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16.激突
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「え? 何? 結局わかんなかったの?」
「わかんなかったっつーかさ、特になんもなかったって言ってた」
乙女が言うと、画面越しの水前寺一姫は眉間に皺を寄せため息をついた。
今日は仕事終わった後、松良屋にPC持って行って色々作業したんだから、こっちも疲れてんだぞ、と乙女は心の中で毒づく。
「なるほど……でも、幽霊は確かにいるんでしょう?」
「まあいるんだけど……。ちょっと最初思ってたのとは違うかも」
「はっきりしないわね」
一姫は苛々している。
「本業の探偵かなんか雇って、本格的に調べてみたら? その、あんたがいる待宵屋敷のこと」
うーん、と唸り、乙女は頭の中で一姫の意見を検討してみる。
「でもなー。SNOWのやつら、結構張り切って調べてくれたんだよなー……さすがに直接斧馬には来てくんなかったけど、少なくとも記録の上では西城寺家でも、待宵屋敷でも怪しい出来事は無いっつってたよ。殺人事件とか」
「SNOWか……」
一姫は不愉快そうに舌打ちした。
「……まあ、あの娘達なんか変に調査能力が高いって言われてるもんね。業界内ではただの中堅アイドルなのに。普通の探偵とかじゃ、これ以上調べても何も出てこないか……」
『そりゃ、元々SNOWは丁と十子が、それだけのためにAcCord内に作ったチームだからな』
と、乙女は心中で独言した。今は組んでいるとはいえ、一姫の性格を考えたらさすがにこの事実を伝えるのは躊躇われる。
「それじゃあ……」
一姫が口を開いた瞬間、乙女のノートPCの電源がプツン、と落ちた。
「?」
見てみると、ノートPCの電源コードが抜けている。乙女がもう一度ケーブルを挿そうと手を伸ばすと、するすると向こうに逃げていった。
「なんだ? ミラか?」
乙女が言うと、すうっと空中にミラの姿が現れる。
「何してんだよも~……。今ちょっと用事があるんだ。悪戯しないで」
ケーブルを奪い取ろうとするが、ミラは迫る乙女の手を避け、身をひるがえした。
「なあ、頼むよ~。後で遊んでやるからさ~」
「ねぇ、今私の話してたんでしょ?」
「ああ、うん。これ遠くのやつと話が出来る機械で……」
「知ってる」
ミラは冷たく言い放つ。
「仲良いみたいね」
「えっ?」
「さっき、その機械越しに話してた人」
「ああ、まあ……ダチだよ」
ふうん、と言ってミラは持っているケーブルを投げ縄のように振り回した。
「友達いっぱいいるのね。昨日来てた二人とも楽しそうにしてたし」
「そうかあ?」
乙女としては素直な気持ちで疑問の声を上げたのだが、ミラはそう受け取らなかったらしく、ブスっとした顔でケーブルをブンブン回している。
「あの二人は市役所の人だよ。仕事で関わってる人だし、邪険にするわけにもいかないでしょ? ……って昨日も言ったじゃん」
ミラは返事をしない。
『なんだこれ? もしかして嫉妬してんのか?』
乙女はミラの様子を見ていて、やっとその可能性に行き当たった。
「わかんなかったっつーかさ、特になんもなかったって言ってた」
乙女が言うと、画面越しの水前寺一姫は眉間に皺を寄せため息をついた。
今日は仕事終わった後、松良屋にPC持って行って色々作業したんだから、こっちも疲れてんだぞ、と乙女は心の中で毒づく。
「なるほど……でも、幽霊は確かにいるんでしょう?」
「まあいるんだけど……。ちょっと最初思ってたのとは違うかも」
「はっきりしないわね」
一姫は苛々している。
「本業の探偵かなんか雇って、本格的に調べてみたら? その、あんたがいる待宵屋敷のこと」
うーん、と唸り、乙女は頭の中で一姫の意見を検討してみる。
「でもなー。SNOWのやつら、結構張り切って調べてくれたんだよなー……さすがに直接斧馬には来てくんなかったけど、少なくとも記録の上では西城寺家でも、待宵屋敷でも怪しい出来事は無いっつってたよ。殺人事件とか」
「SNOWか……」
一姫は不愉快そうに舌打ちした。
「……まあ、あの娘達なんか変に調査能力が高いって言われてるもんね。業界内ではただの中堅アイドルなのに。普通の探偵とかじゃ、これ以上調べても何も出てこないか……」
『そりゃ、元々SNOWは丁と十子が、それだけのためにAcCord内に作ったチームだからな』
と、乙女は心中で独言した。今は組んでいるとはいえ、一姫の性格を考えたらさすがにこの事実を伝えるのは躊躇われる。
「それじゃあ……」
一姫が口を開いた瞬間、乙女のノートPCの電源がプツン、と落ちた。
「?」
見てみると、ノートPCの電源コードが抜けている。乙女がもう一度ケーブルを挿そうと手を伸ばすと、するすると向こうに逃げていった。
「なんだ? ミラか?」
乙女が言うと、すうっと空中にミラの姿が現れる。
「何してんだよも~……。今ちょっと用事があるんだ。悪戯しないで」
ケーブルを奪い取ろうとするが、ミラは迫る乙女の手を避け、身をひるがえした。
「なあ、頼むよ~。後で遊んでやるからさ~」
「ねぇ、今私の話してたんでしょ?」
「ああ、うん。これ遠くのやつと話が出来る機械で……」
「知ってる」
ミラは冷たく言い放つ。
「仲良いみたいね」
「えっ?」
「さっき、その機械越しに話してた人」
「ああ、まあ……ダチだよ」
ふうん、と言ってミラは持っているケーブルを投げ縄のように振り回した。
「友達いっぱいいるのね。昨日来てた二人とも楽しそうにしてたし」
「そうかあ?」
乙女としては素直な気持ちで疑問の声を上げたのだが、ミラはそう受け取らなかったらしく、ブスっとした顔でケーブルをブンブン回している。
「あの二人は市役所の人だよ。仕事で関わってる人だし、邪険にするわけにもいかないでしょ? ……って昨日も言ったじゃん」
ミラは返事をしない。
『なんだこれ? もしかして嫉妬してんのか?』
乙女はミラの様子を見ていて、やっとその可能性に行き当たった。
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