暁の刻

煉獄薙

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雫と総司を再会させ、俺は再び仕事に戻った。
ひとしきり泣いた雫は、総司の前ではいつもの雫でいた。



あいつ、説明はぼやかしていたが、圧倒的な戦闘力を持っていると確信した。

そしてそれと戦っていた吉田や後から現れたという長州の人間も、相当な力を持っている。


明日からの見廻りの編成を行って、稽古も今の倍くらいにする必要がある。

「…面倒なことになってきたな」

大きくため息をついた。


*****

目を閉じるとあの真っ赤に染まった瞳を思い出す。

恐怖を感じたのは久しぶりだった。

「…おい、反省したか?」

「…うん、晋作が来てくれなかったら死んでたよ」




「あいつ、なんなんだよ。あの強さ……」

今でも思い出すと武者震いをする。
久しぶりの強者との出会いで、自分が興奮しているのを感じていた。

「…おもしれぇ………」

「…うわ、また悪い癖が出たよ」

「…あ、晋作まだいたんだ」

「いたよ!ってかお前の包帯を取り替えに来たんだ!」

晋作は手に持った包帯を主張多めに見せてくる。

「…あーうるさいうるさい。じゃあさっさと取り替えてよ」
面倒そうに左腕を差し出した。

晋作が服をひいたあとの一瞬で、無意識に刀を振っており、それが吉田の左腕に当たったのだ。

さほど深くもなく、1週間もあれば治る傷だった。

「…あの赤い目、どう思う?」

「…元は黒だったんだろ?途中から変わったって…」

「黒だったときは普通だったけど、赤に変わった瞬間殺気を放ったんだ。しかも動きも速くなってた」

目で追えないわけではないが、それでも圧倒的に速くなっていた。

「……中村の話を聞く限り、あの目を誰かに見せた様子はないし、刀を扱えるっていう情報もない。あんだけ強けりゃ副隊長さんが放置はしねーだろ?」

「珍しく晋作がまともなこと言った」

ぎゃんぎゃん反論する晋作のことを放置し、吉田は雫に感じた違和感を思い出そうとしていた。


赤い目になってから、仲間のことを気にかけていなかった。

そして逃げる途中に振り返ったとき、あいつは酷く疲れていた気がする。



「…まだ何人か潜入してたんだよね?あいつのこと、報告させるようにお願いしといてよ」

「それは構わないけど、お前ちゃんと覚えてんのか?今度……」

「あ、忘れてた」

晋作の怒号が飛ぶ。

あーあ、早く強いやつと戦いたいな。

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