15 / 96
6.待宵屋敷へ
002
しおりを挟む
「いや~武音さんが話しやすい人で本当によかったですよ」
萩森の言葉を聞いて乙女は、快活に笑った。
「まーな。元アイドルだし歳も若いし、で、どんなのが来るのかと思うよな」
「いえいえ! そういう偏見は全然無かったんですけどね。その……」
萩森は少し言い淀んだが、
「もう一人のおたすけし隊の方が……なんというか、ものすごく話しにくい人なので」
と、結局すんなりと喋ってしまった。
隠してもいずれわかることだと思ったのだろう。聞いている乙女も、特に大袈裟に反応することなく、へぇ、と軽く返事をした。
「この仕事長いの?」
「えっ?」
「いや、なんつうのかな。こう、町おこしみたいな」
「ああ、いえ、僕臨時職員なんですよ。ついこの間採用されまして。色々あって、係の者の補助みたいなことをすることになったんです」
とはいうものの、ノーネクタイではあるが白のYシャツにスラックスと一応カチッとした格好はしていた。
「そうなの?」
乙女は意想外の声を出す。
「ああ、そういえばあたしの担当の人、女だって聞いてたな」
「ええ、山名雅樂って人ですよ。なんか今日は体調が悪いらしくて」
萩森は軽くため息をつきながら言った。
「……もしかしてあんまりやる気ない感じの人?」
さっき市役所の中で会った人間を思い出してみても、それらしき人物はいなかった。
萩森の態度や初日から休んでいることなどを考え合わせ、乙女は勘ぐってしまったのだが、
「いえ、やる気はある人です。なんか色々事情があるみたいで……やる気がありすぎるっていうか……」
彼は即座に否定した。しかしなんとなく要領を得ない話し方である。
「あら、崇雄ちゃんやないの。そっちの人は?」
「ああ、こんにちは」
萩森に話しかけてきた老婦人がいる。二人は既に商店街に差し掛かっており、ほぼシャッター街と化しているものの、他よりは多少人通りが多いのだ。
「こちらのかたは、今度地方振興おたすけし隊で斧馬に来られた武音さんです」
「よろしくお願いします。武音乙女と言います」
「へえぇ……おたすけし隊の……」
挨拶した乙女を、老婦人は目を大きくして眺めまわす。
「じゃああんたが、あの待宵屋敷に……はあぁ。へえー……」
聞いていてもどかしくなるような声の出し方であった。
「まあ、なんか変わったこととか困ったこととかあったら、すぐ誰かに言いなはいよ。市役所の人間でも近所の人でも誰でもええけんなあ……なんなら警察でも……」
「ちょっと! 山本さん!」
萩森が慌てて制止すると、老婦人は〝ああ、ごめんごめん〟と言いつつ、去っていく。
「すいません、変なこと言ってましたけど、あんまり気にしないでもらえると……」
「ああ、いいよ。あたしの心配してくれてたんだろ。いい人じゃん」
「いやあ……そう言ってもらえると助かります」
萩森はほっと胸を撫で下ろしたようだった。
広い敷地を持つ小学校の横を通ると、坂道である。
「ここからちょっときついかもしれませんが」
「へーきへーき」
視界を遮る物は何もないので、かなり傾斜のキツい坂道は全て下から丸見えだったが、乙女は意に介した様子はない。
萩森の言葉を聞いて乙女は、快活に笑った。
「まーな。元アイドルだし歳も若いし、で、どんなのが来るのかと思うよな」
「いえいえ! そういう偏見は全然無かったんですけどね。その……」
萩森は少し言い淀んだが、
「もう一人のおたすけし隊の方が……なんというか、ものすごく話しにくい人なので」
と、結局すんなりと喋ってしまった。
隠してもいずれわかることだと思ったのだろう。聞いている乙女も、特に大袈裟に反応することなく、へぇ、と軽く返事をした。
「この仕事長いの?」
「えっ?」
「いや、なんつうのかな。こう、町おこしみたいな」
「ああ、いえ、僕臨時職員なんですよ。ついこの間採用されまして。色々あって、係の者の補助みたいなことをすることになったんです」
とはいうものの、ノーネクタイではあるが白のYシャツにスラックスと一応カチッとした格好はしていた。
「そうなの?」
乙女は意想外の声を出す。
「ああ、そういえばあたしの担当の人、女だって聞いてたな」
「ええ、山名雅樂って人ですよ。なんか今日は体調が悪いらしくて」
萩森は軽くため息をつきながら言った。
「……もしかしてあんまりやる気ない感じの人?」
さっき市役所の中で会った人間を思い出してみても、それらしき人物はいなかった。
萩森の態度や初日から休んでいることなどを考え合わせ、乙女は勘ぐってしまったのだが、
「いえ、やる気はある人です。なんか色々事情があるみたいで……やる気がありすぎるっていうか……」
彼は即座に否定した。しかしなんとなく要領を得ない話し方である。
「あら、崇雄ちゃんやないの。そっちの人は?」
「ああ、こんにちは」
萩森に話しかけてきた老婦人がいる。二人は既に商店街に差し掛かっており、ほぼシャッター街と化しているものの、他よりは多少人通りが多いのだ。
「こちらのかたは、今度地方振興おたすけし隊で斧馬に来られた武音さんです」
「よろしくお願いします。武音乙女と言います」
「へえぇ……おたすけし隊の……」
挨拶した乙女を、老婦人は目を大きくして眺めまわす。
「じゃああんたが、あの待宵屋敷に……はあぁ。へえー……」
聞いていてもどかしくなるような声の出し方であった。
「まあ、なんか変わったこととか困ったこととかあったら、すぐ誰かに言いなはいよ。市役所の人間でも近所の人でも誰でもええけんなあ……なんなら警察でも……」
「ちょっと! 山本さん!」
萩森が慌てて制止すると、老婦人は〝ああ、ごめんごめん〟と言いつつ、去っていく。
「すいません、変なこと言ってましたけど、あんまり気にしないでもらえると……」
「ああ、いいよ。あたしの心配してくれてたんだろ。いい人じゃん」
「いやあ……そう言ってもらえると助かります」
萩森はほっと胸を撫で下ろしたようだった。
広い敷地を持つ小学校の横を通ると、坂道である。
「ここからちょっときついかもしれませんが」
「へーきへーき」
視界を遮る物は何もないので、かなり傾斜のキツい坂道は全て下から丸見えだったが、乙女は意に介した様子はない。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる