友達

八花月

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「いいじゃないですか。何を恐れてるんです?」

 敢えて挑発的な言い方をしてみた。

「別に。何も怖がってなんかないさ」

「それじゃあ、もったいぶることないでしょ? あ、もしかしてあれですか? 人に話したら呪われる、みたいな話ですか? それとも知ってしまった僕の方が何かに巻き込まれるとか」

「そういうのじゃない」

 暫し、身に沁み入るような沈黙にその場が支配された。

「……ただ、嫌なんだよ。あんたと違って俺はこの町から出ていけない。あんたが〝俺から聞いた〟ってこの話を言い触らせば、誰から漏れたかすぐ特定されちまう。それで直接何か被害を受けるとかはないだろうけど、ちょっとだけ俺はここで暮らしにくくなる」

「そんな、ソースを特定されるようなことはしませんよ。基本ですから」

「いや、わかる奴ならわかっちまうよ」

「じゃあ、こうしましょう。この話は小説にしますよ」

「小説ぅ?」

「ええ。小説ってのは作り物でしょ? みんなそれとわかって読むものです。〝実話〟とか〝本当にあった〟とかはなし。舞台も、登場人物も、その名前も、全部わからないように変えちゃいます。もちろん発表する前にご確認いただいて。それならいかが?」

 相手は、初めて何か考える素振りを示した。

「そんなら、まあ……」
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