暁の刻

煉獄薙

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「…総司は、今日人を殺すんですね」

寂しそうに呟く。

「…誰を殺すか、何で殺すかは知ってるんだろ?」

今さら言うな、と土方は冷たく返す。

未来から来た雫にとって、ここで起きることはもう過去のことで、干渉すべきではない。

それは理解しているが、納得したわけではないのだ。

「総司には、あんま人を殺してほしくはないな」

には、という一言に、土方は疑問を持つ。

「お前は殺したことあるのか?」

未来を教えないと言われていたから、自然と雫がいた未来まで、聞くのを躊躇っていた。

雫の周りの環境は、彼女の性格や反応をみてなんとなくだけ理解していた。


雫は乾いた笑いをした。

「さぁ、どうでしょうね」

また、誤魔化した。



*****

「…じゃあ、日下部は僕が、上田は一くんが仕留める。出来るだけ皆が見てない場所に誘導してもらって…」

「…彼らは毎日昼過ぎになると人の少ない裏口から出ていきます。外に出るのはどちらかだけですが、片方は見張りとしてそのまま裏口付近に留まります。それが一番良い機会かと」

「それなら俺が裏口、総司が邸側から攻めるのが良いだろう」

三人は戦闘に慣れた者同士。

全てパターンを考え、その対処まで考えていた。

「…じゃあ、山崎君は誰も来ないように上手く誘導しといてね」

まだ予定の時間は遠い。
それからは各々刀の手入れをしていた。


時間になると何も合図をせずに動き出した。

まずは斎藤。

そして総司、山崎。

殺気を隠しつつ、廊下を歩いていく。


「…あ、総司」

そんなときに限って、雫がひょっこりと顔を出す。

部屋の中には土方さんもいて、関係ないと目を向けなかった。

「…これ終わったら後で一緒に茶菓子食べよ!!」
「…うん!後でね。頑張って!」

簡単な言葉をかけて、雫はまた部屋に引っ込んだ。


一瞬予定が狂ったけど、気を取り直し命を執行する。




*****

「…あんな言葉で良かったのか?」

「…良くないに決まってます。この足がちゃんと動くなら……」

雫は言葉を飲み込んだ。

唇を強く噛みしめ、恨めしく自分の足を見ていた。

「…お前、吉田と相対したんだったよな?あいつはどんなやつだった?」

「それ、この前言いましたよね?灰色の髪で……」

「…そうじゃなくて癖とか流派とか……」

要は対峙して知った性格以外の情報を言えということらしい、

「…あいつは、恐ろしく強いですよ。殺すことを躊躇わないから……癖といえば、少し左手を怪我してたのかも……振りが変だった。」

土方は黙って話を聞いていた。



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