暁の刻

煉獄薙

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不機嫌そうな総司と少し笑っている土方さん、そして平助、原田さん、永倉さん。

「すげー似合ってるな!まるで女みてーだ!」

平助はじろじろ雫を見つめているが、雫はといえば、状況を理解した上で総司がここにいることに心が弾んでいた。


なおも触れ続ける平助の手を払い、
「お酒を飲みに来たんでしょう?飲まないのなら帰りますか?」
冷静に訊ねる雫に、平助は完全否定し、お猪口を構えた。
雫は少しため息をついて酒を注ぐ。



しばらくすると、みんなそれなりに酔いがまわってきたようで、頬を赤らめていた。

「…総司は飲まないの?」

「…僕はあまり酒が好きじゃないんだ」

まだ機嫌は戻っていなかった。


けれど、さっきよりはましになっているという自信があった。

「…ここでの仕事、どうなの?」
「…うん、思った以上にハードだけど楽しいよ」
「…ふーん」

言葉は少ないが、気にかけていることはわかる。

「…あのね、総司……一つだけ覚えていて欲しいことがあるの。」
「何?」
「…私、……………」
雫はとある告白と同時に、ある約束をした。


*****

「…じゃ、その人達を頑張って連れて帰ってくださいねー」

それからしばらくして、一行は帰ることとなった。

完全に酔いつぶれた平助と原田を、それぞれ総司と永倉が支えて玄関先に立っていた。

見送りは雫だけ。

まだ山崎は他の客の相手をしている。

基本的にこんなことはもう二度とないだろう。

雫の存在は相対した人しか知らず、山崎とセットで行動してこそ意味があるのだから…

「来たときは気を付けろよ」

土方さんの忠告。

まぁ、まだ吉田は来ていないということは伝えていたため、それに対するものだろう。

「…大丈夫ですよ」

得意の笑顔で返し、みんなを見送った。




みんなの後ろ姿を見ながら、久しぶりのみんなとの時間を噛みしめていた。

「…さて!もう一仕事するか!」

自分を鼓舞し、屋敷へと続く暖簾をくぐった。

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