古は、どっこいしょ、と勢いをつけて文字通り重そうな腰を上げた。もう用事は済んだのだろう。
上古が部屋を出た後も、回向は一人残って何やら乙女を見つめている。
「なんだよ」
「……いや、おぬしなら出来るかもな」
「? なんの話?」
「〝話し合い〟だ」
言った後、回向は深く思いを沈めるような息を吐いた。
「あと一つ。新早薬子は凶悪な神具を所持している。留意しておくといい」
「ちょ、ちょっと待ってよ。なんだよそれ?」
くるりと背中を向け、上古の後を追おうとしている回向を乙女は呼び止める。
「神通を引き起こす道具だ。特にあやつの物は千早ぶる神代の神威を保持している。手強いぞ」
「そんなもんどう気をつけりゃいいのさ?」
回向は少し思案し、語り始めた。
「……そうだな。薬子の持っているのは〝十種神宝〟という代物だ。その力を充分に振るおうとするなら、箱に入れて揺すりながら呪いの文句を唱える、という準備が必要らしい。薬子がそのような動作を始めたら警戒するがいい」
「あ、ああそう。まあ覚えとくよ」
乙女の応えを聞くと、回向は満足そうに頷き、待宵屋敷を去って行った。
「さて……」
雅樂はまだ寝ている。取りあえず起きるまで待とうか、と思っていると
「しょうがないわね!」
と、玄関ホールから声が聞こえてくる。
「私もついてってあげるわ。その、なんとか峠に!」
ミラが上から、すーっと現れ部屋のドアの前に降り立つ。
「あれ、あんたらまだ帰ってなかったの?」
乙女がホールの方へ目線をやりながら言うと、ミラは慌てて部屋の隅に隠れた。
上古はもう、何もかも終わったような顔をして、ほっこりしている。
「言っとくけどあたしはあくまで話し合いに行く気だからね? ケンカとかする気ないから」
「あんまり……そういう穏やかな会見にはならんと思いますがにゃ」
「ま、そん時はあんたら希望通りになるかもね」
上古は、どっこいしょ、と勢いをつけて文字通り重そうな腰を上げた。もう用事は済んだのだろう。
上古が部屋を出た後も、回向は一人残って何やら乙女を見つめている。
「なんだよ」
「……いや、おぬしなら出来るかもな」
「? なんの話?」
「〝話し合い〟だ」
言った後、回向は深く思いを沈めるような息を吐いた。
「あと一つ。新早薬子は凶悪な神具を所持している。留意しておくといい」
「ちょ、ちょっと待ってよ。なんだよそれ?」
くるりと背中を向け、上古の後を追おうとしている回向を乙女は呼び止める。
「神通を引き起こす道具だ。特にあやつの物は千早ぶる神代の神威を保持している。手強いぞ」
「そんなもんどう気をつけりゃいいのさ?」
回向は少し思案し、語り始めた。
「……そうだな。薬子の持っているのは〝十種神宝〟という代物だ。その力を充分に振るおうとするなら、箱に入れて揺すりながら呪いの文句を唱える、という準備が必要らしい。薬子がそのような動作を始めたら警戒するがいい」
「あ、ああそう。まあ覚えとくよ」
乙女の応えを聞くと、回向は満足そうに頷き、待宵屋敷を去って行った。
「さて……」
雅樂はまだ寝ている。取りあえず起きるまで待とうか、と思っていると
「しょうがないわね!」
と、玄関ホールから声が聞こえてくる。
「私もついてってあげるわ。その、なんとか峠に!」
ミラが上から、すーっと現れ部屋のドアの前に降り立つ。
「あれ、あんたらまだ帰ってなかったの?」
乙女がホールの方へ目線をやりながら言うと、ミラは慌てて部屋の隅に隠れた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

~時薙ぎ~ 異世界に飛ばされたレベル0《SystemError》の少女
にせぽに~
ファンタジー
何処にでもいそう………でいない女子高校生「公塚 蓮」《きみづか れん》
家族を亡くし、唯一の肉親のお爺ちゃんに育てられた私は、ある日突然剣と魔法が支配する異世界
【エルシェーダ】に飛ばされる。
そこで出会った少女に何とプロポーズされ!?
しかもレベル?ステータス?………だけど私はレベル・ステータスALLゼロ《システムエラー》!?
前途多難な旅立ちの私に、濃いめのキャラをした女の子達が集まって………
小説家になろうで先行連載中です
https://ncode.syosetu.com/n1658gu/
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる