世界樹の管理人～なぜ彼は異世界でモテるのか？～（仮）

獣人国グエン

１８９．一時撤退

ジンはハイドアントの群に飛び込むと一振りで三・四匹をまとめて吹き飛ばしていく。

左右に斧を一本づつ持っているので一度に一人で六～八匹を吹き飛ばす計算だ。

アント種が小さいと言っても大型犬並みの大きさはあるのにまるで紙切れのように宙を舞っていくのだ。

その原因となっている存在が子供サイズのジンがやっているのだ。

ジンが強いのは分かっているのだがそれでもなお異様な光景に見える。

それだけ如何にジンの素の身体能力とスキル《怪力》《竜魔闘気》を合わせた力の強さがはっきりと分かる。

うん、すでに手遅れかもしれないけどジンを怒らせないように気を付けよう。

エルはジンとは逆にスピードと小回りを活かしてハイドアントを翻弄しながら確実に弱い部分である頭部と胴体の関節を切り払っている。

帝国の兵士に追いかけられているところしか知らなかったが迷宮について来るだけ合って戦いには慣れているみたいだ。

接近戦もジンほどではないけど俺よりも高い技術を持っているんじゃないだろうか？

戦闘技術の無い俺も良くは分からないけど。

それに加えてポックルが補助をしているからか俺の言葉を信じているからなのか攻撃に集中しているのが良い動きに繋がっているようだ。

周りは敵だらけなのでどこを狙っても敵に攻撃が当たる状況なので俺は狙いもつけずに《機関銃》を放ち続ける。

メアは迫ってくる大量のアントに俺達が押し潰されないように重力魔法と空間魔法を使って足止めをしてくれているのは助かる。

≪プログラム・素粒子操作≫で同じことが俺もできるけどその分余計に魔力を消費してしまうし、リソースを使われる分《機関銃》の掃射速度が落ちるからな。

ハンドアント以外に顎の大きいもの外骨格がごつくなっているいるものなどいろんなのが出てきているがいちいち鑑定している暇はない。

それらの特殊なアントも戦闘能力事態はが低く弱いので一瞬で倒せるのだがそれ以上の数が次から次へと表れる。

もともとこの空間にいたハイドアント以外にもどうやら至る所からこの空間に向けてアントが集まって来ているようだ。

それに倒したアントの死体も俺たちの動きを阻害して邪魔だ。

アントたちはなんでもないように仲間の死体を踏み分けてこちらに襲い掛かってくるが俺達にとっては厄介で不安定な足場になっているのだ。

俺達が敵を倒すごとに俺達が動ける空間が減っていく。

アントが後何匹いるのか分からないんじゃジリ貧だな。

一端逃げて作戦を立てないとダメか。

「ソラ、エル！気を付けろ、上だ！」

そこら中に魔力反応があるために気がつかなかったが俺達の真上からハイドアントが降ってきた。

俺は《結界》に阻まれたハイドアントを《機関銃》で冷静に対処できたがエルは驚いて動きが止まってた。

その隙に他のアント達が殺到してきた。

アントに《結界》を破れないと言ってもアリの魔物に四方八方を囲まれるのは恐怖だろう。

俺はすぐに《機関銃》の集中砲火を浴びせるが《無痛》スキルを持っているから全く怯まない。

《殺気》と《呪詛》もずっと使っているが全く役に立たない。

密閉空間であまり使いたくなかったが撤退の隙を作るためにも《爆弾》を使うことにする。

「《爆弾》を使う！敵が吹き飛んだ隙に撤退する！セバス頼むぞ！ジンも分かったか！」

「分かりました。」

「分かったぞ。」

俺達の周りのアントを吹き飛ばすために１０個の《爆弾》をばら撒いた。

狙い通りに俺たちの周りにいるアント達が吹き飛ぶ。

天井が崩れるかもと心配したが大丈夫なようだ。

エルも周りのアントが吹き飛ぶと同時に俺たちと合流して来た。

よかった。

ちゃんと俺の声が聞こえていたみたいだ。

「よし、撤退するぞ！」

俺たちはセバスが開いた扉からプライベートワールドに撤退した。