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6.待宵屋敷へ
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「面倒なことはないからさ。こっちで撮った動画、あたしたちのチャンネルでUPさせてくれたらそれでいいんだよ」
乙女と今通話している水前寺一姫は、諸事情あってアイドルを辞めた後、二人で組んで〝スポーツ冒険家〟として活動していた元相棒である。
その活動が軌道に乗り始めた頃、共同でYOUTUBEその他でチャンネルを開設し、宣伝と動画のコンテンツ化を自前で行っていたのだ。
乙女は今、待宵屋敷のリフォーム動画をそのチャンネルに上げる許可を得ようと、かつての盟友をなだめすかしているのである。
「その、要は町おこしみたいなのしたいんでしょ? それならその、町なり市なりの公式チャンネルでやるのがスジってもんじゃないの?」
「そんなのねーもん」
「作んなさいよ」
「いやなんかさ、役所の人が及び腰なんだよ。変な感じで話題になるのは好ましくない、みたいな」
「炎上リスクを恐れてる、ってわけね。まあ、お役所って感じね。イメージだけど」
「だから、あたしたちのチャンネルに上げればさ、なんかあっても斧馬がどうこうってことにはなりにくいだろ?」
「まぁ、あんたの名前が前面に出るからね……でもそれだとその、斧馬ってとこの宣伝にもならないでしょ」
「それは動画の中で喋るから大丈夫。説明文とかにも書くし」
一姫は、何か深く考え込んでいる様子である。
「うーん……あんたと私が今ケンカ別れしてるの、ファンは知ってるでしょ? いきなりあんたの動画があのチャンネルにUPされたら〝仲直りしたんですか?〟って凄い聞かれるわよ?」
「仲直りした、って言やあいいじゃん」
「してないし」
「ん~だよ~! もー!」
とうとう乙女の中で、何かが限界を超えた。
「しつこいんだよお前~! 昔からさ~! もういいじゃんか~! いつまで怒り持続させてんだよマジで~!」
わかったわかった、と一姫はうるさそうに言って舌打ちする。
「あんたの言い分はわかった。でも私今、あるYOUTUBERの会社にオファーを受けててね」
「オファーって? 所属しないかって誘い?」
「そう。もしそこに入ることになったら、勝手にあんたの町おこし動画UPしていいのかどうか、とかよくわかんないでしょ? どういう契約になるのかまだはっきりしないんだけど。それで迷ってた、ってのもあるのよ」
「え? なにお前? そんなの受ける気なの?」
乙女は、少しオーバー気味のリアクションをする。
「やめとけよ。お前集団行動出来ないだろ。どうせまたすぐケンカして辞めちまうよ」
「あんたにだけは言われたくないんだけど!」
またぞろヒートアップしそうになったが、
「……いいわ。わかった。許可してあげる」
今度は一姫が矛を収めた。
「おっ。サンキュー!」
「まぁ、リフォーム動画でもなんでも、時々上がれば、あんたが今何してるかも把握出来るしね」
「えっ?」
問い返す乙女を、一姫は軽く〝何でもない〟とため息混じりにかわす。
「それよりその動画の収入ってどういう取り分になるわけ?」
「取り分って?」
「そのおたすけし隊の活動の一環としてやるんでしょ? 町だか市だかにもいくらか入れなきゃいけないの?」
「あー……いや、それは今まで通り、あたしとお前の折半でいいだろ。副業OKっつってたし」
「そういうのちゃんと確認しときなさいよ」
手を振って別れを言い、乙女は通話を切った。
乙女と今通話している水前寺一姫は、諸事情あってアイドルを辞めた後、二人で組んで〝スポーツ冒険家〟として活動していた元相棒である。
その活動が軌道に乗り始めた頃、共同でYOUTUBEその他でチャンネルを開設し、宣伝と動画のコンテンツ化を自前で行っていたのだ。
乙女は今、待宵屋敷のリフォーム動画をそのチャンネルに上げる許可を得ようと、かつての盟友をなだめすかしているのである。
「その、要は町おこしみたいなのしたいんでしょ? それならその、町なり市なりの公式チャンネルでやるのがスジってもんじゃないの?」
「そんなのねーもん」
「作んなさいよ」
「いやなんかさ、役所の人が及び腰なんだよ。変な感じで話題になるのは好ましくない、みたいな」
「炎上リスクを恐れてる、ってわけね。まあ、お役所って感じね。イメージだけど」
「だから、あたしたちのチャンネルに上げればさ、なんかあっても斧馬がどうこうってことにはなりにくいだろ?」
「まぁ、あんたの名前が前面に出るからね……でもそれだとその、斧馬ってとこの宣伝にもならないでしょ」
「それは動画の中で喋るから大丈夫。説明文とかにも書くし」
一姫は、何か深く考え込んでいる様子である。
「うーん……あんたと私が今ケンカ別れしてるの、ファンは知ってるでしょ? いきなりあんたの動画があのチャンネルにUPされたら〝仲直りしたんですか?〟って凄い聞かれるわよ?」
「仲直りした、って言やあいいじゃん」
「してないし」
「ん~だよ~! もー!」
とうとう乙女の中で、何かが限界を超えた。
「しつこいんだよお前~! 昔からさ~! もういいじゃんか~! いつまで怒り持続させてんだよマジで~!」
わかったわかった、と一姫はうるさそうに言って舌打ちする。
「あんたの言い分はわかった。でも私今、あるYOUTUBERの会社にオファーを受けててね」
「オファーって? 所属しないかって誘い?」
「そう。もしそこに入ることになったら、勝手にあんたの町おこし動画UPしていいのかどうか、とかよくわかんないでしょ? どういう契約になるのかまだはっきりしないんだけど。それで迷ってた、ってのもあるのよ」
「え? なにお前? そんなの受ける気なの?」
乙女は、少しオーバー気味のリアクションをする。
「やめとけよ。お前集団行動出来ないだろ。どうせまたすぐケンカして辞めちまうよ」
「あんたにだけは言われたくないんだけど!」
またぞろヒートアップしそうになったが、
「……いいわ。わかった。許可してあげる」
今度は一姫が矛を収めた。
「おっ。サンキュー!」
「まぁ、リフォーム動画でもなんでも、時々上がれば、あんたが今何してるかも把握出来るしね」
「えっ?」
問い返す乙女を、一姫は軽く〝何でもない〟とため息混じりにかわす。
「それよりその動画の収入ってどういう取り分になるわけ?」
「取り分って?」
「そのおたすけし隊の活動の一環としてやるんでしょ? 町だか市だかにもいくらか入れなきゃいけないの?」
「あー……いや、それは今まで通り、あたしとお前の折半でいいだろ。副業OKっつってたし」
「そういうのちゃんと確認しときなさいよ」
手を振って別れを言い、乙女は通話を切った。
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