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8.リフォーム作業
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一通りの道具と、取りあえずの材料が揃ったのは、乙女が初めて待宵屋敷に来た日から、少し経ってからのことであった。
「ひとまずこれだけあれば、始められると思います。また何か足りない物とか欲しい物が出てきたら言ってください」
「うん、ありがとね。マジで助かったよ」
乙女は殊のほか素直に感謝の意を伝える。
萩森は作業に必要な工具、材料の買い出しのために実家の軽四のトラックを出してくれたのである。費用は乙女の持ち出しだ。
「いや~、しかしホームセンターで間に合うレベルの補修で済みそうで良かったですね」
「うん。兼吉さんの代にも何度か大がかりな修築が入ってたみたいだね」
あれから色々待宵屋敷を細かく調べてみた結果、建物自体は見た目程傷んではいなかったことがわかった。
「元々が古い建物だから、あまりヘタにいじれねーしなー」
「ええまあ。取りあえず綺麗にしていきましょう」
差し当たり軽く掃除をして、水周りや床、外壁の補修をし、最後に再び大掃除をすることになった。後は気付いた部分があったらおいおい直していく、という予定である。
一階の乙女の居住スペースから軽く掃除を始めることにする。必要な道具を一緒に室内に運び込んだ。
「あ、やっぱり撮影するんですね……」
動画撮影用の機材を仕掛けていると、萩森が不安そうな声を上げる。
「うん、早いほうがいいと思って」
「僕、映らないほうがいいですよね?」
萩森は慌ててカメラの視界から外れようとして、躓いてしまった。
「いや、さすがにいきなり初回から生配信はしないから落ち着きなよ」
「そうですか……」
はりきっている乙女と反比例して、萩森の顔はどんどん憂鬱の度を増していく。
「あの、多分なんか気ぃ使ってくれてんだろうけど、そんな神経質んならなくていいと思うよ」
「そ、そうはいきませんよ! 僕も一応男ですから!」
何を言っているのか乙女はわからなかったのだが、ちょっと考えて気付いた。
どうも萩森は、乙女が元アイドルであるということを過剰に慮り、自分の存在を消そうとしているらしい。ファンが嫉妬すると思っているのだ。
「あー、いや、アイドルっつっても〝元〟だからね? あたし。もうファン層も結構変わってると思うから。へーきへーき」
「いえ! 炎上する可能性は極力減らしていかないと!」
緊張している萩森が面白くて、乙女はついつい笑ってしまった。
「だーいじょうぶだーって。意識しすぎないほうがいいよ。こういうの変に隠すと、バレた時余計面倒なことんなるから」
「しかし……」
「まあ萩森さんが映りたくないってんなら、それは尊重するよ。声も入れないし。ただ〝※市の職員の方に手伝ってもらってます〟って動画の説明文には入れるからね。あたしは隠すのヤだから。なんかコソコソしてるみたいで」
「はあ」
「説明文には男とも女とも書かないからさ。そんで山名さんに時間が出来た時にでも来てもらって、一緒に写真撮るなり動画にちょこっと出てもらうなりするよ。そしたらめんどくさいファンがいたとしても、安心するでしょ。山名さん女だから」
「な、なんだか慣れてらっしゃいますね」
「まーね」
萩森にニッと笑いかけた後、乙女はカメラに向かって動画用に自己紹介と軽い挨拶をする。
「ひとまずこれだけあれば、始められると思います。また何か足りない物とか欲しい物が出てきたら言ってください」
「うん、ありがとね。マジで助かったよ」
乙女は殊のほか素直に感謝の意を伝える。
萩森は作業に必要な工具、材料の買い出しのために実家の軽四のトラックを出してくれたのである。費用は乙女の持ち出しだ。
「いや~、しかしホームセンターで間に合うレベルの補修で済みそうで良かったですね」
「うん。兼吉さんの代にも何度か大がかりな修築が入ってたみたいだね」
あれから色々待宵屋敷を細かく調べてみた結果、建物自体は見た目程傷んではいなかったことがわかった。
「元々が古い建物だから、あまりヘタにいじれねーしなー」
「ええまあ。取りあえず綺麗にしていきましょう」
差し当たり軽く掃除をして、水周りや床、外壁の補修をし、最後に再び大掃除をすることになった。後は気付いた部分があったらおいおい直していく、という予定である。
一階の乙女の居住スペースから軽く掃除を始めることにする。必要な道具を一緒に室内に運び込んだ。
「あ、やっぱり撮影するんですね……」
動画撮影用の機材を仕掛けていると、萩森が不安そうな声を上げる。
「うん、早いほうがいいと思って」
「僕、映らないほうがいいですよね?」
萩森は慌ててカメラの視界から外れようとして、躓いてしまった。
「いや、さすがにいきなり初回から生配信はしないから落ち着きなよ」
「そうですか……」
はりきっている乙女と反比例して、萩森の顔はどんどん憂鬱の度を増していく。
「あの、多分なんか気ぃ使ってくれてんだろうけど、そんな神経質んならなくていいと思うよ」
「そ、そうはいきませんよ! 僕も一応男ですから!」
何を言っているのか乙女はわからなかったのだが、ちょっと考えて気付いた。
どうも萩森は、乙女が元アイドルであるということを過剰に慮り、自分の存在を消そうとしているらしい。ファンが嫉妬すると思っているのだ。
「あー、いや、アイドルっつっても〝元〟だからね? あたし。もうファン層も結構変わってると思うから。へーきへーき」
「いえ! 炎上する可能性は極力減らしていかないと!」
緊張している萩森が面白くて、乙女はついつい笑ってしまった。
「だーいじょうぶだーって。意識しすぎないほうがいいよ。こういうの変に隠すと、バレた時余計面倒なことんなるから」
「しかし……」
「まあ萩森さんが映りたくないってんなら、それは尊重するよ。声も入れないし。ただ〝※市の職員の方に手伝ってもらってます〟って動画の説明文には入れるからね。あたしは隠すのヤだから。なんかコソコソしてるみたいで」
「はあ」
「説明文には男とも女とも書かないからさ。そんで山名さんに時間が出来た時にでも来てもらって、一緒に写真撮るなり動画にちょこっと出てもらうなりするよ。そしたらめんどくさいファンがいたとしても、安心するでしょ。山名さん女だから」
「な、なんだか慣れてらっしゃいますね」
「まーね」
萩森にニッと笑いかけた後、乙女はカメラに向かって動画用に自己紹介と軽い挨拶をする。
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